友人を失った男子高校生の話(脚本)
〇田舎町の駅舎
※7月8日時点にて、やや不適切な表現が
ありますが、作成した6月30日時点の
表現に則り敢えてそのままにしております
※不快に感じられる方もいらっしゃるかと
思います。お手数ですが戻るボタンにて
戻るようよろしくお願い申し上げます。
「君たち」
「顔色が優れないようですが・・・」
「大丈夫ですか?」
「・・・」
「急に話しかけられても困りますよね・・・」
「僕は流し屋というものです」
「君たちさえよければ、そのつっかえを吐き出していきませんか?」
「・・・」
古賀 利仁(こが りひと)「・・・どうする?」
仁科 健志(にしな たけし)「・・・」
古賀 利仁(こが りひと)「帰るか?」
仁科 健志(にしな たけし)「いや、ちょっとだけ・・・」
古賀 利仁(こが りひと)「・・・分かった」
「立ち話もなんですから、どうぞ・・・」
仁科 健志(にしな たけし)「ありがとうございます」
古賀 利仁(こが りひと)「あざす」
仁科 健志(にしな たけし)「すみません」
古賀 利仁(こが りひと)「何から話せば良いのか」
「もしも抵抗がなければ、お名前を教えてもらえますか?」
「あだなでも構いません」
「呼ぶ時に困ってしまうので・・・」
仁科 健志(にしな たけし)「仁科です」
古賀 利仁(こが りひと)「・・・古賀」
「ありがとうございます」
「仁科くんは、こんなに暑いのに正装だなんて凄いですね」
古賀 利仁(こが りひと)「友人のお通夜だったんで・・・」
古賀 利仁(こが りひと)「・・・」
古賀 利仁(こが りひと)「凄く良い奴だったのに・・・」
古賀 利仁(こが りひと)「っなんで・・・」
仁科 健志(にしな たけし)「やめろよ、古賀・・・」
「大丈夫」
「僕以外、誰も見てません」
「声を上げて泣いても大丈夫です」
「・・・」
「声を上げて泣いてはいけないと言われた所以はですね」
「戦時中、敵兵に見つかると殺されると日本人が信じ込んでいたからです」
「男が男らしくならなければいけなかったのは、」
「戦国時代から男性は戦に出るもの、女性は嫁ぐものとして役割を分けたからです」
「時代は移ろいます」
「この平和過ぎる日本では、どちらも当てはまらないでしょう」
「泣いてあげてください」
「その方がきっと、君たちの友人にも届く」
古賀 利仁(こが りひと)「俺は・・・」
古賀 利仁(こが りひと)「悔しい!!」
「はい」
古賀 利仁(こが りひと)「絶対、アイツはもっと生きるべきだったんだ!!」
「はい」
仁科 健志(にしな たけし)「そうだよ」
仁科 健志(にしな たけし)「頭も良くて、気が利いて、」
仁科 健志(にしな たけし)「毎日、自分の命と向き合ってたもんな」
「そうなんですね」
古賀 利仁(こが りひと)「母親を早くに亡くして、」
古賀 利仁(こが りひと)「クソみたいな親父と一緒に住んでて」
古賀 利仁(こが りひと)「その所為で・・・」
「・・・」
仁科 健志(にしな たけし)「今日のお通夜も母方の祖父母の家で執り行われたんです」
古賀 利仁(こが りひと)「実の子どもの通夜や葬式も出来ないのなら、なんで最初から産んだんだよ!!」
古賀 利仁(こが りひと)「てめぇらの都合で育てんなよ!!」
古賀 利仁(こが りひと)「俺たちはおもちゃじゃねぇんだよ!!」
古賀 利仁(こが りひと)「・・・」
古賀 利仁(こが りひと)「・・・そう、叫んでやりたかった」
「そうでしょうね」
仁科 健志(にしな たけし)「西藤のお父さんは、いわゆるネグレクトって奴で、」
仁科 健志(にしな たけし)「アイツは幼稚園の時から毎日カップ麺ばかり食べて育ったんです」
仁科 健志(にしな たけし)「その所為か、脂質異常症になってしまって・・・」
仁科 健志(にしな たけし)「特段太ってるわけでもないのに、ですよ?」
「恐ろしい話ですね」
古賀 利仁(こが りひと)「アイツが体育で倒れた時、」
古賀 利仁(こが りひと)「終わったな、って思いました」
古賀 利仁(こが りひと)「顔面が真っ青で」
古賀 利仁(こが りひと)「呼吸が浅くて」
古賀 利仁(こが りひと)「手を持ち上げても鉛みたいに重くて」
古賀 利仁(こが りひと)「冷たくて」
古賀 利仁(こが りひと)「あぁ、西藤が・・・」
古賀 利仁(こが りひと)「死んじゃうって」
「・・・」
仁科 健志(にしな たけし)「俺たち、先生に無理言って、救急車に乗せてもらったんです」
仁科 健志(にしな たけし)「もう二度と会えなくなるような気がして」
古賀 利仁(こが りひと)「救急車から降りようとした途端、お医者さんが」
古賀 利仁(こが りひと)「一刻を争うから下がって!」
古賀 利仁(こが りひと)「って叫んで、俺たちが降りるのを制したんですよ」
仁科 健志(にしな たけし)「あぁ、ドラマだけじゃなかったんだって」
仁科 健志(にしな たけし)「本当にこの人たちは真剣に戦ってるんだって」
