星売りのメテオシスター

オカリ

4.腕の見せどころ(脚本)

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〇病院の診察室
  医療費の前払い金、渡航費
  現地滞在費など
  ハナビの治療費
  必要総額は3億円
  今の収入じゃ頑張っても
  100分の1に届くかどうか
  咄嗟に思ったのは
  「宝くじ当てなきゃ」
  ・・だった

〇源泉
  隕石が落ちた、あの夜
  どうやって稼ぐか
  一晩中、考えた
  出た結論はシンプルだ
  この隕石を使って
  とにかく注目を集めて・・
  『募金活動』をする

〇源泉
  成功の鍵は知名度だ
  新聞やテレビでニュースになったり
  インフルエンサーに紹介されたり
  目標額達成には必ず
  大きなキッカケがいる
長岡茉莉「これ売りまーす」
  だから爆弾発言をした
  『注目すべきは隕石だけじゃない』
  そう思わせるために

〇田んぼ
  隕石と『私』をセットで
  メディアに食い付かせる
  アプローチする放送局は
  TNテレビに狙いを定めた
  「隕石を3億円で売る」、コレも
  TNテレビの中継で初めて明かした
  そうすれば特集が組まれ易くなると
  思ったから
  ・・新番組を提案された時は
  さすがに驚いたけど

〇ビジネスホテル
  私が3億円にこだわる理由、
  妹の病気についてはあえて伏せた
  マスコミは与えられた情報より
  自力で得た情報に価値を見出す
  案の定、記者が食いついた
  不快なヤツだったけど
  そこは目をつむる

〇劇場の舞台
  シナリオはこうだ
  まず「目標額3億円」の周知
  これは競売前から働きかける
  あの記者ならきっと書くハズだ
  「なぜ3億円が必要なのか」
  私の動機に関する記事を
  もちろん、実際に3億で
  落札されたらベスト
  だけどきっと届かない
  1億すら厳しいだろう
  その瞬間がチャンスだ
  どうしても3億円が必要だと
  改めてオークション視聴者に訴える
  泣き崩れるのも辞さない覚悟
  最高潮の注目で最大の同情を買う
  いわば募金活動は『第二の矢』
  落札額で足りない分を補い・・
  オークション終了後、募金という名の
  クラウドファンディングを開設
  一気に3億へ繋げる
  返礼品は、隕石で粉々になった
  家の残骸や焦げ跡の加工品・・とかで

〇数字
  これが私の計画
  マスコミを利用して注目を集め
  オークションで隕石を高く売り
  「3億円未達成」で同情を買って
  残りの不足分は募金でおぎなう
  出たとこ勝負が多いのは否めない
  自分でも荒っぽい計画だと思う
  だって・・
  さっそく『想定外』が起きたのだから
  第4話
  腕の見せどころ

〇SNSの画面
  ネットオークションサイト
  『ヤフカリ』
  出品一覧
  トップページ
  ・3億円相当の隕石、良品
  ・家潰した隕石です。5万円から
  ・例の隕石、300万円で売ります
  ・売ってと頼まれ代理で隕石出品します
  ・隕石【3億の価値、細かいキズあり】
  ・鉄隕石、直径20センチ(送料別)
  ・隕石【本物】100万円で譲ります
  ・隕石※鑑定書付き、例のヤツ
  エトセトラエトセトラ・・・

〇病室のベッド
長岡茉莉「うわ、ホントだ 隕石の出品数が激増してるよ」
長岡茉莉「しかも、ほとんどが 自称『3億円相当』だし」
長岡茉莉「これ信じてる人どのくらい いるんだろ・・」
長岡花陽「スッゴイね!ねえちゃのお星!」
長岡花陽「まさにお星の“ぐんゆーかっきょ”だ!」
長岡茉莉「“群雄割拠”ね 難しい言葉、よく知ってたな〜」
長岡花陽「うへへ、まーね!」
長岡花陽「・・でもねえちゃ お星売っちゃうんだね」
長岡花陽「ハナビ的にはちょっと残念・・」
長岡茉莉「おウチがなくなったからね〜 少しでも稼がなきゃ」
長岡茉莉「ニセモノがいっぱい出てきたのは ちょっと困ったけど、ね」
長岡茉莉「これで普通のネットオークションへの 出品は難しくなっちゃったな・・」
長岡茉莉「もうトキコさんの新番組に 全力で乗っかるしかない・・!」
長岡花陽「ねえちゃ?どしたの?」
長岡茉莉「ん、少し考えてた」
長岡茉莉「あと出品前にできるコトは・・」
長岡茉莉「・・ちょっと待っててね」

