1カンデラ × =

きせき

エピソード14-玄色の刻-(脚本)

1カンデラ × =

きせき

今すぐ読む

1カンデラ × =
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇屋敷の書斎
玄人「えーと、失礼しました。あまり重要なメッセージではなかったです」
黒野すみれ「い、いえ・・・・・・じゃあ、他の部屋に行きましょうか」
玄人「はい。あ、あの、失礼ついで・・・・・・という訳ではないのですが、」
玄人「トイレに行ってきてよろしいでしょうか?」
黒野すみれ「え、と、トイレですか。あ、はい。どうそ」
  私は突然の彼の問いに答える。
  すると、玄人さんはうろうろとしだした。
玄人「あ、でも、やっぱり、やめておきます。ここは春刻様のお宅ですし、」
玄人「青刻様のご友人のものをトイレに持ち込む訳にはいかないですしね」
  そう言うと、玄人さんはトイレに行くのを諦めるが、
  青刻さんのご友人はともかく、
  春刻は気にしないと思うと、
  私は玄人さんから箱を預かった。
玄人「え、でも・・・・・・」
黒野すみれ「大丈夫です。その間、隣の畳の部屋も調べられますし、どうぞ行ってきてください」
黒野すみれ「あ、そっちの荷物も置いていって良いですよ」
黒野すみれ「部屋を調べながらになりますが、私、見てますし」
玄人「ありがとうございます。すぐに戻ってきます」
黒野すみれ「・・・・・・」
  紙袋と箱を私に託し、その場を立ち去る玄人さん。

〇畳敷きの大広間
  私は畳の広がる大広場に入り、部屋を調べていると、
  部屋に似つかわしくない機械音が聞こえてくる。
黒野すみれ「何、この音?」
  どんどん大きくなる音。この音は時計のような音で、
  私は玄人さんから受け取り、持っていた箱を見る。
  チッ、チッ、チッ・・・・・・。
黒野すみれ「(どうしよう、これ、勝手に開ける訳にもいかないしな・・・・・・)」
  箱を開けるか、開けないか。
  私が暫く迷っていると、機械音が止まる。
  そして、その次の瞬間・・・・・・

〇畳敷きの大広間

〇貴族の部屋
黒野すみれ「(なんてこともあったし、あの時もそうだ)」

〇古民家の居間
黒野すみれ「ところで、玄人さんはあの建物って分かりますか?」
玄人「あの建物?」
黒野すみれ「ほら、あの庭にある2階建ての・・・・・・」
  と私は洋間に行く前に言うと、玄人さんは答える。
玄人「ああ、2階建ての・・・・・・詳しくは分からないですが、月見櫓だったと聞いてます」
黒野すみれ「つきみやぐら?」

〇銀閣寺
玄人「ええ、月見櫓というのは城の一角にある四季を楽しむ為に作られた櫓ですね」
玄人「本来の櫓は城が落とされない為に防御したり、武具を収納したり、」
玄人「物見を行ったりするのが目的らしいですが、江戸時代になると、」
玄人「主だった戦がなくなった為、月見をする為に櫓を作る城もあったようです」
玄人「他にも花見櫓や富士見櫓とあるそうで、」
玄人「あの建物もかつては花見櫓と月見櫓とを兼ねて建てられたとか」
玄人「まぁ、桜の方は寿命だったこともあり、何年か前に切られてしまったらしいですけどね」

〇古民家の居間
黒野すみれ「へぇ・・・・・・」
玄人「よろしければ、行ってみますか?」
玄人「きっと春刻様も黒野様にお見せしたかったのではないでしょうか?」

〇銀閣寺
  胡蝶庵の月見櫓。

〇銀閣寺
  間近で見ると、かなり建物は古く見えたが、
  定期的にメンテナンスはしているのか、
  傷んで寂れているという感じではない。
玄人「こちらから入れますので、どうぞ」
  玄人さんはそう勧めてくれると、

〇日本家屋の階段
  私達は真っ暗な階段を上がる。
玄人「すみません、なにぶん、古い建物なので、電気は通ってなくて」
  玄人さんの話によると、ここを蝋燭を登って、
  かつての胡蝶庵の主人は月見や花見を
  楽しんでいたという。
黒野すみれ「(かつての胡蝶庵の主人か・・・・・・)」

〇銀閣寺

〇日本家屋の階段
黒野すみれ「・・・・・・」
玄人「黒野様。もう何段か登ると、2階です。窓を開けますので、お待ちを」
  玄人さんはその言葉通り、窓を開ける。その瞬間、
  窓枠が外れて、私は咄嗟に窓の傍にいた玄人さんを
  庇うように窓から遠ざける。

