死んで異世界に喚ばれた俺、少女と共に旅に出る

折原那央

俺、死んだの?〜化け物が襲ってきた〜(脚本)

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折原那央

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〇荒野
  見渡す限りの荒野。俺はそんな場所に1人立ち尽くしていた。
(ここ、どこだ・・・?)
  俺は学校から帰ったあと、家でいつも通り過ごして寝ていたはずだ。
(夢・・・? にしてはリアルだ)
  風に吹かれて顔に当たる土埃の感触。ジリジリと肌を焼く太陽の日差しも、夢にしてはやけに現実的だった。
  ざっさっざっ。
  誰かがこちらに向かってくる音がする。
  振り向くとーー。
(女の子──?)
  こちらに向かって歩いてくるのは、俺と似たような歳の少女だった。
  傍らには、大きな馬を引き連れている。
(どこに向かってるんだろう?)
「キミ! どこに行くの──?」
  女の子が気になって思わず手を伸ばす。
「あれ・・・手が透けて・・・」
  彼女に触れようとした手が、体をすり抜ける。
  そして、俺に気が付くことなく、女の子はそのまま歩いていった。
(もしかして、俺が見えてない?)
女の子「・・・」
  険しい表情で歩いていく女の子。
  けれど、何かを決意した、そんな強い意志が瞳に宿っていた。
女の子「私が、アイツを倒すんだ・・・!」
(アイツ? 何のことだ?)
  この子には、倒したい敵がいるらしい。
(何を倒すんだろう?)
女の子「でも・・・倒せるのかな」
  急に少女は不安そうな表情をする。
(困ってる?)
  急に落ち込む少女を見て、俺は動揺する。
(くそっ、何もできない──)
「何を困ってるの? 俺でよければ──」
  手伝いたい、そう思って声をかけたら。
  急に突風が吹く。俺の気持ちを代弁するかのようだった。
女の子「今、声が・・・!?」
女の子「・・・気のせいよね」
(気づいてもらえなかったな・・・)
(でも・・・)
  また会えたら──今度こそ力になりたい。
  そう思った。
「うわっ、目が・・・回るっ!」

〇駅のホーム
タケル「うーん、朝練のない日、ひっさしぶり〜」
  開放感から、背伸びをする。天気も良くて絶好調だ。
  駅のホームは、いつもの登校時間よりも、大勢の人が並んでいた。
タケル(そいや、昨日の夢何だったんだろ?)
  荒野の中、女の子が歩いていた様子を思いだす。
タケル(夢にしては、リアルだったな・・・)
  現実と区別がつかないほどの夢は初めてだった。
タケル(俺あの子に会ったことあるっけ?)
  あんな金髪の美少女、会ったことがあれば、覚えているはずなんだけど。
タケル「まっ、俺の頭じゃ分かんねーな! やめだやめ!」
  もとより、複雑なことは考えられないタイプだ。
  運動バカとか脳筋とか周りには言われてる。
タケル「暇つぶしになんか見るか〜」
  気持ちを切り替えるように、スマホを手に取った。
タケル「あ、メッセージきてんじゃん」
タケル「どれどれ・・・」
  送り主は同級生のナオヤからだった。
  『テスト開けの全国大会の練習、今日特別にコーチがやってくれることになったぞ!』
  と、興奮気味に書いていた。
タケル「まじかよ~、勉強させてくれって」
  はあ、とため息をつく。
  俺のちょっとした特技──剣道は、優秀な指導者と仲間に恵まれたおかげで、全国大会に進むことになっていた。
タケル「ま、何とかなるだろ!」
  体力には自信がある。明日のテストも一夜づけでなんとかすれば問題ない。
タケル「そろそろ電車来るな」
  次の電車が予定通りの時間に来るアナウンスが放送される。
  そのとき──。
小学生「わっ!」
タケル(・・・子ども?)
  小さな声を立てて小学生がホームに落ちる。
男性「なッ!? 今すぐ、緊急停止ボタンを押して!!」
女性「キャ────!!」
タケル「ッ!」
  俺はとっさにホームに飛び降りる。
「せぃッ!!」
  すぐ、小学生の子を掴み──線路の内側に投げる。
「くそっ──!」
  相手は助けられたが──自分は間に合わなかったようだ。
女性「キャァアアァァ!!」
  激しい痛みと、吹き出す鮮血。
  そのまま俺は意識を手放した。

