特異地蔵譚

わらやま

宅配地蔵 オムニバス(脚本)

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〇タワーマンション
おじいさん「ハァ・・・ハァ・・・」
おじいさん「このマンションでラストじゃ・・・」
「はい?」
おじいさん「1313号室の清納様ですか!? ヤマガワ運輸です。宅配便お届けに参りました」
「ああ・・・今開けるわ」
おじいさん「あ、ただこのマンションでまだ5件あるので、一旦全てにインターホン鳴らしてから参りますので・・・」
「ああ、そう・・・ まぁ、いいよ別に」
おじいさん「ふぅ・・・えーっと次は・・・」
おじいさん「う・・・時間指定なのに・・・なんで不在なんじゃ・・・」
おじいさん「仕方ない、宅配ボックスに・・・」
  宅配ボックスが一杯です
おじいさん「ぐっ、なんで早く回収しないんじゃー!!」

〇タワーマンション
おじいさん「ふう、やっと終わったわい。 もうこんな時間じゃ・・・」
おじいさん「身体が限界じゃ・・・ 最近は幻聴も聴こえるしのう・・・」
おじいさん「『アレ』が使えていた時は楽だったんじゃが・・・」
おじいさん「とりあえず営業所に戻るかのう」

〇役所のオフィス
おじいさん「ただいま戻りました・・・」
所長「おい!!遅いぞ!! 何時までかかってんだ!!」
おじいさん「・・・すみません」
所長「最近のお前はたるんどるぞ!! 少し前までのあの調子はどこいったんだ!!」
おじいさん「申し訳ないです・・・」
所長「ったく・・・とにかく明日の配達の準備だ!!」
おじいさん「・・・はい」
おじいさん「ウッ」
所長「おい、おい・・・!? 大丈夫か!! きゅ、救急車!!」

〇役所のオフィス
  2時間後
所長(まずい・・・どうしたもんか・・・)
???「ういーっす!!」
運送屋「久しぶりっすね!!所長!!」
所長「お、おう!! 久しぶりじゃないか!!運送屋!!」
所長「お前が独立して以来だから、1年ぶりくらいか!?」
運送屋「そうっすね。所長にはお世話になりました」
所長「今日はどうしたんだ!?」
運送屋「この近くでチャーター便の運送終えたところっす。所長いるかなって思ってダメもとで来たんすけど・・・」
運送屋「珍しいっすね。こんな時間までいるなんて・・・」
所長「いや・・・それが、実はだな・・・」
所長「お前も知ってるじいさんいるだろ!?」
運送屋「ああ!!じいさん懐かしいっすね!! あの人まだ現役なんすか!?」
所長「さっき倒れてな・・・」
運送屋「まじすか!?」
所長「もう意識は取り戻してるし、命に別状はないんだが・・・」
所長「ほら、最近労災だとか労基だとか厳しいだろ。しばらく休ませろとの本部からの指令があってな・・・」
運送屋「そうだったんすか・・・」
所長「そんな事言われてもウチのエリアは人数ギリギリでやってるし、配達物は待ってくれないからな・・・」
所長「どうしたもんかと途方に暮れているところだよ・・・」
所長「ところで運送屋君・・・」
所長「明日の予定ってどんな感じかな!?」
運送屋「いや・・・まぁ・・・オフっすけど・・・」
運送屋「まさか・・・!?」
所長「頼む!!じいさんの代わりに宅配やってくれ!!」
運送屋「む、無理っすよ・・・ 俺小樽-敦賀ルートの運送終えてヘトヘトなんすよ!!」
所長「他に頼れる人がいないんだ!! 報酬なら払うから!!」
運送屋「・・・・・・一日だけっすよ」
所長「ありがとう!! 助かるよぉ!!!!」
所長「ルートはお前が担当していた時と一緒だ!!」
所長「まあ、当時はなかったタワマンが建ってたりするが」
運送屋(タワマン・・・ 最悪だぜぇ・・・)

〇タワーマンション
運送屋「おいおい、このマンションだけで何件あんだよ・・・終わんねーぞ」
運送屋「再配達の時間指定で不在とか舐めてんのかよ!!」
運送屋「ちっ、宅配ボックスに突っ込んで・・・」
  宅配ボックスがいっぱいです
運送屋「うがーーーっ!!」

