オルレアンの花嫁

望月 風花

エピソード1(脚本)

オルレアンの花嫁

望月 風花

今すぐ読む

オルレアンの花嫁
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

  ひと目惚れを信じることよ
  サラ・ベルナール
  (フランスの女優)


  1428年 フランス  ドンレミ村
  寝苦しい夜だった
  熱く、炎で焼かれるような灼熱
ジャンヌ・ダルク「アトラス、助けて! 熱い、熱いよ!」
ジャンヌ・ダルク「お願い助けて・・・」
  ジャンヌ! 今、行く!
  助けるから! 絶対に助けるから!

〇暖炉のある小屋
アトラス「はっ・・・」
アトラス「はぁ・・・はぁ・・・」
アトラス「またあの夢・・・」
  ジャンヌが火炙りにされる夢・・・
  これで何度目だ・・・
ジャンヌ・ダルク「おはよう、アトラス!」
ジャンヌ・ダルク「わ、すごい寝汗 大丈夫?」
ジャンヌ・ダルク「今、お水持ってくるね」
ジャンヌ・ダルク「はい。お水。 ゆっくり飲んでね」
  ジャンヌは僕の背中をさすりながら、
  コップを手渡してくれた
アトラス「・・・」
アトラス「ねぇ、ジャンヌ・・・ 本当に今日、旅立つの?」
ジャンヌ・ダルク「もちろん。 大天使ミカエル様からのお告げだもん」
ジャンヌ・ダルク「必ずシャルル王太子に会って、 フランス軍を勝利に導いて見せるわ」

  ことの発端は4年前 ・・・
  ジャンヌが村を散歩
  していたときのことだった

〇村に続くトンネル

〇村に続くトンネル
  『ジャンヌ、聞こえますか?』
ジャンヌ・ダルク「だ、誰!?」
  『私は大天使ミカエル』
  『ジャンヌ、よく聞きなさい』
ジャンヌ・ダルク「大天使・・・ミカエル様?」

〇炎
  『今、フランスと敵国のイングランドは
  戦争を続けています』
  『誰がフランスの王様に
  ふさわしいかで揉めているのです』
ジャンヌ・ダルク「そ、そんなことで?」
  『このくだらない戦争のせいで
  何人もの人が殺され、涙を流しています』
  『一刻も早く戦争を終わらせるために、
  あなたはイングランド軍を追い払いなさい』
  『そして、王太子シャルルを
  王位につかせるのです』
ジャンヌ・ダルク「そ、そんな大役を・・・ 私が・・・?」
  『あなたなら、できます。
  だって──』
  『神に選ばれたのですから・・・』

  ジャンヌはこの時の出来事を
  毎晩のように僕に話してくれた
  大天使ミカエルのあまりの美しさに
  その場で泣き崩れてしまったらしい

〇暖炉のある小屋
ジャンヌ・ダルク「・・・」
ジャンヌ・ダルク「もう馬車に乗る時間・・・」
ジャンヌ・ダルク「アトラスとは今日でお別れだね」
アトラス「・・・。 ジャンヌ・・・」
ジャンヌ・ダルク「そんな顔しないで。 永遠の別れじゃないのよ?」
ジャンヌ・ダルク「いっぱい手紙書くから ね?」
  そう言った彼女の笑顔は
  引きつっていた・・・
  手も震えている
  僕は彼女の手を優しく握った
ジャンヌ・ダルク「・・・」
ジャンヌ・ダルク「ねえ、アトラス・・・」
ジャンヌ・ダルク「ギュってして・・・」
  僕はジャンヌの腰に手をまわした
  ギュッゥゥゥ・・・
  僕はジャンヌを強く抱きしめた
  彼女も負けずと
  僕の肩から首へ手を回し、体を預けてくる
ジャンヌ・ダルク「本当はね・・・」
ジャンヌ・ダルク「すごく怖いんだ・・・」
  密着してるジャンヌの体が
  小刻みに震えている
  指も冷たくて小さい
ジャンヌ・ダルク「私なんかに王太子シャルルは 会ってくれないよとか・・・」
ジャンヌ・ダルク「戦争を止められるかなとか・・・」
  僕はジャンヌを抱き締めながら、
  そっと頭を撫でた
  柔らかくて、温かい・・・
  それにいい匂い・・・
  僕は指でジャンヌのあごを
  クイッとあげて──
  その綺麗な瞳を見つめた
  キスをしようとしたら、
  ジャンヌは人差し指で優しく制した
ジャンヌ・ダルク「今、キスをしたら 別れがもっと辛くなっちゃう・・・」
アトラス「・・・」
ジャンヌ・ダルク「大丈夫だよ 笑」
ジャンヌ・ダルク「戦争が終わったら、村に帰ってくるから」
ジャンヌ・ダルク「そしたら、いっぱいキスしよう?」
アトラス「・・・」
アトラス「ジャンヌ! この戦争が終わったら、僕と──」
アトラス「け、けっー」
ジャンヌ・ダルク「け?」
アトラス「けっ── いや、やっぱりなんでもない・・・」
  こんな大事ときでさえ・・・
  僕は勇気がでなかった
  僕はなんて意気地がないんだ・・・

