夢みる男がおりまして

みねの・おーはし

第二話 優しいあなた(脚本)

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〇病院の診察室
蒼井恭一朗「私の言いたいこと、わかるでしょう」
潮崎澄周「あ、蒼井先生──!!」
蒼井恭一朗「説教です」
潮崎澄周「・・・へ?」
蒼井恭一朗「医療に携わる者は患者を助けることが仕事ですが、まず何より自分の身体が資本です。睡眠不足などもってのほか」
蒼井恭一朗「患者は待ってはくれないんですよ。睡眠だけではありません。食事は?あんなに軽い身体で・・・」
蒼井恭一朗「・・・聞いてるんですか、潮崎くん」
潮崎澄周「あ!す、すみません」
潮崎澄周「・・・変わってないですね、蒼井先生」
蒼井恭一朗「昔から説教ばかりだと?」
潮崎澄周「そ、そういう意味では──」
潮崎澄周「先生の仰ることはいつも正しくて・・・自分が情けないです」
潮崎澄周「やっぱり僕、向いてないのかな」
蒼井恭一朗「君の覚悟はそんなものだったんですか」
蒼井恭一朗「向いてるかどうかなど、目の前の命にとって全く関係のないことです」
蒼井恭一朗「やると決めた──だから君はここいいるんでしょう」
潮崎澄周「あ・・・」
蒼井恭一朗「・・・そろそろ時間ですので、失礼します」
潮崎澄周「本当、ダメだな」
潮崎澄周「あの時のまま、何も変わってないじゃないか」

〇病院の廊下
蒼井恭一朗「・・・」
観月千晴「お説教はもう終わったのか」
蒼井恭一朗「盗み聞きとは褒められた趣味ではありませんね」
観月千晴「聞いてたわけじゃないさ」
観月千晴「お前は昔から正論でぶった切って来るところがあるだろう」
観月千晴「最初はちやほやしてた連中が「人の心がないの!?」なんて騒いで去っていくのも日常茶飯事だったしな」
蒼井恭一朗「心、ですか」
観月千晴「合理的で正しい判断能力は医師としての適性の証だと思うが」
蒼井恭一朗「感情は時に人を惑わせる危険なものです」
蒼井恭一朗「人を救うために人の身体を切る外科医にとっては・・・」
観月千晴「そういえば今日はお前の歓迎会らしいぞ」
蒼井恭一朗「・・・必要ありませんが」
観月千晴「乾先生が飲みたいんだろうよ」
蒼井恭一朗「はぁ・・・」
観月千晴「説教は終わりにして、潮崎と昔話に花でも咲かせろよ」
蒼井恭一朗「あなたは来ないんですか?」
観月千晴「夜勤なんだ、残念だなー」
蒼井恭一朗「はぁ・・・」

〇大衆居酒屋
乾雄史「なんで観月先生来てないのよ~」
潮崎澄周「夜勤みたいで」
乾雄史「久々の同期との再会だぞ?積もる話もあるんじゃないのか、蒼井先生よぉ」
蒼井恭一朗「いえ、特には」
乾雄史「またまた〜」
乾雄史「美男美女の大学生がなーんも無かったことはないよなぁ」
乾雄史「潮崎も同期だったんだろ?どうなんだ?おい」
潮崎澄周「えーっと・・・」
蒼井恭一朗「プライベートの詮索はハラスメントと捉えられても仕方ないかと、乾先生」
乾雄史「はいはい、今どきはうるさいね~」
乾雄史「おーい、ビールもう一杯!!」
潮崎澄周「乾先生、あまり飲みすぎると身体に・・・」
乾雄史「医者みたいなこと言うなよ」
乾雄史「医者でもねーのに!!ハハッ」
潮崎澄周「は、はは・・・」
乾雄史「お前ら医学部の同期だったんだよなぁ?」
潮崎澄周「僕は、その、医学部だったんですけど、色々あって大学も入り直して・・・」
蒼井恭一朗「・・・」
乾雄史「それでも検査技師になってこの世界にしがみついてるわけだ」
乾雄史「向いてもねーのに」
潮崎澄周「向いて、ない・・・」
蒼井恭一朗「乾先生はどうやらあまり視野が広く内容ですね」
乾雄史「ああ?」
蒼井恭一朗「潮崎くんの検査能力は優秀です」
蒼井恭一朗「もっと周りの働きを見たほうがいい」
蒼井恭一朗「外科医として致命的です」
乾雄史「何だと!?」
潮崎澄周「お、落ち着いてください──」
乾雄史「・・・・・・」
「・・・・・・」
潮崎澄周「寝ちゃいましたね」
蒼井恭一朗「・・・人騒がせな方ですね」
潮崎澄周「僕、タクシー呼んできます」

〇雨の歓楽街
潮崎澄周「・・・僕たちも帰りましょうか」
蒼井恭一朗「雨・・・」
潮崎澄周「本当だ、蒼井先生にもタクシー呼びますよ」
蒼井恭一朗「君は?」
潮崎澄周「僕は・・・酔い醒ましに少し歩こうかと」
蒼井恭一朗「では私も歩きます」
潮崎澄周「そんな、濡れちゃいますから!!」
蒼井恭一朗「私も久々のお酒で酔ったようなので」
潮崎澄周「昔からザルで有名だったような・・・」
蒼井恭一朗「行きましょう」
潮崎澄周「あ、ハイ──」

〇住宅街の公園
「・・・・・・」
潮崎澄周「あの、さっきはありがとうございました」
蒼井恭一朗「何のことです?」
潮崎澄周「乾先生から、その・・・庇ってくださって」
蒼井恭一朗「事実を言ったまでです」
蒼井恭一朗「君はもっと自分の仕事に誇りを持ったほうがいい」
潮崎澄周「・・・ありがとうございます」
潮崎澄周「ドキドキって、なんで、僕、おかしいだろ──」
潮崎澄周「乾先生も悪気はないんですよ!!お酒の席ですし」
蒼井恭一朗「君の心はどうなのですか?」
潮崎澄周「心・・・」
蒼井恭一朗「酒の席であろうと不躾な言動に傷ついた事実に変わりはない」
蒼井恭一朗「無理に笑う必要などないんですよ」
潮崎澄周「蒼井先生・・・」
蒼井恭一朗「・・・人の心がないらしい私が言うのも可笑しな話ですが」
潮崎澄周「そんなこと──」
蒼井恭一朗「あながち間違いではないのかもしれません」
蒼井恭一朗「時に人の心を捨てなければ、人を切ることはできませんから」
蒼井恭一朗「──外科医は」
蒼井恭一朗「・・・話しすぎましたね」
蒼井恭一朗「風邪でも引いたら困りますから、もう行きましょう」
潮崎澄周「蒼井先生・・・」
潮崎澄周「あなたは優しい人です、あの頃から」

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