《エデン》

草加奈呼

エピソード1 はじまりと出会い(脚本)

《エデン》

草加奈呼

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〇謁見の間
  モステア王国
  
  モステア城 城内
  モステア国王
国王「くっ、カート、貴様! こんな事が許されると思っているのか!?」
  カート=フォルツァル
カート「・・・・・・・・・」
国王「まさか、 魔術の封印を解いていたとは・・・」
国王「わかっているのか!? 魔術は、その身を滅ぼす事になるぞ!!」
カート「ふ・・・。 俺の事より、王女の心配をなさっては?」
国王「まさか・・・風華まで・・・!?」
カート「モステア王・・・安心なさってください。 風華には、何もいたしません」
カート「今はまだ・・・ね・・・」
「ぐ、ぐああああああああっ!!」
カート「王よ・・・ どうか、安らかに・・・」

〇牢獄
  モステア城内 地下牢
  モステア王国第一王女 風華《ふうか》
風華(城内が静かになった・・・)
風華(お父様は・・・? 城のみんなは、どうなったの・・・?)
風華「平和の女神、アイ=リーン様・・・ どうか、城のみんなを・・・ 民をお守りください・・・」
  風華が祈りを捧げていると、コツコツと足音が近づいてきた。
風華「カート・・・」
風華「どうして、私だけこんな所へ? お父様は・・・城のみんなは・・・?」
風華「それに、私の宝玉を返して。 それは、あなたが持っていても何の 意味もないわ」
カート「風華、ここから逃げろ」
風華「えっ?」
カート「もうすぐ、この国は滅びる。 おまえだけでも逃げるんだ、風華」
風華「カート、あなたはどうするの?」
カート「俺は・・・」
  カートは、懐から剣を取り出し、風華に差し出した。
カート「風華、俺を殺しに来い」
風華「えっ?」
カート「俺を憎め。 俺を・・・追って来い」
  カートは、半ば無理矢理剣を風華に持たせた。そして、転移呪文の詠唱を始めた。
風華「これは・・・魔術の転移呪文!? カート、あなたまさか・・・!」
風華「カート! あなたはなぜ、風の使い手で ありながら、魔術の力を・・・!」
「カート・・・ッ!!!!」
カート「俺の・・・ 理性があるうちに・・・っ」
  その日、モステア王国は一人の男によって滅ぼされた。
  国王は殺され、王女は行方不明と報じられた。
  生き残った家臣、民達は散り散りに避難。
  そして、カートはモステアから姿を消した──。

