マジョクル

胡林

エピソード1(脚本)

マジョクル

胡林

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〇近未来の手術室
紫苑「・・・・・・」
紫苑「・・・・・・ん・・・」
トリガー博士「おはよう〜 元気?」
紫苑「ひっ!?」
トリガー博士「ん〜、微妙なリアクション。 いかにもって格好なんだからもっと反応欲しいなぁ」
紫苑「あ、あれ・・・私・・・」
トリガー博士「ところでさ」
トリガー博士「今の時代ってさぁ みーんなスマホで写真撮ってるでしょ?」
トリガー博士「嫌いなんだよねぇ・・・ 僕そういうのはさ」
トリガー博士「だってさ こういう状況になっちゃうんだから」
紫苑「写真・・・? わ、私なにも・・・」
トリガー博士「あっはは〜 とっさに撮影しちゃったんだ?」
トリガー博士「・・・・・・・・・」
トリガー博士「君さ、とんでもないもの・・・ 撮っちゃったね」

〇駅のホーム
  半日前・・・
アナウンス「3番線、電車が参ります。 ご注意ください」
紫苑「・・・・・・」
紫苑「・・・・・・」
  で、紫苑ちゃんはいくら欲しいの?
紫苑(いくら・・・私の価値か。 マクロで見たらどうだろ)
紫苑(なんて)
紫苑(アホくさ)
紫苑(今月分・・・ 10万くらいいけるかな)
紫苑(食事だけでそんな出してくれるんかな)
紫苑「・・・・・・」
紫苑(5000円もらえますか? っと・・・)
紫苑「はぁ」
紫苑「・・・・・・・・・」

〇黒
「おいっ! 人が飛び込んだぞ!!」

〇駅のホーム
紫苑「・・・あっ」
女子高生「ひっ!!」
女子高生「ちょっ、 やば・・・!!」
紫苑「・・・・・・」
  周囲の人混みがさっと引けていく中
  私は無意識にスマホのカメラを向けた
  物言わぬカタマリとなったソレに

〇改札口
紫苑「はぁ・・・はぁ・・・!」

〇黒
  気がつけば走っていた
  怖くなって
  どうしてあんなこと・・・

〇一戸建て
紫苑「はぁ・・・はぁ・・・」

〇一階の廊下
紫苑「・・・・・・」
  自分の家なんかじゃない
  けれど、今はとにかく・・・
叔母「紫苑」
紫苑「あっ、 叔母さん・・・ た、ただいま戻りました」
叔母「挨拶はいいわ」
叔母「それよりも、お金! 今月の家賃を払いなさいな」
紫苑「あ・・・ えっと、もうちょっとだけ・・・」
叔母「!?」
紫苑「!!」
叔母「払えと言ったら払うの。 あんたみたいな子を置いてやってるんだ」
叔母「感謝してもらわないとねぇ?」
紫苑「は、はい ありがとうございます」
叔母「明日までに。 いいわね?」
紫苑「え・・・ は、はい・・・」
紫苑「・・・」

〇部屋のベッド
紫苑「・・・」
  急にすみません。
  10万円いただけませんか?
  前借りのような形でなんとか
紫苑「・・・あっ ダメだこんなの・・・」
  いいよ
紫苑「え・・・!?」
紫苑「いいの・・・!? ほんとに・・・!?」

〇一戸建て

〇部屋のベッド
紫苑「そんなに出してくれるんだ」
紫苑「私の価値もなかなか・・・」
紫苑「・・・なんて」
紫苑「はぁ アホくさ」
紫苑「・・・!!!!」

〇黒

〇部屋のベッド
紫苑「・・・」
  手が震えた
  見たくないと思っているのに
  私は写真アプリを開いていた

〇駅のホーム

〇部屋のベッド
紫苑「うっ・・・」
紫苑「?」
  込み上げてくるモノをこらえると、写真のある部分が気になった
紫苑「首筋の辺りに・・・ QRコードみたいな?」
  私は反射的に拡大していた

