Dear WORLDs

見張マコト

1. 兄として、百合になる (脚本)

Dear WORLDs

見張マコト

今すぐ読む

Dear WORLDs
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇教室
  兄は妹を守るもの、とは父からの呪縛
  だから俺は野々白家の長男たるべく、
  妹を第一に生きてきた
男「百合ちゃん、俺と付き合ってよ」
  最愛の妹を狙う男が現れたらどうするか?
  もちろんお兄ちゃんとして
  百合の判断を尊重するだけだ
  当然だ、過干渉は良くない
  しかし例外はある
  もしも、”俺が百合だったら”
  過干渉とは呼ばないだろう
野々白 日呂「俺は百合のためならば、 百合になることも厭わない」

〇公園の砂場
  ユリをいじめるなー!!
男の子「痛っ──くないぞ!? 嘘みたいに軽いパンチだぞ!?」
男の子「そよ風みたいなことしやがって!!」
  がっ、学校中の大人という大人に、
  いじわるしたこと吹聴しまくる・・・!!
男の子「くそっ、やっぱ変な奴らだ!!」
野々白 百合「いつもごめんね、ヒロ」
  お兄ちゃんなんだから、当然だよ
野々白 百合「なんでユリはいじめられちゃうのかな?」
  それは!! ユリが、か、可愛いからだよ!!
野々白 百合「あ、圧・・・」

〇シックなリビング
  お母さん、お帰り・・・
野々白 宮「どうしたの、ヒロ!? 傷だらけじゃない!!」
  大丈夫だよ、お母さん
野々白 申吾「そうだ。 兄として生きるなら甘えたことは許さん」

〇サイバー空間
野々白 日呂(いつもそうだった)
野々白 日呂(百合のためなら、 俺はどんなことだって我慢できるんだ)
野々白 日呂(絶対に助けるからな、百合)
???「記憶を同期しているよ」
野々白 日呂(・・・?)
???「自分のこと、思い出せるかな?」
野々白 日呂「たしか、ヒーローみたいな名前?」
???「そう、野々白日呂。20代で無職・・・」
野々白 日呂「悲しい他己紹介」
???「でもそれは 妹の百合ちゃんを助けるため──」
野々白 日呂「百合!?」
???「瞬発力」
野々白 日呂「ここが百合の夢の世界ってことだな?」
???「WORLDs(ワールド・システム)、 のほうがカッコいいよ」
野々白 日呂「キミはWORLDsの案内人ってわけか」
わーぷさん「わーぷさん、のほうが可愛いよ」
野々白 日呂「わーぷさん、なんで百合が WORLDsに閉じ込められているんだ?」
わーぷさん「吸収力。スポンジのCMかと思った」
わーぷさん「百合ちゃんの夢が読み込めなかった」
野々白 日呂「百合!?」
わーぷさん「激ヤバ情緒」
野々白 日呂「とにかく、バグ? エラー? で 夢が始まらないから WORLDsから抜け出せないのか」
わーぷさん「振れ幅。地震かと思った」
野々白 日呂「で、夢を完結させるために 俺は百合のWORLDsに同期したと」
わーぷさん「全部言うね」
野々白 日呂「よぉし、百合の夢を作っていくか!」
わーぷさん「前だけ見てる。香車やってた?」
野々白 日呂「どうすればいいんだ?」
わーぷさん「百合ちゃんと日呂の脳内データを参考に、WORLDsが自動的に 夢の世界観を構築するよ」
わーぷさん「創造された世界で 百合ちゃんの在り方を決めてね」
野々白 日呂「お、俺が百合に なれちゃうってことですよえ!!」
わーぷさん「圧」
わーぷさん「百合ちゃんの願望に沿わない行動は、 夢に認定されずやり直しになると思うよ」
野々白 日呂「お兄ちゃんに任せとけ!!」

