《エデン》

草加奈呼

エピソード2 旅立ちと約束(脚本)

《エデン》

草加奈呼

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〇英国風の部屋
  カートの転移呪文で、遠方まで飛ばされてしまった風華。
  そこで出会ったのは、海賊の紅蓮とヴァルキュリアだった。
  風華は、モステアへ戻らなければならないと言うが──
風華「私は、モステアへ戻って、 カートを止めなければ・・・!」
紅蓮「カートって誰だ?」
風華「カートは・・・」
風華「カートは、魔術の封印を解いた者です」
紅蓮「なんだって!? 魔術の封印を・・・解いただと!?」
ヴァル「魔術って・・・。 大昔に封印されたって、あれだろ?」
紅蓮「俺の親父の代にも魔術の封印は解かれているから、そんな大昔の話じゃない」
紅蓮「とにかく、 その魔術の封印が解かれたって事だよ!」
紅蓮「そうか、そうだったのか! なるほど、どうりでこいつが騒ぐわけだ」
  紅蓮が取り出したのは、紅く輝く宝玉がはめられた、両刃の剣だった。
風華「そ、それは、焔の宝玉では!? という事はこれは、神具のひとつ!?」
紅蓮(魔術の事だけでなく、宝玉や 神具の事まで知っている・・・?)
紅蓮「風華、君は一体、何者なんだ?」
風華「私は、モステア王国の第一王女であり、 アイ=リーン様の子孫です」
「モステアの王女様!?」
「こ、これは、とんだ御無礼を・・・!」
風華「かまいませんよ」
風華「その宝玉と神具を持っているという事は、あなたもアイ=リーン様の子孫なのでしょう?」
風華「少なくとも、あなたと私は、 遠い親戚のはずです」
紅蓮「俺が、王族と親戚・・・」
ヴァル「いや、めちゃくちゃ遠い親戚だから」
風華「あなたは、焔の能力をお持ちなのですね」
風華「私は風の能力を受け継いでいますが、」
風華「カートに宝玉を奪われてしまって、 自然をうまく操ることができません」
風華「だから・・・私はモステアに 戻らなければならないのです」
風華「カートは、もうモステアにいないかも しれませんが、」
風華「私が受け継いだ神具が、 モステア城にあるはずなんです」
紅蓮「なるほど」
紅蓮「もしかしたら、俺と王女が出会ったのは、 アイ=リーン様の御加護かもしれないな」
紅蓮「・・・・・・・・・」
紅蓮「おっし! 俺も行くぜ!」
ヴァル「えっ!? 行くって、まさか・・・」
紅蓮「魔術の封印が解かれたって事は、 この《エデン》の危機だ」
紅蓮「だから、この宝玉が 光って警告してたんだよ」
紅蓮「魔術の封印は、神具を扱える アイ=リーン様の子孫にしかできない」
紅蓮「だから、俺は王女と一緒に行く!」
ヴァル「急にそんな事言われても! こっちの仕事はどうするんだよ!?」
紅蓮「セザックがいるだろ」
紅蓮「あいつは親父の代からここにいるんだ。 俺なんかより、しっかりこなしてくれるさ」
ヴァル「いや、でも・・・!」
風華「ヴァルさん、 紅蓮さんの事が、心配なんですね?」
ヴァル「うえぇぇえっ!?」
ヴァル「い、いや、心配は心配だけど、こいつが 迷惑かけないかって心配で・・・!」
風華「ふふ、わかりますよ。 恋する乙女は辛いですよね」
ヴァル「うぇわぁあああああ!!」
紅蓮「なんの話だ?」
ヴァル「紅蓮のアホッ!! 勝手にどこへでも行きやがれ!!」
風華「紅蓮さん・・・」
紅蓮「まあ、あいつの事はいいや。 俺は、王女についていくからな!」
風華「ついてきてくれるのはありがたいのですが、」
風華「ちゃんとヴァルさんやお仲間のみなさんと、話し合ってからにしてくださいね」
紅蓮「お、おう」
紅蓮「ところで、俺の事は紅蓮でいいぜ。 敬語もなしの方がいい」
風華「では、私も『王女』ではなく『風華』 と呼んでください」
風華「あっ、敬語は・・・ がんばります」