〇黒
  アクセス確認
  アプリのダウンロードを開始
  ・・・
  ダウンロード完了しました

〇部屋のベッド
紫苑「うわっ! ちょ、何これ!? ウイルス!?」
紫苑「アプリ勝手に起動してるし」
紫苑「マッチングアプリ・・・」
紫苑「マジョクル」
紫苑「・・・・・・・・・」
紫苑「アホくさ」
紫苑「やっぱウイルスのやつじゃん」
紫苑「うわ!! なんの光!?」
紫苑「ちょ、やばっ! 電源切っちゃお!」
紫苑「はぁ・・・」
紫苑「・・・でも」
紫苑「なんでQRコードなん・・・て・・・・・・」

〇黒
  ・・・・・・
紫苑の父「紫苑・・・ 父さんを信じてくれ・・・」
紫苑の父「俺は・・・ 俺は絶対にやってないんだ・・・」
紫苑の父「紫苑・・・ お前だけは・・・頼む・・・」
紫苑「お父さん・・・」

〇葬儀場
隣人「焼身自殺ですって」
隣人「冤罪だって言い続けていたらしいわ」
隣人「紫苑ちゃんと2人暮らしだったらしいわよ。 あの子も何かされてたんじゃないかしら」
隣人「気味が悪いわね・・・」
紫苑「やめて・・・ もうやめてよ・・・」
紫苑「お父さんは・・・ 私のお父さんはそんな人じゃ・・・」

〇近未来の手術室
トリガー博士「おはようー 元気ぃ?」

〇黒
  そうだった
  スマホの変な光を浴びたら意識が飛んで
  目が覚めたらここにいた

〇近未来の手術室
紫苑「・・・・・・・・・」
トリガー博士「思い出した? ね、とんでもないことしちゃったの。 わかる?」
紫苑「わ、わかりません・・・! 写真を撮ったことですか!?」
トリガー博士「そうだなぁ ご遺体の写真撮るなんて悪趣味の極みだけれど」
トリガー博士「重要なのはQRコードだ。 キミ、アクセスしたでしょ?」
紫苑「あ・・・」
紫苑「アプリ・・・」
トリガー博士「そう。 『マジョクル』 にね」
トリガー博士「既にキミは登録済みだ。 ま、仮登録の段階・・・かな」
トリガー博士「ちなみに」
トリガー博士「手術はやっといたからね」
トリガー博士「特殊技能は前任者から受け継がれているから、実際に使ってみるといいよ」
紫苑「特殊技能? 使うって・・・あの・・・」
トリガー博士「まあ、そう心配しないで」
トリガー博士「目が覚めたらアプリを開いてごらん」
トリガー博士「それで気になったら」
トリガー博士「僕に連絡しておくれ」
トリガー博士「待ってるよ」
紫苑「・・・?」
トリガー博士「あ、そうそう」
トリガー博士「自分の価値とは」
トリガー博士「自分で決めるものだよ」
紫苑「え!?」
トリガー博士「それじゃ、 おやすみぃー」

〇部屋のベッド
紫苑「・・・・・・」
紫苑「!!」
紫苑「うわ・・・変な夢みた・・・」
紫苑「・・・? 夢の中で、もう一回夢見てた?」
紫苑「・・・」
紫苑「アホくさ」
  おはよう紫苑ちゃん
  今日、楽しみにしてるよ
紫苑「あ・・・そうだった」

〇一戸建て
紫苑「はぁ・・・ 行きますか」

〇駅のホーム
紫苑「・・・」
紫苑「マジョクル・・・」

〇近未来の手術室
トリガー博士「やっほほほーいっ」

〇駅のホーム
紫苑「・・・・・・ いや夢だし」
紫苑「アホくさ」
紫苑「でもちょっと開いてみたりして」

〇黒
  マジョクルへようこそ
  甘釘紫苑さま

〇駅のホーム
紫苑「うわ! なに、登録済み!?」

〇黒
  甘釘紫苑 あまくぎ しおん
  
  16歳
  身長 161cm
  
  体重 任意
  現況 仮登録
  特殊技能
  
  ・詠春拳(葉門派)
  
  以上

〇駅のホーム
紫苑「個人情報が・・・ ウイルスこわっ」
紫苑「で、 特殊技能何よ?」
紫苑「えい・・・はる? 拳法?」
紫苑「はぁー!! アホくさ」
紫苑「そんなことより大事なことがあるんだった」