〇荒野
  目を焼くような強い光。
「やった! 召喚成功よ~!」
タケル「んっ──?」
  ぼやけた視界の中、明るい声が聞こえた。
タケル(誰だ?)
  視界がクリアになる。目の前に女の子がいるのが分かった
タケル(この女の子、見覚えがあるような・・・)
  こんな知り合いはいなかったと思うが、どこか懐かしく感じた。
女の子「あ、起きたみたいだね!」
タケル「・・・ここはどこなんだ?」
女の子「ん? ここは山の麓だけど?」
タケル「なんだって!?」
タケル(さっきまで駅にいたはず・・・)
  何をどうしたら、自分が山の中にいることになるのか分からない。
タケル「辺りが暗い・・・?」
タケル「もしかして、夜?」
女の子「そうだけど?」
  その瞬間、弾けるような痛みを感じた。
タケル「ぐぁっ・・・!」
女の子「だ、大丈夫!?」
タケル「俺は・・・あのとき」
  咄嗟に子どもを助けて電車に轢かれた。
  ──までは思い出せるが、それ以降の記憶が無い。
タケル(何で俺は生きてる・・・?)
タケル「おかしい、俺はどうして無事なんだ?」
  打ち所が良くて、助かったのか?
タケル(流石に無傷はありえないだろ・・・)
  それに、あのとき大勢の人がいた。
  どうにもなかったとしても、病院ぐらい行くはずだ。
タケル「なあ、お前俺のこと・・・」
  知っているか、そう聞こうとしたとき
???「グルルルル・・・」
女の子「まさか──?」
タケル「な、何だ!?」

〇荒野
  女の子は前に出て俺を庇う。
タケル「なッ──!?」
  口から、氷弾をまき散らして割り込んできたのは、白い1匹の狼。
  横を見ると、草木が凍てついていた。
  一瞬でものを凍らせるオオカミなんて、聞いたことがない。
女の子「気をつけて! フェンリルよっ!」
タケル(フェンリルだって!?)
  その名は、俺でも知っている伝説上のモンスターだった。
タケル「あいつ、氷みたいなの吐きやがったぞ!? どうなってんだ!?」
女の子「落ち着いて、私が魔法で戦うから──」
タケル「ま、魔法!?」
  彼女は、持っていた杖を高く掲げる。
  ぽう、と彼女が持っていた杖が光を放った。
タケル(嘘だろ・・・?)
女の子「邪悪なるものを退けよ、アーウィ!」
  呪文を唱える女の子。掲げた杖から光の球が出現する。
フェンリル「ガウッ!?」
タケル「やったか!?」
フェンリル「ガルルルルルル・・・」
  更に牙をむき出し、怒りを露わにするフェンリル。
女の子「そんな・・・効いてない」
タケル(このままじゃやられる──)
タケル「なあ、俺も戦えないか! 武器があったら貸してくれ!」
  こんな氷を撒き散らす化け物、俺で何とかできるとは思えないが、やるしかない。
女の子「わ、分かった! 武器は持ってないけど、今から作れるよ!」
タケル「作るって──?」
  どういうことなんだと言う前に、彼女は俺のすぐ横で杖を掲げる。
女の子「武器の形を想像して!」
タケル「あ、ああ!」
  言われるがままに、武器を考える。
  俺は、鋭く鍛えられた刀をイメージした。
女の子「顕現せよ、勇者の誇り。それは困難を打ち砕く希望・・・」
女の子「オルゴイ!」
タケル「な、なんだこれッ!?」
  落とさないように刀の柄を掴むと、それはずっしりと鉄の重みを伝えてきた。
  正真正銘、本物の日本刀だった。
タケル(けど・・・)
  どんな理由だっていい。武器が揃ったのなら、目の前の敵と戦うだけだ。
タケル「武器サンキュな!」
  本物の刀を持つのは初めてだった。じりり、と額から汗がにじみ出る。
タケル(できるできないじゃない・・・こいつを、俺は倒すっ!!)
タケル「さあ──俺が相手だ、化け物!」
  刀を固く握りしめ、化け物と対峙したのだった。

次のエピソード:武器を手にして立ち向かえ!

コメント

  • タケルの正義感と人の好さ、そして女の子の信念の強さが伝わってくる第一話ですね。この2人が今後どのようになっていくのか、次話が楽しみです。

  • 想像した通りの武器を作るのはすごく魅力的だなぁと感じました。
    子供を助けるために飛び込む勇気、きっと異世界でも生き抜くために必要なものですよね。

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