わたしのトナカイ

咲良綾

【前編】変質者!?いいえ、トナカイ(脚本)

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咲良綾

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〇氷

〇英国風の部屋
  12月22日
ニナ「あれ、泣いてた・・・?」
ニナ「ニコラウスおじいちゃんの夢見ちゃった。 クリスマスも近いから、思い出しちゃうのかな」
ニナ「いよいよ明後日がクリスマス。 お仕事ラストスパート、頑張らなきゃ!」
  ここは人間界とは隔絶した聖地。
  わたしはサンタクロースの後継者、ニナ。
  5年前、先代のニコラウスおじいちゃんが
  亡くなってからは1人で・・・
  正確には1人と1頭で、
  サンタクロースのお仕事を頑張っている。
ニナ「!?!?」
謎の男「ニナ!」
  だ、誰!?どうやって聖地に入ったの?
  っていうか・・・
ニナ「キャーーー!!変質者ーーー!!!」
謎の男「ええ!?どこ!?」
ニナ「どこって・・・あなた以外の誰がいるのよ!!」
謎の男「僕!? 僕は変質者じゃないよ!」
ニナ「女の子の着替え中に裸で飛び込んで来る男って、どこからどう見ても立派な変質者でしょ!」
謎の男「でも僕、今までもしょっちゅう ニナが着替えるところ見てたよ?」
ニナ「今までもって・・・覗き常習犯!?」
ニナ「嫌あああっ!カイ、助けてー!!」
謎の男「はい!」
ニナ「カイー!どうして来ないの、カイ!」
謎の男「来てるよ!」
ニナ「まさか・・・あなたカイに何かしたの!?」
謎の男「だから、僕がカイだよ」
ニナ「私が呼んでるのはうちで飼ってる トナカイのカイよ!」
謎の男「だから、僕がここで飼われてる トナカイのカイなんだよ、ニナ!」
ニナ「・・・え?」
カイ「僕、人間になったみたいなんだ」
ニナ「ええええええ!?!?」
カイ「なんか、人間ってヘンな感じだね。 前しか見えないし、ひょろひょろしてるし」
カイ「でも、ニナとお話できるの嬉しいな」
ニナ「(ぱくぱくぱく)」
カイ「人間の言葉を覚えても、 トナカイの口じゃ喋れないんだよね」
ニナ「な、な、なんっ・・・ なんでカイが人間になるのよー!!」
カイ「わかんない。朝起きたら、なってたんだ」
ニナ「そんな、どうしよう・・・!」
カイ「どうしたの、ニナは僕が人間だと嫌なの? それとも僕、すごくヘンな顔?」
ニナ「嫌とか顔とかの問題じゃなくて・・・」
ニナ「とにかく、一度出て行って、服を着てー!」

〇英国風の部屋
ニナ「ニコラウスおじいちゃんの服が なんとか着られて良かった・・・」
カイ「僕、ニコラウスさんに見える?」
ニナ「全然」
カイ「えー」
ニナ「・・・ところで、 こうなった理由に心当たりはないの?」
カイ「ないけど・・・ 僕が人間になったら、どうしていけないの?」
ニナ「どうしてって・・・ あなた、その姿でそり引ける?空飛べるの?」
カイ「ち、ちょっと待ってて」
カイ「そりはなんとか引けるけど、飛べない・・・!」
ニナ「やっぱり・・・! どうしよう、クリスマスはもう明後日なのに!」
ニナ「まだカイの後継者は見つかってないし、 聖獣として養育する時間もないし・・・」
カイ「そうか・・・僕、そこまで考えてなかった。 無責任に喜んじゃってごめんなさい」
ニナ「カイが謝ることじゃないけど・・・ でも、本当にどうしよう」
カイ「僕、トナカイに戻る方法を探すよ」
ニナ「それしかないよね・・・」
カイ「でも、どうしたらいいんだろう」
ニナ「サンタの日記を見てみましょう。 歴代のトナカイで、そういう事例があるかも」
カイ「そっか、なるほど」
カイ「・・・あ、でも僕、字が読めない・・・」
ニナ「サンタ以外に知られてはいけないものだから、読めない方が都合がいいわ」
ニナ「『トナカイ』と『聖獣』という字だけ 教えるから、それを探して」
カイ「わかった。僕頑張るよ!」

〇古書店
ニナ「ふう、やっと三代前の分を チェックし終えたわ・・・」
カイ「ニナ、『トナカイ』と『聖獣』が出てくる日記に付箋をつけたよ!」
ニナ「あ・・・ これはニコラウスおじいちゃんの日記ね」
  聖暦8201年3月14日
  ついに、後継のトナカイを見つけた。
  連れ戻って孫娘に見せると、そのまだ幼いトナカイがいたく気に入った様子。
  舌足らずな声で、トナカイと言いたがって「カイ、カイ」と言っていた。
  新しいトナカイの名前は、カイにしよう。

