2. 無職青年の事件簿(前編)(脚本)
〇まっすぐの廊下
野々白 日呂「兄、それは時として暴力の権化ッ!!」
わーぷさん「夢が終了するよ」
野々白 日呂「──ッ!?」
〇電脳空間
野々白 百合「「──ッ!?」じゃないよ!! どれだけ暴れれば気が済むの!!」
WORLDシステム「WORLDsが終了しま──」
野々白 百合「続行っ!!」
野々白 百合「これで何回目なのよ・・・」
野々白 百合(こんなことしてる場合じゃないのに)
WORLDシステム「WORLDsを続行します。 データを読み込んでいます・・・」
野々白 百合(けど、WORLDsで私自身が 行動できるわけじゃない・・・)
WORLDシステム「データを読み込めませんでした。 代替プログラムを起動します」
野々白 百合(あの男の人を知ることで 何かわかるのかもしれない・・・)
〇公園の砂場
野々白 日呂「おい観測者!! 根競べになるぞ。 俺は絶対に自分の行動を変えないからな!!」
〇電脳空間
野々白 百合(きっとあの人は邪魔をし続ける)
野々白 百合(怖いけど、あの人を受け入れよう。 いつまで経っても夢が進まないから)
WORLDシステム「同期完了。 WORLDsを展開します」
野々白 百合(ムカつくし、キモいけどっ!!)
〇教室
教師「皆、落ち着いて聞いてくれ。 この中に女子の体操服を盗んだ 人の心を持たないカス野郎がいる!!」
野々白 日呂「超展開」
教師「先生は野々白が怪しいと睨んでいる」
野々白 日呂「ノルマ達成だな」
教師「は、犯人捜しは君たちに任せる」
野々白 日呂「夢が終わらないのか!?」
わーぷさん「流れが変わったね」
野々白 日呂「よしっ、今回で決めてやるぞ!!」
〇教室
筋肉系の男「犯人捜しも何も、 野々白以外に怪しいやつが このクラスにいるわけねぇぜ!!」
脂肪系の男「まあまあ、そうカッカしなさんな。 一応、野々白の言い分を聞こうじゃないか」
野々白 日呂「あいかわらず悲しい世界ではあるんだな」
わーぷさん「願望の根幹は変わらないからね」
野々白 日呂「殴ってわからせたいけど 初めて会話ができそうだし、 口撃でわからせてやるか」
わーぷさん「殴らなければ会話できたシーンは そこそこあったと思うよ」
野々白 日呂「ははは」
わーぷさん「すごい流す。技巧派の左バッター?」
脂肪系の男「どうだね、野々白クン。 何か弁明はあるかい?」
わーぷさん「どうするの?」
野々白 日呂「百合は女の子(すごくかわいい)なんだ。 女子の体操服を盗む道理が無い」
野々白 日呂「それにこれは夢だから、 ”それらしさ”があればいいんだ」
野々白 日呂「つまり舌先三寸で適当こいて 罪人をでっちあげる」
野々白 日呂「口答えする奴は殴ればいい。 殴れば大体、黙るからな」
わーぷさん「地獄出身?」
筋肉系の男「どうした? やっぱり犯人なのか!?」
野々白 日呂「そうだな・・・」
野々白 日呂(筋肉系な見た目だから 小難しい話をすれば何とかなるだろ)
わーぷさん「筋肉系な見た目だから 小難しい話をすれば何とかなりそうだね」
野々白 日呂(シリアスな雰囲気を作って、と)
野々白 日呂「かの有名な哲学者G.E.ムーアは 『外界の証明』という論文で 懐疑論から常識的知識の擁護を試みた」
野々白 日呂「ムーアは『ここにひとつの手がある』 という命題を挙げている」
野々白 日呂「彼は始めに右手を挙げて「ここにひとつの手がある」と言い、次いで左手を挙げ 「ここにもうひとつの手がある」と言った」
野々白 日呂「これで外界の事物が存在することを 証明できたと主張したんだ」
筋肉系の男「おい、ちょっと待て」
筋肉系の男「さっきから 何ワケわかんねぇこと言ってんだ!!」
野々白 日呂(くそっ、さすがに唐突過ぎたか?)
筋肉系の男「懐疑論者にとっては そもそもが非認知的で、 論ずる以前の問題じゃねぇか」
筋肉系の男「懐疑論者は人間の認識力を不確実なものとしているため客観的・普遍的心理の 認識の可能性を疑っているんだから」
筋肉系の男「「ここに手がある」ことの証明より前に、 まずは「挙げたものが手である」ことを 証明する必要があるだろ!」
野々白 日呂(こいつ・・・!!)
