#1 試練(脚本)
〇大樹の下
フォクシー「どけどけぇー!」
アクエリア「待て! フォクシー!」
フォクシー「待たない! 私は待たないぞぉ!」
フォクシー「お姫様はな、王子様の迎えを待ってるだけじゃダメなんだ!」
アクエリア「お姫様じゃないだろお前は!」
アクエリア「お前は神獣だ! 誇り高き神の一族だ!」
アクエリア「お姫様ではなく、天から地上を見守る神様なんだよ! 大人しくその役目を全うしろ!」
フォクシー「うるさい! 私はお姫様!」
フォクシー「お姫様ったらお姫様ァ!」
アクエリア「ぐうっ」
フォクシー「へへーん。お魚おばさんなんかに私が止められるか!」
アクエリア「ぐぬぅ。おのれうんこ狐」
アクエリア「今日という今日は見過ごせん! そのクソで詰まった脳みそ、私が浄化してやる!」
フォクシー「うげ。龍神化しやがった」
アクエリア「逃がすか!」
〇海辺
フォクシー「追ってくんなし!」
アクエリア「今すぐ戻れ、フォクシー。その海は地上に繋がっている」
アクエリア「いくらお前でも、それ以上進めば戻ってこれぬぞ」
フォクシー「いいもーん! こんな寂れた天界よりも地上の方が面白そうだし〜」
フォクシー「アクエリおばさんは一生ここでお魚ごっこでもしてればぁ?」
アクエリア「なっ!」
〇雲の上
そうだよ。こんな何も起こらない天界で一生を終えてたまるか
私は恋もしたいし遊びたい。地上の人間たちのように自由に生きたい
神獣としてではなく、一人の人間として人生を謳歌したい
フォクシー「待っててね、私の王子様。今すぐ迎えに行くから!」
〇荒廃した教会
フォクシー「ふぅ。ここが地上か」
「教会が爆発した・・・!?」
「中はどうなってる!」
フォクシー「この格好のままじゃまずいね。人間っぽい格好に変身しよ」
フォクシー「これでよし」
フォクシー「えへへっ。我ながら美少女ですなあ」
「なっ!」
格闘家 バロン「だ、誰だ君は!?」
フォクシー「私? 私はフォクシー」
医師 クランツ「何者だ!?」
フォクシー「地上に舞い降りた天使ってとこかな。お兄さんたち、暇なら一緒に踊らない?」
フォクシー「私今すっごいアゲアゲで、このほとばしる情熱を全身使って表現したいの!」
フォクシー「さぁ、レッツダンシング!」
格闘家 バロン「旅の踊り子ってところでしょうか」
医師 クランツ「そんなところだろうな」
医師 クランツ「とにかく、私たちは踊ってる場合じゃない。今すぐ村長のもとに向かわなければ」
フォクシー「何かあったの〜?」
格闘家 バロン「ええ、実は──」
〇古い洋館
村長 ゴードン「集まったか、皆の衆」
村長 ゴードン「・・・これで全員か。他の者は皆、人狼に食われてしまったらしい」
踊り子 フォクシー「人狼って、人に化けるっていうあの人狼?」
格闘家 バロン「はい。人を騙し、その心までも食らう悪しき存在。それが人狼です」
医師 クランツ「今朝は燦々たる状況だったな。我々以外みんな・・・」
村長 ゴードン「だが案ずるな。我々には加護がある」
村長 ゴードン「龍神様の・・・加護がな」
村長 ゴードン「あぁ龍神様! 我々に力をお貸しください!」
村長 ゴードン「どうか、人狼に立ち向かうための力を我々に!」
踊り子 フォクシー(・・・龍神様って、まさかね。さすがにここまでは追ってこないでしょ)