  何も言えないまま、
  ジャンヌはドンレミ村をあとにした

〇暖炉のある小屋

〇暖炉のある小屋
アトラス「もうこんな時間か・・・」
アトラス「ジャンヌは今頃、どこにいるかな・・・」

〇暖炉のある小屋
アトラス「だ、誰だ?」
大天使ミカエル「私は「本物の」大天使ミカエル」
アトラス「本物の?」
大天使ミカエル「そう、4年前ジャンヌに お告げをしたのは私じゃないわ」
大天使ミカエル「サキュバスが私に化けて、 ジャンヌをそそのかしたの」
アトラス「な!? 何のために」
大天使ミカエル「わからないわ・・・」
大天使ミカエル「サキュバスのやることに いちいち理由なんてないと思う」
大天使ミカエル「強いて言うなら暇潰しね」
大天使ミカエル「てっ、そんなことより!」
大天使ミカエル「いい、アトラス。よく聞きなさい!」

〇戦場
  『今から1年後、ジャンヌはフランス軍を
  率いて快進撃を繰り広げるわ』
  『でもその後に
  イングランド軍に捕らわれて・・・』

〇炎
  『異端審問の結果、
  火炙りの刑に処されるの』

〇暖炉のある小屋
アトラス「な、じゃあ、僕が見た夢は・・・」
大天使ミカエル「現実になるわ」
  ジャンヌが村を出てから
  9時間は経っている
アトラス「なんでもっと早く 来てくれなかったんだ!」
大天使ミカエル「あら、ピンチになってから救う方が ロマンチックじゃない♪」
アトラス「ふざけるな! ジャンヌの命を何だと思ってんだ!」
大天使ミカエル「何よ~」
大天使ミカエル「未来を教えに来てあげたんだから 感謝しなさいよ!」
大天使ミカエル「だいたい、人間の命なんて、 私たちからしたらゴミ同然よ?」
  とても大天使ミカエル様の
  発言とは思えない
大天使ミカエル「ぐずぐずしてると 取り返しがつかなくなるわよ?」
アトラス「無理だよ。 ジャンヌは馬車に乗ってるんだぞ」
アトラス「今からじゃもう追いつかないよ・・・」
大天使ミカエル「あーもー、意気地なし!」
アトラス「痛っ!」
アトラス「何するんだ!」
大天使ミカエル「それでも追いかけるのが男の子でしょ!」
大天使ミカエル「ほんっと最近の男は世話が焼けるわ!」
大天使ミカエル「ほら、足が早くなる魔法をかけてあげたわ」
大天使ミカエル「さっさと追いついて 「俺のそばにいろ!」って抱きしめなさい!」
大天使ミカエル「それとこの魔法は長くはもたないから急ぐのよ!」
アトラス「くそっ!」
大天使ミカエル「ふふっ さあ私にロマンチックを見せてちょうだい♪」

〇森の中
  はぁ・・・はぁ・・・
  どうせ魔法をかけるなら
  ジャンヌのもとへワープさせてくれよ・・・

〇けもの道
アトラス「はぁ・・・はぁ・・・」
「グルルルル」
アトラス「くそっ! こんなときに──」
アトラス「速い!」
アトラス「ぐあっ!」
  ──右腕を噛まれた
  牙が体に食い込んでいく
  左手で狼を殴るがビクともしない
  このままじゃ腕を持っていかれる
  狼の目をつぶして、どうにか逃げれた

