第一話 眠れぬ夜に(脚本)
『ハァハァ──』
『早くッ逃げて──』
『ああ!!』
『どうして、こんな・・・』
『僕が──』
〇古いアパートの一室
潮崎澄周「助けないと──!!」
潮崎澄周「・・・夢か」
潮崎澄周「明日も早いのに・・・」
潮崎澄周「眠らなきゃ、眠るんだ、夢なんか見ないで──」
〇総合病院
〇病院の廊下
潮崎澄周「ふぁ──」
乾雄史「朝から欠伸とはいい度胸だなぁ、潮崎」
潮崎澄周「い、乾先生!!」
乾雄史「放射線技師はお気楽なもんだ」
潮崎澄周「・・・すみません」
潮崎澄周「あの、宮下さんの検査結果の件なのですが──」
乾雄史「しばらく様子見ってことになっただろ」
潮崎澄周「ですが、やはり気になる点が──」
乾雄史「俺の見立てに文句があるってのか!?」
潮崎澄周「そういうわけでは・・・」
乾雄史「患者の身体にメス入れんのは俺たち外科医なんだよ!!お前に何がわかる!?」
潮崎澄周「・・・」
観月千晴「朝からなんの騒ぎです?」
乾雄史「これはこれは観月先生!!」
乾雄史「朝からお会いできるなんてツイてるなぁ」
乾雄史「ん?いま何か見えたような──」
潮崎澄周「観月先生、心の声出ちゃってますから!!」
観月千晴「乾先生、そろそろ回診の時間では?」
乾雄史「もうそんな時間でしたか!!観月先生また今度ゆっくり」
観月千晴「患者を切ることだけが命を救う行為だと思ってんのか、あのクソダヌキは」
潮崎澄周「観月先生、言葉が過ぎます・・・」
観月千晴「お前が言い返さないからだろーが」
潮崎澄周「乾先生の仰ることもわかりますから」
潮崎澄周「医者になれなかった僕に、誰かを救うことなんて──」
観月千晴「潮崎・・・」
潮崎澄周「職場で欠伸してた僕もマズかったですしね」
観月千晴「相変わらず眠れないのか」
潮崎澄周「寝ないといけないのはわかってるんですけど」
潮崎澄周「その──、悪夢で目が覚めちゃうんです」
潮崎澄周「子どもみたいですよね」
観月千晴「これ、やる」
潮崎澄周「アメ玉──?」
観月千晴「ただのアメじゃない、夢見が良くなるアメだ」
観月千晴「むっ、怪しいと思ってるな」
観月千晴「我が家に代々伝わる秘伝のアメだぞ」
潮崎澄周「この人の実家、確か陰陽師の家系だったような・・・・・・」
観月千晴「嫌なら一発打って強制的に眠らせてやってもいいが」
潮崎澄周「麻酔科医が言うとシャレになりませんから!!」
観月千晴「冗談だよ」
観月千晴「これでも同期として心配してるんだ」
潮崎澄周「・・・ありがとう」
観月千晴「同期といえば──」
潮崎澄周「どうかした?」
観月千晴「いや、どうせすぐ知ることになるか」
観月千晴「じゃあ、またな」
潮崎澄周「あ、うん、また・・・」
〇古いアパートの一室
その夜──
潮崎澄周「はぁ・・・疲れた」
潮崎澄周「怒られて、心配かけて、本当ダメだな──」
潮崎澄周「今日こそちゃんと寝て明日も頑張らないと」
潮崎澄周「良い夢、見られるといいな」
潮崎澄周「────甘い」
潮崎澄周「さっき歯みがいたんだった──!!」
〇朝日
『ここは、どこ──?』
『綺麗なところだな──』
『もしかして、これは──』
潮崎澄周「夢・・・?」
潮崎澄周「観月先生のアメ、本物だったのか──」
潮崎澄周「こんな心地良い場所はじめてだ」
潮崎澄周「ん?誰かいる・・・?」
潮崎澄周「あ、あなたは──!?」
蒼井恭一朗「会いたかった」
潮崎澄周「へ?」
蒼井恭一朗「ずっとずっと、君に会いたかったんです」
潮崎澄周「どうして、僕なんかに──」
蒼井恭一朗「君はいつも誠実で素直で純粋で、わたしの憧れです」
潮崎澄周「そ、そんな風に言ってもらえる資格なんて僕には・・・」
潮崎澄周「あ、もしかして夢だから僕の都合の良いようになってるのか?」
