第1話『水の精霊を探して』(脚本)
〇森の中
イブキ「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
イブキ「くそっ、追いつかれた!」
イブキ「こうなったら闘うしかない!」
イブキ「おりゃぁぁぁぁ!」
イブキ「うわっ! あぶね!」
イブキ(引っ掻かれて死ぬとこだった)
セナ「イブキ! 今助ける!」
セナ「ウータニウータニ、攻撃せよ」
イブキ(あんなデッカいクマを一撃で)
イブキ(これも呪術の力? シャーマン半端ねえ)
〇新緑
縄文時代
全てのモノに魂が宿る
アニミズムの時代
人々は精霊と交流し
シャーマンが
両者の橋渡し役だった
狩人のイブキ
シャーマンのセナ
縄文時代を生きる2人の
魂と魂が今、共鳴する。
第1話
『水の精霊を探して』
〇森の中
イブキ「・・・」
セナ「・・・」
セナ「イブキ、まだ怒ってるの?」
イブキ「・・・まあな」
「!!」
フウ「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン」
フウ「風の精霊フウとは我のことじゃ」
イブキ「なんだフウか」
フウ「なんだとはなんじゃ!?」
フウ「ていうか君たち雰囲気悪くない?」
フウ「喧嘩でもしたのか?」
イブキ「まあ喧嘩といえば喧嘩だな」
セナ「・・・」
イブキ「それよりさ、スイ見なかった?」
フウ「スイって湖に棲みついてる精霊か?」
イブキ「ああ。水の精霊で俺らの大事な友達」
〇睡蓮の花園
俺とセナ
そして水の精霊スイは幼なじみ
狩人・精霊・シャーマン
立場は違うけど妙に気が合って
いつも3人一緒だった
〇森の中
イブキ「なのにお前がスイを傷つけたから」
セナ「・・・」
〇睡蓮の花園
「・・・」
イブキ「セナとスイ? 2人で何話してんだ?」
セナ「悪いけどスイの気持ちには応えられない」
イブキ「えっ」
イブキ(気持ちに応えられないって・・・ まさか告白!?)
イブキ(スイってセナのこと好きだったんだ)
スイ「セナ。ひどいよ」
イブキ「・・・」
イブキ(俺ならスイにあんな顔させないのに)
〇森の中
イブキ「お前に失恋した翌日、スイは姿を消した」
イブキ「全部お前のせいだろ?」
セナ「いや、だから違くて」
イブキ「今さら言い訳すんじゃねー!」
フウ「ふーん」
フウ「でも失恋くらいで姿を消したりするのか?」
フウ「人間と精霊が交じり合うことはない」
フウ「彼女だって分かってたはずじゃろ?」
イブキ「そうだけどさ・・・」
イブキ「とにかくスイを見つけ出さないと」
イブキ「ムラも大変なことになっててさ」
〇睡蓮の花園
イブキ「なんだこれ!?」
イブキ(湖の水が濁りかけてる)
イブキの父「おそらくスイがいなくなったせいだろう」
イブキの父「湖の水はムラの貴重な水源だが このままでは使えなくなってしまう」
イブキ「それってかなりヤバいことだよな」
イブキの父「イブキ」
イブキの父「お前にムラの命運を託そう」
イブキの父「今すぐスイを連れ戻しなさい」
イブキ「え、俺が?」
イブキの父「お前は私の跡継ぎで、ムラ長となる男だ」
イブキの父「期待してるぞ」
〇森の中
フウ「なるほど」
フウ「水源が無くなるのは確かに困るな」
フウ(我の好物『ドングリクッキー』も 作れなくなってしまうんじゃな)
イブキ「フウ、お前の力も貸してくれないか?」
イブキ「精霊の行きそうな場所とか分かんない?」
フウ「そう言われてもな」
セナ「イブキ、あれ見て」
イブキ「ん?」
イブキ「なんだ? すげー光ってる」
フウ「精霊のオーラじゃ」
フウ「我のように姿を見せなくても ここには多くの精霊がいる」
セナ「精霊のたまり場みたいな感じ?」
