恋の神様は襟足が長い

サカミキ

第十話 近くて遠い(脚本)

恋の神様は襟足が長い

サカミキ

今すぐ読む

恋の神様は襟足が長い
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇一人部屋
夕凪「そーちゃん何はりあってんの」
奏羽「嬉しいくせに」
夕凪「まあね 『俺の事で争はないでー』みたいな」
奏羽「なんだよ、そのモテ男発言」
夕凪「実際モテたし」
奏羽「ちっ」
  思わず舌打ちする奏羽。
夕凪「でもさ、俺がいいのって見た目だけでしょ」
奏羽「何だそれ、嫌味かよ?」
夕凪「違くて・・・ 実際、勉強も運動もそーちゃんの方が出来たじゃん、」
奏羽「っても、どんぐりだろ」
夕凪「俺、コミュ障だし・・・ そーちゃんがいてくれなかったら・・・」
奏羽「俺が好きでくっついてただけ」
夕凪「誰かと付き合ってもさ『つまんない』とか『思ってたのと違う』って言われちゃうし」
奏羽「わかってないな、そのギャップがいいの! 完璧なヤツなんて可愛げないだろ」
夕凪「ハハッ・・・ フォローになってないし 中身まで見てくれたのは、そーちゃんと空だけだよ」
奏羽「空君は恋敵って言うより同志って感じかな」
夕凪「そーちゃん、かっこいい モテないのが不思議」
奏羽「モテなくないし。モテようとしてないだけだし」
夕凪「じゃ、早く体を取り戻して童貞卒業しないとね」
奏羽「余計なお世話だよ」
夕凪「まさか、このまま魔法使いにでもなるつもり?」
奏羽「うっせー」
夕凪「それはさておき、明日、空とデートしなよ」
奏羽「はぁ? 正気? 俺、生霊だよ」
夕凪「正気な訳ないじゃん。俺は幽霊だよ! 放っとくと空がココに地縛しちゃうから」
奏羽「わかってる? 周りからみたら空君ひとりで喋ってるおかしな人になるんだよ」
夕凪「映画は? 映画なら喋らなくていいし」
奏羽「あっ! 見たいのあった」
夕凪「あのシリーズの完結でしょ?」
奏羽「そうアレ、もうすぐ上映期間終わちゃうんだよな」
夕凪「ちょうどいいじゃん」
奏羽「何が?」
夕凪「空ね、俺には隠してるけど、あの映画の主役大好きなんだよ」
奏羽「へぇー、俺は内容重視だけどな」
夕凪「利害一致! 決まりね!」
奏羽「デートつっても、お前も来るんだろ?」
夕凪「もちろん」
奏羽「暗闇で、霊感の強いヤツに見つかったりしないかな」
夕凪「始まっちゃえば、誰も気にしないでしょ 一番後ろの席にすれば大丈夫じゃない」
奏羽「はぁー テキトーだな」

〇整頓された部屋(ハット、靴無し)
奏羽「今日、予定ある?」
空「別にないけど」
奏羽「映画行かない?」
空「君一人で行けるよね?」
奏羽「タダ見はちょっと」
空「律儀だね でも何で急に?」
奏羽「見たいのが、もうすぐ上映終了なんだ 目が覚める前に終わっちゃたら嫌だし、完結編だから見逃したくない」
空「ああ、あのシリーズの?」
奏羽「そう!」
空「まあ暇だし、一緒に行ってあげてもいいよ」
  夕凪が親指をあげ、グッドの合図をする。
奏羽「もしかして、あの主役好き?」
  奏羽はニヤリとして空をみる。
空「べ、別に」
奏羽(わかりやす!)
奏羽「ちょっと、夕凪に似てるよな?」
空「そうかなぁ、凪のがかっこいいよ」
奏羽「その顔、ウザ!」
奏羽「で、ですよねー」

〇映画館のロビー

〇映画館のロビー
奏羽「一番後ろの通路側ね」
空「はい、はい」
  チケットを買うため、その場を離れる空。
奏羽「ねぇ、ゆー君。映画と言えばポップコーンだよね」
夕凪「そーだね。そーちゃん」
奏羽「食べてーな」
夕凪「俺キャラメル派、空は塩派なんだよね」
奏羽「へぇー」
夕凪「だからいつもハーフ&ハーフ」
奏羽「俺も・・・いつもひとりでだけど」
夕凪「──なんか、ゴメン」
奏羽「俺たちデートしてるみたいだな」
  奏羽が夕凪と繋いでいる手をかかげる。
夕凪「そーちゃんと映画に来るの高一ぶりだね」
奏羽「そだな」
  ポップコーンとドリンク2つを持って空が戻って来る。
奏羽「ハーフ&ハーフ・・・ に、ドリンク2コ?」
空「そーだけど」
空「あっ、いつもの癖で・・・」
空「君は食べられないんだね 一人じゃ食べきれないな」

〇映画館の座席
空「立見? 隣に立ってられると気になるよ」
  空の隣の通路側の席の前に立ったままの奏羽。
奏羽「盲点でした。生霊が映画館のイスに座るのは困難です」
空「せっかく席取ったのに?」
奏羽「空君の分だけでよかったのでは?」
空「いや、君がタダ見は気が引けるって」
奏羽「ですよね チケット代、人に戻れたら返します」
夕凪「大丈夫、一人じゃないよ」
  通路に佇む夕凪。

〇映画館の座席

〇映画館の座席
夕凪「今入って来た人、こっち見てたね」
奏羽「うん、お前の方見てた」
夕凪「やっぱり?」
奏羽「明らかにビビってた」
夕凪「悪いことしちゃったな」

〇黒

〇映画館のロビー
奏羽「面白かったー」
空「うん」
  ホラー映画のポスターの前で立ち止まる空。
奏羽「こういうの、好きなの?」
空「いや、凪、こういうの苦手だったなって思って」
奏羽「知ってる。絶叫系とかもダメだったよな ああ見えて意外にビビりなの」
夕凪「余計なこと言うなよ」
奏羽「ガキの頃、遊園地行った時、顔引き攣らせながらジェットコースター乗ってたよ」
空「そんな凪も見たかったな」
奏羽「可愛かったよ。中学までは俺より背小さいくらいだったのに、高校入ったらどんどん大きくなっちゃって」
空「病院も注射も苦手なくせに 僕の前では平気な振りして・・・」
奏羽「強がっちゃって、夕凪らしいな」
夕凪「平気だし」
奏羽「はい、はい」
奏羽「空君は、こういうの平気?」
  奏羽がホラー映画のポスターを指差す。
空「うん。絶叫系も注射も平気」
奏羽「意外。人は見かけによらないな」
空「奏羽君は?」
奏羽「大丈夫、かな」
夕凪「うそ、ホラー苦手なくせに」
空「死んじゃった人は、何処にいくんだろ・・・」
奏羽「・・・」
空「天国があるなら・・・ 凪は、きっと天国にいると思うけど・・・」
  顔を見合わせる奏羽と夕凪。

次のエピソード:第十一話 君の願い

成分キーワード

ページTOPへ