〇兵舎
  クイクの港町
  
  海賊のアジト内
モス「頭領から、話があるって・・・?」
テリー「一体、なんだろうな?」
紅蓮「みんな、聞いてくれ!」
紅蓮「俺は、アイ=リーン様の子孫としての 使命を果たしに行くことになった!」
紅蓮「俺の代わりは、セザックが引き受けて くれるから、安心してくれ!」
  紅蓮の右腕 セザック
セザック「みなさん、よろしくお願いします」
モス「セザックさんなら、文句言えねーな」
テリー「ああ、先代から仕えてるらしいからな」
「・・・・・・」
(セザックさんて、 一体いくつなんだ・・・?)
セザック「風華さん、坊ちゃんの事、 よろしくお願いします」
風華「こちらこそ、助けていただいた上に紅蓮を 連れ出す事になってしまって・・・」
セザック「この《エデン》を救うなんて、 カッコいいじゃないですか!」
セザック「坊ちゃんには、ぜひこの旅を通じて 成長して帰ってきてほしいです」
紅蓮「だから、”坊ちゃん“はやめろって」
  紅蓮の旅立ちを祝って、しばしの間、ささやかな食事と歓談を楽しんだ────
ヴァル「・・・・・・・・・」
ヴァル「紅蓮」
紅蓮「おう、どうした?」
ヴァル「気をつけてな。 ・・・無事に帰って来いよ」
紅蓮「ああ。 ヴァルも、体調や怪我には気をつけろよ」
ヴァル「あ、あとさ・・・」
紅蓮「うん?」
ヴァル「じ・・・10年前の約束! 忘れんなよ!」
紅蓮「え、おい!?」

〇ヨーロッパの街並み
  クイクの港町
  
  乗合馬車乗り場
  食事の後、皆に見送られ、紅蓮と風華は乗合馬車の乗り場まで来た。
  雪国育ちの風華にとって、この町の雰囲気や潮の香りはとても新鮮だったが、ゆっくりと観光をしている時間はなかった。
風華「ねぇ、約束ってなんなの?」
紅蓮「約束?」
風華「ほら、さっきヴァルさんが言ってた・・・」
紅蓮「ああ、たいした事じゃないって!」
風華「たいした事じゃなくても・・・ 約束は守らなきゃだめよ」
紅蓮「うん?」
  それが風華にとって深い意味のある事とは、紅蓮にはわかっていなかった。
紅蓮(ところで俺・・・ ヴァルと何を約束したんだっけ?)
紅蓮(言ったら多分、 殺されそうな気がする・・・)

〇西洋の街並み
  ホンカルト領 国境
  
  イージスの町
紅蓮「ようやく着いたー!」
紅蓮「ここから、 モステア行きの馬車が出てるんだ」
風華「じゃあ、もう少しでモステアなのね!」
「だーかーらー! オレは今すぐモステアに 行かなきゃいけないんだって!」
風華「あら・・・? どうしたのかしら?」
紅蓮「厄介事じゃなきゃいいけど・・・」
兵士「だーかーらー! さっきから何度も言ってるけど」
兵士「モステアは今大変な事になってるから、 子どもだけでは馬車に乗れないんだよ!」
???「子ども子どもって、 オレはこう見えて15歳だぞ!」
兵士「充分子どもだ!!」
???「くっそー! 話のわっかんねぇ兵士だな!」
兵士「話のわからんガキだな!」
兵士「とにかく、ダメなものはダメだ!」
兵士「ほら、他のお客の邪魔だから、 どいたどいた!」
???「うう〜っ」
???「くっそ〜 追い出された!」
風華「君、どうしたの?」
???「オレ、モステアに行きたいのに、兵士が ダメって言うんだ! 子どもだからって!」
???「オレ、どうしてもモステアの北にある、」
???「雷光山《らいこうざん》に 行かなきゃならないのに!」
紅蓮「雷光山? 風華、知ってるか?」
風華「ええ、たしかに、モステアの北には 雷光山があるけど・・・」
風華「君、雷光山に何の用があるの?」
???「聞いて驚け!!」
???「オレは、なんとあの平和の女神、 アイ=リーン様の子孫なんだぜ!」
「えっ!?!?」
  アイ=リーンの子孫と名乗るこの少年、
  一体何者なのか──?

次のエピソード:エピソード2.5 番外編ヴァルとセザック

コメント

  • 物語が動き始めてワクワクする反面、
    恋愛方面を思うと切なくて「うあー!」となります!
    (私は男性側からみる女性の聖女感が大好きです。対の相手に焦がれる的な……妄想です。)

    ↑↑↑
    勝手にカップリングして妄想してますが、これからの展開を楽しみたいと思います(*^^*)

  • わーいわーい、少年でてきた!
    お目付け役も可愛かったですが、意外に大人なんですかね?

  • 仲間が集まって旅の始まりですね!他にもメンバーがいるのかな。楽しみにしています。

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