仁科 健志(にしな たけし)「医者に文句垂れる人が居るのを見たりもするけど」
仁科 健志(にしな たけし)「俺達は無意識に頭を下げてました」
「・・・」
古賀 利仁(こが りひと)「神様なんか信じてなかったですけど、」
古賀 利仁(こが りひと)「無意識に祈ってたんです」
古賀 利仁(こが りひと)「”どうか、西藤を助けてください”」
古賀 利仁(こが りひと)「頭の中がそればっかりで」
「そうでしたか」
仁科 健志(にしな たけし)「一時的に一命は取り留めましたけど、」
「・・・」
仁科 健志(にしな たけし)「今朝までが限界だったみたいです・・・」
古賀 利仁(こが りひと)「親さえ選べてたら」
古賀 利仁(こが りひと)「こんな事にはならずに済んだのに・・・」
「本当ですね」
「・・・」
「でも、どんなに非道な親だったとしても」
「その人の遺伝子があってこそ、彼が生まれたので」
古賀 利仁(こが りひと)「・・・」
「いつも頭を悩まされます」
仁科 健志(にしな たけし)「俺もそう思います」
「・・・」
「こんな話は、古賀くんには特に」
「聞き苦しい話かも知れませんが、」
「人生というのは、理不尽の連続だと思うんです」
「・・・」
「勝手に産み落とされて」
「好きでもない勉強をさせられて」
「やりたくもない仕事をやらされて」
「好きだった彼女はいつの間にか自分を邪険に扱うし」
「手塩にかけて育てた子どもたちには”死ね”だの”ウザい”だの」
「罵られる日々・・・」
「・・・」
「本当に死んでやろうかとも思うけれど、」
「いざその一歩は踏み出せない」
「特に君たちは、」
「その友人を知っている分、」
「一歩を踏み出してはならないと思います」
「・・・」
「何故、生きるのか?」
「これは僕たちの永遠の課題だと思います」
「古賀くんがクズだと罵る西藤くんの父親も」
「生きていてはいけない法律なんてありません」
「死ななければならないという法律もありません」
「だから葛藤し、悩み生きていくべきだと僕は思うんです」
仁科 健志(にしな たけし)「どうしてですか?」
仁科 健志(にしな たけし)「上手く繋がらないんですが?」
「かっこいい生き方をしている人が増えた方が」
「かっこ悪い人は肩身が狭いでしょう?」
仁科 健志(にしな たけし)「なるほど」
仁科 健志(にしな たけし)「今の喫煙者みたいなもんですね」
「そうです」
「無言の圧力という奴ですね」
「古賀くんが納得出来ないのも分かります」
古賀 利仁(こが りひと)「・・・」
「理不尽を耐えるメリットなんてないですもんね」
古賀 利仁(こが りひと)「・・・はい」
「古賀くんには、とっておきの良いことを教えてあげましょう」
「恋を、してください」
古賀 利仁(こが りひと)「はぁ!?」
「馬鹿馬鹿しいと思うでしょう」
「けれど、恋をすれば、どんな馬鹿なことでも出来てしまうんです」
「他人を見下せるように上に立つのではなく」
「敢えて、同じ目線・・・」
「いや、それよりも下の立場に立ってあげる」
「すると、どうしたことか・・・」
「あんなに理不尽だった世界が薔薇色になるんです」
古賀 利仁(こが りひと)「怪しい宗教勧誘みたいですよ?」
「本当ですか?」
「今度から流し屋を改め、恋の伝道師に変えましょうか?」
古賀 利仁(こが りひと)「益々怪しいっす」
仁科 健志(にしな たけし)「流し屋さん、ギャップが凄いですね」
「一応、結婚してますからねぇ」
「まぁ、何はともあれ」
「少し気分は落ち着きましたか?」
「はい」
「それは良かったです」
仁科 健志(にしな たけし)「え、えっと」
「株主優待券で大量に手に入るんです」
「僕と妻では飲み切れないので、こうして無料で配っているんです」
仁科 健志(にしな たけし)「そうなんですね」
古賀 利仁(こが りひと)「あざす」
仁科 健志(にしな たけし)「僕もありがたくいただきます」
「それでは、気を付けてお帰りください」
仁科 健志(にしな たけし)「流し屋さん」
「はい?」
仁科 健志(にしな たけし)「また来ても良いですか?」
「もちろんですよ」
古賀 利仁(こが りひと)「俺も・・・」
古賀 利仁(こが りひと)「たまに来ます」
「恋バナ、楽しみにしてますね」
古賀 利仁(こが りひと)「絶対しねー」
「おや、残念です」
仁科 健志(にしな たけし)「俺も聞きたいのにー」
「冗談はさておき、もう遅い」
「また、いつでもいらしてください」
古賀 利仁(こが りひと)「うっす」
仁科 健志(にしな たけし)「それじゃあ」
「・・・」
やはり気軽に読んで良い作品ではなかった。
実際に医療の現場にいるからでしょうか、途轍もなく重いです。重厚、といった方が適切か。薄っぺらい漫画やアニメが多い中で(私も反省せにゃいかん)、これ程までに『命』をリアルに書ける作家さんもいないと思います。
あとがきに手抜きとありますが、キャラクターを大事に扱っているんだな、と感じました。尊敬します。