坂口さんと百合の華

イヴェール

第9章 坂口さんの帰路(脚本)

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〇事務所
  彼女のおかげで予想より早く終わった私は、
  二人でオフィスの外に出た。

〇ネオン街
  外はすでに暗かったが、
  ネオンのおかげで昼間にも感じた。
坂口「改めてお疲れ様。疲れてない?」
華「まぁ、少しは……。 でも、気持ちのいい疲れって感じです。 久しぶりにちゃんと仕事しましたし。」
華「夕飯どうします?私、この近くで 良いカフェ知ってるんですけど……。」
坂口「あ、あの、私……。」
華「テイクアウトもやってて、 そこのアボカドサラダ丼が美味しいんですよ! 一緒に買いに行きませんか?」
坂口「そ、それなら……。」
華「決まりですね。 じゃ、こっち行きましょ! 近道なんで。」

〇飲み屋街
  彼女に誘われ、後をついていくと
  居酒屋が立ち並ぶ道に出た。
華「ここを抜けると、大きい通りに出ます。 似たような道がいくつもあるから 迷いそうですけど、覚えたらすぐですよ」
  たわいもない会話をしながら進んでいると、
  居酒屋から見覚えのある人物が三人出てくる。
係長「あれ、坂口じゃん。 こんなところで何してるんだ?」
課長「しかも、華ちゃんまで。 帰ったんじゃなかったの?」
  係長も課長もずっと呑んでいたのか、
  アルコールの匂いがして、
  思わず顔をしかめてしまった。
華「わ、忘れ物を取りに行ったら、 坂口さんと一緒になっただけですよ。」
部長「嘘ばっかり。 俺があの話をしたとき、 明らかに顔色変わったしな。」
華「……今日はもう遅いので、失礼します。 行きましょ、坂口さん。」
坂口「え、えぇ……。」
部長「まぁまぁ、そんなこと言わずにさ、 呑み直そうぜ、華ちゃん。」

〇ビルの裏
  私たちの後ろを酔った部長たちが
  千鳥足でついてくる。
  その姿はまさにゾンビのようだった。
部長「おいおい、つれないこと言わないでくれ。 朝まで一緒に呑み明かそうぜ!」
課長「さんせー。僕も華ちゃんともっと話したーい。」
係長「そうだ、そうだ!」
  いつまでも後を追ってくる部長たちに
  ついに彼女が立ち止まった。
華「いいかげんにしてください! 今、私は坂口さんと帰ってるんです。 ついてこないでくださいよ!」
部長「なーに、その態度? せっかく俺が仕事なくしてるのに。 そもそも妙に坂口の肩持つねぇ。」
華「坂口さんの仕事を増やしたの、 私が謝らせたからですよね? それで心が痛まないほど腐ってません!」
坂口「百合野さん……。」
部長「別に、明日から坂口と同じ仕事量に することもできるんだせ? 華ちゃんには酷だと思うんだけどなぁ。」
華「大丈夫です、仕事できるんで。 押し付けるしか能のない部長たちと違って。」
  部長の顔が曇った瞬間、
  彼女は突き飛ばされ、地面に倒れていた。
華「痛っ……。なにするんですか?!」
部長「華ちゃん、意外と気が強いんだねぇ。 そういうの凄くそそる。」
  部長は彼女に近づくと、その前でしゃがむ。
  突き飛ばされた恐怖からなのか、
  彼女は立ち上がることもできなくなっていた。
課長「お、いいねいいね。 やっちゃう感じ?」
係長「部長、いっちょ奪っちゃいましょう!」
  二人は酒で感覚が麻痺してるのか、
  現状の危険性に気づいてない。
坂口(どうしよう このままじゃ、百合野さんが……。)
  百合野さんの元へ駆け寄る。
  手は口を覆っていたマスクを外していた。
華「ホントにやめてください! 大声あげますよ、いいんですか?」
部長「立場を弁えてない部下は ちゃんと躾するのが上司の仕事ってもんだろ。」
部長「使い物にならなくなるうちに 味見でもしておこうか。 女神みたいにキレイな華ちゃん……。」
坂口「私の方が綺麗でしょ?!」
部長「あっ……。」
課長「えっ……。」
係長「なっ……。」
華「坂口さん……。」

次のエピソード:第10章 坂口さんの正体

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