100日後に死ぬのにマイペースなエリカさん

スヒロン

エピソード1(脚本)

100日後に死ぬのにマイペースなエリカさん

スヒロン

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〇病院の廊下
楠エリカ「あら、城之内くん。 お見舞いにいつも来てくれてありがとうね」
楠エリカ「余命100日なのに、みんなが来てくれて楽しいわ」
城之内マコト「エリカさん・・・僕は伝えたいことがあったんです」
楠エリカ「何かしら?」
城之内マコト「もう気づいてるだろうけど・・・君が好きだ。ずっと前からね」
楠エリカ「ええ?」
城之内マコト「余命なんて関係ないよ。僕と付き合ってください・・・!」
城之内マコト「(よし、エリカさんに告白するために一か月お見舞いにきたし、服装もバッチリだ)」
楠エリカ「あー、ごめん。パス!」
城之内マコト「えええ!?」
楠エリカ「なーんか恋愛って気分じゃないし、そういうのよりスポーツとかをしたいなあ。 サッカーとか野球とか」
城之内マコト「ふ、普通上手くいくトコなのに・・・」
楠エリカ「ごめんねえ、城之内くん。 またいつでも来てね」
楠エリカ「さあ、久々に外出許可だわ。 ミキちゃんとお出かけしましょう」

〇渋谷のスクランブル交差点
楠エリカ「ミキちゃん、おまたせー! こんにちは殺法!」
藤堂ミキ「こんにちは、殺法! ねえ、城之内くん・・・どうだった?」
藤堂ミキ「彼、エリカちゃんのこと相当に好きみたいよ」
楠エリカ「うーん、なんだかいい人そうだけど、タイプじゃないし」
藤堂ミキ「エエエ? バスケ部の二年生エースでお金も身長もあるのに」
楠エリカ「初めて付き合うんだから、一番大好きな人の方がいいじゃない」
楠エリカ「あ、焼きたてメロンパン、たーべよ」
藤堂ミキ「エリカちゃん、マイペースすぎるよお」
楠エリカ「私、お外でメロンパン食べるのが一番大好き! 病室なんて、退屈すぎて死んじゃうよ」
藤堂ミキ「し、死ぬなんて気軽に言わないでえ!」
楠エリカ「あ、そーだね。ごめんね、さあどこに遊びにいこっか?」
藤堂ミキ「USJJとかディスティニーランドも相当に行ったし、どこに行こうかなあ」
柊宗人「・・・もう、世の中なんてどうでもいいんだ・・・」
  少年はつぶやくと、トラックの走る道路へと飛び出した。
藤堂ミキ「ああっ、あぶな・・・」
  エリカは間一髪で少年を抱き留めた。
楠エリカ「何を考えてるの!?」
柊宗人「はなせっ、クソーっ!」
藤堂ミキ「じ、自殺!? 駄目じゃない!」
柊宗人「もう、生きててもしょうがないんだ!」
楠エリカ「ま、そーだよねえ。あんまり意味はないよね。生きてても」
藤堂ミキ「エリカちゃん!」
楠エリカ「けど、お姉さんたちに話してごらん? まだ中学生でしょ? 私らは高校生で年の功があるわ」
楠エリカ「ま、多分、友達がいないとかイジメとか入試に落ちたとか、そういう理由なんでしょうけど」
柊宗人「ぐ・・・なんで分かるんだよ!」
柊宗人「・・・九年間ずっとイジメで、引きこもって勉強してたのに開成高校にも落ちて・・・もう意味ないだろ」
楠エリカ「まあまあ、メロンパンでも食べなよ」
柊宗人「ぐほっ、なんなんだ? 一体・・・旨いな・・・」
柊宗人「焼きたてメロンパンなんて、五年ぶりだ」
楠エリカ「メロンパン食べて、フツーに生きてるだけでいいじゃん。私もそうだし」
柊宗人「一緒にするな! 僕には夢や目標があるんだぞ?!」
楠エリカ「へえー、すごい。どんなの・・・?」
柊宗人「あ・・・官僚になって国の財政を良くするんだ! このままじゃ、日本はデフレになっちゃうからね」
藤堂ミキ「すんごーい、頭がいいんじゃん。開成高校って言ったら、私らの行ってるトコの二倍くらいの偏差値よね」
楠エリカ「へーえ、じゃあ国のこととか色々と考えてるんだねえ」
柊宗人「そうだよ! 何にも考えてない、あんたとは違うんだ!」
楠エリカ「じゃあ、どうして自分のことは考えられないの?」
柊宗人「え・・・?」
楠エリカ「国とかお友達とかのことは、よく考えてるんでしょ? どうして、一番大事な自分のことは大事にできなかったの?」
柊宗人「う・・・それは・・・」
藤堂ミキ「そーだよお? 自殺なんて、駄目! ゼッタイ!」
楠エリカ「けど、なんだか周りが気になっちゃう時期ってあるよねえ、お姉さん分かるわ」
藤堂ミキ「ウソ! エリカちゃん、それだけは何にも分からないでしょ?」
柊宗人「う・・・ん。そうだね」
楠エリカ「さ、メロンパン全部あげるから、もう二度とこんなことしないって約束してね」
柊宗人「メロンパン・・・だけで・・・?」
楠エリカ「生きてる理由なんて、メロンパンだけで十分じゃない」
柊宗人「ふ・・・アハハっ。そうなのかもね・・・」
柊宗人「お姉さんたちと話してたら、くだらないことで死ぬのが馬鹿らしくなってきた」
藤堂ミキ「たち、ってそこ私も含まれるのお?」
楠エリカ「けど、立派な目標があって偉いねえ。 私、本当にそういうの今まで一個もないし」
柊宗人「ただの目標だし、何にも叶ってないよ・・・」
楠エリカ「そうだわ、少年。私は楠エリカ」
柊宗人「あ、柊宋人」
楠エリカ「ねえ・・・ 今、君って恋人はいる?」
柊宗人「ええ? いるわけないだろー」
楠エリカ「じゃあさ、お姉さんと付き合わない・・・?」
柊宗人「エエエ!?」
藤堂ミキ「エリカちゃん!? マジで!?」
楠エリカ「っつっても、お姉さん、後100日しか寿命がないんだけどね。なんだか、宋人くんのことが気に入っちゃって」
柊宗人「な、何を言ってるんだ? からかってるのか? お姉さん!」
楠エリカ「ううん。ちゃんと本気。ね? ちょっと付き合ってみようよ。 きっと、楽しいよ」
柊宗人「ど、同情でそんなことするのか? 僕が友達いないからって・・・」
楠エリカ「どーじょー? ううん、そういうの難しくてわからないけど、私は夢のある宋人くんが気に入ったの。それだけ。駄目・・・?」

次のエピソード:エピソード2

コメント

  • エリカちゃん、こんなに明るくて余命後100日の人の言動にはみえないけど、きっとすでに何かとてつもない痛み苦しみを乗り越えてこうしていられるのでしょうね。誰かに何かを与えられる人は本当に素晴らしいです。

  • なんだか裏表がなくて、でも一番自分と向き合ってる気がしてすごく凄いと思います。
    こんな気持ちの持ちようというか、余裕?とはまた違うかもですが、ゆとりを感じるところがまた魅力ですね!

  • エリカさんのキャラ、とっても好きです。マイペースで達観したところもあり、人情の機微もよくわかっていて。そんな彼女がどんな恋愛をするのか気になります。

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