始まり-3(脚本)
〇古いアパートの居間
舞美「家族といっても、戸籍とかそういう類のものは今のままです」
舞美「あくまでも、家族として振る舞っていただく形になります」
真「家族、か・・・」
俺にはそれをする意味がよく理解できずにいた。
家族になる、だなんてそんな意味不明な行動を快く二つ返事できるものではない。
舞美「難しいと思います。小鳥遊を名乗るんです。街で会った人にも小鳥遊、レストランの予約を書く時も小鳥遊」
舞美「身分を証明する時以外は基本、家族です。 そう、愛莉ちゃんも」
本当の娘じゃなかったのか。
彼女も本当は家族じゃなくて、血のつながりも何もない他人。
愛莉「それでも私にとっては、お母さんです!」
舞美さんは愛莉ちゃんの頭を撫でる。
こう見ると、本当に母と娘に見えてきてしまうものだ。
真「それはこの家にいる時もですよね?」
舞美「別にそこまで強制するものじゃないわ。 家族なんだ、っていう小さな意識を持ってほしいだけなの」
真「凛ちゃんはどう思う?」
凛「わ、私は酒井さんに任せます・・・」
舞美「ただ、名前呼びがいいかしらね。 そういう小さな意識だけ。 どうかしら? あなたがもしよかったらだけれども」
正直住む場所なんてこんな簡単に見つかるものじゃない。
凛ちゃんと一緒に住んでも、必要なお金はたったの六万円。
仕事場からも遠くない。
こんな好条件は他にないはず。
ただ、少し家族のフリをすればいいだけ。
・・・・・・なんで俺、凛ちゃんと一緒に住むことを考えてるんだ?
住む必要なんてない。義理なんてない。
むしろ巻き込まれている側なんだ。
俺一人の引っ越し先なんていくらでもある。
凛「酒井さん・・・・・・」
彼女のその表情が俺を罪悪感に浸らせるのか?
俺は、何がしたいんだ。
今はわからないけど、何かあれば俺だけこの家から出ればいい。
そうだ、一ヶ月で出ていけばいいんだ。
真「お願い、します」
舞美「よかったわ! 今日からえっと、真くんは私の息子よ! 凛ちゃんは私の娘!」
愛莉「わーい! お姉ちゃんとお兄ちゃんができましたー!」
凛「えっと、よろしく、お願いします」
さすがの凛ちゃんも少し戸惑いを隠せていない。
〇古いアパートの一室
ごめんなさい。
でも私本当に、家には帰れないんです!
お願いです、やっぱり助けてください!
〇古いアパートの居間
彼女の事情は知らない。
けど、最初の出会いからここまで関わってしまった以上
笑っていてほしいのは、優しさなんだろうか?
〇日本家屋の階段
愛莉「私がお部屋ご案内しますね!」
舞美さんとの契約を済ませ、愛莉ちゃんが部屋を案内してくれることとなった。
真「愛莉ちゃん、ありがとね」
愛莉「うー」
真「え」
愛莉「な・ま・え」
真「え、愛莉ちゃんであってるよね?」
愛莉「真お兄ちゃんは、妹をちゃん付けで呼ぶんですか!」
ああ、そういうことか。
あくまでも、家族。
そういう契約だ。
真「ごめん、えっと・・・ 愛莉」
愛莉「はい! 真お兄ちゃん!」
愛莉「まずは、真お兄ちゃんのお部屋をご案内しますね!」
〇木造の一人部屋
愛莉「ここが真お兄ちゃんの一人部屋です!」
二階の思ったよりも広い部屋だった。
ここを一人で使っていいだなんて、なんと贅沢な。
凛「素敵なお部屋ですね」
愛莉「真お兄ちゃんは男の子だから、お部屋一つプレゼントです! ただ、凛お姉ちゃんは・・・、その・・・」
愛莉曰く、凛ちゃんの部屋は愛莉と同室になってしまうらしい。
真「凛ちゃん、それでも平気そうか?」
凛「あっ!」
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愛莉ちゃん、とっても可愛いですねー!とっても不思議な同居生活、いや家族生活、これから一体どんなことになるのか楽しみですね。