野々白 日呂(知識はあるけど頭は良くないな!!)
わーぷさん「会話が苦手なら わーぷさんが教えてあげようか?」
野々白 日呂「わーぷさんも割と絶望的だよ・・・」
わーぷさん「あちゃー」
野々白 日呂(意外と話したがりなんだよな、わーぷさん)
野々白 日呂(切り替え切り替え)
野々白 日呂「これは前提として、俺たちが認識している 日常的知識と、それらに対する疑いの どちらが現実的なのかを考えていて、」
野々白 日呂「結果、懐疑論者が立脚する立場に乗らず、 日常的知識を疑わないとしたんだ」
野々白 日呂「すなわち「外界の事物はただの知覚を 通じてのみ認識できるものであり 確実に知りようがない」 という懐疑論に与することなく」
野々白 日呂「「ここにひとつの手がある」 という常識は確実であると 主張することから議論を始めているワケだ」
筋肉系の男「くっ、なるほどな・・・ッ!!」
わーぷさん「屁理屈じみてるけどね」
野々白 日呂「この論について、かの有名な ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインも 賛成しているぞ」
野々白 日呂「彼の著した『確実性の問題』でも記されていて、「蝶番命題」は知ってるか?」
わーぷさん「わーぷさんは知ってる。 筋肉系の人は知ってるかな?」
野々白 日呂(無理やり会話に入ってきてる・・・)
筋肉系の男「俺たちが立てる問いと疑いは 幾つかの命題が 疑いから除外されることによって、」
筋肉系の男「問いや疑いについての 言語ゲームが成立する、って奴だろ」
わーぷさん「思いのほかスラスラと」
野々白 日呂「そう。全ての事物を疑ってしまうと 論ずる際に理由となる 拠り所が無くなるからな」
野々白 日呂「今回の体操服窃盗の件だが、 ムーアとウィトゲンシュタインの論理から 紐解くと答えは自ずと見えて来る」
野々白 日呂「女の体操服を盗むという行為の現実性から 「百合を疑う」というお前らが立脚する 立場に乗らない前提が成り立ち、」
野々白 日呂「体操服を盗んだのは誰かという疑いの扉、 この扉を開けるための蝶番は──」
野々白 日呂「このクラスの中に犯人がいる、 ということじゃないか?」
筋肉系の男「くっ──!?」
わーぷさん「・・・」
わーぷさん「冷静に考えてガチャガチャな論理展開」
野々白 日呂「何か反論はあるか? 無いなら俺の勝ち。 百合は無罪だ・・・!!」
わーぷさん「口、回りすぎじゃない? ベイブレ○ド咥えてる?」
野々白 日呂「喧嘩が弱かった頃に まず口撃を鍛えたからな」
野々白 日呂「でも不思議だ。 こんな哲学? を勉強した覚えがない。 WORLDsの影響なのか?」
脂肪系の男「ワタシは納得していないよ、野々白クン」
野々白 日呂「次はこいつか・・・」
わーぷさん「ターン制なの?」
〇教室
〇電脳空間
野々白 百合「ここにひとつの手がある・・・」
〇シックなリビング
野々白 百合「お母さんの言ってること、難しいよ」
野々白 宮「百合はわからなくていいのよ」
野々白 宮「『ここにひとつの手がある』」
野々白 宮「これはね、ママにとっての希望なの」
野々白 宮「もしも限りなく知覚に迫った時、 疑う必要はなくなるのよ・・・」
野々白 百合「お母さん?」
野々白 宮「・・・おやつでも食べよっか。 食べる人、手を挙げて~?」
野々白 百合「はーい! ここにユリの手がありますっ!」
野々白 宮「さすがの吸収力。 親の教育が良いのかしら」
〇電脳空間
野々白 百合(WORLDsが読み取った 私の願望が何なのかわからないけど、)
野々白 百合(やっぱりこれは私の夢なんだ)
野々白 百合(この先に 私の知りたいことがあるのかな?)
一方で、知りたくないことが
暴かれるような予感がある
それはぼんやりとした結末
後悔の、予感
怒涛の展開に、必死で食らいついておりました・・・ワードセンス高すぎ!
わーぷさん、キレキレのキレッキレのツッコミ、流石です😂「体操服盗んだの誰?」から哲学?展開で初動脳内混乱しましたが、わーぷさんの導きで何となく理解出来た感じになって楽しくなってタップが進む進む…面白いです!次回も楽しみにしてます!🤣
体操服窃盗からまさかの知的哲学口撃バトル🤣
唐突な哲学議論…と思わせつつ、百合の母との思い出に通じる所があるようで重大な伏線なのか…🤔気になる展開です!