君と桜の樹の下で

ちぇのあ

安寧の崩壊と怨嗟(脚本)

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〇霧の立ち込める森
  時は少し遡り・・・
樹「王子よ気を確かに持て! お前達は早く退避するんだ!」
樹「くっ、許せ・・・ 俺にはお前を救う力が無かった」
  血に伏す王子であった骸を一瞥する
  奇襲する魔物からの殿を務め、自身も逃げ延びるのだった

〇山中のレストラン
  ここは自然信仰の桜の樹の国のとあるツリーハウスのお店
  青年は祖父の家業を継ぎ樹の雑貨や魔導具を販売する
  最近の懸念は開発と近代化により自然が淘汰されつつある事ぐらいだ
優樹「お爺ちゃんが王国に召し抱えられて独りで家業も冒険もこなすのは大変だけど、桜花のお陰で順調だよ」
桜花 「役に立てて良かった♪」
桜花 「ねぇねぇお願いあるんだけど、今度一緒に桜の樹のふもとまで行こっ?」
優樹「そうだね、お店をお休みして一緒に行こうか! 久しぶりの冒険を抜きにして二人で楽しもう~」
桜花 「二人きり・・・(で)お休み・・・(ができるお店に行こう!?)えへへ♪」

〇リサイクルショップの中
  そこに鈴の音で来客が来る、随分早い駆け足だ
優樹「あれは剣姫!? どうしてここに」
桜花 「只の来店じゃない、帯刀までして物騒だね」
守姫「樹の家の者に告ぐ! お前の祖父は王族殺害の嫌疑により死刑に処した!」
守姫「本来ならこの店も即刻取り壊しだがこれまでの功績により恩赦を与える 王の深い慈悲に感謝せよ以上!」
  嵐の如く去る彼女と護衛兵達
  何が起きたのか暫く理解できない
  桜花の悲しい顔で現実感と共に負の情念が沸々と込み上げる
優樹「ふざけるな自然破壊だけじゃ飽き足らず、僕よりも長く多く貢献したお爺ちゃんを、絶対に許さない!」

〇美しい草原
誠「心中お察し致します。」
  駆け足で店を出た僕に申し訳無さそうに振り返る護衛兵。慌てて阻止する桜花。
桜花 「だめだよ! 不敬罪で優樹くんまで死んじゃう!」
優樹「こんな横暴が許されてたまるか、おまえら絶対に殺してやる!」
  ふと見せた悲しい表情は琉姫の本意で処したものでは無い事を伺わせるが怨根に囚われた優樹には届かない。
守姫「これまでのおまえの祖父の功績に免じて不敬罪には問わないでやる。 この国が嫌ならさっさと去れば良い。」
  二人の女に助けられて情けないやつだと悪態を突く護衛兵に怨嗟の声を上げる。
誠「これ、馬鹿者!」
  遠くに若い兵士をたしなめる声を余所に、唯一の親族を失い僕の彷徨う情念はすぐに溢れ出す。
  美しい桜の花びらが散る中で、悲しい慟哭が辺りに木霊する。
  桜花はその間もずっと傍に寄り添う。

〇リサイクルショップの中
桜花 「あれからずっとご飯も食べてないけど大丈夫?」
優樹「絶対に許さない」
桜花 「もう、いくら恨んでもお爺ちゃんは帰って来ないんだよ?」
  いつもは彼女に振り回されているぐらいなのに、今日は気を遣わせてしまっている
  悲しい表情の桜花に申し訳無い気持ちもあるが、この復讐は誰にも譲る気も諦める気も無い
桜花 「今日はぐっすり寝て、明日はあたしと一緒に桜の樹のふもとに遊びに行って気分変えようね?」
  曖昧な返事をするも、健気に誘い続ける彼女に僕が折れる形となった
  手を振り少し歩いてはこちらを振り返る彼女を見守りつつ、僕は桜花には秘密裏に復讐の計画を進行し始めるのだった

〇美しい草原
  ?誰かがこちらへ歩いて来て片手に大剣をぶらさげている、護衛兵?静かに店先まで歩みを進める
誠「これは優樹様、この度は誠に悲しゅうございましたなぁ」
優樹「こんな夜更けに何のようだ、見舞いにしては時間が可笑しい上にまるで礼儀もなっていない」
誠「はて、可笑しいのは貴公の祖父様です 私は直接手は下しておりませぬ」
  怒りが沸いた次に、大剣には鮮血が滴り事態の異様さを察知する
誠「あぁ、魔族の間者に応じて待ち伏せ場所に誘い込んだのも私、就寝中に度々魔物を陽動し疲弊させたのも私」
誠「王子の精神操作耐性を下げる劇薬を旅の食事に毎日盛り続けたのもこの私で御座います」
優樹「は・・・!?」
  開いた口が塞がらない、こいつは何を言っているんだ
誠「剣姫も帰り誰も見ていない、通りかかった一軒で暴れて身代わりも確保した、今起きるのは王族殺しの孫に業を煮やした民の所業だ」
優樹「うわ、ああああ!」

〇荒廃した教室
  店の品を斬りつけ破壊する暴君に為す術が無い
誠「剣だけが取り柄のお姫様がなぁ、おまえを見守るようこの俺に監視の任を課しやがった!」
誠「担当は明日からだから今日殺してやっても良いが、おまえが死ねば俺の出世に響く!」
誠「次期王の王子を始末した次は、おまえの店をぶっ壊して犯人も捕まえて、あの小娘も他国に売り渡して昇進祝いの酒代にしてやる!」
優樹「そんなことがまかり通るわけ!?桜花を!?」
  追い詰められ地に伏し背中を足蹴にされ大剣を突き付けられる。先程復讐を誓ったはずなのになんて無力なんだ!
誠「先刻貴殿を慰めてた小娘を拐う機会があったが俺が他国の奴隷商に売り渡さなかったのはあらぬ疑いのかかる可能性を排除する為」
誠「安心しろ、あの小娘は元部下の山賊共に丁重に保護しろと命じた。無事に帰れていると良いなぁ?」
誠「なんだその顔は、そうか言いそびれてたな」
  切り傷が増え出血が増しまともに身動きできないが必死に抵抗し睨み付ける
誠「次期王である俺の恩赦により処刑を免除し、露店商に堕ちる事を許可する!慈悲深い俺に感謝せよ!」

〇山中のレストラン
  蹴り飛ばされ仰向けに見える祖父の店は、火が放たれ僕の気持ちと同調するように崩落し焼け落ちる
優樹「お爺ちゃん、桜花!」
  僕の意識は深い闇の中へ堕ちていった

次のエピソード:深い底への連行と消えぬ激情を抱いて

コメント

  • 大事な人が殺されてしまったら、こんな気持ちにもなってしまいますよね。なんだかすごく切なかったですが、人間って誰しも復習や逆襲をしたいって思う気持ちはあるんじゃないかなあと思いました。

  • 切ないような悲しいような気持ちになりました。復讐の気持ちはわかりますが、他に何か方法がないかなとか自分の中で考えながら読ませて頂きました。

  • 気持ちはわかるのですが、今の段階で復讐は無理ですよね…。
    今後どうなっていくのか、関心があります。
    出来ればあの二人に救いがあれば…と思ってしまいます。

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