〇地球
  その昔、まだこの星に人類がいなかった頃────
  3人の神が降り立ったと言われている。
  3人は、この星を《エデン》と呼んでいた。
  自然を愛するアイ=リーンは、《エデン》に生命をもたらした。
  アイ=リーンは、後に平和の女神として崇められた。
  アイ=リーンと共に降り立ったヨシ=ノイチは、世界を均衡に保つための神具と、その力を発揮させる宝玉を造った。
  ヨシ=ノイチは、後に創造の神として崇められた。
  アイ=リーンの妹、セ=シル。
  セ=シルは、《エデン》に降り立つ時に、2人とはぐれてしまった。
  彼女もまた、《エデン》に生命をもたらそうとしていた。だが、彼女は運が悪かった。
  《エデン》に生息する者はいないと思っていたところに、その生息者に会ってしまったのだ。
  彼は、人間ではなかった。現在では、幻の神獣と呼ばれている生物だ。セ=シルは、その神獣を怒らせてしまった。
  神獣は、プライドの高い生物。セ=シルは、その怒りを解くことはできず、代わりにその身を捧げることになった。
  神獣は、己の身の寿命を知ると、別の生命体に命を吹き込む。その対象が、セ=シルとなった。
  セ=シルは、神獣の角に腹を引き裂かれ、生命を吹き込まれる。
  当然、痛みはあった。死ぬかと思うほど苦しかったが、流れる血液はすぐに止まり、痛みも消えた。
  残ったのは、引き裂かれた傷痕と、腹に宿った子種だけ。子は、普通十月十日で生まれてくるが、神獣は違う。
  神獣は、生まれてくるときに母親が耐えられるよう、年月をかけて力を分け与え、その後、自分の力を蓄えて生まれてくる。
  新たな神獣が生まれてきたのは、20年も後だった。
  人間と変わりのない身体を持ち、背中には翼、額にはかの神獣と同じく角が生えていた。
  セ=シルは恐くなった。少なくとも自分から生まれた子供が、またあのように子種を宿すのかと思うと、ぞっとした。
  セ=シルは、その子供から逃げ出してしまった。逃げて、普通の生活を送った。
  時が経ち、やがて人類が生まれた。セ=シルは優しい男性と出会い、結婚した。
  一方、アイ=リーンもヨシ=ノイチと結ばれていた。
  アイ=リーンとセ=シルの子孫は、自然の力を司り、世界の均衡を保ってきた。
  しかし、いつしかセ=シルは神獣の怒りを買った堕天使と蔑まれるようになり、
  アイ=リーンとセ=シルの子孫は、静かに対立するようになった。
  これは、2人の望むところではなかった。しかし、すでに天命を全うした2人には、どうすることもできなかった。
  風華は、アイ=リーンの子孫の1人。
  カートは、セ=シルの子孫の1人であった。
  2人は、風の能力を受け継いでいた。
  2人は、その事実を互いに知っていたが、争うこともなく兄妹同然に暮らしてきた。
  だが、カートの風の能力が目覚めるのが極めて遅く・・・
  風華を、この国を守れる力が欲しいと欲望が湧き、魔術の封印を解いてしまった。
  魔術は諸刃の剣。その強大な力に耐え切れなければ身は滅び、使えば使うほど身体は傷ついてゆく。
  そして、魔術を手に入れた者は、その身体ごと神具によって封印される運命にある。
  カートは、薄々それに感づいていた。
  神具は全部で8つ。それぞれの能力に合わせた武具。
  それを扱えるのは、ヨシ=ノイチの子孫、つまり、アイ=リーンの子孫。
  風華が、その1人に当たる。
  あとの7人はわからない。だが、過ちを犯してしまった以上、カートは罪を償わなければならない。
  それが、封印されること。アイ=リーンの子孫と、8つの神具によって・・・。
  封印を拒否するなら、カートは風華を殺さなければならない。風の力ではなく、魔術によって。
  それは、カートにはできない。なぜならば、なんのために魔術の封印を解いたのかわからなくなってしまうからだ。
  魔術の封印を解いたのは、風華のため・・・。風華を守るため・・・。
  それなのに、どうしてこのようなことになってしまったのだろうか・・・。

〇英国風の部屋
  ???の町
「ん・・・」
「ここ・・・は・・・?」
  風華が目覚めると、どこかの家の一室だった。
(そうだ、私・・・ 確か、カートの転移呪文で・・・)
ヴァル「あっ、気がついた!?」
ヴァル「ねぇねぇ。大丈夫? あんた、 この近くの海岸で倒れてたんだよ?」
ヴァル「おーい、紅蓮! さっきの子、気づいたよ!」
紅蓮「大声出すなって。 昨日の酒が抜けてなくて、まだ・・・」
紅蓮「・・・・・・」
紅蓮「ハ、ハジメマシテ、 ボク、グレンといいまス」
ヴァル「こらこらこらこら!」
ヴァル「ったく、かわいい子の前で緊張するクセ、 いつになったら治るんだよ」
  風華は、どうやらこの2人に助けられたようだ。
  海賊の一味 ヴァルキュリア
ヴァル「自己紹介しとくよ。 あたいは、ヴァルキュリア。 ヴァルって呼んでよ」
  海賊の頭領 紅蓮《ぐれん》
紅蓮「俺は、紅蓮だ。 この辺りを取り仕切っている頭領だ」
風華「私は、風華と申します。 助けていただき、ありがとうございます」
紅蓮(汚れてはいるが、 随分と身なりのいい子だな。 どこかのご令嬢か?)
風華「あの、ここはどこなのでしょうか?」
ヴァル「ここは、クイクの港町だよ」
風華「クイク・・・ ここから、モステアまでは遠いのですか?」
「モステア!?」
紅蓮「いや、まあ、行けなくはないけど、 乗合馬車を乗り継いでも、数日はかかるな」
風華「私は、どうしてもモステアに 戻らなければならないのです」
  カートを止めるため。
  魔術を封印するため。
  風華は、意を決するように、ボロボロになったドレスの裾を、ぎゅっと握りしめた。

次のエピソード:エピソード2 旅立ちと約束

コメント

  • ずっと気になっていた作品、遅ればせながら読ませて頂きました~😆
    設定とかめっちゃ好みです✨
    信頼してた男の謎の裏切りとか、今後出会うだろうたくさんのイケメンとか、小説やマンガにしても面白そうですね❗
    地の文が多いけど読みやすかったです😉

  • これはガチファンタジー!
    世界観が凝っていて、続きが気になる作りです。

  • わー!これからどうなっていくのか!気になる展開です!!

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