フルオートダダダダリボルバー

新田漣

弾丸と、おバカな殺し屋。(脚本)

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〇果物
  食品のデリバリーが当たり前になった昨今、我々にとって宅配とは身近なサービスだ。

〇薄暗い廊下
  だが、一般的には知られていない非合法なデリバリーサービスも存在する。
響「ちーす。 『にこにこ飯店』から来ました、響でーす」
  響が所属する『にこにこ飯店』は、その筆頭ともいえる組織だった。
警備員「な、なんだ貴様! どこから入って──」
警備員「カハッ・・・」
響「・・・ふぅ。今ので最後かな」
響「早く帰って甘いものが食べたいなぁ」
  『にこにこ飯店』は主に、殺人のデリバリーサービス業として名を馳せている。
  依頼主から殺人を請け負った配達員が現地に直行し、皆殺しにする。至ってシンプルなサービスだ。
  響はそんな組織の中で、Sランク配達員として君臨していた。
響「ん、なんだろ? 向こうの方から、人の気配がする」
響「リストは確認してるし 殺し漏れは無いはずなんだけど・・・」
  響は不測の事態が起こっても、決して冷静さを失わない。
響「えっ、1人殺したってことは 1人減るから・・・え? なんで?」
響「こんなことなら、もっと真面目に 算数ドリルを解けば良かったなぁ」
  また、響は殺し屋としてのプロフェッショナルな姿勢が高く評価されている。
響「もし全員を殺せなかったら 報告書を出さなきゃいけないんだっけ」
響「うわ、めっちゃ嫌だなぁ 誤魔化せないかな、催眠術とかで・・・」
響「とりあえず、気配の主を確認しなきゃ」

〇実験ルーム
響「うわっ、何この部屋、すご!」
響「ここで自撮りしたら めっちゃ賢く見えるかな?」
  響は常に知的な言葉を操り、他の配達員からの信頼も厚い。
響「この試験管の中身が全部ジュースだったら 最強のドリンクバーなのになぁ」
響「あれはソーダ味だな、青いし」
響「ヤバいな、あんなに飲んだら 晩ご飯は食べられないな・・・」
  響の脳は常に働いており、複数のタスクを並列処理しながら行動することが可能だ。
響「あ、人の気配がする件を忘れてた」
響「最近、物忘れが酷いんだよね 今日だって、銃を忘れかけたもんなぁ」
  響は常に冷静沈着で──
???「オギャァァァァッ! オギャァァァァッ!」
響「ぎゃぁぁぁぁぁぁ! 何何何何ッ?」
  感情を表に出さない配達員だ。
赤ちゃん「オギャァァァァ、オギャァァァァ!」
響「うわぁ、赤ちゃんだ! カワイイイイイイッ!」
響「よーちよちよち。べぇべぇべぇ 怖くないでちゅよぉ・・・えへへ・・・」
響「合法的に赤ちゃん摂取できるとか最高か?」
  響は・・・
赤ちゃん「・・・だっ?」
響「だっ? だってー、カワイイ!」
響「名前はなんだろな? プリティだからプリ子かな?」
響「いや、キューティーだから キューちゃんか・・・?」
  響は・・・
響「それより、どうしようかな。 今回は皆殺しを依頼されたけど」
響「こんな天使を殺すのは無理だよね ・・・持って帰るか?」
警備員「い、いつの間に、銃を・・・」
響「え、フツーに今だけど」
響「てか、やっぱり1人漏れてたかぁ」
響「ま、ここで仕留められたし 結果オートバイってやつだねっ」
  響は、殺人の才能”だけ”に愛されたS級配達員である。

〇ラーメン屋のカウンター
  ──同日、にこにこ飯店。
響「ただいまおっすー! 響ちゃんのご帰還だよーい」
羽月「響、アンタえらいご機嫌じゃない ちゃんと依頼はこなしたの?」
響「もちろんだよ、羽月さん! パーフェクト美少女響ちゃんだからね!」
羽月「はぁ・・・アンタってホント、 口を開くと一気に馬鹿になるわね」
  彼女は羽月。『にこにこ飯店』のオーナーとして殺人デリバリーサービスを運営する、いわば響の上司的なポジションだ。
響「それよりさぁ羽月さん! 私、いいもの拾っちゃったんだぁ」
羽月「いいもの・・・? 蛇の抜け殻とか?」
響「あっ、私のコト馬鹿にしてるでしょ!」
響「蛇の抜け殻は いいものじゃなくて宝物なんだけど?」
羽月「馬鹿の想像を軽く飛び越えないでよ」
羽月「それより、何拾ってきたの。 言っておくけど、ウチでペットは無理よ?」
響「へっへーん そういうのじゃないんだなぁ」
響「じゃーん!」
赤ちゃん「だっ」
羽月「いやいやいやいや! ムリムリムリムリ!」
羽月「ペットよりも重い命が来るとは思わなかった」
響「可愛いでしょ? 名前はキューちゃんだよっ」
羽月「なんでそんな九官鳥みたいな・・・」
響「えっ、キューティーだからキューちゃん」
羽月「その理論なら、世の赤ちゃんは 全員がキューちゃんになるわよ・・・」
響「あ、そっか! 羽月さん、天才か・・・?」
羽月「頭痛くなってきた・・・」
羽月「それより、この子はどこで保護したの。 任務中に拾ったとか言わないでしょうね?」
響「は、は、橋の下でヒロイマシタガ」
羽月「初めて嘘をつくロボットか」
羽月「アンタねぇ。 今日の依頼は皆殺しだったはずよ」
羽月「この赤ちゃんだって例外ではないわ」
響「で、でも・・・ この子、ひとりぼっちだったから」
羽月「・・・自分と重ねちゃったんでしょ」
羽月「人体実験を行う組織で育ったアンタと その組織の支部で拾った赤ちゃん」
羽月「境遇が同じだから感情移入してしまった。 ・・・ってとこかしら?」
響「うっ、その通りです・・・」
羽月「はぁ、才能は申し分ない子なのに まだまだ甘い部分が抜けきらないようね」
響「・・・ごめんなさい」
羽月「で、名前はどうするの?」
響「・・・へっ?」

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コメント

  • キャラクターが魅力的でテンポ良く読めました!続きが楽しみです!

  • 序盤のナレーションと響ちゃんのちぐはぐな行動がおもしろかったです。響ちゃんかわいいですね。予想外のラストで、先が気になります!

  • 感性も他と違う…考え方も違うのかな?
    だいぶ頭の中ぶっ飛んでそうだなあと感じてしまいました笑
    それにしても成長には意味がある…人間なのか?!

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