〇サイバー空間
わーぷさん「わーぷさんの話、聞いてた?」
野々白 日呂「俺が軟派な男に百合を渡すとでも?」
わーぷさん「ふざけてるとWORLDsは終わらないよ」
野々白 日呂「夢だと認定されなければ 話は終了してこの空間に戻るのか」
わーぷさん「データを取ってたんだ」
野々白 日呂「殴りたくて殴った側面もあるが」
わーぷさん「シンプル罪人」
野々白 日呂「百合はグイグイくる男は苦手なんだ」
野々白 日呂「だからお兄ちゃんとして、 正しい判断で正しい行動だったと思う」
わーぷさん「いい話・・・?」
野々白 日呂「殴った拳が痛むんだ。 痛いというのは、正しさなんだ。 つまり俺は正しいんだ」
わーぷさん「暴君式クソ三段論法」
野々白 日呂「次から気を付けるさ。 手が出そうになったら止めてくれよ」
わーぷさん「わーぷさんは干渉できないよ」
野々白 日呂「・・・謎の存在だな、わーぷさん」

〇まっすぐの廊下
野々白 日呂「さっきと同じ場面じゃないのか」
わーぷさん「願望の根幹は変わらないけどね」
野々白 日呂「学園生活の夢って、 夢が無いような気もするが」
野々白 日呂「学園生活を謳歌すればいいのか?」

〇教室
野々白 日呂「えっ?」
野々白 日呂(黒板消し? 頭に?  何この古典的学園生活?)
女子生徒「ちょっと~、 野々白の髪汚れちゃったじゃん」
女子生徒「こっちおいで、 あたしたちが洗ってあげるから」
野々白 日呂(百合はWORLDsに何を求めているんだ?)

〇女子トイレ
女子生徒「ほら、こっちおいでよ」
野々白 日呂「いや、そっちは」
野々白 日呂(和式トイレ・・・)
女子生徒「グズグズするなって!!」
野々白 日呂(痛っ、髪の毛──)
女子生徒「ちゃんと綺麗になるまで洗ってあげるから」
野々白 日呂(なんでこんな夢を見てるんだよ、百合!!)
女子生徒「その被害者ヅラやめろよ、気持ち悪い」
野々白 日呂「百合が気持ち悪いワケないだろ」
野々白 日呂「わーぷさん、これはバグなのか?」
わーぷさん「エラーは確認できない。 WORLDsは正常に作動しているよ」
野々白 日呂「嫌な奴をボコボコにしたいとか そういう願望が反映された──」
わーぷさん「夢が終了するよ」
野々白 日呂「──ッ!?」

〇サイバー空間
野々白 日呂「夢と認定されなかったのか」
わーぷさん「日呂くんの行動が、百合ちゃんの 願望の範囲外だったみたいだね」
野々白 日呂「何をするべきだったんだ? あれじゃまるで・・・」
野々白 日呂(いじめられることを 望んでいるみたいじゃないか)
野々白 日呂「そもそも夢を判断しているのは誰なんだ? わーぷさんじゃないのか?」
わーぷさん「以前はわーぷさんがやってたよ。 今はどうなっているかわからないかな」
野々白 日呂(もしも百合が夢の判断をしているなら)
野々白 日呂「百合は自分の意思でWORLDsに 閉じこもっていることにならないか?」
わーぷさん「その場合はWORLDsに残りたいという 願望が反映された夢を見るはずだよ」
野々白 日呂「確かに、俺の記憶では百合が 閉じ込められて──!?」
野々白 日呂(俺の記憶?)