踊り子 フォクシー「わっ」
〇古い洋館
アクエリア「我を呼んだか、人間」
村長 ゴードン「あぁ、龍神様・・・」
村長 ゴードン「お待ちしておりました」
村娘 アリス「ねぇ、寒いんだけど! 雨なんか降らさないでよ!」
僧侶 アルカ「演出でしょうか。神様とはいえ、威厳を示すのに必死ですね」
商人 ルドルフ「イメージ戦略はマーケティングの基本やで」
踊り子 フォクシー(ちょっと・・・こんなところまで追ってこなくても・・・)
踊り子 フォクシー(それに、人間界に降りたら戻れないんじゃないの? 大丈夫? 私に着いてきちゃって)
アクエリア「我は今、天界から貴様らにメッセージを届けているに過ぎん」
アクエリア「この体も貴様らに見せているイメージだ」
商人 ルドルフ「イメージ戦略はマーケティングの基本やで」
村娘 アリス「雨降らす必要ある?」
神父 ランド「不思議な方ですね」
冒険者 マーベリック「ふん。何が龍神だ、バカバカしい」
村長 ゴードン「龍神様、貴方は我々にどんな力を授けてくれるのでしょうか」
アクエリア「そう急かすな。まずは状況を説明する」
アクエリア「・・・」
アクエリア「貴様らの中には2匹の人狼と・・・ 1匹のうんこが紛れている!」
村長 ゴードン「うんこ!?」
村長 ゴードン「うんこじゃと!?」
アクエリア「あぁ、うんこだ。このうんこが厄介でな」
アクエリア「人間界では妖狐と呼ばれているが、その正体は狐の皮を被ったうんこだ」
村娘 アリス「あはは。うんこうんこ」
僧侶 アルカ「こら。はしたないですよ」
医師 クランツ「・・・妖狐か」
踊り子 フォクシー(はぁ〜? もしかしてうんこって私のこと?)
踊り子 フォクシー(これでもれっきとした九尾の狐なんですけど!)
アクエリア「貴様らにはこれから、その九尾のうんこを退治してもらう」
アクエリア「人狼なんて二の次だ。まずはうんこを処理しろ。村が臭くなっても知らないぞ」
村長 ゴードン「うんこ」
〇空
アクエリア「我が与える力は二つ。この中の選ばれし二人に一つずつ授けよう」
アクエリア「一つ目は占い。毎晩一人を占える。うんこを浄化するための力だが、一応人狼の正体も暴ける」
アクエリア「二つ目は狩人。毎晩自分以外の誰かを護衛できるが、うんこを守っても意味がないぞ」
アクエリア「人狼は毎晩人を襲うが、うんこだけは襲えない。何故だか分かるよな?」
アクエリア「うんこだからだ。いくら人狼といえど、排泄物を食らうことはできない」
アクエリア「もし人狼がうんこを襲撃しようものなら、あまりの悪臭に撤退せざるを得ないだろう」
村長 ゴードン「龍神様よ、そのうんことやらは人狼よりも悪しき存在なのでしょうか」
アクエリア「無論だ。うんこと比べれば、人狼など可愛いものよ」
村長 ゴードン「うんこも人に化けるんですよね?」
アクエリア「あぁ」
村長 ゴードン「うんこ人間か、なんとおぞましい。見つけ出して、我々の手で始末せねば」
踊り子 フォクシー(くそ〜。言いたい放題言いやがって〜)
踊り子 フォクシー(私が何をしたんだ〜。ちょっと人間界に降りたくらいでこの仕打ちは酷いやい)
踊り子 フォクシー(・・・もう! こうなったら何が何でも生き延びてやる! アクエリアの好きにはさせるか!)
