エピソード18(脚本)
〇戦線のテント
カラカル「じゃあ、アイリくんは前線へ」
カラカル「ニルくんとエルルくんのふたりは後方で支援を頼む」
カラカルの言葉に、ニルとアイリとエルルの3人が頷(うなず)く。
上級コレクターであるアイリは前線に、ニルとエルルは後方の支援部隊にそれぞれ配属されることになった。
エルル「アイリさんっ! 夜は一緒にご飯食べましょうね!」
アイリ「悪いけど、今日の夜は前線警備だわ」
エルル「じゃあ、会いに行きます!」
ニル「俺も様子を見に行くよ」
アイリ「・・・ほどほどにね」
〇荒廃した街
3人がアーティレに来てから数日後。
カラカルの予想通り、再びギアーズの大群がアーティレに押し寄せてきた。
緊急事態を知らせる鐘が響き渡り、街全体に緊迫した雰囲気が漂う。
〇城壁
ニルとエルルは、攻め来るギアーズに備えて大砲部隊の手伝いを行なっていた。
砲弾を運んでいる最中も、地響きは次第に大きくなっていく。
上煙が迫ってきて、都市へ距離を詰めてくるギアーズの大群が人々の視界に映った。
誰もが緊張した面持ちで、ギアーズを見つめる。
ニルは大砲発射の準備を終え、指揮官の合図を待った。
指揮官「発射用意!」
旗を掲げた指揮官が叫ぶ。そして大群がある地点を通過したのを確認して、勢いよく旗を振り下ろした。
指揮官「撃(う)てぇーッ!!」
〇草原
大砲が発射されたのを合図に、前線のコレクターたちはギアーズに向かって一斉に駆け出した。
もちろんその中にはアイリの姿もある。
前線の役目は、大砲が仕留め損ねたギアーズを片っ端から処理していくことだ。
アイリは腰から双剣を引き抜いて構える。
目に入ったギアーズを次から次になぎ倒しながら、ちらりと周囲をうかがった。
前線に出てるコレクターたちは、皆それなりの実力者らしい。
周囲には、すでに何体ものギアーズが倒れている。
ライザー「へぇ〜、さすが最年少で上級になった天才少女様だな」
アイリの後方から現れたのはライザーだ。
アイリは冷ややかな視線をライザーに向け、構わずギアーズを倒していく。
しかし、ライザーは話を続けた。
ライザー「お仲間のふたりは後方らしいな。 やっぱり大したことないじゃないか」
アイリ「・・・・・・」
ライザー「ハハ、図星・・・」
言葉を遮(さえぎ)って、アイリが双剣をライザーに向かって振りかぶる。
身構えたライザーを通り越し、剣の切っ先は彼の死角から攻撃を仕掛けていたギアーズを仕留めていた。
ドサリと倒れるギアーズを見て呆然とするライザーに、アイリは言い放った。
アイリ「無駄口を叩いている暇はないんじゃないかしら?」
ライザーはばつの悪そうな顔をして舌打ちをする。
これ以上嫌味を聞く義理はないと判断し、アイリはライザーに背を向けた。
その後も怒涛(どとう)の勢いで、アイリはギアーズをなぎ倒していく。
あまりにも鮮やかなその動きは、前線の士気を上げるのに充分だった。
勢いづくコレクターたちは、次々にギアーズの死骸を作り出す。
しかし倒しても倒しても湧いてくるギアーズの相手をしながら、アイリはある違和感について考えていた。
アイリ(一見バラバラに動いているように見えるけど・・・このギアーズたち、グループごとにまとまった動きをしている)
アイリ「普段群れをなして生活しているギアーズ同士なら分かるけど、種類の違うギアーズにここまで統率が取れるわけない」
そこまで考えて、アイリは自分を落ち着けるように息を吐いた。
アイリ(・・・あのときと、同じ)
脳内に過去の記憶が蘇り、無意識に双剣を握る力が強くなる。
アイリはギアーズを叩きつけ、戦場をぐるりと見渡した。
アイリ(アイツが、ここにいるかもしれない)
〇城壁
前線のコレクターは奮闘していたが、いかんせん数が多すぎる。
前線を突破したギアーズたちは、支援部隊がいる後方まで侵入してきていた。
支援にあたっている者の中には、有志の民間人も含まれている。
そのため部隊はもはやパニック状態だ。
指揮は機能を失い、部隊員は散り散りになりつつあった。
ニルとエルルは逃げ出す人々を庇(かば)いながら、襲い来るギアーズの対処にあたる。
一通り周囲のギアーズを倒しきり、ニルとエルルが周囲を見渡すと、ふたり以外には人が残っていなかった。
エルル「ニルさん、私たちも前に出ましょう!」
ニル「そうだね」
ニル「・・・?」
前線へ向かおうとしたとき、ニルは右腕に疼(うず)きを感じて立ち止まった。
エルル「ニルさん?」
「どうかしましたか?」と心配するエルルにニルは頷く。
数秒後、ニルはハッとして顔を上げた。
ニル「・・・共鳴してる、のか? なにかの信号を受け取ってるみたいだ」
ニル「・・・もしかして!」
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