椛と楓(脚本)
〇走る列車
「椛と楓って本当良く似てるよな」
「双子だからね」
「いや、双子にしたって中学生にもなればなんていうかさ、それぞれの個性みたいなのが出て来るじゃん?」
椛「あるよ、個性」
楓「うん」
楓「奥ゆかしいのが私で」
椛「慎ましいのが私」
(それはほとんど同じ意味なんじゃないのか・・・・・・?)
「そもそも、モミジとカエデってどう違うんだ?」
「一緒だよ?双子だし」
(・・・・・・いやそうでなくて、本当のモミジとカエデの違い・・・・・・ややこしいな)
「えーと、モミジもカエデも紅葉する木の事だよな?」
楓「ちょっと違うかな」
椛「カエデはモミジって呼ばれるけど、でもこの場合は紅葉してることを言うことが多いよね」
楓「そうそう。秋の夕日に、照る山紅葉っていう歌詞があるよね」
カエデはモミジって呼ばれる、の時点で僕は混乱していた。
「えーと、よく見かける赤く染まる手のひらみたいな葉っぱをつける木は、どっちなのさ?」
椛「たぶんよくみかけるのはイロハモミジだよね?」
楓「そうそう、たしかカエデ属なんじゃなかったっけ」
椛「でもイロハカエデとも呼ぶんじゃなかった?」
楓「あー、そうかも」
えーと、モミジはカエデ属で、でもカエデとも呼ばれる・・・・・・。
椛と楓がモミジとカエデの話をしている時点でもう駄目だ。聞いた僕が悪かった。
「まあどっちでもいいって事だよな」
「ねえ、そもそも今、私たちがどっちがどっちかって分かってる?」
「いまだにキミは私たちの事間違えるよね」
「・・・・・・別にいいだろ、細かいことを気にするなよ」
(駅のホームに並ぶまで先を歩いていたのが椛だろ、だからボックス席の奥の方に座っているのが椛のはず)
(いや待てよ、電車が来るまで二人は並んで待っていて、右側に立っていたのが楓で、左側に立っていたのが椛だった)
(電車に乗ってから僕らは右側のボックス席に座ったから、奥に座っているのが楓なのか?)
普段ならブレザーの胸元に名札を付けているからそれを見ればわかるのに、今は二人とも名札を外しているのだ。
ふとさっきの事が思い出されて僕の顔がそれこそ紅葉のように赤くなるのが分かる。
楓(?)「あ、赤くなった」
椛(?)「そう言えばさっきの返事もらってなかったよね」
僕は今日の放課後に突然空き教室に呼び出されて、二人から告白されたのだ。
お互いフェアなように、とよくわからない理屈で二人は名札を外して交代で僕に告白してきた。
ちょっと考えさせて、と言ってそのまま三人で電車に乗りこんだのだけど、まさかこのタイミングで蒸し返されるとは思わなかった。
「で?佐藤君は一体どっちと付き合ってくれるのかな」
どっちでもいいような。それじゃダメなような。
全く同じ表情でくすくすと笑う二人を交互に見つめながら、僕は困惑しながら曖昧な笑みを浮かべるのだった。
モミジとカエデ、確かに混同して言うことが多いですよね。話す側も聞く側もさほど気にしていないですし。でも、本作を読むとモミジもカエデも大事に扱ってあげたくなりますね。
一卵性双生児って、本当に見分けつきませんよね。
声まで似てたりするんで、この二人のように髪型まで同じにされるとわからないですよ!笑
もみじとかえでって、そんなに種類があるんですね。
もみじとかえでの違いについてこんなにじっくり考えたのははじめてです。一卵性双生児だと本当に似てますよね。私も毎週会ってるのに未だ見分けられないふたりがいます。見分けられる人にきいてみたら、メガネの色が違うよって。でもそれってメガネはずしたらやっぱりわからないってことですね。