週末カウンセラー はっちゃん

笑門亭来福

第一話(脚本)

週末カウンセラー はっちゃん

笑門亭来福

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週末カウンセラー はっちゃん
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〇平屋の一戸建て
  新しい生活
  引越しは、その儀式みたいなもんで
  心地よい疲労感

〇実家の居間
  新しい家族
  お互い、かなり分かりあった程でもなく
  若干、勢い先行の気もするが
  それなりに話は、してきたつもり・・・
英(えい)さん「いい風だ」
  美井(びい)さんの物が色々と
  テーブルに置かれたまま
  散歩か、買い物か
  その内こんなことにも、イラッとくるんだろうか
  なにげに目をやると
英(えい)さん(日記らしい)

〇水たまり
「よくない」
英(えい)さん「黙って人のものを見るのは」
英(えい)さん「でも、知りたい」
英(えい)さん「「3人での新生活」っていう、美井さんの口癖も未解決だし」
英(えい)さん「私が頁を開いた訳ではなく」
英(えい)さん「自然と、目に入った・・・」
英(えい)さん「いや、それは、言い過ぎ」
英(えい)さん「顔を近づけないと、字は読めない」
英(えい)さん「ハニートラップか!」
英(えい)さん「なんでやねん」
英(えい)さん「まぁ、自然に」
英(えい)さん「目に入るものは拒まず」
英(えい)さん「良くない時って、一瞬息を止めて、一気に行動に移ってるな・・・」

〇keep out
英(えい)さん「へぇ、珍しいね」
英(えい)さん「3年連続日記じゃないか」
美井(びい)さん「22年5月23日」
美井(びい)さん「英さんと、3人での新しい生活の」
美井(びい)さん「物件などを話しながら、飲み明かす」
英(えい)さん「ハハハ、やっぱり3人の生活って言ってる」
美井(びい)さん「21年5月23日」
美井(びい)さん「毎週末のカウンセリングの日」
美井(びい)さん「先生と話をしていると、落ち着く」
英(えい)さん「カウンセリングを受けていたのか」
美井(びい)さん「20年5月23日」
美井(びい)さん「今日も眠たい、ボーっとしてる」
美井(びい)さん「身体がふわふわして、夢うつつ」
英(えい)さん「今は元気そうに見えるけど、大丈夫かな」
子供は風の子「大丈夫だょ」
  えっ!? コドモ・・・ドコ?
  はっちゃんが、ついてるんだから

〇時計
  2年前
はっちゃん「基本は天然ツッコミ、略してKY、週末カウンセラー はっちゃんです」
  え
  何なん?
  アイドルなん?
はっちゃん「よろしく」
美井(びい)さん「お願いします」
  と、まあ、最初はド肝をぬかれたよね
  話なんかできるんかな? と、心配したけど
  何だろう? マシュマロみたいに柔らかくて
  どこが下ネタやねん!
  お人柄の話や
美井(びい)さん「先生、眠たいのに、眠れまへん」
はっちゃん「そう、夢も見れないなんてね・・・」
美井(びい)さん「いや、夢は見るんです」
はっちゃん「眠れんが、夢は見るだぁ、なぞなぞかぃ」
はっちゃん「寝言は寝て言えぃ!」
美井(びい)さん「い、いや、その、違うんです」
はっちゃん「何が、どう違うんじゃ、あ」
美井(びい)さん「はぃ、眠たいなぁという時は、眠れずに」
美井(びい)さん「寝たらいかん、という時に眠たくなって」
美井(びい)さん「いつも、夢うつつで、ふわふわ浮いとる感じなんてす」
美井(びい)さん「これは?」
はっちゃん「プッチーニやないかい」
はっちゃん「トゥーランドット、知らんか?」
美井(びい)さん「はぃ・・・」
はっちゃん「誰も寝てはならぬ、や、しばし聞いとけぃ」
美井(びい)さん「はぃ」
はっちゃん「どうでしたか?」
  お人柄おかえり、おおきに。糖でも足らんかったんかな?
はっちゃん「寝てはならぬと、眠れるのではないかと」
はっちゃん「どうでしたか?」
美井(びい)さん「いゃ、緊張が先行して」
美井(びい)さん「いゃ、結構なお手前でした」
美井(びい)さん「それで、夢なんですが、先生」
はっちゃん「そう、夢でした」
美井(びい)さん「ぼんやりとですが、いつも同じ人が出てくるんです」
はっちゃん「同じ人・・・お知り合い?」
美井(びい)さん「いぇ、知りません」
はっちゃん「何かしゃべるの?」
美井(びい)さん「いえ・・・何も・・・」
はっちゃん「どんな感じの人なの?」
美井(びい)さん「昔の、戦国武将のような」
はっちゃん「武将ですって!️?」
はっちゃん「何故か時々、突然、増えたりしない?」
美井(びい)さん「増えます」
はっちゃん「やっぱり・・・間違いなく・・・」
  冴え渡る鼓の音
  響き渡る笛の音
「吾輩が頑じぃである」
  吾輩が頑じぃである。
美井(びい)さん「先生、その夢の人に、心当たりでも?」
はっちゃん「いいえ、ちっとも」
美井(びい)さん「これぞ、天然ツッコミや」
  絶対に許さないんだから!
美井(びい)さん「そう言えば、かすかに「呼吸」と言ってたような!」
はっちゃん「ふん、それがあいつのやり方よ」
美井(びい)さん「やっぱり、ご存じなんですね」
美井(びい)さん「ええぃ、プッチーニやプッチーニ、はよう、トゥーランドット持ってこんかい」
はっちゃん「どうすんの?」
美井(びい)さん「わしが、夢ん中で、仇をとったる!」
  よっ! 日本一!
  拍子木の音、幕がサーッとかかります