〇サイバー空間
わーぷさん「記憶を同期しているよ」

〇サイバー空間
野々白 日呂(わーぷさんの存在が謎すぎる以上、 俺の記憶は信用できないな)
野々白 日呂(よく考える必要があるな。 何を信じてどう行動するか)
わーぷさん「・・・」
わーぷさん「紅茶って一気飲みすると 車酔いしたときの感覚になるよね」
野々白 日呂(わーぷさんの立ち位置が決まらないと 次の行動を考えるのは難しいな)
わーぷさん「・・・」
わーぷさん「高速道路のガードレール上に 脳内で忍者を走らせる遊びって まだ流行ってるのかな?」
野々白 日呂(ひとまずは味方ということにしておこう。 でないと何も進まない)
わーぷさん「・・・」
わーぷさん「カラーテレビの普及に伴い 世界に色が発生したのか、 まず色がありカラーテレビが追随したのか」
わーぷさん「今となっては誰も知る由がないよね」
野々白 日呂「別にわーぷさんと二人きりが気まずくて 黙ってるわけじゃないから 無理に喋らなくてもいいぞ・・・」
わーぷさん「ホッ・・・」
野々白 日呂(こんな話題のチョイス終わってる奴が 敵だったら、俺にできることは何もない)
野々白 日呂(わーぷさんを味方と仮定して、 誰が夢を判断しているかを考えよう)
野々白 日呂(百合の可能性は薄い。というか その場合、俺がここにいる意味がない)
野々白 日呂(システムのバグだった場合は、 俺にできることの範疇を超えているから 考えるだけ無駄だ)
野々白 日呂(現実世界の人間による介入? WORLDシステムそのものによる妨害?)
野々白 日呂(俺の観測者がいて、 何らかのデータを集めているのか?)
わーぷさん「夢が始まるよ」

〇公園の砂場
野々白 日呂「今度は学園でもないのか」
わーぷさん「願望の根幹は変わらないけどね」
わーぷさん「百合ちゃんの在り方は決めた?」
野々白 日呂「ばっちりだ」
男の子「の、ののしろじゃん!!」
男の子「あいかわらず、その・・・ブスだなー!!」
野々白 日呂(百合の願望についてはわからないが、 この瞬間を観測している奴がいる)
野々白 日呂(夢と認定されなかったのは、 俺の行動に不満があったのか。 あるいは複数回の測定が必要なのか)
野々白 日呂(なんであろうと、俺がすべき行動は──)
わーぷさん「え?」
野々白 日呂「百合のお兄ちゃんとして 妹を守る行動をし続ける!!」
野々白 日呂(百合を守ることが第一だ。 たとえ夢の中でも、夢と認められなくても)
わーぷさん「何も変えないんだね」
野々白 日呂「おい観測者!! 根競べになるぞ。 俺は絶対に自分の行動を変えないからな!!」
わーぷさん「夢が終了するよ」
野々白 日呂「上等だ!!」

〇サイバー空間
野々白 日呂「・・・もしかして」
野々白 日呂「無策と変わらないのか?」
わーぷさん「パワー系だね」
野々白 日呂「早く百合に逢いたい!!」

〇公園の砂場

〇電脳空間
野々白 百合「まただ・・・」
WORLDシステム「WORLDsが終了しました。 現実世界へ帰りますか?」
野々白 百合「帰らないよ!! もうっ、バグりまくりじゃん!!」
WORLDシステム「WORLDsを続行します。 データを読み込んでいます・・・」
WORLDシステム「データを読み込めませんでした。 代替プログラムを起動します」
野々白 百合「始まってもいないのに終わろうとするし、 モニターで映像を見るだけだしっ!!」
野々白 百合「それに」
WORLDシステム「同期完了。 WORLDsを展開します」

〇教室
野々白 日呂「兄たるべき暴力!!」

〇電脳空間
野々白 百合「私が変なことばっかりするし!!」
WORLDシステム「WORLDsが終了しま──」
野々白 百合「帰らない。 全然、私の夢じゃないよ」
野々白 百合「意味わからないよ・・・」
野々白 百合「だって」
  私にお兄ちゃんはいない
  モニターに映ってるあの男の人は
  誰なの?

次のエピソード:2. 無職青年の事件簿(前編)

コメント

  • バリバリシスコンお兄ちゃんかと思いきや、まさかの!!!!!

    わーぷさんの独特な台詞と不思議キャラ要素も堪りません🤤
    続きが気になり過ぎるので、お手隙の際に是非とも更新していただきたいです🙇‍♀️

  • キャラクターの個性強っ!!セリフ回しも独特。すごい。面白かったです!!

  • わーぷさん、とっても可愛いですね…言葉選びのセンスたるや…😂兄じゃないって最後のヒキでびっくりしました…誰なんだこの執着してる人は…続きが気になります…🙄

コメントをもっと見る(7件)

ページTOPへ