〇タワーマンション
運送屋「チックショー、やっと終わったぜ!!」
運送屋「こりゃじいさんが倒れるのも無理ねぇな」
運送屋「あん!?」
運送屋「こんなところに地蔵なんかあったのかよ」
運送屋「タワマン建てるついでに壊しそうなもんだがよ」
運送屋「誰にも拝まれねぇだろな、こんなとこじゃ・・・」

〇役所のオフィス
運送屋「・・・終わったっす」
所長「おお!!すまなかったなぁ!!」
運送屋「ほんと参ったっすよ。あのタワマンには・・・」
所長「ちょいとお行儀が悪い客が何人かいるんだよなぁ」
運送屋「じゃあ俺はこれで・・・」
所長「ちょっとちょっとちょっと」
所長「まだ代わりが見つからないんだぁ」
運送屋「いやマジで無理っすよ!! 俺だって今20連勤なんすよ!! 流石にキツいっすよ!!」
所長「頼む!!ホント明日だけ明日だけでいいから!!」
運送屋「こんなの本部にバレたらやばいっすよ!!」
所長「分かってるが、明日もどうしても代わりの都合がつかないんだ!! 頼れるのはお前だけなんだ!!」
運送屋「・・・わかりました。 わかりましたよ」
運送屋「でもホント明日までっすよ。 明後日からまた長距離チャーターの依頼入ってるんで!!」
所長「おお!!恩に切るよ!! ああ、必ず明日までだ。約束する」

〇タワーマンション
運送屋「んで、またここかよ・・・ 最悪だ・・・」
運送屋「はあ、地蔵さんよぉ」
運送屋「俺の代わりに配達やってくんねぇかぁ」
運送屋「なんてな」
運送屋「ん!?気のせいか」
運送屋「なんか地蔵から出たような気がしたんだが」
運送屋「連勤で疲れてんな・・・ さ、観念して荷物・・・・・・!!」
運送屋「に、荷物が無くなってる!!!!」
運送屋「ど、ど、ど、どういうことだ!! 俺は一瞬しか目を離してねぇぞ!!」
運送屋「そんな一瞬で盗まれる量じゃねぇはずだ!!」
運送屋「あん!?こ、これは!?」
運送屋「う、受取完了の伝票じゃねーか!!」
運送屋「送り状番号でトレースしても配達完了になってやがる!!」
運送屋「一体どういう事なんだよ・・・」
運送屋「まさか・・・」
運送屋「マジでこの地蔵が・・・」
運送屋「だったら・・・ コイツを利用すれば・・・」

〇役所のオフィス
運送屋「所長戻ったぜ!!」
所長「え、えらく早いな!!」
運送屋「ん!?ああ・・・効率よく回れたんすよ」
所長「そうか!! いやぁ、この2日間本当に助かったぞぉ!!」
運送屋「それなんだがよぉ所長・・・ なんなら明日も宅配やるっすよ」
所長「え!?いいのか!? 一応隣の隣の県の営業所から、ヘルプに入ってもらう事にはなってるんだが・・・」
運送屋「そんな不慣れな奴じゃ逆に所長の仕事増えるっすよ。俺に任せてください!!」
所長「いや、まぁ助かるんだが・・・ お前チャーター運送あるって言ってなかったか・・・」
運送屋「その件も・・・なんとかなりそうなんすよ・・・」

〇タワーマンション
運送屋「さて、地蔵さんよ」
運送屋「今日の分の荷物と俺のチャーター便の荷物代わりに運んでくれよ」
運送屋「さてと・・・」
運送屋「キタキター!!」
運送屋「全部伝票があるぞ!! しっかり配達されてる!!」
運送屋「コイツァ・・・ とんでもねぇ拾いもんだ!!」

〇役所のオフィス
運送屋「お疲れっす!!」
所長「お、お前か・・・ 今日も早かったんだな・・・」
所長「それになんだか上機嫌だな!?」
運送屋「いやなに、ちょっといいもん拾っただけっすよ」
運送屋「所長はなんか浮かない顔っすねぇ」
所長「いやぁ、それがじいさんと連絡がつかなくなってなぁ」
運送屋「寝てるだけじゃないんすか!?」
所長「だといいんだが・・・」
所長「明日からの・・・」
運送屋「俺やるっすよ!!」
所長「なにっ!?」
所長「昨日まであんなに嫌がってたじゃないか!?」
運送屋「いやぁ、それがチャーターの予定がしばらくキャンセルになっちゃって(嘘)」
運送屋「俺でよければ力になりますよ!!」
所長「いいのか・・・!? すまん、感謝する」
運送屋「任せてくださいよ!!」

