逃げ切れ!妖狐ちゃん

戸羽らい

#2 処刑(脚本)

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戸羽らい

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〇おしゃれな居間
村娘 アリス「お姉ちゃんの言い分は通らないよ〜。 だって──」
村娘 アリス「人狼が2匹いるなら、1匹だけ後から来ていてもおかしくないもん」
村娘 アリス「最初の1匹が村を襲って・・・後からもう1匹、仲間の狼がやってきた。これで辻褄が合うじゃん」
踊り子 フォクシー「ぐぬぬ・・・」
踊り子 フォクシー「でも、村のほとんどの人が殺されたんでしょ? 1匹じゃ手に負えないんじゃないの?」
冒険者 マーベリック「お前人狼ナメてんのか? あいつらは化け物だぞ」
冒険者 マーベリック「かつて1匹の大狼が1つの村を滅ぼしたこともある。本来なら村の人間を皆殺しにすることすら容易いんだ」
踊り子 フォクシー「じゃあなんで君たちは生きてるの?」
医師 クランツ「・・・習性だ。彼らはあえて何人か殺さずに残し、その中に紛れ、人間同士の争いを眺めながら悦に浸る」
医師 クランツ「そういう残忍な生き物なんだ」
村長 ゴードン「何を言っとるんじゃ? わしらが生き残ったのは龍神様の加護のおかげじゃぞ」
商人 ルドルフ「人狼の習性とかそんなんどうでもええねん。もっと生産的な話をしよや」
僧侶 アルカ「そうですよ。今日、誰を処刑するか。それが一番大事です」
踊り子 フォクシー「うぅ。やっぱり処刑するんだ」
神父 ランド「仕方ないよ。それが、人狼が出た時のルールなんだから」
踊り子 フォクシー「人狼じゃない人を殺しちゃうかもしれないのに?」
神父 ランド「そうだね」
踊り子 フォクシー(そんなの、あんまりだよ)
踊り子 フォクシー「えーと、神父さん? はそれでもいいの?」
神父 ランド「「それでもいい」と言うよりは「それしかない」と考えてるかな」
神父 ランド「僕たちが人狼に対抗できる手段はこれしかないんだ」
踊り子 フォクシー「・・・」
神父 ランド「・・・そうだ。皆さん、フォクシーさんのためにも、改めて自己紹介をしませんか?」
冒険者 マーベリック「あぁ? なんでそんなやつのために」
村娘 アリス「いいんじゃない、自己紹介。人狼は誰かに化けてるわけでしょ。もしかしたら自分の名前すら把握してないかも」
冒険者 マーベリック「・・・俺は冒険者のマーベリック。以上」
村娘 アリス「村娘アリスだよ〜」
医師 クランツ「医師のクランツだ。怪我をしたら私が診てあげよう」
村長 ゴードン「村長のゴードンじゃ」
格闘家 バロン「格闘家のバロンです。よろしくお願いします、フォクシーさん」
僧侶 アルカ「僧侶のアルカですが何か?」
商人 ルドルフ「商人のルドルフやで〜。儲かりまっか〜」
神父 ランド「僕は神父のランド。まあ、神父と言っても形だけだけどね」
踊り子 フォクシー「・・・みんな、よろしく」
冒険者 マーベリック「俺はお前とよろしくするつもりはない」
冒険者 マーベリック「疑いが晴れない以上、今日はお前を処刑する。何か言い残す言葉はあるか?」
踊り子 フォクシー「・・・なんでそうなるの? 君たちが言ってることって全部憶測じゃん」
踊り子 フォクシー「私が人狼だっていう証拠はあるの? 人になすりつけたいだけじゃないの?」
僧侶 アルカ「疑わしきは罰せよ、です。さあ、お縄についてもらいますよ」
踊り子 フォクシー「それを言うなら罰せずじゃ・・・」
神父 ランド「ちょっといいかな?」
神父 ランド「人狼は家族や友人など、慣れ親しんだ人に化けることで、相手の油断を誘う。そういう、狡猾な生き物だと思うんだ」
神父 ランド「そう考えた時に、フォクシーさんに化けるメリットって人狼にとってないんじゃないかな」
冒険者 マーベリック「別に俺たちは元々、そこまで親密だったわけじゃない。誰に化けようが変わらないだろ」
村娘 アリス「・・・まあ、あえて村の外の人間に化ける必要はないね」
冒険者 マーベリック「はぁ?」
格闘家 バロン「あのー、すみません。龍神様の仰っていた、占い師という力は誰が持ってるんですか?」
格闘家 バロン「・・・え? 皆さんどうしました?」
村長 ゴードン「・・・今日の処刑は貴様じゃ。バロン」
医師 クランツ「・・・異議なし」
格闘家 バロン「・・・何で?」