イブキ「精霊のたまり場? ならスイも・・・」
セナ「スイは・・・いないと思う」
セナ「あの子のオーラを感じられない」
イブキ「・・・そっか」
フウ「しかし、あまり長居しないほうがいい」
フウ「人間がここにいるのは危険じゃ」
フウ「特にシャーマンはオーラを浴びすぎると」
セナ「う・・・うぅぅぅぅ・・・」
イブキ「おい! 急にどうしたんだ!?」
セナ「く、苦しい」
イブキ「セナ!!」
フウ「ほら言わんこっちゃない」
フウ「身体が勝手に精霊のオーラを取り込んで しまったのじゃろう」
フウ「シャーマンの特性じゃ」
セナ「う、ううう」
イブキ「何か言ってる!」
フウ「精霊の声を『口寄せ』してるんじゃな」
セナ「きゃー! あの人間たちイケメンすぎる!」
セナ「イケメンがイケメンを介抱してるわよ」
セナ「眼福すぎて鼻血出そう!」
「・・・」
イブキ「えっ、何これ」
イブキ「口寄せってもっと神聖な感じじゃないの?」
フウ「えーっと」
フウ「ちょっと個性の強すぎる精霊たちを 口寄せしてるのかもじゃな」
セナ「シャーマンの彼が『受け』かな?」
セナ「いや、逆でしょ?」
セナ「『シャーマン攻め狩人受け』よ!」
セナ「『リバ』は解釈違いです!」
「・・・」
セナ「くっ! うぅぅぅぅぅ」
イブキ「呆気に取られてる場合じゃなかった!」
イブキ「セナを助けないと!」
〇屋敷の寝室
フウ「着いたぞ」
イブキ「フウはここで暮らしてるのか?」
イブキ「見たことないものばっかだな」
フウ「精霊の文明は人間より進んでいるんじゃ」
フウ「セナはそこの布団に寝かせるといい」
イブキ「フトン? これのことか?」
イブキ「よっこらしょっと」
セナ「スー・・・スー・・・」
イブキ「落ち着いたみたいだな」
イブキ「マジで心配した」
フウ「喧嘩中なのに?」
イブキ「そ、それは・・・!」
イブキ「喧嘩中でも心配くらいするだろ?」
イブキ「大事な幼なじみなんだから」
フウ「はっはっは、美しき友情じゃな」
イブキ「それより俺たちこれからどうすればいい?」
フウ「うーん・・・」
フウ「精霊が突然すみかを離れるなんて 我も聞いたことがない」
フウ「土地に地縛される人生じゃからな」
フウ「我のような風の精でも 行き来できる場所が限られている」
イブキ「そうなんだ」
イブキ「こんなこと考えたくないけど・・・」
イブキ「まさか死んでないよね?」
フウ「安心しろ。精霊は人間ほど脆くない」
フウ「我の祖父母なんて1万年以上も前から このあたりで暮らしているぞ」
イブキ「へえ、だったらさ」
イブキ「フウのじいちゃんとばあちゃんにも 相談できないかな?」
イブキ「長く生きてる分、何か知ってるかも」
フウ「その頼みは」
フウ「聞き入れられん」
イブキ「なんで?」
フウ「我にも事情があるのじゃ」
イブキ「頼む! 協力してくれ!」
イブキ「今度ドングリクッキーやるから」
フウ「な、なぜ我の好物を!?」
セナ「イ・・・ブキ・・・」
イブキ「セナ! 気がついたのか?」
セナ「うん」
イブキ「よかった。あんま心配させんなよ」
セナ「・・・」
セナ「あのさ・・・スイのことだけど」
セナ「イブキは多分・・・誤解してるよ」
イブキ「え?」
〇睡蓮の花園
スイ「セナ。結婚するって本当?」
セナ「あぁ、もう耳に入ってたんだ」
セナ「今度イブキもいる時にちゃんと話そうと 思ってたのに」
セナ「まだ正式に決まったわけじゃないけど 隣のムラから縁談を持ちかけられてて」
スイ「その人のことセナは愛してるの?」
セナ「まだ会ったことないし分からないよ」
セナ「でも僕にぴったりの相手だって 母さんも言ってた」
スイ「・・・」
セナ「スイ?」
スイ「私は認めない!」
セナ「えっ?」
セナ(スイは反対なの?)
