エピソード8(脚本)
〇巨大な城門
女の子と、手をつないでいるという嬉しい状況を手放せず、とりあえず街までは、という言い訳を何度も頭の中で繰り返して、
僕は王都までやってきた。何とも情けない。
ジョマ「ここが王都ですよ」
嬉しそうにジョマが僕に笑顔を向ける。確かにすごい活気だ。
お祭りでもしているのだろうかと思うほど、所狭しと市場が広がっている。
ロク「すごい・・・・・・お祭りでもしてるの?」
僕の問いかけに、ジョマがおかしそうに笑う。
ジョマ「王都は初めてですか? 通常通りでお祭りはしてません」
まだ笑い足りないのか、ジョマは抑える様にしてクスクスと笑っている。僕は田舎者感を丸出しにしてしまったらしい。
でも僕が暮らしていた田舎は、人がたくさん集まるのは、お祭りの時だけだった。何にもない日に人は集まらない。
そういう所で育ったのだから、しょうがない。
ジョマ「あとで、見て回りましょうか」
ジョマの言葉は妙に、あとでの部分が強調された様な気がした。
ジョマ「さぁ、事務所に行きましょう」
僕が疑問を感じても、質問をさせないようにしているのか、ジョマは急ぎ目に僕の手を引っ張る。
ロク「事務所? まだ、騎士団に入るとは」
ジョマ「まぁまぁ、ここではなんですし、とりあえず事務所に」
少し強引めに、僕の手を引っ張るジョマ。僕が、本気で抵抗していいものか迷っているうちに、事務所についてしまった。
〇ヨーロッパの街並み
ロク「ここが王国騎士団の事務所?」
ジョマ「はい、事務所です」
僕の疑問に、少しぎこちない笑顔で答えるジョマ。そういえばつないでいる手が、少し汗ばんでいる気がする。
本当にここは、王国騎士団の事務所だろうか。
王国とつくものだから、城に事務所があるかと思っていたけど。それに人の出入りが全くない。誰も居ないのではないか。
ロク「本当に王国騎士団の事務所?」
ジョマ「は、入りましょう」
僕の問いかけをスルーしたジョマは、少し目が泳いでいる気がする。
手を振り払うのも気が引けて、結局、僕はジョマと一緒に中に入った。
〇洋館の一室
ロク「特殊捜査室?」
中に入る時、そう書かれた表札があるのを見た。一応、王国騎士団とついていたから、騎士団で間違いはないのだろうけど。
ジョマ「い、言ってませんでしたっけ?」
聞いていない。完全に目が泳いでいるジョマ。そもそも入るとは、まだ言っていない。
ロク「ちなみに、どういう部署で?」
ジョマ「えーと」
ジョマが僕の問いかけに、さらに汗をかき始める。僕にはそれが、必死で言い訳を考えているようなそぶりに見えた。
ジョマ「特殊な事件とかぁ、謎の事故とかぁ、そういうのを押しつけ・・・・・・じゃなかった、担当するとこでぇ」
ロク「え? 今、押し付けって言ったよね? 押し付けられてるって言いかけたよね?」
ジョマ「な、何の事でしょうか?」
ジョマはもう完全に僕を見ておらず、その視線は、明後日の方向を向いている。握っている手も、ビショビショ。