第2話『風の精霊を訪ねて 前編』 (脚本)
〇神社の石段
「うっ・・・」
イブキ「ここが風の精霊の里」
〇新緑
第2話
『風の精霊を訪ねて 前編』
〇屋敷の寝室
イブキ「フウ、頼むよ」
フウ「ダメなものはダメじゃ」
フウ「我が祖父母に会わせるものか」
イブキ「なんでだよ? フウのケチ」
フウ「ケチとはなんじゃ!」
セナ「イブキ、僕に任せて」
イブキ「?」
セナ「これあげるって言ってもダメ?」
フウ「ドングリクッキー!」
フウ(我の大好物じゃが・・・)
フウ「そんなものにつられてたまるか! 我の意志は固いんじゃ!」
セナ「ふーん、残念だなぁ」
セナ「このクッキーはスズおばさんの特製なのに」
フウ「スズおばさんじゃと!?」
フウ(ドングリクッキーを作らせたら 右に出るものはいないという、あの!?)
セナ「フウ君が食べないなら僕が いただいちゃおっと」
セナ「あーん・・・」
フウ「ま、待て!」
フウ「やはり我に・・・」
セナ「『イブキの願いを叶えます』って言えば 考えてあげてもいいけど?」
フウ(くっ、それは無理じゃが・・・食べたい)
セナ「ほら、さっさと言いなよ」
セナ「これが欲しいんでしょ?」
セナ「フ・ウ・くん❤」
イブキ(セナのやつ、ちょっと楽しんでない?)
セナ「誰だ・・・!」
リュウ「きゃっ!」
リュウ「覗き見してごめんなさい」
リュウ「兄がドSに攻められてるのが つい面白くて」
「どえす?」
リュウ「Sっ気のあるシャーマン様」
リュウ「最高です♥」
フウ「ったく、何を訳の分からんことを」
イブキ「フウ、その子もしかして」
フウ「我の妹じゃ」
リュウ「リュウと申しまーす♪ よろしく!」
〇霧の立ち込める森
イブキ「代わりに案内してくれてありがとな」
イブキ「フウに頼んでも全然うなずいて くれないしさ」
リュウ「イケメンのお願いならなんでも 聞いちゃいます!」
リュウ「こうしてお二人が並んでるだけで 眼福なので❤」
イブキ(『いけめん』とか『がんぷく』とか セナが口寄せした精霊も言ってたな)
リュウ「うちの祖母もイケメン好きなので 会ったら喜ぶと思いますよ!」
セナ「てっきり人間嫌いかと思ってたよ」
セナ「どうしてフウ君は会わせようと しなかったのかな?」
リュウ「・・・」
リュウ「多分、兄が会いたくないだけだと思います」
リュウ「ずっと家に帰ってきてなくて」
イブキ「なんかあったの?」
リュウ「実は・・・」
〇桜並木
風の精霊には年に一度の重要な役目がある
それは・・・
春の終わりに
桜の花びらを美しく散らせること
リュウ「昔、私たちの先祖が危険に晒された時 花の精霊が救ってくれて」
リュウ「お礼に桜の花びらを美しく散らせた という伝説があるんです」
リュウ「その名残で今も選ばれた精霊が 散らせるという風習が残っています」
リュウ「今年は兄が務めることになったのですが」
〇桜並木
フウ「はっ!!」
フウ「あれ?」
フウ「もう一度! はっ!」
フウ「なぜじゃ? なぜ散らない!?」
〇霧の立ち込める森
イブキ「上手くいかなかったのか」
リュウ「・・・はい」
リュウ「そのまま故郷から逃げ出して 帰ってこようとしないんです」
セナ「期待に応えられなかった責任を 感じているのかもね」
イブキ「期待・・・か」
〇睡蓮の花園
イブキの父「期待しているぞ」
〇霧の立ち込める森
イブキ(フウの気持ち 俺にはちょっと分かるかも)
「うっ・・・」
イブキ「急に風が・・・」
リュウ「風の精霊の里に着いた証拠です」
〇神社の石段
リュウ「ようこそ!」
「うっ・・・」
イブキ「ここが風の精霊の里」
セナ「すごい風だね」
リュウ「年中こんな感じですよ」
イブキ「そういえばセナ。 精霊の里に来て大丈夫だったか?」
イブキ「またオーラを吸い込まないといいけど」
セナ「さっきは油断してただけ」
セナ「オーラから身を守るまじないを かけてきたから大丈夫だよ」
セナ「心配してくれてありがとう!」
イブキ「べ、別に! 心配してるわけじゃないし」
リュウ(照れながらツンツンしてる狩人様 かわゆし❤)
リュウ(何、今の!? 急に寒気が・・・)
「イヒイヒイヒイヒイヒ」
イブキ「なんだコイツら」
セナ「分からないけどイヤなオーラを感じる」
「イヒイヒイヒ」
リュウ「何!? こっちこないで!!」
リュウ「はっ!」
イブキ「リュウ!」
???「イヒイヒイヒ」
イブキ「こっちにも来た!」
イブキ「おりゃぁぁぁぁぁ!」
イブキ「うぉっ! 避けられた!」
セナ「普通の人間がまともに戦える相手じゃない」
セナ「イブキは隠れてて!」
イブキ「うわっ! セナ押すなって!」
セナ「ウータニウータニ! 攻撃せよ!」
???「ヒィィィィ」
リュウ「・・・っ」
リュウ「私を襲うなんて百年早いんじゃー!」
???「ヒィィィィ!」
???「イヒイヒイヒ」
リュウ「くっ、まだ生き残ってる」
セナ「リュウちゃん!!」
???「ヒィィィィ」
「ハァ、ハァ、ハァ」
セナ「なんとか退治できたね」
イブキ(セナもリュウもめっちゃ強いな)
