武器を手にして立ち向かえ!(脚本)
〇荒野
フェンリル「グァウ、ガウ!」
フェンリルが、こちらに向かって突進してくる。
タケル「そいッ!」
それを素早く体をひねってかわす。
そして、化け物の胴を切り返した。
タケル「なッ──避けられた!」
当たると思った切っ先は空を切る。
フェンリル「ガウッ!」
今度は俺の腕に噛みつこうとするフェンリル。
タケル「はっ!」
俺は、間一髪のところで、逆方向に跳ぶ。
フェンリル「ギャンッ!?」
フェンリルは勢い余って、地面に転がった。
タケル「っぶね~! 腕持ってかれるところだった!」
女の子「キミッ!」
タケル「何!?」
女の子「先にアイツの足を狙って! 動きを邪魔するのっ」
タケル「そうか! 足を狙えばいいんだな!」
女の子の言うとおり、先に急所を狙うよりも動きを封じる方が先だ。
タケル「分かった!」
刀を構え直して、化け物を睨みつける。
そして地面を蹴り、フェンリルに飛びかかる。
タケル「はぁッ!」
フェンリル「ガルルルゥゥゥ・・・グァッ!!」
フェンリルも同時に地面を蹴り、俺に突っ込んでくる。
タケル「まずは・・・後ろ足だッ!」
俺は刀を足に狙いを定める。
そして斬撃を振りかざした。
フェンリル「ガァッ──」
目を見開き、怯んで後退するフェンリル。
女の子「やった! 攻撃が当たったよ!」
女の子は喜んで声を上げる。
タケル「キミのおかげだって!」
タケル「っと、集中集中」
攻撃が当たったが、まだ致命傷には程遠い。
改めて敵に向き直る。
フェンリル「グルルルル・・・」
足を傷付けられたことで、さらに怒りを露わにするフェンリル。
フェンリル「ガゥッ!」
より、勢いをつけて俺に飛びかかる。
俺の右腹を食いちぎろうと、突進してきた。
タケル「させるかっ!」
俺は、すんでのところで牙から逃れる。
タケル「次は前だっ!」
今度は前足を狙う。
フェンリル「グァッ──」
タケル「よし、当たった!」
フェンリル「ガッ・・・グアッ──」
うめき声を出すフェンリル。
足をガクガクと震わせている。
タケル(このまま押せばいけるっ)
勝ち筋が見えて、喜んでいると──。
フェンリル「ガゥッ・・・ガアアアアッ!!」
フェンリルが、急に飛びかかり、俺の喉元に食らいつこうとする。
タケル「うわっ!?」
避けられない、そう思ったとき。
女の子「危ないッ!」
女の子「動きを止めて・・・」
女の子「シュンクル!」
フェンリル「ギャ・・・?」
そしてフェンリルの動きが一瞬止まった。
タケル「ふぅっ!」
俺は、何とか後ろに引き下がり、攻撃を避ける。
タケル「助かった! ありがとな!」
女の子「よかったぁ・・・」
女の子「守りは任せてっ!」
タケル「ああ、頼む!」
俺は再びフェンリルに向き直る。
タケル「ん? あいつ逃げるのか──?」
化け物は俺たちに背を向けて走っていた。
女の子「フェンリルはそんな臆病じゃ・・・」
女の子「まさか!?」
フェンリル「グァウゥゥウウ・・・」
タケル「周りの様子が・・・」
パキパキと、足下の草が凍る音が聞こえる。
タケル「なんだ、これ・・・」
女の子「私の後ろに来てッ!」
タケル「あ、ああ!」
あまりの剣幕に、驚いて飛び退いた。
フェンリル「グゥゥゥルルルルガアアァァァアア!!」
口から一直線にビームを吐き出した。
タケル「こんなのアリかよッ!」
一瞬で地面を凍り付かせながら、氷の破壊光線は俺たちに迫ってくる。
タケル「くそっ!」
女の子「大丈夫、動かないでっ」
タケル「分かった!」
俺は女の子の後ろに引く。
女の子は杖を掲げた。
女の子「燃やし尽くせ・・・」
女の子「ニーナ!」
女の子の杖の中心から炎が噴出する。
フェンリル「グゥアアアアァアアアア!!」
女の子「はああああああッ!」
杖から噴射している炎が、フェンリルを押し返した。
フェンリル「ガッ・・・」
フェンリルが怯み、一旦攻撃が止む。
女の子「今よ! とどめを刺してっ!」
タケル「ああ!」
俺はフェンリルに向かって、飛ぶように走る。
タケル「はぁぁぁああッ!」
目がけるは怪物の心臓。
俺は渾身の力で、刀を突き刺した。
フェンリル「グァ──」
短くうめいた後、フェンリルは力尽きた。
〇荒野
女の子「倒しちゃったんだ・・・」
緊張が解けたようで、女の子はその場でふらついた。
タケル「大丈夫か?」
俺はそんな女の子に手を差し出す。
女の子「ちょっとびっくりしただけだよ」
タケル「良かった。怪我はない?」
女の子「キミが守ってくれたから大丈夫!」
女の子「あっ・・・そういえば名前聞いてなかったね」
タケル「そうだった! 俺も自己紹介しないとな」
タケル「俺はタケル。キミの名前は?」
ユーヤ「私はユーヤ。呼び捨てでいいよ」
タケル「ゆうや・・・なんか男っぽい名前だな!」
ユーヤ「そうかなあ? 女の子に多い名前だと思うけど・・・」
タケル「へえ、そうなんだ」
タケル(外人さんかな?)
彼女をよく見ると、金髪碧眼の外国人らしい見た目をしていた。
タケル(海外じゃそうなのかな・・・)
そうなのかなと思って、話題を変える。
タケル「さっきの狼、とどめ刺せてるか確認──」
しようとして、振り向くと。
タケル「何だこれ・・・」
フェンリルが光に包まれていく。
足、胴、顔と徐々に薄くなって──。
タケル「嘘、だろ・・・消えちまった・・・」
ユーヤ「そりゃ倒したら、モンスターは消えるでしょ?」
タケル「モンスター・・・」
さっきのフェンリルは、まさしくゲームの中のモンスターそのものだった。
タケル(氷を吐くオオカミ、それにユーヤの魔法・・・)
俺の世界じゃ、フィクションのものだけれど。
当たり前に存在する世界があるのならば──。
タケル「・・・なあ、ここってどこなんだ?」
恐る恐る彼女に聞いてみる。
ユーヤ「ここは神様の山、ヒミンビョルグのふもとだよ」
笑顔で彼女は答えたのだった。
臨場感のあるバトルシーンでしたね!見入ってしまいました!そんな剣と魔法のバトルがあるこの世界について、次話で明らかにされるのでしょうか、楽しみです!