〇美しい草原
  聖暦8201年9月8日
  聖獣の儀式を済ませ、カイは聖なる時間軸の中に身を置くこととなった。
  カイは孫娘と同じくらい生きるだろう。

〇英国風の部屋
  聖暦8207年6月15日
  サンタクロースは各地で伝説化し、
  架空の職業になりつつある。
  だが人々は益々渇いている。
  私は命の限りサンタの仕事を全うするだろう。
  与えるのが小さな喜びであっても、
  感謝などされなくとも、
  私はこの仕事を、荒んだ世界の中の良心であり、凍える冬に灯る温かみだと誇り続ける。
  気がかりは後継者だ。
  息子は妻の看病で聖地を去った。
  預かった孫娘が興味を示しているが、
  このまま仕事を教えてもいいのだろうか。
  聖獣との相性には目を見張るものがある。
  素質は充分なのだが・・・

〇大樹の下
  聖暦8212年10月3日
  ペーターが召された。
  彼は立派なトナカイだった。
  私の限界も近いようだ。
  ペーターを失って泣く孫娘を見ると辛い。
  孫娘は下界へ降りず、サンタを継ぐ気でいるようだ。だが聖地にはなにぶん、人がいない。
  孫娘の今後が心がかりでならない。
  花の精には荷が重い。
  森の賢者はあの場を動けない。
  カイはまだ若い。
  孫娘を支えきれるだろうか。

〇古書店
ニナ「ニコラウスおじいちゃん・・・」
カイ「・・・ニナ」
ニナ「!?」
カイ「よしよし、ニナはいい子だ」
カイ「ニコラウスさんの真似。 ニナが泣いたらこうしてたよね」
カイ「僕も人間だったらやってあげられるのにって、ずっと思ってたんだ」
  人のぬくもりって、すごく久しぶり・・・
カイ「ニコラウスさんの手はあったかくて大きかったよね。ニナの頭なんかすっぽり収まってさ」
カイ「僕の手、人間になってもまだ足りないね。 ごめんね」
ニナ「・・・別に、足りなくはないよ。 カイの手も、優しい」
カイ「本当?嬉しいな」
  ニコラウスおじいちゃんとは抱かれ心地が
  全然違ってドキドキするけど・・・心地いい。
カイ「ニナの頭を撫でて、 ニコラウスさんの話をして・・・」
カイ「僕、これが一番やりたかったんだ」
  わたしも、こんな相手が欲しかった
カイ「僕の願いは叶った。 だから、明日の朝には戻ってるかもしれないよ」
ニナ「そう・・・だと、いいね」
  そうよ、カイはトナカイに戻らなきゃ。
  今年のクリスマスに仕事ができない。
カイ「落ち着いた? じゃあ僕、頑張って残りの日記を調べるね」
ニナ「いいよ、もう遅いし、疲れたでしょう」
カイ「でも・・・」
ニナ「明日の朝には戻ってるかもしれないでしょう?」
ニナ「それより、今夜はニコラウスおじいちゃんの話をしたいの」
カイ「・・・うん!」

〇英国風の部屋
  12月23日
カイ「ニナ、おはよう」
ニナ「・・・今日も人間、だね」
カイ「そうみたい。今日も続きを調べなきゃね」
ニナ「今日はサンタに伝わる秘術の本を見てみる。 聖獣を変化させる秘術があるかもしれない」
カイ「そっか、なるほど」

〇古書店
カイ「ニナ、何かいい情報はあった?」
ニナ「ううん、まだ・・・」
ニナ「あっ、あった!人間を聖獣にする方法!」
カイ「本当!?」
ニナ「あ、でも1時間で元に戻っちゃうみたい・・・ 1時間ごとにかけ直せば、仕事できるかな?」
カイ「じゃあ、早速試してみよう」
ニナ「うん」

〇古書店
ニナ「・・・で、これをこうして」
ニナ「えい!」
ニナ「えええええええーーー!!!」
  次回へ続く

次のエピソード:【中編】手の温もりとやさしい声

コメント

  • 丸太、丸太が飛んできました…🤣
    続き続き!

  • 面白かった…。
    おじいちゃんの手紙の言葉がぐっときますね。言葉のセレクトが神過ぎる。
    Twitterで見えてしまった謎のバッドエンド画像は出てこないようですが、どんな終わり方をするのか楽しみです。

  • 懐かしい、そうそうこういう話で……
    ぶっふぉ!!wwww
    あらやだなんて素敵なマッチョメン、いや違うやろww
    綾りん節炸裂していますね(≧∇≦)

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