流し屋

敵当人間

流し屋の男性の話(脚本)

流し屋

敵当人間

今すぐ読む

流し屋
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇田舎町の駅舎
ヤングケアラー「風も出てきたので、手短に相談しますね」
不良の男子高校生「今日は20時から雨の予報だしな」
娘「私までごめんなさい」
ヤングケアラー「いいんですよ」
ヤングケアラー「流し屋さんよりお姉さんの方が若いし」
ヤングケアラー「僕たちに寄り添ってくれそう!」
不良の男子高校生「なんだかんだ口うるせーし、」
不良の男子高校生「男3人で喋るより、華があって良いっすよ」
娘「ありがとうございます」
流し屋「聞き捨てなりませんねぇ」
流し屋「生活費として出している300万ずつ、抜き取っても良いんですよ?」
ヤングケアラー「酷いっ!!金で黙らせようだなんて!!」
不良の男子高校生「そうだ、そうだ!!」
不良の男子高校生「それが大人のやることか!?」
流し屋「誤解してはいけません」
流し屋「金で物を云わせるのは、大人の特権です」
「最低だ!!」
娘「あの、3人はどういった御関係で?」
「赤の他人です!!」
流し屋「最近、君たちは息ぴったりですね〜」
娘「あの、流し屋さん」
流し屋「はい?」
娘「先ほど、決して安くはない金額が聞こえたのですが、」
娘「赤の他人の・・・」
娘「しかも学生さんに貸し出していると言うのですか?」
流し屋「いいえ、誤解です」
流し屋「私は未来の可能性に、投資をしています」
娘「というと?」
流し屋「君たちの前で言うのは気が引けますが・・・」
ヤングケアラー「気にしなくて良いよ」
不良の男子高校生「信用してるしな」
流し屋「彼らが大学を出て、就職したとします」
娘「はい」
流し屋「彼らの年収が300万だったとすると・・・」
流し屋「彼らの生涯賃金額は1億2300万ほどになります」
流し屋「もしも年収が350万だったとしたら1億4350万の生涯賃金額になります」
流し屋「年収300万の方の所得税はおよそ10%ですので、1230万のお金が、」
流し屋「年収350万の方の所得税はおよそ20%なので、2870万円の税金が国に収められます」
「・・・」
流し屋「まぁ、お二人が日本で就職すればの話ですが」
「・・・」
流し屋「この際ですから言いますが、今の日本は、」
流し屋「そんな価値のある若者を根こそぎ無視して、」
流し屋「目先の自分達の欲のままに奔走しています」
流し屋「荻島 功助という人間も」
流し屋「佐々木 優希という人間も」
流し屋「もちろん、鬼形 真理という人間も、」
流し屋「ここに居る3人全てが1億円以上の価値がある素晴らしい人間なんです」
「・・・」
不良の男子高校生「ま・・・」
不良の男子高校生「マジで言ってんのか?流し屋」
流し屋「えぇ、引きますよね」
流し屋「だから言わない方が良かったのですが・・・」
ヤングケアラー「いや、」
ヤングケアラー「引いたっていうか・・・」
ヤングケアラー「やっぱり、何者なんですか?」
流し屋「・・・」
娘「なんか、見据えている規模が違いすぎて・・・」
不良の男子高校生「俺も・・・」
不良の男子高校生「そう思うっす・・・」

〇田舎町の駅舎

〇田舎町の駅舎
娘「あれ?嘘っ!?」
不良の男子高校生「こんなタイミングかよ・・・」
ヤングケアラー「さっきの稲光から、まだ音が聞こえないから、」
ヤングケアラー「そんなに近くではないだろうけど・・・」
流し屋「でも、長居は無用ですよ」
「待った!!」
不良の男子高校生「俺たちは知る権利がある筈だろ?」
ヤングケアラー「そうですよ!」
ヤングケアラー「流し屋さんのこと、信用出来なくなりますよ!」
娘「二人とも、少し落ち着いて・・・」
不良の男子高校生「純粋な善意だけだと思ってたぜ?」
流し屋「・・・」
流し屋「純粋な善意だなんて、ある訳がないでしょう」
ヤングケアラー「じゃあ、どんか下心があって、僕らに声をかけたんですか!?」
流し屋「・・・」
流し屋「全ては、妻のためです」
娘「奥様の?」

〇風流な庭園
妻「日本って本当にいい国よね・・・」
妻「私、海外のあちこちに行ったけど、」
妻「やっぱり日本が一番好き」
「こんな滅亡しかしていく希望のない国の」
「どこが良い国なんだよ?」
妻「どうして滅んでいってるか、その人、その人の背景を見てないからよ」
妻「自分の苦労を愛する人に背負わせたくない人や」
妻「好きなのに相手を攻撃してしまうことを止められない人・・・」
妻「自分が傷付きたくなくて、相手に傷付けられたくなくて、」
妻「孤独を選ばざるを得ない人もいるわ・・・」
「綺麗事だな」
妻「そうね」
妻「でもそんな、綺麗事しか言わない女を娶ったのは貴方よ?」
「・・・」
妻「××」
「うん?」
妻「人に触れ、人を見て、人を学んでみたら?」
「なんだよ、それ・・・」
「偉人の名言かなんか?」
妻「××の好きな人の意見しか受け入れない態度は、」
妻「いつか、他人の攻撃の対象になってしまうから」
妻「それが、怖いだけよ」
「ご心配、ありがとよ」
妻「ふふっ」
妻「一度痛い目に遭うしかないわね」
「ひどいなぁ!」

〇田舎町の駅舎
流し屋「そうして僕は、最愛の妻を失いそうになりました・・・」
流し屋「この日本という国を滅ぼさないことだけが、」
流し屋「僕の生きる理由です」
流し屋「ご理解いただけましたか?」
不良の男子高校生「ご、ご理解って・・・」
ヤングケアラー「急に言われても受け入れられませんよ・・・」
流し屋「そうでしょうね・・・」
流し屋「けれど、君たちの価値が1億円以上あることは紛れもない事実です」
流し屋「今一度、どの様に生きるべきか」
流し屋「振り返ってみても良いのではないでしょうか?」
「・・・」

〇田舎町の駅舎
流し屋「さて、かなり雨足が強まって来ました」
流し屋「今日はもう、お開きにしましょう」
「・・・」
不良の男子高校生「とりあえず、また来るよ・・・」
不良の男子高校生「世話になってるしな・・・」
ヤングケアラー「僕はちょっと考えさせてください」
娘「・・・」
娘「・・・流し屋さん、私、とても自分勝手でした」
娘「今度からはもう少し考えて行動する様にします」
娘「・・・ここに来ると辛くなりそうなので」
娘「もう来ないと思います」
「そうですか」
娘「でも、ありがとうございました」
「足元にお気をつけて、お帰りくださいね」
娘「はい・・・じゃあ・・・」

次のエピソード:友人を失った男子高校生の話

コメント

  • おっと、これはこれは…… 聞き流す訳にはいかない展開になってきました。これだから敵当人間さんの作品は油断出来ない。じっくり読み進めてきて正解でした。
    この後も楽しませて頂きます。

  • スゴイ壮大なお話だったんですね!
    日々の生活に囚われていたり、周りの環境にもよりますが、自分の価値感を低く見積る時があるかもしれませんね。一億以上の価値があるなんて素敵な名言、言われてみたいですね!

  • 1億円チワワ…?

ページTOPへ