10,000,000,000 ‐ヴィリヲン‐

在ミグ

第4話 PMSCs(脚本)

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〇荒野
  翌日、僕はARFが集めてくれた情報に従って、件のPMSCsに向かっていた。
  嘗ての列強達が勝手に引いたお陰で、この辺りの国境線はやたらと直線ばかり。
  けれどもそれは地図上の話であって、現実には国境なんてラインは事実上存在しない。
  精々申し訳程度に、この先〇〇国、という看板が立っているだけだ。
  そもそも世界的な食糧難が訪れた事によって、各国の政府はまともに機能しなくなった。
  世界連邦政府が樹立され、管轄を只管細かく分割、
  食糧を配給制にし、国民が不満を漏らさない程度には何とか統治に成功した。
  というか、新婚の夫婦よろしく胃袋を掴まれてしまった僕らは、結局のところ政府に依存するしか生きる術を失っていた。
  それでも政府の手の行き届かない地域は存在する。
  人の欲望は本当に際限がない。
  先史文明を生き延び、暗黒時代を乗り切り、世界大戦も無事に絶滅する事のなかった人類は、
  如何なる手段を以ってしても性欲と食欲を満たしてきた。
  つまり政府の保護下に収まっている良い子ちゃんには真似出来ない方法で食材を入手している連中がいる。
  良く言えば逞しいのだろう。
  しかし取敢えず国際的には犯罪行為であり、それらを取り締まる事で僕は日々の糧を得ている。
  どこまで行っても景色は変わらない。
  ARコンタクトの情報だけが、目的地にたどり着いた事を示していた。

〇組織の本部
  PMSCs
  Private Military and Security Companiesの略で、表向きは民間の警備会社。
  しかし実態は傭兵の派遣企業であり、正規の軍隊が縮小するのに反比例する様に、勢力を拡大していった。
  食糧難時代にあっては、差詰ハンターといったところか。
  予めアポは取ってあるものの、やはり緊張する。
  無断で侵入すれば僕はあっという間に蜂の巣にされるだろう。そういう場所だ。
アメタ「FAOから参りました」
アメタ「食糧監察官のアメタ・オオゲツと申します」

〇校長室
カンナビス「初めまして」
カンナビス「アメジスト・アーマーのカンナビスと申します」
  カンナビス。大麻の事だ。当たり前だが本名ではない。
  PMSCsに所属するプライベート・オペレーター、つまり会社員は皆コードネームを使用するのが通例になっている。
  名前の通りここでも日常的に吸っているのか、マリファナの臭いが立ち込めていた。
  どうでも良いが、会社の事務室には見えない。男の風貌と相まって完全にヤクザの事務所だ。
アメタ「早速ですが、施設の中を案内して頂けますか?」
カンナビス「実はですね、監察官殿・・・・・・」
アメタ「はい?」
カンナビス「ここだけの話にしておいて欲しいのですが・・・・・・」
カンナビス「私共の業務はそれなりにカロリーを消費する訳でして・・・・・・」
アメタ「ええ。大変なお仕事でしょうからね」
アメタ「私も職務上、人工肉を支給して貰っています」
カンナビス「人工肉もそうなんですが・・・・・・」
カンナビス「その・・・・・・」
アメタ「はっきり仰って下さい。監査になりません」
  と言いながら僕は携帯端末を取り出して、これ見よがしに電源を切った。
  記録はしていない、という証だ。
カンナビス「話のわかる方で良かった」
カンナビス「監察官というから、どんな堅物かと」
アメタ「目の前に食糧があるのなら、考える事はみんな同じですよ」
  どうやらそれなりの信用は得られたらしい。
  勿論だが僕はまだ信用していない。
  始めに尤もらしい事を言っておいて、その実裏があるなんてのはザラ。嘘を残している可能性は十分ある。
アメタ「で? 何を隠しているんです?」
カンナビス「実は・・・・・・ 蜂とイナゴを・・・・・・」
  成程、昆虫食だ。
  見た目はアレだが、栄養価が高い上に、省 スペースで育成出来る。
  一時期は取り尽くされてしまったと言われているが、繁殖力の高さは動物の比ではない。
アメタ「中々どうして・・・・・・ 興味深いですね」
カンナビス「お土産に少し、如何ですか?」
  その代わり黙っていろよ、という意味だ。
  物凄くわかりやすい賄賂。
  勿論受け取らない。ここで弱みを握られたら、確実に厄介な事になる。
アメタ「今日はこの後も仕事が入っていますので・・・・・・」
カンナビス「では、もうこれで?」
アメタ「一応、報告書は書かなければいけないので、施設の案内だけして頂けますか?」
アメタ「形式的なもので構いませんので」
カンナビス「ええ、いいですとも。さっさと終わらせてしまいましょう」

〇オフィスの廊下

〇屋上の倉庫

〇施設の男子トイレ

〇古い倉庫の中

〇武器庫
カンナビス「ここが武器庫ですね」
アメタ「おお・・・・・・ 素晴らしい」
  形式だけの調査という事なので、無関心を装ってきたのだが、思わず本音が漏れてしまった。
  何を隠そう、僕は結構な武器オタクである。
カンナビス「監察官殿もお好きで?」
アメタ「嫌いじゃないですね」
カンナビス「訓練場で撃てますよ。宜しければ・・・・・・」
アメタ「いやいや。今は仕事ですから」
カンナビス「では機会があれば、その内に」
アメタ「・・・・・・」
アメタ「ざっとこんなもんですかね?」
カンナビス「そうですね。残る施設は極秘となりますので、然るべき手続きを取ってから、になります」
アメタ「ではこれで査察を終了します」
カンナビス「お疲れ様でした」

〇野営地
アメタ「・・・・・・てな具合だ」
ムルア「全然わからん・・・・・・」
ムルア「つまり白って事か?」
アメタ「いや黒だな」
ムルア「どこにそんな要素が?」
アメタ「・・・・・・どうする? FAOに報告すれば令状を発行出来ると思うが」
ムルア「まさか。ここは私達の国だ。私達で護るさ」
アメタ「だよな」
  しかしまさか報告しない訳にもいかないので、連絡だけは入れておく。
  本部が到着するのは、ARFの作戦が終了した後だ。
アメタ「勝算はあるのか?」
ムルア「何とかするさ」
アメタ「やれやれだな」
アメタ「大体で良い。ARFの戦力を教えてくれ」
ムルア「戦ってくれるのか?」
アメタ「なるべく穏便に済ませるつもりだけどね」

次のエピソード:第5話 蹂躙

コメント

  • いや~、密室での建前と本音を使い分けた腹の探り合い、いいですねぇ!😆 よく考えるとアメタは権力の威を借る狐のようで、違法食料にすり寄るコウモリのようでもあり、ダークヒーローにもなり得そうな何とも絶妙な立ち位置のキャラですね👍 いつか権力に反旗を翻す正ヒーローのルートもある!?
    カンナビスのシャツがまんまなので笑っちゃいました😂
    この頃はたった半年で昆虫食が身近な問題になるとは思いもせず…🤮

  • 武器方面などの知識がないので雰囲気だけで読んでますが、わからないなりにかっこいい~!仮面ライダー見る子どもになった気分です😆
    しかし昆虫は食べたくないなぁ😂

  • カブトムシの幼虫はココナッツミルクの味、セミは焼くと鳥のササミ、ミルワームはピーナッツバターの味…昆虫食、実は気になっています。
    いったい、アメタは誰の味方なんだ?
    続きが気になります!

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