第七話 経典の実(脚本)
〇大樹の下
白栴が元の姿に戻り──ドサッとその場に崩れ落ちたのを空聖は支える。
空聖「・・・おっと──!! 無茶しやがって──!!」
空聖「蓬戒! コイツをジイさんに与えてやってくれ!」
空聖は、白栴の手の中で輝く”経典の実”を蓬戒に渡す。
蓬戒「はいよっ!」
蓬戒が”経典の実”を白栴の爺様にかざすと──
その実は爺様の体に吸い込まれてなくなった。
そして、しばらくすると──
白栴の爺様「・・・う・・・?」
〇大樹の下
白栴の爺様が目覚めると──
風花が止んだ。
九魔羅「チッ・・・!! もう少しで黒檀もろとも宝樹を潰せて”経典の実”を全て邪の気で染め上げられたものを──!!」
空聖「残念だったな? 九魔羅!!」
空聖「──さて、ジイさんも目覚めた事だし・・・。 九魔羅ぁ? どうなるのか、わかってんだろーなぁ?」
九魔羅「・・・」
バキボキと指を鳴らして空聖が九魔羅に凄んだ時──
白栴が目覚めた。
白栴「・・・ダメ・・・!」
空聖「お?白栴! ちょうどいいや! 九魔羅の処罰、どうするよ?」
九魔羅「・・・」
白栴「しょ・・・処罰・・・?」
空聖「おう。 ジイさんと宝樹を危険な目に合わせたんだ! 煮るなり焼くなり・・・」
白栴「・・・命を奪うの?」
空聖「・・・奪わねーと・・・”また”こんな事態が起こるぞ?」
白栴「・・・」
白栴「・・・い、命を奪うのは・・・反対かな?」
九魔羅「!?」
空聖「・・・やっぱり・・・オマエは── せっかく捕まえた魚を逃すんだな・・・」
天玉「空聖! 功徳様は、お優しいのだ! だから今回も──」
空聖「──優しいだけじゃ済ませねーんだよ!!」
空聖「前回、情けをかけて・・・今回、このザマだ!! 生かしておいたら── また次があるかもしれねぇ!!」
白栴「・・・」
蓬戒「──僕は、今の白栴ちゃんの判断に任せるよ」
簾浄「──空聖の言いたい事も分かるが・・・ 功徳様との長い旅路で得たものは・・・ ”許しの心”と”自由という名の慈悲”」
簾浄「──空聖も忘れた訳ではないだろう?」
空聖「チッ!!」
空聖は髪の毛を1本抜き、それにフッと息を吹きかける。
そして花びらの雲に乗り、その場から去ろうとし──
白栴「ま、まままま待って──!!!! 空聖さんっ!!」
慌てて、白栴は空聖の腕を掴んだら──
〇雲の上
二人は、あっという間に雲の上に移動した。
空聖「なっ!?バッ!! 危ねぇだろ!?」
白栴「いや、何か勢いで──!!」
空聖「──ついて来るバカがいるかよ!? ・・・あー、逃げようと思ったのによ・・・」
白栴「──いや、何か逃しちゃダメだと思って!!」
空聖「ま、ついて来たモンはしょうがねーか。 ──さっきの話だけどよ・・・?」
空聖「オレ様だって、別に九魔羅のヤツの息の根を止めたい訳じゃねーんだ・・・。 ただ・・・オマエが心配で・・・」
白栴「・・・心配・・・?」
空聖「九魔羅を生かしておけば、またいつかこんな日がやって来る。 オレが側に居てオマエを守ってやれる内はいいんだ・・・」
空聖「だが、側に居られなくなったら? オレが目覚めるのが、九魔羅に襲われるよりも後だったら?」
空聖「──オレは・・・オマエを失うのが怖いんだよ・・・」
そう言って空聖が白栴の腕の痣に口付けると──
白栴の脳裏に古の記憶が蘇る。
〇古い本
それは──
かつて、白栴が白檀功徳として
旅をしていた時の記憶・・・。
〇後宮の庭
白檀は、幼き頃より”聖なる気”を身の内に宿していた。
そんな白檀にある日、白羽の矢が立つ。
白檀は功徳寺より、沙羅国にある”経典の実のなる宝樹”が魔王”九魔羅”に狙われ、危機に瀕していると用命を受けた。
黒檀功徳「白檀は女の子・・・。 私がやはり旅に出よう」
白檀功徳「いいえ。お兄様。 お兄様は、お体が悪いのですから・・・ ここは私に任せてください!」
黒檀功徳「──では、心強い共の者を贈ろう」
そう黒檀が言って、寺内の一番強い”空聖”の石像に自身の聖なる気を練り込むと──
その石像が一人の青年の姿に変わる。
白檀功徳「お兄様!? この者は?」
黒檀功徳「戦いの化身・・・”空聖”様だよ。 私の代わりに白檀を守ってくださる事だろう」
空聖「こうして、人の前に姿を現すのは久々だぜ。 ま、よろしくな!白檀!!」
〇草原の道
かくして、白檀は空聖と共に宝樹を救う旅に出た。
旅の先々で──
天玉
蓬戒
簾浄
──が、仲間に加わり経典の実のなる宝樹が植る聖地を目指す。
〇荒野
蓬戒「ねぇ?功徳? そんなにスゴイ実ならば・・・旅が終わったら一つ食べてみたいんだけど?」
簾浄「私も・・・一度聞いてみたかった。 ”経典の実”とは、何なのです?」
白檀功徳「私達、僧が”経典”として崇めている書・・・。 それの最初の形は、”実”なのですよ」
白檀功徳「その”経典の実”がなるのが”宝樹”。 その実には、世界を律する経典の力が内在し、食べる事でその智慧を得られる・・・」
白檀功徳「ただ、その性質は変わりやすく・・・ 邪の気が入れば、邪悪な”悪の経典の実”となり──」
白檀功徳「聖の気が入れば、”聖なる経典の実”となる・・・」
白檀功徳「九魔羅は、魔王。 ”経典の実”を邪悪な気で染め上げ、さらなる”悪の経典の実”を手に入れようと目論んでいる!」
天玉「それを阻止すべく、功徳様は奮闘している──!! 女性の身ながら、なんと御立派な所業!!」
天玉「だからこそ! 我らがお守りせねばっ! な?空聖?」
空聖「おう!そうだなっ!!」
蓬戒「ねぇ?・・・食べてみたいんだけど?」
白檀功徳「・・・ふふ! 皆、ありがとう。 それにしても── 蓬戒は、相変わらずですね?」
白檀功徳「この旅が無事に終わったら── 私も”経典の実”を頂ける事になっています。 なので、皆で食べてみましょう?」
蓬戒「やった!」