第2章 広がる波紋(脚本)
〇草原の道
ヴィオラ・コーディエ「とりあえずどこに向かう?」
ノエル・エンジェライト「まずは街で情報収集をすべきではないでしょうか」
シグバート・フォン・ブラッドショット「そうだな 神の遺物の在処は学園の文献にもなかったが・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「学園から派遣されている研究員がなにかを発見した可能性もあるからな」
ヴィオラ・コーディエ「学園ってブラッドショットとプレーンとカーネリアの国境にあるんだよな 一応ブラッドショット領だっけ?」
ノエル・エンジェライト「・・・はい」
ヴィオラ・コーディエ「じゃ、最初の目的地は王都ブラッディかな!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・いや」
シグバートは地図を広げた。
〇地図
シグバードの指が地図の右下──
ツートーン魔法学園をさした。
シグバート・フォン・ブラッドショット「学園から王都ブラッディへ繋がる街道は 現在封鎖されている」
ヴィオラ・コーディエ「えっ、なんで?」
ミモザ・クラリティ「ブラッディではこの時期、火精アザレの聖誕祭があるのです」
シグバート・フォン・ブラッドショット「そうだ 警護のため、主要街道以外は閉鎖している」
ヴィオラ・コーディエ「そっか ブラッドショットは火精アザレの加護を受けてるんだっけ」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・」
ノエル・エンジェライト「ではプレーン王国の王都・・・ プレナイトへ行くべきでしょうか」
シグバート・フォン・ブラッドショット「そうだな 険しい山路が続くカーネリアよりは、平坦なプレーンへ行くべきだろう」
ヴィオラ・コーディエ「じゃ、プレナイトに向けてしゅっぱーつ!」
〇草原の道
ヴィオラ・コーディエ「・・・!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「魔物だ! 戦闘準備!」
ミモザ・クラリティ「スライム・・・!? こんなにたくさん・・・」
うごめくスライムの群れが近づいてくる。
──ヴィオラたちを標的と定めたのだ。
ヴィオラ・コーディエ(魔物を見るのは、村にいた頃以来だ)
ヴィオラ・コーディエ(学園や街には結界があるから、みんなは魔物を見たことすらないかもしれない)
ヴィオラ・コーディエ(あたしが頑張らないと!)
ヴィオラ・コーディエ「行くぞッ!」
ミモザ・クラリティ「ヴィオラ様・・・!?」
シグバート・フォン・ブラッドショット「あのバカ、勝手なことを・・・!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「援護するぞ! 詠唱の準備を!」
ノエル・エンジェライト「・・・了解」
ミモザ・クラリティ「は・・・はい!」
ヴィオラ・コーディエ「はっ!」
ヴィオラ・コーディエ「あと2匹・・・!」
ヴィオラ・コーディエ「うわっ!?」
ノエル・エンジェライト「・・・ヴィオラさん 退いてください」
ノエル・エンジェライト「・・・凍てつけ」
ヴィオラ・コーディエ「・・・・・・」
ミモザ・クラリティ「ヴィオラ様! ご無事ですか?」
ヴィオラ・コーディエ「あ、うん・・・ だいじょうぶ・・・」
ヴィオラ・コーディエ「っ・・・!」
ミモザ・クラリティ「無理はなさらないでください すぐに治しますから」
ミモザ・クラリティ「・・・光精ストローよ この者に癒やしの光を与えたまえ・・・」
ヴィオラ・コーディエ「あ・・・ 痛みがなくなった!」
ヴィオラ・コーディエ「ありがと、ミモザ!」
ミモザ・クラリティ「お役に立ててよかったです」
シグバート・フォン・ブラッドショット「おい、ヴィオラ 考えもなく敵に突っ込むな 死にたいのか?」
ヴィオラ・コーディエ「はあ!?」
ヴィオラ・コーディエ「おまえだってなにも言わないで火精術を打っただろ! あたしを殺したいのかよ!?」
ミモザ・クラリティ「お、おふたりとも・・・ 落ち着いてください・・・」
ノエル・エンジェライト「ミモザさんの意見に同意します」
ノエル・エンジェライト「いつまでもここにいては、また魔物が現れるかもしれない」
ノエル・エンジェライト「口論をするのならば、王都に到着してからお願いします」
「・・・・・・」
ヴィオラ・コーディエ「・・・確かにね ノエルの言うとおりだ」
ヴィオラ・コーディエ「このまま進めば、今日中に王都行きのポータルに着くはずだ さ、行こう!」
ノエル・エンジェライト「ええ」
シグバート・フォン・ブラッドショット「ちっ・・・」
〇西洋の街並み
プレーン王国
王都プレナイト
ヴィオラ・コーディエ「ここが王都プレナイトか 人がすごいなあ」
ノエル・エンジェライト「日が暮れる前に、二手に分けて行動すべきだと思います」
ノエル・エンジェライト「宿の手配と買い出しが2人、聞き込みが2人という配分が妥当かと」
ヴィオラ・コーディエ「わかった じゃ、あたしとミモザ、ノエルとシグバートに分けて・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「おいヴィオラ さっきの話、まだ決着がついていない」
ヴィオラ・コーディエ「・・・なに?」
ノエル・エンジェライト「シグバートさん 貴方のその話は、宿の確保や情報収集よりも重要なのですか」
シグバート・フォン・ブラッドショット「当然だろう これはわれわれの・・・」
研究員「そこのきみたち もしかしてツートーン魔法学園の生徒?」
ヴィオラ・コーディエ「あ・・・はい」
シグバート・フォン・ブラッドショット「あなたは学園の研究員ですか?」
研究員「ええ プレナイトを拠点に、プレーン東部の調査をしているわ」
研究員「あなたたちは・・・ 学園長に選ばれた特別試験の受験生ね」
シグバート・フォン・ブラッドショット「ええ それで伺いたいことが・・・」
ノエル・エンジェライト「ミモザさん ぼくたちは宿の手配と買い出しをしましょう」
