知られざる過去(脚本)
〇暗い廊下
智樹「走れ! 走れ!! 走れ!!!」
智樹「ここでユキナに追いつかれると 全滅するぞ!!!!」
ユキナ「まーーってーーーーー いっしょにあそぼーーーーーーーーーーー」
みく「ひぃ!!」
茂太「やべー! 想像以上に速いぞ!」
「までーーーーー!!!!!! 私だぢもづれでげーーー!!!!!!」
智樹「ヤバい!! きょう子とあすかも来た!!」
茂太「これ、マジでしゃれになんねーよ!!!!」
さなえ「はぁ! はぁ! はぁ!」
智樹「みんな! 頑張れ!! あともう少しだ!!!!」
〇広い厨房
さなえ「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、」
茂太「フーッ!!」
智樹「はぁ、はぁ・・・ みんな! 全員いるな!!」
みく「うん・・・! な、なんとか・・・!」
智樹「ここから先は ユキナだけしか入れないはずだ! でも気を抜くなよ!!」
ユキナ「みぃぃぃぃつけたぁぁぁぁぁぁ!!」
さなえ「ユ、ユキナ!!」
さなえ「これ!」
さなえ「ユキナのために作ったんだよ!」
ユキナ「・・・」
ユキナ「いいにおい・・・」
さなえ「シチューだよ。 あすかが・・・、あすかがユキナのために作ったんだよ」
ユキナ「し、しちゅ、う・・・ し、し・・・」
さなえ「ね、ユキナ。食べてみて」
「・・・」
ユキナ「ぱくっ」
ユキナ「もぐ・・・」
ユキナ「もぐもぐ・・・」
ユキナ「もぐもぐもぐ・・・」
「・・・!」
ユキナ「・・・ おいしい・・・」
さなえ「ユキナ・・・」
智樹「ユキナ・・・」
〇広い厨房
みく「電気がついた・・・!」
ユキナ「・・・・・・」
ユキナ「あれ? ここは・・・」
さなえ「ユキナ!!」
ユキナ「さ、さなえちゃん!?」
智樹「ユキナ・・・」
ユキナ「とも、くん・・・」
ユキナ「なんで・・・ なんでみんなおとななの・・・?」
智樹「ユキナ・・・」
智樹「ユキナ! ごめん! 本当にごめんな!」
ユキナ「ともくん・・・? なんでないてるの?」
智樹「俺、知らなかったんだ・・・ ユキナがいじめられていたこと。 全然! 気づいてやれなかった!」
智樹「ユキナのこと守るって・・・。 俺、そうユキナと約束したのに・・・」
智樹「本当に、ごめん・・・」
ユキナ「・・・」
さなえ「ユキナ・・・」
ユキナ「さなえちゃん」
さなえ「私も・・・ ユキナのこと助けてあげられなかった」
さなえ「本当に、本当にごめんなさい・・・」
ユキナ「さなえちゃん・・・」
みく「・・・・・・」
茂太「・・・・・・」
ユキナ「ねぇ、なんでみんな かなしそうなかおしてるの?」
ユキナ「せっかくあえたんだから わらおうよ」
ユキナ「ね」
「ユキナ・・・」
「うん。そうだね・・・」
ユキナ「あっ! このしゃしん・・!」
茂太「写真の顔が・・・」
智樹「ユキナの両親の顔に変化してる・・・」
ユキナ「パパとママだ!!」
ユキナ「そうだ」
ユキナ「わたし しんだんだ」
ユキナ「えへへー、 しんだことわすれちゃってた」
さなえ「ユキナ!」
ユキナ「さなえちゃん、ありがとう わたし、パパとママのところに いくね」
さなえ「うん・・・、うん・・・!」
ユキナ「ともくんもありがとう・・・」
智樹「ユキナ・・・」
ユキナ「わたしのこと、 いつもまもってくれてありがとう」
ユキナ「これからも すきなひとをまもるともくんでいてね」
智樹「ユキナ!!」
ユキナ「えへへ・・・ ・・・・・・・・・ ばいばい・・・・・・」
「ユキナ!!」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
〇お化け屋敷
〇お化け屋敷
〇広い厨房
みく「行っちゃったね・・・」
さなえ「うん・・・。 ユキナ、笑ってたね・・・」
智樹「これで良かったんだよな・・・」
茂太「なぁ、あのさ・・・。 ユキナが死んだこと忘れてたって言ってたけど」
茂太「いつ死んだの? 事故にでもあったの? 俺ぜんぜん知らないんだけど・・・」
みく「わたしも知らない・・・ ユキナ、転校先でなにかあったの?」
「・・・・・・」
さなえ「ユキナね、自殺したの・・・」
茂太「え!!」
