Riverside Baron ~蓬莱番外地~

山本律磨

エネミー・オブ・エンパイア(4)(脚本)

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〇港の倉庫
「休憩だ!15分休め!」

〇古い倉庫の中
デンキ「働けど働けど我が暮らしなお楽にならず」
トラ「じっと手を見てんじゃねえよ」
デンキ「お互いにね」
工場長「おい、何サボってる」
トラ「え?今、休憩時間じゃ?」
工場長「製造の遅れている班に休憩などない。とっとと持ち場に戻れ」
トラ「・・・」
工場長「なんだその目は?」
工場長「チンピラ風情が。お蝶親分の口利きだから仕方なく置いてやってるんだ」
工場長「ここが嫌なら漁船にでも乗るか?」
工場長「船の上はな、海に落ちても全部『事故』になっちまうんだよ」
工場長「お前達みたいな社会不適応者ほど不思議と『事故』に会っちまうんだよなあ」
トラ「ああ?」
デンキ「す、すみません!すぐ仕事に戻ります!」
デンキ「行くよトラ!」
工場長「チッ・・・帝都に群がる田舎者どもが」

〇ナイトクラブ

〇ホストクラブ
資本主義の豚「しかし本当に16なのか~?とんでもない色気ブヒ」
資本主義の豚「異人の血が入ってるからブヒな」
資本主義の豚「しかしまああれブヒな。我々はちょっと、生まれるのが遅かったブヒな」
資本主義の豚「江戸の御世に生まれていれば堂々と水揚げできたものをブヒ」
資本主義の豚「アナーキストだがブルーストッキングだか知らんが何が自由恋愛ブヒ」
資本主義の豚「裏に回ればやってる事は我々と同じ、ただれた情事ブヒ」
資本主義の豚「おいおいブヒブヒ言ってると、お蝶親分に睨まれるぞ」
資本主義の豚「紳士淑女の店か。笑わせるなブヒ」
資本主義の豚「活動家は知性で、我々は金でモノにする。女もそれを望んでるブヒ」
資本主義の豚「いつの時代も変わらぬ原理原則ブヒ」
資本主義の豚「ブヒヒヒヒ」

〇ナイトクラブ
踊り子「・・・」
踊り子「・・・」

〇ライブハウスの控室
ヒナ「おつかれさまでーす!」
ヒナ「う~い。ちかれたび~(死語)」
ヒナ「あれ?着物どこ?」
ヒナ「・・・!」
踊り子「え~?あれって服だったの~?」
踊り子「雑巾だと思って捨てちゃった。ゴメンね~」
ヒナ「いやいや~。丁度雑巾にしようと思ってたところなんですよね~」
ヒナ「なんせ姐さん方より稼いでますからね~。わざわざ処分してもらってあざーっす」
踊り子「・・・」
踊り子「ちょっと通るわよ」
  バシャッ!
踊り子「あら。大事な一張羅にコーヒーがかかっちゃったわね。ごめんなさいね」
踊り子「河原乞食の強がりに立ちくらみがしちゃったもので」
ヒナ「かまいませんことよ。ではごめんあそばせ」
ヒナ「・・・とでも言うと思ったかゴルァァァ!」

〇暗い廊下
「キャーッ!ゴリラ~!メスゴリラ娘~!」
「誰がメスゴリラ娘じゃああああ!」

〇路面電車
トラ「で、その恰好ってわけか」
デンキ「大変だったね~」
トラ「う~ん。その恰好か」
トラ「どうしたものか」
デンキ「いいんじゃない?これも表現の自由だよ」
トラ「でも品格というものがな~」
デンキ「そこはそれ、ヒナらしいって事で」
ヒナ「よし、二人とも喧嘩売ってんな」
ヒナ「第二死合いじゃあああ!」
デンキ「違うよ。そういう意味じゃなくて」
トラ「お前もこれから勉強会に行くんだよ」
ヒナ「へ?勉強会って?」
ヒナ「まさか根室んとこか?」
トラ「根室先生だ」
ヒナ「お疲れ」
トラ「待てよ!」
ヒナ「オイラ、難しいこと分かんねーんだよ」
デンキ「難しくなんかないよ。ただみんな自由に、平等に生きようってだけの話だよ」
ヒナ「自由なヤツにぶん殴られたらどうすんだ?」
デンキ「そ、それは・・・」
ヒナ「上手に踊っても下手に踊っても稼ぎは平等なのか?」
トラ「まあそれは・・・」
トラ「うん。そういう質問を根室先生たちにぶつけるってのが勉強会の意義ってやつだ」
トラ「それにいつもお前を街まで送るってのが、親分との約束だろ。一人じゃ帰せねえよ」
デンキ「ちょっと付き合ってくれるだけでいいから」
ヒナ「面倒くさいな~」