〇ホテルのレストラン
おっさん「やぁ、 紫苑ちゃぁん 僕がキミの足長おじさんよ〜」
おっさん「きょーうは、 たっぷーり、楽しんでおユキ・・・ね!」
紫苑(・・・まぁ、マシな方なのかな)
紫苑「あの、すみません。 急なお願いをしてしまって」
おっさん「いいってぇ、ことよぉ。 おじさんはキミのパパよ。 パパに遠慮はイカンのよ?」
おっさん「それに・・・」
紫苑「?」
おっさん(日本人のJKは高く売れるんだぜ 商品価値があるのよね)
紫苑「あの・・・おじさま・・・ お金なんですが・・・」
おっさん「ああ。 わかってるさ」
紫苑「!!」
おっさん(ふふ・・・ 安い買い物だぜ)

〇銀座
紫苑「今日は、ありがとうございました。 とても楽しかったです」
紫苑「それじゃあ、 さようなら」
紫苑「!!」
  大人の男の腕力は思った以上に強かった
  ガッシリと掴まれた手は、とても振り払えそうになかった
おっさん「おぉっとぉ。 誰が帰っていいとぉ言ったんだぃ!?」
紫苑「ちょっ、 は、離してください・・・」
おっさん「10万ださせてぇ メシだけで終われると思ったかぁ!?」
おっさん「ナメてんじゃねえぞ小娘!! こっちこいコラッ!!」
紫苑「・・・・・・!!」
  怖い・・・
  足がすくんで・・・抵抗できない・・・

〇広い公園
おっさん「人生ナメずに、 コレなぁめて〜っと♪」
おっさん「やっぱ小娘をヤるなら野外だろ 俺の修羅が騒ぐぅ〜」
紫苑「・・・!!」
  一瞬力が緩んだ隙をついて、私は走った
おっさん「ぬぁ!? 待てコラ!!」
紫苑「!!!!」
おっさんの一味「組長〜 オラたちも混ぜてけれ〜」
おっさんの一味「俺たちは1+1=2じゃねえぞ 200だ!! 10倍だぞ10倍!!」
おっさん「ったく、しゃーねぇな。 いいかお前ら、売っぱらうんだから壊すんじゃねえぞ?」
  ダメだ・・・
  私・・・ほんとにバカだ・・・
  お父さん・・・
  私の価値って・・・
  なんなのかな

〇黒
トリガー博士「自分の価値とは」
トリガー博士「自分で決めるものだよ」

〇広い公園
紫苑「・・・・・・」
紫苑「!!!!」
おっさん「でも最初の一発はもーらい! いただきJKまぁぁす!!」
おっさん「もっ!?」
「ぺぃ!?」
おっさんの一味「組長!?」
紫苑「カラダ・・・勝手に動いた・・・?」
おっさん「痛えだろうが小娘が・・・! おいてめえら、やっちまえ!!」
おっさんの一味「いいんだね? やっちゃって」
おっさんの一味「何がしたいんだコラッ! カンフー使ってコラッ!」

〇黒

〇広い公園
おっさんの一味「ぐぉおお・・・」
おっさんの一味「またぐなよ・・・ またぐなよ・・・」
おっさん「この動き・・・ 昔、上海で対峙した詠春拳の達人マフィアと同じ・・・!!」
紫苑「えいしゅん? それってまさか」

〇黒
  特殊技能
  詠春拳(葉門派)

〇広い公園
紫苑「マジョクル・・・」
おっさん「クソがッ! もうぶっ殺すしかねぇ!!」
おっさん「薔薇の飾りは手作りですぅー!!」
おっさんの一味「ちなみにこの被り物は猫です」
おっさんの一味「でけぇ斧ひろいました!!」
紫苑「あ、なんか殺されそう・・・」

〇黒

〇広い公園
???「・・・・・・・・・」

次のエピソード:エピソード2 「開宴」

コメント

  • たしかに自分の価値を決めるのは自分ですよね。
    それにしても謎のアプリって、なんなんでしょうね?
    10万円は、ちょっとお食事だけでは済まない額だと思います。危ないです!

  • 面白かったです!個人的には詠春拳がどツボでした!イップマンだ!

  • そうですよね。決めるのは自分。
    誰かが決める評価よりも、自分で決めるのが自分のためでもありますよね。とても心にぐっときました!

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