みく「うそっ! そんな話、聞いたことないよ!?」
智樹「たぶん、ユキナが自殺したことを知っている同級生は俺とさなえだけだと思う」
智樹「俺は手首を切ったってことしか聞いてないけど、もしかして・・・」
さなえ「うん。 ユキナは自宅のお風呂場で手首を切ったの」
みく「うそ!! だってユキナが引っ越したのって二年生に上がる前でしょ!?」
みく「そんな6歳とか7歳の子が手首を切って自殺するなんて・・・」
さなえ「ユキナね、ご両親を亡くしてからずっと精神が不安定だったみたいで」
さなえ「いじめのこともあって、ずっと不眠が続いていたそうよ」
さなえ「みく、覚えてる? ユキナがいつも身に着けていたネックレス」
みく「あっ! そういえば・・・」
さなえ「あれね、ユキナの母親が亡くなった時に身に着けていたネックレスなの」
さなえ「ユキナ、先生から特別に許可をもらってそのネックレスを肌身離さず着けていたわ」
さなえ「それを着けていると、亡くなったご両親が近くにいるように感じるんだって言っていた」
さなえ「でも体育の時だけは、首に引っかかると危ないからって外してて・・・」
さなえ「ある日、体育の授業を終えて教室に戻ると ネックレスは無くなっていて、机の中には 落書きされた教科書だけがあった」
さなえ「ユキナ・・・。ご両親が死んだこともいじめのことも、ずっと我慢してたから・・・」
さなえ「ネックレスが無くなって、きっと心の糸が切れちゃったんだと思う」
さなえ「終業式の日の夜、自宅のお風呂場で手首を切って自殺したの・・・」
茂太「そんな・・・」
茂太「同級生が一人寂しく死んでいたことに今の今まで気づかなかったなんて・・・」
茂太「俺、サイテーじゃん・・・」
智樹「それは俺も同じだよ・・・」
智樹「俺も、ユキナの辛さに気づいてやれなかった一人だ・・・」
みく「・・・・・・」
みく「それでもユキナは笑ってたよ」
みく「私たちに笑ってって言ってたよ!」
智樹「そういや言ってたな・・・」
「・・・」
智樹「うん。ユキナのためにも笑おう」
茂太「そうだな。ここで俺らが泣いててもしょうがないよな」
さなえ「そうよね。私たちがメソメソしてたら ユキナが心配しちゃうよね」
みく「うん。 今はユキナのためにも」
みく「久しぶりの再会のためにも 笑顔でいようよ」
「うん」
〇広い厨房
さなえ「そういえば、あすかときょう子は・・・」
茂太「ゲームだと、ゾンビになったやつは屋敷から脱出はできなかった」
茂太「たぶん、あすかもきょう子も現実の世界には戻れないと思う・・・」
さなえ「そんな・・・。 あすか・・・、きょう子・・・」
みく「そういえば、さなえはいつあすかが虐めの犯人だって気づいたの?」
さなえ「え! 私はこのメンバーにそんな人がいるなんて思いもしなかったよ!」
みく「え、そうなの?」
智樹「じゃあ、教科書とキーホルダーを持ってたのはたまたまだったのか」
さなえ「うん。女の子を召喚するには犯人の手掛かりになるアイテムが必要だったでしょう」
さなえ「今はゲームの中だけど、そもそも私たちはユキナのお家へ肝試しにきたわけだし」
さなえ「なんとなく、ゲームで重要な役割を果たす召喚部屋には持っていった方がいいのかなって」
みく「じゃあユキナが出てきたのは偶然だったんだね」
智樹「偶然じゃない。 俺たちがここに集まったのも偶然じゃないよ」
智樹「すべて、ユキナが俺たちを導いてくれたんだ」
智樹「だって、普段の俺だったらユキナの家へ肝試しに行こうだなんて絶対に言わないもんな」
さなえ「あ! 私もそうだ! そんな不謹慎なこと、絶対に言わない!」
茂太「そうだよな。お前ら二人は そんな常識のねー奴じゃないもんな!」
「あははははっ!」
智樹「ゲームの設定とユキナの状況がすこし似ていたから」
智樹「たまたまこの2つがシンクロしちゃったんだろうな」
さなえ「うん。きっとそうね・・・」
茂太「こ、これは・・・!!」
智樹「きっと元の世界へ戻る合図だ!」
みく「元の世界・・・!」
「行くぞーー!!!!」
これまでのストーリー内の、ホラー要素や違和感などが一気に収斂していく感じですね。ユキナの状況を想像すると、とても悲しくなりますが、笑顔でのお別れの姿に心がスッとなります