〇おしゃれな居間
村長 ゴードン「占いは龍神様が我々に授けてくださった、とても貴重な能力。そう易々と晒すわけにはいかない」
格闘家 バロン「え、でも狩人に守ってもらえばいいのでは?」
村長 ゴードン「馬鹿者ォ!占い師を名乗る者が一人だけとは限らんじゃろ!」
村長 ゴードン「人狼は絶対邪魔しにくる。もしかしたら“うんこ”も混ざるかもしれん」
村長 ゴードン「確実に護衛されるとは限らない! せめて今日は隠すべきじゃ! 村の要なのじゃから!」
格闘家 バロン「・・・そうですか」
格闘家 バロン「間違って処刑してしまったらまずいかなと」
村長 ゴードン「安心しろ。それはない。何故なら今日はお前を処刑するからな」
村長 ゴードン「異論のある者はおるか〜?」
「異論ない」
「ない」
「ありません」
踊り子 フォクシー「・・・」
村長 ゴードン「お前らァ! こいつを引っ捕らえろ!」
冒険者 マーベリック「村の総意ならしゃーねえよな」
神父 ランド「悪く思わないでくださいね」
格闘家 バロン「・・・」
格闘家 バロン「貴方たちに私が殺せるとでも?」
冒険者 マーベリック「あぁ?」
神父 ランド「・・・そうですね。武力では僕たちに勝ち目はありません」
神父 ランド「でもこちらには──」
村長 ゴードン「龍神様の加護がある」
格闘家 バロン「・・・ふっ」
格闘家 バロン「そういえばそういうルールでしたね」
格闘家 バロン「言わばこれは儀式の最中。毎日一人ずつ、確実に処刑は執り行われる」
格闘家 バロン「それは神が定めたルールであり、人狼も人間も抗うことはできない」
医師 クランツ「非科学的だな」
商人 ルドルフ「でも、その非科学が現実と化しているのがこの空間や」
踊り子 フォクシー(何? どういうこと?)
格闘家 バロン「私は常日頃から、神様とも戦ってみたいと思っていました──ので、素直にやられるつもりはないです」
格闘家 バロン「お手合わせ願いますね」
神父 ランド「・・・」
冒険者 マーベリック「場所を変えようか」

〇洞窟の深部
格闘家 バロン「・・・なるほど。ここなら村に被害は及ばない」
冒険者 マーベリック「これが神の力か。こりゃあ負ける気がしねえ」
格闘家 バロン「──いざ、尋常に」
冒険者 マーベリック「効かねえな」
格闘家 バロン「ぐっ・・・」
冒険者 マーベリック「息巻いていたわりにはあっさりだな。もうちょっと派手な戦闘になると思った」
冒険者 マーベリック「・・・何はともあれ、処刑は完了。館に戻るか」

〇森の中
踊り子 フォクシー「・・・」
神父 ランド「やぁ。こんなところで何してるの?」
踊り子 フォクシー「気分転換に星見てる」
神父 ランド「ここは星がよく見えるからね。僕も気分が優れない時なんかはたまに──」
踊り子 フォクシー「理不尽だと思わない?」
神父 ランド「理不尽?」
踊り子 フォクシー「格闘家さん、別におかしなこと言ってないのに、その場の流れで追放されちゃったけど」
神父 ランド「おかしくはないけど、正しくもなかったからね。仕方ないよ」
踊り子 フォクシー「正しくないって何?」
神父 ランド「みんなにとって正しくない。それはつまり、少数派だったってこと」
神父 ランド「少数派は淘汰されるのがこの世の常なんだ。僕たちが人狼を処刑するのと、同じようにね」
踊り子 フォクシー「少数派・・・」
神父 ランド「でも少数派で言ったら、君が一番かもしれないね」
踊り子 フォクシー「・・・?」
神父 ランド「君、妖狐でしょ?」
踊り子 フォクシー「えっ」

次のエピソード:#3 対抗

コメント

  • 妖狐即バレで吹いてしまいましたw

  • バロンが非占いを実質カミングアウトするのは占い吊らずに済むので、守る力を持ってないなら割と貢献できてるような気もしますね
    みんな儀式に慣れてる…

  • うんこが一番まともに見えるとは、たまけたなあ
    全員キャラが立っていていいですね
    あとバトルがシンプルなのにしっかり武道家の動きになってて感服しました!さすが漫画勢!

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