〇タワーマンション
運送屋「地蔵!!頼むわ!!」

〇役所のオフィス
所長「まだ連絡がつかないんだ・・・」
運送屋「どっか出かけてるんじゃないですか?」

〇タワーマンション
運送屋「地蔵!宅配よろしく! あとチャーター便も!」

〇役所のオフィス
所長「家に行ったが誰もいなさそうだった。郵便物も溜まってたんだ」
運送屋「やっぱり遠出でもしてるんすよ」
運送屋「俺がいるんでいいじゃないすか!! じいさんにはもう少し休んでてもらえば」
所長「うむぅ」

〇タワーマンション
運送屋「地蔵ちゃーん!!い・つ・も・の!!」
運送屋(くっくっく・・・ 最高だぜ!!!!)

〇役所のオフィス
運送屋「ふいー、楽チン楽チン」
後輩「センパイ・・・ なんでそんな元気なんすか・・・!?」
後輩「あの地獄のルートをじいさんの代わりにやってるんすよねぇ・・・!?」
運送屋「はっはっは!! 要領がいいんだよ!!」
運送屋「ま、お前にも今度教えてやるよ!! 俺の秘密をな!!」
後輩「はぁ・・・」

〇タワーマンション
運送屋「さて、今日も頼むわ!! 地蔵ちゃーん!!」
運送屋「ん!?」
運送屋「地蔵様!!配達頼みます!!」
運送屋「発動しやがらねぇ」
運送屋「ま、まじかよ!! やべぇ!!それならすぐ配らねーと!!」
  次はアナタの番です
運送屋「ん!?なんか今声が聞こえたような・・・!?」
運送屋「それどころじゃねぇ!!急がねーと!!」

〇役所のオフィス
運送屋「すんませーん!!遅くなりました!!」
所長「・・・珍しく遅かったな」
運送屋「所長・・・どうしたんすか!? 青い顔して・・・」
所長「ああ・・・ 実はさっき警察から連絡があって・・・」
所長「じいさんが家で亡くなっているのが見つかったらしい・・・」
運送屋「ま、ま、マジすか!?」
所長「ああ・・・」
所長「しかも死因は衰弱死らしい・・・」
運送屋「自宅で衰弱死って・・・!? なんなんすかソレ!!」
所長「私も顔は見ていないのだが・・・」
所長「警察いわく、まるで不眠不休で働いていたかのような様子だったらしい」
運送屋「休んでたんじゃないんすか!?」
所長「わからん・・・ だが警察からは私が過剰に仕事を与えたんじゃないかと疑われていてな」
所長「今から事情聴取だ・・・」
所長「運送屋・・・ 悪いが明日の宅配も頼む・・・」
運送屋「はぁ・・・ まぁ・・・ いいっすけど・・・」
所長「・・・助かるよ じゃあ、私は行くよ」
運送屋「・・・・・・」
運送屋(じいさんが死んだ!?なんで!? この宅配を毎日やってた時ならまだ分かるけど、休んでたんだぜ・・・)
後輩「お疲れっす先輩。 その顔は・・・じいさんの件聞きましたか」
運送屋「ああ・・・信じられねーよ」
運送屋(つーか、じいさんの件で頭真っ白になってついOKしたけど、地蔵の力なしでの宅配はマジキツいぜ)
運送屋(でも、待てよ・・・ 俺が今日使えなかったのは、使用回数制限かなんかに引っかかっただけかもしれねーな)
運送屋(それなら・・・)
運送屋「なぁ、お前明日の朝イチたしか宅配ほとんどないよな」
後輩「え!?まあ、はい、そうですけど・・・」
運送屋「この前話してた俺の秘密を教えてやるからちょっと付き合えよ」
後輩「はあ・・・まぁいいっすよ」
運送屋「おお!!じゃあよろしくな!!」
  次はアナタの番です
運送屋「ん!?なんか言ったか!?」
後輩「何も言ってないっすよ。 じゃあ俺はこれで・・・」
運送屋「・・・・・・」
運送屋「オレの番!? 何の事だ!?」

