出会い(脚本)
〇シックな玄関
女性①「もう三年もたつのね……。」
私は日焼けしないように配慮した写真たてに付着した埃を、マイクロクロスで拭き取る。
夫は今から向かう場所に行くための準備で忙しく、私のことなどあまりきにしていない。
拭いた写真は、私たちが結婚を決めたときの写真、どうしてこんな写真があるのかと言うと、それはちょうど五年前の今の時期。
お互い家の関係で夫婦になることを否定されてきたが、夫が覚悟を決めて私と添い遂げてくれると告げたときだった。
〇湖のある公園
指輪もなく、ただ少しだけ肌寒いのを覚えている。
彼は緊張して覚悟をきめたような、少しだけ崩れた笑顔に光が映えていた。
男性①「「僕と結婚してください」」
女性①「「え!? 本当に……う、うれしいわ」」
もちろん私は即座に返事をした。 そのとき、彼の崩れた顔は涙を含んだ笑顔になると私をいきなり抱きしめてくれる。
温かく、そしてとても良い香りが私を包んでくれた。
彼の震える背中に手を伸ばそうとしたとき、横から写真を撮るときのシャッター音が聞こえる。
女性①「「え!?」」
男性①「「え……!」」
爺さん①「「いや、申し訳ございませんでした」」
爺さん①「あまりにもお二人が輝いておりましたので、不躾とは思いましたが気が付くとシャッターを押しておりました。本当に申し訳ないです」
とても丁寧に経緯を説明していただき、それを聞いて私たちは怒るわけでもなく、ただモデルが私たちで申し訳なかったと謝り返した
爺さん①「いえいえ、お二人はとても素敵ですよ。私も妻に先立たれてしまいましたが、一緒にいたら同じように感じたと思います」
男性①「あ、あの、もしご迷惑でなければその写真を私たちにも一枚くれませんか?」
隣に立つ彼がおじいさんに言葉を投げかけた。
爺さん①「えぇ、もちろん、お二人のお時間を邪魔した罪滅ぼしというには、些か釣り合いませんが、どうでしょう? 一緒にお茶でもいかが?」
冒頭の訳ありげな言葉、そして情感たっぷりの回想シーン、、、にもかかわらず、登場人物が”女性①””男性①””爺さん①”というところにステキな意図を感じますね!