第五話 新たな選択(脚本)
〇刑務所の牢屋
直之(タイムリープが起こらない・・・)
いくら待っても、
あの『運命の分岐点』に戻ることは
二度となかった。
俺は獄中で何年もの時を過ごす。
そこで風の便りに知ることとなる。
文が「悠城あこや」として成功したことを
殺人犯である俺との
悲惨な結婚生活を描いた私小説が
ヒットしたらしい
直之(はは、そうか・・・。 そうなのか・・・)
〇街中の道路
やがて年老いた俺は刑期を終え、
外に出る
友も、愛するものも、親族も
俺の周りから消え失せていた
直之(あぁ・・・)
俺は地面にくずれ落ち、
力なく天を仰ぐ
思い出すのは初めての彼女、
初めての結婚生活
直之(茉莉、ごめんな・・・。 俺がバカだった・・・。 本当にごめんな・・・)
もしもあの日に帰れたら・・・
直之(今度こそ、間違えたりしない・・・!)
〇おしゃれなリビングダイニング
直之「っ!?」
気が付けば、
俺は見覚えのあるダイニングにいた
会社から帰ったばかり、
肩にカバンをかけたままの
スーツ姿で
直之(え? これは・・・)
レンジが
料理を温め終えたことを知らせる
音を鳴らす
そこから皿を取り出し
食事の準備をしているのは
懐かしい茉莉の姿だった。
茉莉「はい、どうぞ」
直之「茉莉!!」
茉莉「え!? きゃ・・・!」
俺は茉莉を抱きしめる。
直之「茉莉・・・、茉莉・・・」
あとからあとから涙があふれてくる。
茉莉「ちょ、ちょっとどうしたのよ・・・」
茉莉の手が俺の背に優しく触れた
茉莉「会社で嫌なことでもあった?」
直之「うっ、ううっ・・・」
茉莉「・・・・・・」
茉莉「よしよし。 一人で頑張らせてごめんね」
直之「違うっ、俺こそ・・・ 家のこと全部お前に任せっきりで 勝手なことばっか言って・・・!」
直之「いつもありがとう。 それから、ごめんな・・・」
茉莉「なんなのよ、急に」
くまの浮かんだ疲れた顔で、
茉莉はうっすらと笑う
やはり茉莉はきれいだ。
心からそう思った
直之「ん? ・・・同窓会の案内はがきか」
茉莉「うん、中学から来た。 懐かしいよね」
直之「茉莉、行ってくるか?」
茉莉「えっ? でも、優芽が・・・」
直之「この日くらい、俺が見とく」
直之「お前だって たまには羽を伸ばしたいだろ? 久々の友だちにも会いたいだろうし」
茉莉「そりゃそうだけど・・・。 どうしちゃったの、突然? あんた、本当に直之?」
直之「ははは」
茉莉「・・・・・・」
茉莉「ちょうど今日仕上がったことだし、 あのワンピで行こうかな」
リビングには、
茉莉が刺しゅうや細工を施した
ワンピースがかかっていた
直之「あれでもいいけど、 必要なら服を新調してもいいぞ」
茉莉「えっ? でも、お金が・・・」
直之「妻を美しくするのは、夫の仕事だ。 金なら出す!」
茉莉「・・・・・・」
直之「あっ、でももちろん、 あのワンピースでもいいからな! なにせお前は有名デザイナーなんだ!」
茉莉「・・・頭、大丈夫?」
〇セルリアンタワー東急ホテル
〇ホテルのレストラン
アタシは久々に一人で出かけた。
こんなに身が軽いのはいつぶりだろう。
茉莉「『雛丘中学同窓会』ここね」
茉莉(かなり盛況ね。 はぁ、ちょっと太っちゃったの みんなに見られるの恥ずかしいな)
一也「あれ? そこにいるの茉莉ちゃん?」
茉莉「え? 一也くん? そっちは継雄くんで合ってる?」
継雄「合ってる合ってる!」
一也「直之は来てねぇの?」
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直之が改心し、キレイなハッピーエンドで大団円、、、と思いきやの衝撃のラスト、衝撃です!この夫婦に”幸せな家庭生活”がいつになったら訪れるのでしょうか
おやいい話…からの!!
そういえば茉莉ちゃんも文ちゃんに酷いこと言ってたし、お似合い夫婦だったんですね(ノ∀`。)
クズっぷりがもはや爽快でした。
普段全然子どもの面倒見てない夫が「たまには見てやる」で上手くいくと思えないので、スマホ見てる間に娘さんが何か誤飲して…という展開が直之サイドで起きてたりして…と想像しました(´▽`;)
おおおハピエン……と思ったら、ホラーーーー!!!
最後に、そうだこれホラーだったと思い出しました。
そうだよねぇ、つい同情しがちだけど、被害者が善人とは限らないんだよね~……学生時代の言動を思い出すと、彼女は彼女で性根に問題ありそうですね。
こういう、先が予測できずまんまと作者の術中にハマってヤラレター!ってなるのは物語の醍醐味だなって思います。
巧みなストーリー展開でとても面白かったです!