〇古い洋館
アクエリア「──というわけで、村の命運は貴様らに委ねられた」
アクエリア「さらばだ!」
村娘 アリス「は? あいつ雨降らせたまま帰ったんだけど」
僧侶 アルカ「とりあえず村長さんの家で雨宿りしましょうか」
村長 ゴードン「入るがいい、皆の衆」
踊り子 フォクシー「・・・」
神父 ランド「浮かない顔だね。どうしたの?」
踊り子 フォクシー「へっ? あ、何でも」
神父 ランド「教会のことは気にしなくていいよ。元々廃墟みたいなものだったし」
踊り子 フォクシー「えっ、あっ、はい」
踊り子 フォクシー(やー、イケメンに話しかけられちゃったー。人間界ってやっぱ良いなー)
冒険者 マーベリック「おい! さっさと来いよ!」
踊り子 フォクシー(え? もう既に私の取り合い始まってる? モテる女は罪ですな〜)
神父 ランド「行こうか」
踊り子 フォクシー「はい!」
〇朝日
アクエリア「ふぅ」
スザク「お疲れ様」
アクエリア「スザクか」
スザク「フォクシーは常日頃から、人間になりたいと仰ってましたね。なれそうですか?」
アクエリア「なれるわけないだろ。私たちは神獣だぞ」
スザク「そういう意味ではなく・・・」
アクエリア「あぁ・・・そうだな。あのバカ狐のことだ。私はなれない・・・と思う」
アクエリア(地上に降りた神獣には二つの道がある)
アクエリア(一つは人間に正体を暴かれ、神獣として祀られるか、最悪、妖怪として退治される道)
アクエリア(そしてもう一つは・・・最後まで正体を隠し通し、人間としてその生涯を終える道)
スザク「私は「なれる」に賭けますよ。彼女は人を化かすのが上手い」
アクエリア「ふん。当然、私は「なれない」に賭ける。あいつはすぐ尻尾を出すからな」
スザク「ふふふ。この賭け、面白くなりそうですね」
アクエリア「・・・」
スザク「ところでアクエリアさん。貴方、少しフォクシーに厳しくないですか?」
アクエリア「何を言ってる。あの程度で音を上げるようでは、この先、生きていくことなど不可能だ」
アクエリア「天界と違って地上は過酷。生きる術すら、自分で見つけなくてはならない」
スザク「親心・・・ですか」
アクエリア「なっ、なわけあるか! ただの嫌がらせだ!」
アクエリア「あんなやつ、とっととくたばればいい!」
〇おしゃれな居間
踊り子 フォクシー「へぶしっ!」
踊り子 フォクシー「この部屋、埃っぽい」
冒険者 マーベリック「さて、人狼は2匹いると龍神とやらは言っていたが、その内の1匹は既に目星がついている」
村長 ゴードン「うんこは?」
冒険者 マーベリック「知るか」
村娘 アリス「え〜誰々〜? アリス気になる〜」
格闘家 バロン「・・・」
神父 ランド「聞きましょうか」
踊り子 フォクシー「てぃ、ティッシュください。鼻水が・・・」
冒険者 マーベリック「そこの女ァ!」
踊り子 フォクシー「はひっ?」
冒険者 マーベリック「お前が人狼だろ!」
踊り子 フォクシー「ち、違いますよ〜!」
冒険者 マーベリック「嘘つけ。見るからに怪しいだろお前。そもそもお前どこのどいつだ? この村の人間じゃないよな?」
踊り子 フォクシー「えっ、えっ」
神父 ランド「それを言うなら冒険者さん、貴方もこの村の人間じゃないでしょう」
冒険者 マーベリック「だが俺はお前らと面識がある。完全な部外者はこいつだけだ」
僧侶 アルカ「確かに、身元不明の人が紛れているのは不穏ですね。はぐれ狼の説が濃厚です」
商人 ルドルフ「せやなー」
踊り子 フォクシー(え、私、疑われてる? 人狼じゃないのに)
踊り子 フォクシー(私はただの、人間になりたい狐なのに!)
踊り子 フォクシー(・・・そうだ。私は人間になるんだ)
踊り子 フォクシー(人間になって人生を謳歌するんだ。だから、こんなところで死ぬわけにはいかない)
踊り子 フォクシー「私は旅の踊り子フォクシー! 私が村に来る前に人狼の襲撃があったんだから、私が人狼なわけないじゃん!」
村長 ゴードン「た、確かに」
村娘 アリス「ははーん? それはどうかなお姉ちゃん」
村娘 アリス「お姉ちゃんの言い分は通らないよ〜。 だって──」
驚きの「うんこ」率に笑いました(^▽^
これは…振り切ってますね。
ブラックな台詞回しとコメディストーリーが相性抜群です。
電車で吹き出してしまいました。
なるほど…人狼ゲームがうんこを中心とする事で複雑化するわけですね!人狼ゲームに馴染みがない僕としては、もはやうんこの事しか考えられません!
一つ核心を突いておくと、うんこと妖狐がかかっているという事です!