1話完結 ~掌編・詩・ ワンシーン 集~

千才森は準備中

草食獣の証 (悲)(脚本)

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〇山間の集落
  むかし むかし
  大きな山の 深い谷間に
  小さな村が ありました
  村人達は 畑で 野菜を育てたり
  山から 果物を 採ってきたり
  四季の天気に
  明日の糧を 祈りながら
  慎ましく 暮らしていました
  村人達は 全員が
  頭に角を 生やしていました
  彼らは鬼
  人間達からは そう呼ばれていました。

〇古民家の居間
鬼(立派な角が生えているから 自分はこんなに弱いんだ)
鬼(大きな体を持っているから 他の獣に狙われるんだ)
  鏡に映った 自分の姿を
  見ては さめざめ 泣いた鬼
  鋭利に研いだ 石の先を
  太い角の 根元へ向けて
  思いっきり 打ち当てた
  しかし、角には傷の1つも
  付いてなんか いなかった。

〇木の上
鬼(この村には数多く 動物たちが 暮らしているが)
鬼(角の生えてる 動物たちは みんな 草を食べて 生きている)
鬼(草を食べる獣ほど、 体は大きく 育つのだ)
鬼(そして、他の肉食獣に いつかは食べられてしまうのだ)

〇古民家の居間
鬼(こんな角さえなかったら・・・)
鬼(動物を襲い、 肉を食べて 生きていけたなら)
  鬼は毎日 妄想しながら
  玉菜(キャベツ)を食べて 生きていた。

〇黒背景
  そんなある時──

〇けもの道
  見たことのない 動物の群れを
  縄張りにしている 森で 見つけた
???「どうです? お侍さん お館様の御狩りには、うってつけの森でございましょう」
???「人の入っていない、手付かずの森でございますよ。 獣もそこかしこを走っておりましょう?」
???「ふむ、悪くないな これなら腕前の芳しくないお館様でも どうにかなりそうだ」
鬼(なんだ!? あの生き物は!?)
鬼(俺たちと同じく 二足で歩いて 俺たちよりも 少し小柄)
鬼(いや・・・ 待て! まさか──)
鬼(角が! 角が無いぞ!!)
  物陰から 監視していると
???「あそこに!!」
???「ほぅ・・・ 任せな」
???「ふっ!!」
???「やりましたね!!」
???「馬鹿野郎!」
???「一矢で倒れるわけが無かろうに 追え!! 逃がすなよ!!」
  その後・・・
  見たことのない 生き物たちは
  獣を捕らえて 皮を剥ぎ
  火で炙ったのち、
  その肉を 喰い始めた。
鬼(マズい! 肉食獣だ!)
鬼(肉食獣が攻めてきたんだ!!)

〇村の広場
鬼「はあ はあ はあ」
鬼「みんな!! 大変だ 肉食獣だ!」
鬼「肉食獣がこの森に攻め込んできたぞ!!」
村人「何だって!? 本当か!?」
村人「肉食獣が相手だと 丸腰じゃ 無理だ!」
村人「戦うんなら、この樫(カシ)の 摺り子木(すりこぎ)を持って行きな!」
村人「村を頼んだよ、お前さん達!」
  鬼は慌てて 村へと走り、
  男達を かき集め
  クルミを砕く 棍棒を手に
  肉食獣へと 襲いかかった。

〇山間の集落
  こうして 鬼は滅んでいった
  襲いかかった 鬼達は
  動物の肉を 切るための
  恐ろしい 刃物に 討たれ
  村に残った 女子供は
  松明を振る 動物たちに
  火を放たれて 炭に変わった
  こうして 鬼は滅んでいった

〇城下町
  踊れ
  笛吹け
  太鼓を鳴らせ
  世の平定や
  めでたし
  めでたし
  世の平定や
  めでたし
  
  めでたし
  おしまい〆

次のエピソード:肉と営業  (描写)

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