〇黒
  次に私が気づいた時、私は地面に叩きつけられていた。
玄人「黒野様ーーー!!」

〇貴族の部屋
黒野すみれ「(って、これは私が悪いな。でも、もしも、それも・・・・・・)」

〇黒
  彼の計算の上でのことだったとしたら・・・・・・。

〇貴族の部屋
黒野すみれ「(あの時なんかは分かりやすかったし・・・・・・)」

〇広い厨房
玄人「黒野様。咽喉、渇きません?」
黒野すみれ「え、えぇ・・・・・・」
玄人「それなら、良かった。青刻様から黒野様に飲みものを持っていくよう言われてまして」
  そう言うと、玄人さんは紙袋の中身を取り出すと
  ポットや紙コップが現れ、その紙コップにお茶を淹れる。
玄人「あ、うっかり紙のコップに挿れてしまったけど、春刻様の家には湯呑みがありましたね」
  そんなことを言うと、玄人さんは紙コップに入れた方の
  お茶はそのままに、お客様用の湯呑みと茶托を
  食器棚から取り出す。
黒野すみれ「あ、そんな・・・・・・私、紙コップで良いですよ」
玄人「いえいえ。そのような不作法、明石家の使用人たるもの、できません」
玄人「春刻様のお顔にも青刻様のお顔にも泥を塗ってしまいます」
  玄人さんは力強く言うと、ガラス製の冷茶碗や
  木製の茶托を取り出して、お茶を注ぐ。
  そこまでされると、もう飲まない、という選択肢は
  選びづらくなっていた。
黒野すみれ「(だったら、せめて・・・・・・)」
黒野すみれ「あの、その紙コップのお茶ってどうするんですか?」
玄人「え?」
黒野すみれ「あ、だって、捨てるのは勿体ないなって思って・・・・・・」
  玄人さんが捨てるか、どうかは不明だが、
  そう言われてしまえば、大抵の人間がこう言うと思う。

〇広い厨房
玄人「自分が飲みますよ」

〇広い厨房
黒野すみれ「(・・・・・・と)」
  そして、私はその賭けに勝てたようだった。
玄人「ああ、確かに勿体ないですよね。黒野様」
黒野すみれ「はい・・・・・・」
玄人「私がいただいたこと、内緒にしておいてくださいますか?」
黒野すみれ「ええ、勿論。じゃあ、いただきましょうか・・・・・・」

〇黒
  そこからは、言うまでもなく、私は徐々に何かに
  身体が蝕まれていくように、足が動かなくなり、
  息を吸うことさえままならなくなっていく。

〇畳敷きの大広間
黒野すみれ「うぅっ・・・・・・」
玄人「黒野様!」
黒野すみれ「あっ・・・・・・くっ・・・・・・」
玄人「黒野様、しっかりしてください。黒野様!!」
黒野すみれ「・・・・・・」

〇黒
黒野すみれ「(あなたがどくをいれたの?)」

〇貴族の部屋
リエ「あの、黒野様。胡蝶庵へはいつでも出発できるようにしておりますが」
  それは、胡蝶庵には行かないのか。ということだろう。
  ただ、もう20回程、死にかけている。
  いくら春刻が何回、死にかけても助けると
  言ってくれたとしても、流石に、疲れ果て、
  犯人の決め手になりそうな物証もないままで
  行き詰まっていた。
黒野すみれ「すみません、リエさん。胡蝶庵へは行きたいんですけど、ちょっと今は混乱してて」
  私はリエさんに話を聞いてもらえますか? と聞くと、
  リエさんは、はい、と答えてくれる。
リエ「勿論です。何でも、お聞きしますので、お話しください」
黒野すみれ「ありがとうございます・・・・・・」
黒野すみれ「あの、もしも・・・・・・なんですけど、Aさんが怪しいとして」
黒野すみれ「でも、Aさんにはできなさそうってなったら、リエさんはどう考えますか?」
黒野すみれ「例えば、Aさんと関係の深いA'さんがやった可能性があるとか、」
黒野すみれ「それとも、何らかの方法でAさんがやったんじゃないかとか」
黒野すみれ「色々、考えてみたんですけど、どれも想像の域を出ないというか・・・・・・」
  しかも、私が死にかけるのには
  大きく分けて2種類の理由がある。

〇大きな日本家屋
  1つはあの儀を終えた胡蝶庵に帰る筈だった、
  明石春刻を亡き者にする為に仕掛けられた罠に
  私が引っかかるというものだ。

〇大きな日本家屋

〇大きな日本家屋
  そして、もう1つは胡蝶庵を捜索し出した私を消す為だ。

〇貴族の部屋
黒野すみれ「(毒とか火はもしかしたら、罠かも知れないけど、)」
黒野すみれ「(露天風呂に突き落とされたりしたのもあったな・・・・・・)」
黒野すみれ「(あとは、蔵に閉じ込められたり、庭を見ていた時に刺されたりしたっけ)」
  直接的な殺害ということもあるだろうが、やはり、
  罠など間接的な殺害方法と違って、そこには何かしらの
  意図が語りかけてくるような気さえしてくる。
黒野すみれ「(まぁ、あの家に罠を仕掛けた人間でもない限りは)」
黒野すみれ「(そんなことをする必要はない、気はしてるけど)」
黒野すみれ「(あぁ、でも、もし、主人が仕掛けて、使用人が回収しにくるってことはあるのかな?)」

〇レンガ造りの家

〇大きい研究施設

〇配信部屋

〇貴族の部屋
黒野すみれ「(多分、彼らはしそうだし・・・・・・)」
  信頼関係もあるのだろうが、そもそも主人の失脚は
  即、職を追われることになる。
  それは

〇風流な庭園
  彼女にも

〇黒
  彼にも

〇古民家の居間
  彼にも

〇貴族の部屋
  避けたいことだろうから。

次のエピソード:エピソード15-菫色の刻-

成分キーワード

ページTOPへ