〇病室の前
長岡茉莉「──誰もいない、ね」

〇病室のベッド
長岡花陽「ねえちゃ?どしたの?」
長岡花陽「カギもかけて・・ 戸締まり?」
長岡茉莉「ふふふ・・ハナビにだけ 特別だよ〜?」
長岡花陽「あ〜!あぁ〜〜! お星だあ〜〜!」
長岡花陽「スゴイスゴイスゴイ! キャァ〜〜〜ッ!」
長岡茉莉「はい、今のうちに堪能しときな」
長岡花陽「うんっ!」
長岡花陽「・・・」
長岡花陽「思ったより小さいね! な〜るほど〜!」
長岡花陽「これなら簡単に隠せそう!」
長岡花陽「てっきり金庫とかに 預けたと思ってた〜」
長岡茉莉「な〜んか不安でね・・ 手元に置いときたくて」
長岡茉莉「あ!他の人には秘密よ! 絶対言っちゃダメだぞ〜?」
長岡花陽「ごくひにんむ、だね! ラジャーねえちゃ!」
長岡茉莉「うむ!さすがは我が妹!」
長岡花陽「・・・・・・」
長岡花陽「うん!まんぞく! ありがとねえちゃ!」
長岡茉莉「ありゃ、もういいの?」
長岡茉莉「じゃ、しまっちゃうね〜・・」
長岡茉莉「どう?見えてない? わからないよね?」
長岡花陽「ちょうおっけ〜!」

〇病室の前
長岡茉莉「ちょうおっけ〜か! いえ〜い!」
粟島研究員「・・・」
粟島研究員「おいおいおい! 聞こえちゃったぞおい!」
粟島研究員「隕石、手元に置いてるって言ったな!? つまり・・強引に襲えば手に入る!?」
粟島研究員「いや何考えてんだ僕は! さすがにそれはヤバいだろ!」
粟島研究員「ただ、隕石の隠し場所は 「常に持ち歩いてる」か 「病室に隠した」の2択に絞られた」
粟島研究員「とりあえず、出直そう・・ いま会うのはマズそうだ」
長岡茉莉「ふ〜ちょっと お手洗いに・・」
長岡茉莉「・・・」
粟島研究員「待って待って待って! 誤解誤解誤解!」
粟島研究員「通報はやめて!頼むから!」
長岡茉莉「──話し声、聞こえてました?」
粟島研究員「え?え?な〜んのことか 分からないなぁ!」
長岡茉莉「・・聞こえてたんですね」
長岡茉莉「他の人に言わないで下さいよ? 変に狙われたくないので」
粟島研究員「大丈夫!な〜んも聞いてない! ボク何にも知らないから!」
粟島研究員「それよりホラ! 第二陣だよ!」
長岡茉莉「あぁ・・ありがとうございます」
粟島研究員「望遠鏡はまだ見つかってないんだ! ゴメンね!」
粟島研究員「だから参考までに知りたいんだけど・・」
粟島研究員「落下の直前、どこで天体観測 してたか教えてくれないかな?」
粟島研究員「場所さえ分かれば衝撃の規模から 吹っ飛んだ位置を推定できる」
長岡茉莉「どこって・・普通に 家の庭でしたけど」
粟島研究員「え?そうなの?」
長岡茉莉「写真、見ます? セッティングした時に撮影して・・」
粟島研究員「おや、ホントだ でもだとしたら・・・」
長岡茉莉「どうかしましたか?」
粟島研究員「・・・・・・う〜ん もう一度確認なんだけど」
粟島研究員「キミは隕石落下の瞬間も同じ位置で 星を見ていたのかい?」
長岡茉莉「そうですね」
長岡茉莉「・・衝撃で飛ばされたので 起きた場所は違いますけど」
長岡茉莉「それが何か?」
粟島研究員「──いや、何でもないんだ」
粟島研究員「今朝も電話で伝えたけど またちょっと掃除をしてくるね」
粟島研究員「クレーターにテントを張って 泊まり込みだ、ご了承のほどを!」
長岡茉莉「あっ・・はい」
長岡茉莉「変な間があったけど・・ 何だったんだろ?」

