奇譚蒐集(脚本)
〇オフィスのフロア
高村姫子「今日から新企画の担当か・・・・・・。頑張るぞ!」
私は高村姫子。浮神市の地方新聞『浮神日報』の新人記者だ。
先輩記者「はい、じゃあこれ引継ぎ資料」
高村姫子「ありがとうございます! でも先輩って社会部ですよね? これを担当してた人って・・・・・・」
先輩記者「もうずいぶん前に辞めちゃってね。 それからコーナーも休止してたのよ」
高村姫子「ええ、そうなんですか!?」
先輩記者「だからわからないこともあるだろうけど、そこは好きにやってね。どうせ誰も知らないし」
高村姫子「そんなぁ・・・・・・」
先輩記者「楽しみにしてるわよ。 高村さんの『奇譚蒐集』!」
高村姫子「は、はいぃ・・・・・・」
『奇譚蒐集』
浮神市にまつわる不思議な話を紹介するコラム。
私が配属になったのは、このコラムの担当だった。
高村姫子「うーん、まずは題材を集めなきゃだよねぇ」
高村姫子「読者から募集してもいいけど、それじゃ締め切りまでに集まるかわからないし・・・・・・」
高村姫子「よし、ちょっと街中を歩いてみよう!何かいいテーマが見つかるかも!」
〇市街地の交差点
高村姫子「さて、ひとまず取材をしなきゃだな・・・・・・」
高村姫子「とは言え不思議な話だなんてそうそうあるもんなのかなぁ。どうしよう」
私は途方に暮れていた。
街の不思議な話など、その辺に転がっているはずもない
高村姫子「うわっ、風つよっ!」
高村姫子「きゃっ!?」
高村姫子「痛ぁ・・・・・・。何これ・・・・・・」
顔に飛んできたのは、古い浮神日報だった。日付は何十年も昔だ
高村姫子「なんでこんな古新聞が・・・・・・。ん?」
高村姫子「これ、『奇譚蒐集』が載ってる!」
そこにあったのは、『奇譚蒐集』の文字。テーマは『浮神7不思議』とあった。
高村姫子「7不思議? この街にそんなのあったんだ」
高村姫子「これ、新しい奇譚蒐集のテーマになるかも!ラッキー!」
私はまだ知らなかった
これが、とんでもない事件を引き起こすことになる、と。
〇古びた神社
私はさっそく、一番目の不思議がある市内の神社にやってきた。
高村姫子「第一の不思議・・・・・・」
高村姫子「浮神神社のモトハハ石」
高村姫子「これはウキガミ様に石にされた母親。母の涙に触れると、ウキガミ様の次の生贄にされる・・・・・・」
高村姫子「なんじゃそれ?」
高村姫子「浮神神社なんて初めて来たし、モトハハ石なんて聞いたことないけどなぁ」
神社は閑散としていて、手入れもされていないようだった。普段から人も少ないのだろう。
高村姫子「ひとまず、モトハハ石ってのを探してみますか!」
周囲の空気は心なしか重かった。
私はそれを吹き飛ばそうと、元気を出して歩き出す。
高村姫子「おかーさーん。どこですかー?」
高村姫子「あ・・・・・・」
神社の裏手に、それはあった
高村姫子「これが、モトハハ石・・・・・・?」
高村姫子「ただの石ころじゃん・・・・・・」
見たところ、母親の面影なんてどこにもない石だった。周りに張られたしめ縄だけが、なんとなく神々しさを出している
高村姫子「うーん。これじゃあ写真撮ってもいいテーマにはならなさそうだなぁ」
高村姫子「仕方ない。別のテーマ探すかぁ」
高村姫子「え?」
風が吹いて、しめ縄を止めていた枝が折れた。
高村姫子「あらあら・・・・・・。もう古くなってたのかな?」
ふと折れた棒に触れる。その時
高村姫子「うわっ」
何かに体を突き飛ばされた。バランスを崩して、思わずモトハハ石に触れる。
高村姫子「え?」
高村姫子「濡れてる?」
モトハハ石の表面は、びっしょりと濡れていた。雨も降っていないのに。
七不思議、神社、しめ縄で祀られた石、”曰くつき”感でいっぱいですね。このジャンルは人々にとって畏怖の対象でしょうから。姫子さんはどうなってしまうのか、次話が楽しみです。
興味本位でオカルトに足を突っ込むと厄介なことになりがちですよね。
七不思議の最初で当たってしまった彼女のことが心配です。
仕事とはいえ、やはり興味本位で不思議なことに首をつっこむと、得体のしれないものがよってきそうでゾワゾワしました。現に不思議な現象がはじまったようなので、今後の展開がどうなるのか、未知の怖さがあります。