蒼井恭一朗「そちらへ行ってもいいですか?」
潮崎澄周「なんで僕、ドキドキしてるんだ?」
蒼井恭一朗「沈黙は了承と捉えますよ?」
潮崎澄周「イ、イケメンの近距離は破壊力が過ぎるっ──!!」
蒼井恭一朗「潮崎くん」
潮崎澄周「え、嘘・・・抱きしめられ──」
蒼井恭一朗「目を閉じて──」
潮崎澄周「あ・・・」
〇古いアパートの一室
潮崎澄周「朝・・・?」
潮崎澄周「僕、いま、夢で、キ、キスを──」
潮崎澄周「えええええええええええ──!!」
〇病院の廊下
潮崎澄周「はぁ──」
潮崎澄周「いったいあの夢はなんだったんだろう」
潮崎澄周「僕、欲求不満なのかな・・・」
潮崎澄周「それにしたって何であの人と」
潮崎澄周「もう、ずいぶん会ってない──」
観月千晴「今日は朝からため息か、潮崎」
潮崎澄周「観月先生──、おはようございます」
観月千晴「いつもより顔色は良さそうだが」
潮崎澄周「おかげさまで睡眠時間は普段より長く取れましたよ」
観月千晴「奥歯に物が挟まったような言い方だな」
潮崎澄周「そんなことは──」
観月千晴「なんだ、夢に好きな子でも出てきたか」
潮崎澄周「す、すすす好きな子なんて──!!」
観月千晴「わかりやすい奴だな」
潮崎澄周「そもそも、そんな相手いませんし・・・」
観月千晴「ふふん、夢は深層心理を表すというぞ」
潮崎澄周「そんなはずはありません!!」
潮崎澄周「だって、あの人は・・・」
観月千晴「悪かった」
観月千晴「お前がちゃんと眠れたならそれでいいんだ」
???「すぐに彼を揶揄うのは昔から変わってませんね」
潮崎澄周「え──?」
潮崎澄周「蒼井、先生・・・」
蒼井恭一朗「お久しぶりです、潮崎くん」
観月千晴「我らが同期一の出世頭が、ついにドイツから帰ってきたか」
蒼井恭一朗「買い被りすぎですよ」
観月千晴「どうした潮崎、久しぶりに会って言葉も出ないか?」
『ずっとずっと、君に会いたかったんです』
蒼井恭一朗「──潮崎くん?」
観月千晴「顔が赤いな、熱でもあるのか?」
潮崎澄周「な、なんでもないです!!」
観月千晴「・・・蒼井、ちょっと診てやってくれないか?最近あんまり眠れてないらしいんだ」
潮崎澄周「観月先生!!大丈夫ですから余計なことは──」
蒼井恭一朗「・・・失礼」
潮崎澄周「あ、蒼井先生!?」
蒼井恭一朗「なにか?」
潮崎澄周「自分で歩けます!!お、重いですから降ろしてください・・・」
蒼井恭一朗「いえ、羽のように軽いのでお構いなく」
観月千晴「・・・こいつスポーツ万能で身体能力も化け物級だったな」
観月千晴「よろしく頼むぞ」
〇病院の診察室
潮崎澄周「ほ、本当にお久しぶりですね、蒼井先生」
蒼井恭一朗「・・・先生」
潮崎澄周「あの、なにか・・・」
蒼井恭一朗「会うのは学生の時以来ですから、君にそう呼ばれるのは慣れませんね」
潮崎澄周「・・・蒼井先生のような優秀な外科医を学生時代のように呼ぶのは畏れ多いです」
蒼井恭一朗「潮崎くん──」
潮崎澄周「──先生!? 顔が、ち、近いです!!」
潮崎澄周「また夢でも見てるの──!?」
蒼井恭一朗「私が言いたいこと、わかりますね?」
『目を閉じて──』
潮崎澄周「えっ!?あ、ああ、あの、だめ!!ダメです、先生──」
潮崎澄周「僕、どうなっちゃうの────!?」
わー!夢の中と現実のギャップがないお話!面白かったです!同期3人の中で関係抉れたりするんかなぁ...続きが楽しみです!!
彼の気持ちがこっちまで伝わってきてすっごくトキメキました。デジャブというか予知夢だったのですかね〜。夢でもドキドキするのにまさか現実までとは!
切なさと愛おしさがとんでもなく伝わってきました。蒼井先生が日本へ帰ってくることを予感していたなんて、二人は心の奥底ですでにつながっていたような気がしました。