〇入り組んだ路地裏
「やあ、よく来てくれたね」

〇組織のアジト
根室「トラ君たちから聞いたよ。かのバロン吉宗の娘さんだそうだね」
ヒナ「ええまあ・・・」
根室「芸能博では災難だったが無事でなによりだ」
根室「同じ自由を探求する闘士として、お父さんとも是非一度お会いしたいと思っている」
ヒナ「闘士ねえ。そんなガラじゃないっすよ」
ヒナ「あの事故で記憶もなくしちゃってるし」
根室「それは気の毒に・・・」
根室「まあ、ゆっくりしていってくれたまえ」
ヒナ(帰りてーな・・・)
ヒナ「へ?」
桜子「こんばんは」
桜子「前に我が家のパーティーに来ていただきましたよね」
ヒナ「・・・」
ヒナ「あ!あの時のお姫さん!」
ヒナ「憲兵さんだか男爵さんだかの・・・」
桜子「父は亡くなりました」
ヒナ「え?」
桜子「大芸能博覧会爆発事故のただ一人の犠牲者だそうです」
ヒナ「そうなんですか・・・」
桜子「不思議なご縁ですね」
ヒナ「そうっすね」
桜子「私の父と違って、あなたのお父様はきっと正しい道を歩んでおられるのですわ」
桜子「だから神様が生かしてくれたんです。この世で為すべきことがあると」
ヒナ「そんな大層なもんじゃないっすよ」
ヒナ「お姫さんのお屋敷にだって、本当はアイツが行く予定だったんです。それが二日酔いで動けなかったから急遽オイラが」
  『静粛に!諸君、静粛に!』
  『根室先生のお話しが始まります!』
根室「はははは。まあ気楽に聞いてくれたまえ。ここは僕が作ったフリーディメンションだ」
根室「今朝の新聞でも取り沙汰されたので皆ご存じかと思うが、憲兵司令官来栖川義孝氏が亡くなられた」
根室「自由の弾圧者であり紛れもない我らの天敵であったとはいえ、痛ましい事故に変わりはない。まずは黙祷しようではないか」
桜子「・・・」
根室「さて注目の新司令に関する情報であるが、僕の調べでは既に穏健派の大泉吾一が着任したようだ」
活動家「さすがは根室先生!動きが速い!」
活動家「情報を統べる者こそ世を統べる!国家開闢以来の道理ですわ!」
根室「もとより、現在の加東内閣は軍縮に傾いている。世論もまたデモクラシーを受け入れている」
根室「つまるところデモクラット弾圧の実態は来栖川一人の私的暴走に過ぎなかった。その事実は今後露呈されるであろう」
根室「これは僥倖である」
桜子「・・・」
根室「ああいや、口が過ぎた」
桜子「構いません。これは僥倖です」
桜子「そしてこれより攻勢に転じるべきです」
根室「いかにも。活動を活発化させるのだ」
根室「大衆を動かせば、経済が動く。金が動く。投票が動く。権力者は喉から手が出る程ほしいそれらの為に官憲の力を緩めるだろう」
根室「蜂起の時は近い」
根室「友愛を以て結束せよ!絆を以て団結せよ!」
根室「自由を貫く信念を!弾圧を挫く勇気を!」
根室「ブルジョワを打倒せよ!女権を拡張せよ!あらゆる私的財産を否定し、あらゆる格差階級を根絶せよ!」
根室「僕は断言する!きっと君たちの前に美しきけものたちを連れてくると!」
根室「君達も僕と同じ、大革命家オオスギアマネの友!美しきけものである!」
トラ「革命万歳!」
デンキ「デモクラシイ万歳!」
ヒナ「・・・」

〇廃倉庫

〇暖炉のある小屋
義孝「このバイオリン。いつになったらまともな音がでるのだ?」
義孝「何が楽しい器だ。意味が分からん」

〇川沿いの原っぱ
お蝶親分「そんな・・・」

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