〇エレベーターの中
子供は風の子(ようこそ、時空エレベーターへ)
子供は風の子(風の子です)
子供は風の子(新生活の家で登場した、ぼくです)
子供は風の子(さて、はっちゃんと頑じぃの間に因縁めいたものを感じた美井さん)
子供は風の子(その直感力たるや、さすがなもの)
子供は風の子(二人は、元師匠と弟子の間柄なのですが)
子供は風の子(訳あって絶縁してしまいます)
子供は風の子(出会いは、とある仏教系大学の、生徒と講師)
子供は風の子(でも、もう少し時間を遡り、)
子供は風の子(はっちゃんの幼少期を覗いてみましょう)

〇エレベーターの中
  はっちゃん小3のとき
子供は風の子「唯一の肉親であるお父さんを亡くします」
子供は風の子「大好きだったお父さん」
子供は風の子「いつも、思い切りほめてくれます」
  はっちゃんは、すごいね
  魂と魂で人と向き合って、しっかり話しを聞いてあげて、
  優しい言葉をかけたり、安心で包み込んであげる
  これは、誰でもできることじゃないよ
  はっちゃんはすごいね
  相手のことをしっかり見て、冷静に辛抱強く寄り添ってあげれる
  これは、誰でもできることじゃないよ
  はっちゃんはすごいね
  これが、ずっとお父さんの記憶として
  はっちゃんの気持ちの奥深くに
  積み重なって、溶けることはありませんでした
「やがて、はっちゃんは、哲学や宗教に傾倒し」
子供は風の子「仏教系大学に進み、そこの講師だった頑じぃと出会うことになります」

〇華やかな寮
  ここは、はっちゃんの通う仏教系大学
  頑じぃとの出会いの場所
学生1「ちょっと! 画面からはみ出してない?」
学生3「気のせい、気のせい」
学生2「ちょっと暑くない?」
学生3「気のせい、気のせい」
学生3「ちょっと聞いた?」
「聞いてない」
学生3「言ってないし」
学生2「いいから、いいから」
学生3「「マインドフルネスB」の先生」
学生3「やばいらしい」
学生1「授業終わりにお持ち帰りすんの?」
学生2「そりゃ普通じゃん」
「えっ」
学生2「いいからいいから、で?」
学生3「コスプレで授業するらしい」
学生2「まじ! やるねぇ」
学生1「何のコスプレなん?」
学生3「戦国武将」
学生2「ウケるぅ」
学生1「縦のものを横にもしないのかな?」
「?」
学生1「無精(ぶしょう)」
学生3「はい」
学生2「外に出ない系?」
学生3「そりゃ出無精(でぶしょう)」
学生1「デブ!?」
学生2「反応速っ」
学生3「で、行ってみる?」
「行ってみるぅ」

