第8章 坂口さんの化粧(脚本)
〇事務所
たくさんあった資料も残り僅かとなった。
時間が経っても彼女は変わらず、
テキパキと作業を続けていた。
坂口(本当にすごいなぁ、百合野さん。)
華「どうしたんですか? そんなにじっと見つめて……。」
坂口「あ、いや……化粧品は 何を使ってるのかな、って。」
私は当たり障りのなさそうな
話題を出して誤魔化した。
華「基本的にはプチプラのやつですね。 様々な色が欲しいと思うと、 一つ一つに高いお金は出せないので。」
華「あ、でも、リップだけは、 結構ちゃんとしたやつ使ってて……。」
そう言って見せてくれたのは、
いつも使っている口紅だった。
華「学生の頃に初めて買ったんですけど 色も塗り心地も良くて、 今でも使ってるんです。」
坂口「そうなんだ。 私も珊瑚みたいな色、綺麗だと思うよ。」
華「ホントですか? 超嬉しい! 今度、坂口さんの分も買ってきます!」
坂口「別にいいのよ。 あんまり使う機会ないと思うし・・・・・・。」
華「いいんです。 使いたいときに使ってくれればいいので。」