2枠 女将はピン子、私はかずき(脚本)
〇音楽スタジオ
都内のとあるスタジオ──
足立絵里奈「♪酢豚が好き~」
足立絵里奈「♪パイナップルも好き~」
足立絵里奈「♪でも、酢豚に入っているパイナップルは大嫌い~」
〇通学路
中西あかね「絵里奈、機嫌がいいみたいだね~」
足立絵里奈「期末試験の結果が良くてさ♪」
橋本真由「本当に珍しいよね」
橋本真由「何かあったの?」
足立絵里奈「ちょっとヤマが当たっただけだよ」
足立絵里奈(本当は予想屋さんの予想通りに試験問題が出たって言っても信じてもらえないんだろうなあ・・・)
〇団地
絵里奈の団地
〇古いアパートの部屋
足立正雄「よし! ④-⑦だ!!」
足立絵里奈「ただいま~」
足立絵里奈「今晩の夕食はコロッケでいい?」
足立正雄「松坂牛のステーキと築地のまわらない寿司」
足立正雄「どちらが好きだ?」
足立絵里奈「はあ? 何を言ってるの??」
足立絵里奈「そんなお金ないでしょ」
足立正雄「それが食べれるようになるんだな」
足立正雄「万馬券を購入したんだ」
足立正雄「当たれば大金持ちだぞ」
実況「さあ、各馬一斉にスタートしました!!」
〇競馬場の座席
実況「最終コーナー曲がって、 先頭は④番ナマエマケ」
実況「続いて⑦番ダメダコリャ そして⑪番コンドモカンパイ」
実況「最後の直線!!」
ナマエマケ「④番ナマエマケ先頭!!」
実況「半馬身差で⑦番ダメダコリャ」
実況「あっーっと!! ここで④番ナマエマケが失速!!」
実況「続いて⑦番ダメダコリャも失速!!」
実況「1着は⑨番のダイホンメイ!!」
〇古いアパートの部屋
足立正雄「ああああああ・・・」
足立正雄「俺の夢が・・・」
足立正雄「松坂牛のステーキがあ・・・ 築地のまわらない寿司があ・・・」
足立絵里奈「また負けたの?」
足立正雄「絵里奈ごめん・・・」
足立正雄「ステーキも寿司もまた今度だ・・・」
足立絵里奈「大丈夫。 全く期待してなかったから」
足立絵里奈「というか、私って絶対、お父さんに似たんだわ・・・」
足立正雄「今日は絶対に勝てると思ったんだけどなあ~」
足立絵里奈「あっ!? そうだ!!!」
〇公園のベンチ
鵜久森源蔵「だ~め!!」
足立絵里奈「なんでダメなの? 競馬の予想」
鵜久森源蔵「競馬の予想はやらない主義なんだよ」
鵜久森源蔵「競馬以外のギャンブルもだ・・・」
足立絵里奈「じゃあ、株とか・・・」
鵜久森源蔵「株もFXもやらない主義だ」
足立絵里奈「何よ『何でも』と言ってるわりには、注文が多いじゃない」
足立絵里奈「本当は当たらないだけなんじゃないの?」
鵜久森源蔵「そんなこというなら帰るぞ」
足立絵里奈「ちょ、ちょっと待ってよ!!」
足立絵里奈「だったら、私にとっていいバイトを予想してよ!!」
鵜久森源蔵「バイト? コンビニは??」
足立絵里奈「やめた。 あの事件以来行きづらくて・・・」
足立絵里奈「次のバイトは何がいいか予想してよ」
足立絵里奈「これだったらできるでしょ?」
鵜久森源蔵「仕方ねえな」
鵜久森源蔵「①枠 ファミレス店員」
足立絵里奈「全部説明しなくていいから・・・」
足立絵里奈「結局、何がオススメなの??」
鵜久森源蔵「本命はこれだな」
鵜久森源蔵「⑩枠のメイドカフェの店員」
足立絵里奈「メイドカフェ・・・」
〇メイド喫茶
足立絵里奈「お帰りなさいませ。 ご主人様♪」
足立絵里奈「萌え萌え キュンキュン♪」
〇公園のベンチ
足立絵里奈「・・・」
足立絵里奈「恥ずかしいなあ・・・」
足立絵里奈「他にないの?」
鵜久森源蔵「じゃあ、大穴を狙おう」
足立絵里奈「大穴って?」
鵜久森源蔵「これ以上はお金がかかるぜ」
足立絵里奈「えっ!? 金取るの!?」
鵜久森源蔵「当たり前だろ!」
足立絵里奈「前回はお金取ってなかったじゃん!!」
鵜久森源蔵「前は財布を拾ってくれたんで、そのお礼でサービスしたんだ」
足立絵里奈「いくら?」
足立絵里奈「私、お金ないから100円でいい?」
足立絵里奈「お願い・・・」
鵜久森源蔵「仕方ねえな。 大マケにマケて、100円でいいよ」
足立絵里奈「ありがとう」
100円を手渡す
鵜久森源蔵「ほいよ」
鵜久森源蔵「じゃあな」
足立絵里奈「何だろう・・・」
足立絵里奈「えっ!?」
〇ラーメン屋
1週間後──
〇ラーメン屋のカウンター
足立絵里奈「お待たせしました~」
足立絵里奈「チャーシュー麺と半チャーハンになります」
足立絵里奈(この店のどこが大穴なんだろう?)