セナ(まさか僕のこと・・・)
スイ「セナの相手はイブキ以外認めないからね!」
セナ「・・・は?」
セナ「今、イブキって言った?」
スイ「うん! イブキじゃなきゃダメなの!」
スイ「私、超強火の『セナイブ』推しなんだから」
セナ「セナイ・・・精霊の用語か何かかな?」
スイ「『攻め』がセナで『受け』がイブキって こと!」
セナ「・・・」
セナ(全然言ってる意味が理解できないけど)
セナ(スイは僕とイブキに一緒になって欲しい のかな?)
セナ「・・・」
セナ(イブキのことは・・・好きだ)
セナ(でも・・・)
セナ「悪いけどスイの気持ちには応えられない」
スイ「セナ。ひどいよ」
〇屋敷の寝室
イブキ「えっ、何それ」
イブキ「俺とセナに一緒になってほしいって」
イブキ「スイが本当にそんなこと言ったのか!?」
フウ「それ、あれじゃな」
フウ「今、精霊女子の間で流行ってる・・・」
フウ「確か『ビーエル』ってやつ」
「びーえる?」
フウ「人間の男同士が一緒にいる姿を眺めて 胸をときめかせる趣味らしい」
フウ「我の妹もお気に入りの2人についてよく 話しているんじゃ」
「・・・」
イブキ「じゃあスイはセナが俺以外の女と結婚するのが悲しくて・・・」
イブキ「ん? ちょっと待て」
イブキ「俺、結婚の話とか聞いてないけど!?」
イブキ「なんでスイが知ってて俺は知らないの?」
イブキ「誰よりも先に報告しろよ! 親友だろ?」
セナ「ごめん」
セナ「でも、まだ親友だと思ってくれてるんだ」
イブキ「え?」
セナ「だってイブキ 今回のことでずっと怒ってたから」
セナ「嫌われちゃったかと思ってた」
イブキ「それはお前がスイを傷つけたから」
イブキ「だと俺が勘違いしてたのか」
イブキ「つーか、もっと早く言えよな」
セナ「イブキが弁解させてくれなかったじゃん」
イブキ「そうだっけ? じゃあ俺もごめん」
イブキ「これで仲直りな」
セナ「うん」
フウ「ん?」
フウ(なんじゃ今のは?)
フウ(2人の様子に胸がときめいたような)
フウ(まさかこれがビーエル!?)
セナ「誤解が解けてもスイは戻ってこないよね」
セナ「あの時ちゃんと話を聞くべきだった」
セナ「僕の責任なのは間違いないよ」
イブキ「いや、それは違う」
イブキ「俺がお前でも同じ反応するって」
イブキ「ったくスイのやつ訳分かんねーな」
イブキ「でもそんな訳分かんねー精霊を 俺たちで探してやろうぜ」
イブキ「大事な幼なじみだろ?」
セナ「うん、そうだね!」
イブキ「・・・というわけでフウ」
イブキ「フウ?」
フウ「・・・」
フウ「な、なんじゃ?」
フウ(いかん。まさか2人にときめいてるなんて 知られたくない!!)
イブキ「やっぱり会わせてくれ」
イブキ「お前のじいちゃんとばあちゃんに」
フウ「・・・それだけは無理じゃ!」
「えー・・・」
つづく
縄文時代の精霊たちのビーエル!!設定と世界観が独特で面白かったです!こんな設定、絶対思い付かない!
縄文時代という設定が面白いと思って読みましたが、縄文時代あまり関係なかったですね(笑) 会話のテンポがよくて、みんな真剣なのにどこかズレてて?とても楽しいです。
シリアスかと思えばまさかのBL展開😆
この世界の精霊たちに親しみが持てました! ギャグとしてもBLとしても続きが気になります!