〇華やかな寮
  ドドドドドドドドドドドドド

〇大教室
学生1「ドキドキ」
学生2「ワクワク」
学生3「来るよ」
頑じぃ「吾輩が頑じぃである」
学生1「デタァ」
学生2「ホンマモン」
学生3「ヤバイネ」
はっちゃん「先生、なんで甲冑付けてんですか?」
学生1「まさかの」
学生2「ド直球」
学生3「こいつもヤバイ」
頑じぃ「武士道とは何か」
頑じぃ「心身を鍛え」
頑じぃ「己を見つめ」
頑じぃ「己を知り」
頑じぃ「己を律する」
頑じぃ「まさにマインドフルネスの極み」
学生1「奥が深いのか」
学生2「分かったような」
学生3「分からんような」
頑じぃ「だから、甲冑を纏う」
はっちゃん「なるほど、超分かりやすい」
頑じぃ「さすがに刀は外に持ってこれませんが」
「ヤバイ✖️ヤバイ」
「化学反応はどうよ」
  大笑い
頑じぃ「それでは、今日出席者限定の、スペシャルな」
頑じぃ「課題を出します」
「限定の意味さえ分かりません」
頑じぃ「次回までにレポート提出です」
頑じぃ「テーマは、」
頑じぃ「嫌なことがあった時、どうするか、です」
頑じぃ「それでは、今日は、」
頑じぃ「座禅を組んで、呼吸をしてみましょう」
学生2「つまらん」
学生3「くだらん」
学生1「しょーもな」

〇水中
  瞑想の基本は座禅です
  あぐらをかいて
  背筋を伸ばし
  下腹に軽く力を入れ
  目はかすかに開き、やや前方を見る
子供は風の子「ラジオ体操第一みたい」
  手は前で軽く組み
  大きく、ゆっくりと、息を吸います
  これ以上吸えなくなったら
  少しだけ息をとめ、ゆっくりと吐きます
子供は風の子「意外と疲れるね」
  意識は呼吸に全集中です
  吸いながら下腹を膨らませ
  吐きながら、下腹を引っ込めます
  吸った息は心臓を出発し
  血液に乗って全身を巡り
  また、心臓に戻り、吐き出される
  と、イメージします
  段々と身体が熱くなってくるまで、続けます
「嫌だ、全く嫌だ、究極に嫌だぁ!️」

〇雷
  喝!!️
  あぁぁぁぁ
  痛い痛い痛い
  やめてぇ、こらえてぇ
  頑じぃの振るう警策(きょうさく)の音と、悲鳴が響きわたります。合掌。

〇大教室
頑じぃ「この前のレポート返します」
  全員の名前が呼ばれる
  あれ? 私だけレポート返ってこない?

〇大教室
  講義も終わり、2人きり
はっちゃん(先生にすごく見られてる気がする)
頑じぃ「八子(はちこ)君、ちょっといいかな?」
頑じぃ「八子君」
頑じぃ「おぉい、八子君!」
はっちゃん「えっ! あ、は、はい」
はっちゃん「すいません、いつも苗字で呼ばれなくて」
はっちゃん「先生がよければ、はっちゃんって呼んでください」
頑じぃ「そう、じゃあ、はっちゃん・・・」
はっちゃん「・・・は、はい」
頑じぃ「実は、お願いがあってね」
はっちゃん「お願い・・・ですか」
頑じぃ「うん、唐突なんだが」
頑じぃ「レポートね」
はっちゃん「あ! 提出したのに、私だけもらってません」
頑じぃ「そうなんだ、実はね、言いにくいんだけど」
はっちゃん「なんでしょう」
頑じぃ「うん、悪いんだけど、読んでくれないかな」
はっちゃん「読むんですか!?」
頑じぃ「うん、だめかな?」
はっちゃん「出来が悪いから、罰ゲームとか」
頑じぃ「いや、そうじゃない」
頑じぃ「自分で読むだけじゃなく、君から聞いてみたいんだ」
はっちゃん「わかりました」
はっちゃん「じゃあ、読んでみますね」

〇古い本
  次回予告
  男も女も心は秋の空
  またね、きっとだよ

次のエピソード:第ニ話(別れ)

コメント

  • また、はっちゃんに会えた!
    そしてはっちゃんと頑じぃとの出会い!この先が気になります。
    楽しみです!

  • はっちゃんと頑じぃとの確執…何があったんでしょうね?🤔
    えいさんとびぃさんと風の子!? 不思議な同居生活も気になります😆

  • 過去の出来事を残しておく日記。
    振り返るには大事ですし、書いておくとあー、あんなことがあったなぁとか振り返ることもできますよね。

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