足立絵里奈(時給も特に高くはないし・・・)
足立絵里奈(どこにでもあるようなただのラーメン屋・・・)
安藤加奈子「絵里奈ちゃん」
足立絵里奈(女将の加奈子さん・・・)
足立絵里奈(おしゃべりで世話焼きだが、とても気のいい人だ)
足立絵里奈(どことなく泉ピン子に似てる・・・)
足立絵里奈(そう言えば店主はどことなく 近藤春菜・・・じゃなかった、 角野卓造に似てるし・・・)
足立絵里奈(ということは、私はえなりかずき・・・)
足立絵里奈「(えなりかずきのものまねで)そんなこと言ったってしょうがないじゃないか!!」
安藤加奈子「どうしたの? 突然」
足立絵里奈「やだ、私ったら・・・」
安藤加奈子「絵里奈ちゃんたら面白い子ねえ」
安藤加奈子「はい、これ」
足立絵里奈「これは?」
安藤加奈子「お父さんとの二人暮らしだと、毎日料理作るの大変でしょう?」
安藤加奈子「これ、餃子の余ったの。 よかったら、食べてよ」
足立絵里奈「ありがとうございます。 助かります」
足立絵里奈(ラッキー!! これは助かる)
安藤加奈子「ねえねえ・・・ 絵里奈ちゃんは彼氏はいないの?」
足立絵里奈「それがいないんですよ・・・」
足立絵里奈「バンド活動が忙しくて・・・」
安藤加奈子「へ~ バンドやっているんだ!? 意外~」
足立絵里奈「こう見えてもヴォーカル兼ギターなんですよ。 私」
安藤加奈子「どんな音楽聴くの?」
足立絵里奈「知っているかなあ・・・」
足立絵里奈「『くるくる王国』ってバンドが本当に好きで・・・」
足立絵里奈「その影響でバンドを始めたんですよね~」
須藤浩太郎「おばちゃん!!」
須藤浩太郎「いつもの!!」
安藤加奈子「チャーシュー麵と餃子ね」
足立絵里奈「・・・」
安藤加奈子「ちょっと、絵里奈ちゃんどうしたの?」
足立絵里奈「す、す、須藤浩太郎だ!? 本物だ!?」
足立絵里奈「私の愛してやまない『くるくる王国』のヴォーカルの須藤浩太郎だ!!」
須藤浩太郎「えっ!? 僕のファン?」
足立絵里奈「1stアルバムの『くるくる王国建国宣言』から、最新作の『くるくる王国と愉快な仲間たち』までアルバム全部持ってます!!」
足立絵里奈「去年のフジロックにも行きました!!」
足立絵里奈「何でこのお店に?」
須藤浩太郎「バンドが売れない頃、ここら辺に住んでいてさ」
須藤浩太郎「よく来ていたんだよ。 ここのお店に」
須藤浩太郎「売れてもここのお店のラーメンの味が忘れてられなくてさ・・・」
安藤加奈子「1ヶ月に一回は来るよね」
足立絵里奈「まさかこんなところで会えるなんて・・・」
〇学校の校舎
翌日──
〇教室
足立絵里奈「本当に気さくな人だったよ!! 須藤さん」
橋本真由「絵里奈、昔から大ファンだったもんね」
中西あかね「いーなー 羨ましいなあ」
足立絵里奈(ひょっとしたら、予想屋さんと出会って私の運が上向いている??)