〇タワーマンション
後輩「本当にそんな地蔵あるんすか!?」
運送屋「マジ、マジ、大マジなんだって!!」
運送屋「ほら、これだよ!!」
後輩「何の変哲もない地蔵ですけど・・・」
運送屋「地蔵様、今日の荷物を配達してください」
運送屋(やっぱり何も起きねーなぁ)
後輩「ダメじゃないすか・・・」
運送屋「だからさっきも言ったろ!! 昨日から出来なくなったんだって!! お前やってみろよ!!」
後輩「はぁ・・・」
後輩「地蔵様、今日の荷物の配達をお願いします」
運送屋「おお!! いつものが発動し──」
後輩「ん!?」
後輩「ああ!!本当に荷物が無くなってる!! すげぇ!!先輩が言った通りっすねぇ!!」
後輩「アレ・・・!? 先輩・・・!?」

〇タワーマンション
運送屋「──たぜぇ!! やっぱり回数制限だったんだぁ!!」
運送屋「ん!?」
運送屋「な、なんだココは!?」
  次はアナタの番です
運送屋「これは・・・昨日聞こえてた幻聴・・・!?」
運送屋「まさか・・・地蔵!? テメェが語りかけてんのか!?」
  私の名はサクリファイス地蔵
  前任者の死亡により生贄対象はあなたに移りました
運送屋「い、意味がわからねぇ!! 大体ここは何なんだよ!?」
  ココは現世に限りなく近く、だが決して交わらない隣接世界
  ココでは現世でお願いされた内容を完遂しない限り、元の世界には戻れません。
  現在のタスクは荷物の宅配です。
  完遂して下さい。
運送屋「は!?ふざけんなよ!! 誰がやるかよ!!」
  それは不可能です。
運送屋「何だぁ!!体が勝手に!!」
  タスクから逃れる術はありません。
運送屋「くそがぁぁぁぁ!!」

〇高級マンションの一室
マンションの住人「くそっ!!また負けた!!」
マンションの住人「おい、またゲームかよ」
マンションの住人「っせーな・・・ いいじゃん別に・・・」
マンションの住人「お前宛の荷物!! 不在通知入ってたぞ!! お前この時間家に居ただろ!?」
マンションの住人「あぁぁ・・・」
マンションの住人「多分オンライントーナメント中だったやつかな・・・ 止めるわけにいかないし」
マンションの住人「ってぇぇ!! 何すんだよ!!」
マンションの住人「お前なぁ!! 宅配業の人達はただでさえ大変なんだぞ!!」
マンションの住人「最低限のマナーが守れないんなら宅配なんて使うな!!」
マンションの住人「あと課題が提出されてないって先生から連絡あったぞ!! それもしっかりやっておけよ!!」
マンションの住人「・・・・・・」
マンションの住人「クソ親父が・・・」
マンションの住人「はーぁ、面白くねぇ面白くねぇ 何もかも面倒くさいや」
マンションの住人「俺の面倒くさい事全部誰かに押し付けたいなぁ・・・」
マンションの住人「不思議な力があるって噂のマンションの外の地蔵にでも願ってみるか・・・」

〇タワーマンション
  タスクが追加されました。
  完遂して下さい。
  タスクが追加されました。
  完遂してください。
  タスクが追加されました。
  完遂してください。
運送屋「もう・・・勘弁してくれよぉ!!」
  完遂して下さい。

次のエピソード:ラーメン地蔵 対策課

コメント

  • サクリファイス地蔵…!! なぜかクセになる語感(笑)
    この地蔵の能力が怖いというだけでなく、一部の人に負荷が集中する人間社会の縮図が垣間見えた気もしてゾッとしました😨

  • 努力せずに楽したらダメではあるけれども、地蔵というチートに頼らざるを得なかったじいさんの気持ちも分かるなぁ…
    そもそも宅配を利用する側がマナーを守ればこんな事にならない訳で、学びになりました

    オカリさんの”もしも”アイデアによる、『サクリファイス地蔵2』面白そう!

  • なかなか我々、配達員の“あるある”が盛り込まれた作品でリアリティがありましたね(笑)
    タワーマンションなんかだと、稀にエントランスでは返事したのに部屋のインターホンで何故か返事しない人までいますよ
    エントランスに集積所でも作って欲しいですね(笑)
    半年くらい宅配ボックス放置する人とかも普通にいます
    現実のが余程ホラーかも知れませんよ…

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