〇駐車車両

〇車内
粟島研究員「隕石落下の瞬間まで 「庭で天体観測をしてた」・・」
粟島研究員「庭?庭だと・・?」
粟島研究員「そんなワケあるか!」
粟島研究員「直径10メートルのクレーターだぞ」
粟島研究員「家や庭で済む話じゃない 地形を変える規模の衝突だ」
粟島研究員「もし本当なら人体ごと 木っ端微塵だバカヤロウ!」
粟島研究員「テキトーなこと言いやがって・・ おおかた場所移動でもしたんだろう」
粟島研究員「ガレキというガレキを ひっくり返して調べてやるよ!」

〇田んぼ

〇源泉
粟島研究員「・・やっぱりな」
粟島研究員「家はもちろん、庭だった部分も 隕石落下の衝撃で抉れてる」
粟島研究員「仮に長岡茉莉の記憶が正しく、 庭で天体観測をしていたのなら・・」
粟島研究員「五体満足で済むはずがない」
粟島研究員「肉体が家より頑丈ってのも 道理に合わないからな」
粟島研究員「・・とにかく依頼通り、望遠鏡を探すか」

〇源泉
粟島研究員「仮に望遠鏡が衝撃で粉々になり クレーター外まで飛び散ったとする」
粟島研究員「直径10メートルの凹地を作った 運動エネルギーを試算すれば・・ 飛散したエリアは推定可能だ」
粟島研究員「ネット上の衛星画像から隕石落下より 過去の全景を取得、配置を確認」
粟島研究員「加えて望遠鏡を設置した際の写真も 参考に、家との位置関係を把握・・」
粟島研究員「「吹っ飛んだ方向」を絞り込む」
粟島研究員「以上から望遠鏡の破片が飛散しうる 限界範囲および方角は──・・」

〇山中の坂道
粟島研究員「この辺り、かな? クレーターからは離れたが・・」
粟島研究員「おっ!」
粟島研究員「家の柱の木片か? さっそく残骸を発見だ!」
粟島研究員「この調子でドンドン探して・・」
粟島研究員「おや?下にも何かあるな!」
粟島研究員「えーっと、これ・・は・・・・・・?」
粟島研究員「・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
粟島研究員「おい、なんだよ・・これ・・・!?」
粟島研究員「おかしいだろコレはっ!!」

〇山中の坂道
  ・・ガレキじゃない
  人の腕が、地面に落ちていた
「フッ・・ハァッ・・ハァッ・・!」
  半ば祈るように触ったけど
  質感は人工物のソレではなく
  有機的な、動物の皮と同じ
「ハァッ・・ハァッ・・・!」
  緊張で呼吸が浅い
  空気を取り込めない
「落ち着け、落ち着け、落ち着け、 落ち着け、落ち着け、落ち着け・・!」
  激しい鼓動を抑え込もうと
  呪文のように何度もつぶやく
  高熱に晒されたのか
  切断面は赤黒く焦げていて
  皮膚表面は灰のように白い
  スラリと細長い手指は
  男性のモノと思えず──
  思い浮かんだのは・・・・

〇病室の前

〇山中の坂道
  もしこの腕が隕石衝突の
  爆風によるモノならば・・
  腕の持ち主、家の住人は
  即死の可能性すらある
  少なくとも翌朝、平然とした顔で
  立てるはずがないんだ
  だとすると・・・
  当然の疑問が一つ浮かぶ
「───・・長岡、茉莉」
  アレはホントに・・・
  『長岡茉莉』
   なのか?

次のエピソード:5.隕石ハンター【番外編・R-15】

コメント

  • オカリさんこんにちは!
    隕石を売る話だったのに横から違う事件性がでてきましたね!次の話があがっていて嬉しいです!いってきまーす😄

  • 首の後ろがゾクリとしました……これはタップする指を止められません

  • 普通に考えて主人公が無事で済むはずないというのはギャグ的に流されたのかと思いましたが、なるほどそうきましたか。。サブタイトルの回収も完璧ですね。

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