〇けもの道
  はぁ・・・はぁ・・・

〇湖畔の自然公園
  水辺のほとりに
  焚き火と野宿をしている人影が見えた
アトラス「いた!」
アトラス「よかった! 間に合った!」
召使「な、なんだね 君は・・・」
  馬車の主人が驚いているが、
  構っている場合ではない
アトラス「ジャンヌ! 君はサキュバスに騙されていたんだ!」
アトラス「今すぐ帰ろう!」
ジャンヌ・ダルク「・・・」
アトラス「ジャンヌ?」


〇湖畔の自然公園
ジャンヌ・ダルク「ふふっ あはは・・・」
ジャンヌ・ダルク「きゃはははははは!!!!!!!!」
アトラス「ジャンヌ!? どうしたの?」
ジャンヌ・ダルク「私は聖女になるの!」
ジャンヌ・ダルク「この国を・・・世界を救うの!」
ジャンヌ・ダルク「みんなが仲良しの 素晴らしい世界が待ってるの!」
ジャンヌ・ダルク「きゃはははははは!!!!!!」

???「・・・」

〇湖畔の自然公園
  なんだ、今の?
  あいつがサキュバスか?
  ジャンヌはあいつに操られてる・・・?
アトラス「目を覚ますんだ、ジャンヌ!」
ジャンヌ・ダルク「みんなの幸せを 邪魔するやつは敵だよ~」
アトラス「ぐあぁぁぁ!!!!」
  な、魔法!?
  いつものジャンヌじゃない・・・
ジャンヌ・ダルク「これでも喰らえ~ きゃははははは!!!!!」
アトラス「待って話を・・・」
ジャンヌ・ダルク「ばいば~い」
アトラス「──ガハァ、ア・・・」

  ──ヤバい、意識が飛ぶ・・・
  こんなことになるなら、
  プロポーズをすればよかった・・・
  僕の想いは初めて会ったあの日から
  変わってないって伝えればよかった・・・

〇草原
ジャンヌ・ダルク(10歳)「初めまして。私はジャンヌ! 君は?」
アトラス(10歳)「ぼ、僕はアトラス・・・」
ジャンヌ・ダルク(10歳)「アトラス君っていうんだ。 よろしくね!」
  ──ジャンヌ・・・

〇華やかな広場
ジャンヌ・ダルク「話って何?」
アトラス「えっと・・・ その、なんというか──」
ジャンヌ・ダルク「?」
アトラス「ジャ、ジャンヌ・・・」
アトラス「ジャンヌのことが好きです。 僕と付き合ってください!」
ジャンヌ・ダルク「えええええ!?」
ジャンヌ・ダルク「ほんと? 私でいいの!?」
アトラス「ジャンヌ以外、考えられない!」
ジャンヌ・ダルク「嬉しい! よろしくね、アトラス!」
  ──ジャンヌ・・・

〇暖炉のある小屋
ジャンヌ・ダルク「今日は冷えるね・・・」
ジャンヌ・ダルク「寒いな~ 誰か温めてくれないかな・・・」
ジャンヌ・ダルク「──アトラス、好きだよ。 ギュッてして・・・」
  ジャンヌ、ジャンヌ、ジャンヌ!

  ジャンヌ、僕は諦めない
  君を死なせなんてしない・・・
  必ず・・・未来を変えてみせるから・・・

次のエピソード:エピソード2

コメント

  • このままジャンヌが取り憑かれたままなら、大変なことになってしまいますよね。
    アトラスもこのままだとジャンヌに…。
    戦闘シーンとか迫力があってすごくよかったです。

  • ジャンヌの勇敢さと儚さがすごく伝わりました。アトラスを想う気持ちも、民の為にひと肌脱ごうとする気持ちも、彼女が女性だからこそよりドラマチックなストーリーになっている気がします。ハッピーエンドとなるのか、ワクワクします。

  • ジャンヌ可愛い!けど、結末が気になりすぎて早く続きが読みたいです!どうかハッピーエンドでありますように...!

コメントをもっと見る(6件)

成分キーワード

ページTOPへ