イブキ(それに比べて俺は・・・)
リュウ「見てください、これ!!」
イブキ「人形? しかも3つ」
セナ「・・・アニミズムの術かもしれない」
イブキ「なんだそれ?」
セナ「人形に魂を宿して 魔物を生み出す術だよ」
セナ「魔物に意思はなく シャーマンのいいなりとなる」
イブキ「どこかのシャーマンの仕業なのか!?」
セナ「可能性がないとは言えないかも」
〇屋敷の大広間
フウの祖父「なるほど」
フウの祖父「この人形が魔物に化け 孫娘を襲ったのか」
フウの祖母「無事で本当によかったわ」
リュウ「シャーマン様のおかげだよ」
フウの祖母「孫を助けてくださったのが こんなイケメンのシャーマンなんてね」
セナ「精霊によく『イケメン』て言われるけど どんな意味なんだろうね?」
イブキ「俺も気になってた。 ムラでは聞きなじみないよな」
フウの祖父「あなた方がここへ来た理由もよく分かった」
フウの祖父「湖を守る精霊がいなくなるとは 奇妙な話じゃな」
フウの祖母「でも御前。五千年ほど前にも 似たような事件があったわよね」
イブキ「本当ですか!?」
フウの祖父「草木の精霊たちがさらわれた時の ことじゃな」
フウの祖母「この辺はみんな枯れ野原になって 大変だったわよね」
イブキ「五千年前にそんなことが!?」
セナ「原因はなんだったんですか?」
フウの祖父「はて? なんじゃったかな?」
フウの祖母「五千年も前のことですしね」
セナ「スイの件と関係あるかもしれないし 一応調べてみてもよさそうだね」
イブキ「そうだな」
「!!」
イブキ「今の声は?」
リュウ「外から聞こえたみたいだけど・・・」
リュウ「またあなたたちなの!?」
フウの祖父「こ奴らがさっき話していた」
イブキ「人形が化けてる敵だ!」
「イヒイヒイヒ」
イブキ「リュウの周りにどんどん集まってくる」
風の精霊1「お師匠様! 大変です!」
風の精霊1「得体の知れない魔物が現れて 若い精霊たちが襲われています!」
フウの祖父「なんじゃと!?」
セナ「若い精霊だけが狙いなのか?」
イブキ「セナ、どうする!?」
セナ「僕はまずリュウちゃんを助けて 精霊たちと一緒に戦うよ」
イブキ「分かった! じゃあ俺はフウを呼んでくる!」
イブキ「俺は戦えないからさ。 代わりをアイツにつとめてもらうよ」
イブキ「里が襲われてると聞いたら さすがに帰ってくるだろうし」
セナ「分かった」
セナ(正直すごく心配だけど・・・)
フウの祖母「若き狩人の方。 話は聞かせてもらいました」
フウの祖母「花を散らせることはできなかったけど 孫は強い子です」
フウの祖母「力が必要だと伝えてください」
イブキ「必ず伝えます!」
イブキ「よっしゃ! 行ってくるぜ!」
セナ「イブキ、待って」
イブキ「なんだ?」
セナ「ちょっとこっち来て」
イブキ「おう」
〇黒
チュッ
〇屋敷の大広間
イブキ「え・・・?」
イブキ(い、今、額に触れたのって・・・)
イブキ(セナの唇・・・!?)
セナ「ウータニウータニ、守護せよ」
セナ「加護のまじない、かけておいたよ」
セナ「これで敵に遭遇しても平気。 しばらく攻撃されずに済むから」
イブキ「な、なんだ、まじないだったのか」
セナ「イブキ?」
イブキ「あっ! えっと、ありがとな!」
イブキ「じゃあ行ってくる!」
イブキ(ただのまじないなのに)
イブキ(なんで俺は緊張してるんだ・・・?)
胸を高鳴らせる
この気持ちが何なのか
イブキはまだ知らない
〇屋敷の寝室
フウ「・・・」
フウ(イブキたちは無事に着いたのじゃろうか?)
フウ(リュウが変なこと言って 困らせてないといいんじゃが・・・)
フウ「って、我はなぜ心配しているのじゃ!?」
フウ「べ、別に我には関係のないことじゃし」
イブキ「フウ! 大変だ!」
フウ「イブキ? どうしたんじゃ?」
イブキ「風の精霊の里が魔物に襲われた」
フウ「なんじゃって!?」
イブキ「リュウもお前の家族もみんな戦ってる!」
イブキ「すぐ助っ人に来てくれ!」
フウ「し、しかし・・・」
フウ「我がなんの役に立つと言うのじゃ? 故郷から逃げ出したのに」
イブキ「そんなこと言ってる場合かよ!?」
イブキ「敵の狙いは若い精霊たちだ」
イブキ「リュウがさらわれてもいいのか!?」
フウ「・・・」
フウ「無理じゃ」
フウ「我にはリュウを守る自信がない」
イブキ「あーもう! ウジウジすんじゃねーよ!」
フウ「!!」
つづく
キスがまじないだと分かった時のイブキのガッカリした顔!本人無意識なんでしょうけど、ああーーっ!ってなっちゃいました(笑)
にしても、今回はイブキのラストの思い切りがカッコよかったです。フウを説得して、無事風の精霊の里が守られますように(;_;)
お話は謎が深まりましたね……攻撃を仕掛けてくるシャーマンは誰なのか、5千年前に何があったのか。気になります〜!
リュウが可愛かったです✨私の気持ちを代弁してくれてました(笑)
あのチュウでイブキにどんな心境の変化が生まれたのか、続きを楽しみにしています♥️