ミモザ・クラリティ「えっ!?」
ミモザ・クラリティ「あの、ノエル様、でも・・・ シグバート様とヴィオラ様は・・・」
ノエル・エンジェライト「まもなく日が暮れます 店じまいをする前に行かなければなりません」
ノエル・エンジェライト「彼らは学園の研究員と話しています このまま情報収集を任せて問題ないでしょう」
ミモザ・クラリティ「そうでしょうか・・・」
ノエル・エンジェライト「ええ さあ行きましょう」
ミモザ・クラリティ「はい・・・」
〇西洋の市場
ノエル・エンジェライト「薬草、保存食、ロープ・・・」
???「・・・・・・」
ミモザ・クラリティ「・・・・・・」
???「・・・!」
ノエル・エンジェライト「人数分の革袋、ナイフ、ランプ・・・」
ノエル・エンジェライト「野営用に食器も必要ですね さしあたってはこんなところでしょうか」
ミモザ・クラリティ「あの、ノエル様・・・」
ノエル・エンジェライト「他に必要なものがあるでしょうか」
ミモザ・クラリティ「いえ、そうではなく・・・」
ミモザ・クラリティ「わたしたち、後をつけられていませんか?」
ノエル・エンジェライト「・・・・・・」
ノエル・エンジェライト「そのようですね では・・・」
ミモザ・クラリティ「ノエル様、どちらへ・・・?」
ノエル・エンジェライト「あの男を捕らえ、縛り付けたうえで路地裏にでも転がしましょう そうすれば尾行されずにすみます」
ミモザ・クラリティ「だ、ダメですよ!」
ノエル・エンジェライト「なぜです? あの男がなにかを企んでいるのは火を見るよりも明らかです」
ミモザ・クラリティ「ですが・・・ そんなことをすれば、ノエル様が投獄されてしまいます!」
ノエル・エンジェライト「・・・・・・」
ノエル・エンジェライト「・・・わかりました では決してぼくから離れないでください」
ノエル・エンジェライト「貴方はぼくが守ります」
ミモザ・クラリティ「えっ? あ、ありがとう・・・」
ノエル・エンジェライト「・・・買い物はあらかた終わりましたね では宿屋の手配に行きましょう」
ミモザ・クラリティ「は、はい・・・」
〇西洋の街並み
研究員「今のところ、プレーン東部に神器の反応はないわ」
研究員「けど困ったことが起きているのよ」
ヴィオラ・コーディエ「困ったことって?」
研究員「ここ近年、神の遺物について調べる魔道士が襲われる事件が起こっているの」
研究員「その男は、仮面の戦士と呼ばれているわ」
シグバート・フォン・ブラッドショット「仮面の戦士・・・ですか?」
研究員「ええ 特別試験の受験生も例外ではないわ」
研究員「あなたたちも気をつけなさい 決して単独行動をとらないように」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・承知しました ですが、その男はなぜそんなことを?」
研究員「・・・女神の再臨を望んでいないのかもしれない」
ヴィオラ・コーディエ「けど・・・ 虹のきざはしが失われたままだと、世界は滅びるんじゃ?」
研究員「風はよどみ、大地は腐り、水は濁り・・・ 堕天使の穢れた血は世界中に魔物を生み出した」
研究員「1000年前からずっと、世界は衰退を続けている」
研究員「でも、それで生計を立てている者もいる それは否定はできない」
ヴィオラ・コーディエ「そんな・・・」
研究員「とにかく・・・ 神器を探すのはとても危険な任務なの」
研究員「学園長もそれはご存じのはず なのに専門課程を終えていない学生にまで調査をさせるなんて・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「特別試験が行われるようになったのは近年のことなのですか?」
研究員「少なくとも20年前・・・ 先代学園長の頃は、学生に調査をさせることはなかったわ」
シグバート・フォン・ブラッドショット「そうですか・・・」
研究員「わたしはもう行くわ 本当に気をつけるのよ」
ヴィオラ・コーディエ「はい ありがとうございました・・・」
〇西洋の街並み
ヴィオラ・コーディエ「ミモザたち、いつのまにかいなくなってたな」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・・・・」
ヴィオラ・コーディエ「ここで待ってようか こういうときは動かないほうがいいってバーバラ先生が・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「先ほどの話だが」
ヴィオラ・コーディエ「・・・なんだよ?」
シグバート・フォン・ブラッドショット「学園長に選ばれたオレたちは、重要な役目を担っている 互いに命を預け合わなければならない」
シグバート・フォン・ブラッドショット「おまえが剣を振り回すことしか取り柄がないのはわかっているが 先ほどの単騎特攻は、さすがに目に余る」
ヴィオラ・コーディエ「・・・っ」
ヴィオラ・コーディエ「あたしは、ただ・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「平民の魔力などたかが知れている おまえに期待などしていない だが・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「オレやノエル・・・それにミモザの足を引っ張るような真似はするな」
ヴィオラ・コーディエ「なんだよ、その言い方!」
ヴィオラ・コーディエ「あたしは・・・!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・・・・」
ヴィオラ・コーディエ「・・・・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・・・・ ミモザたちを迎えに行ってくる おまえはここで待っていろ」
ヴィオラ・コーディエ「なんだよ、あいつ・・・ あんな言い方しなくたって・・・」
ヴィオラ・コーディエ「・・・・・・」
〇西洋の街並み
研究員「あなたたちも気をつけなさい 決して単独行動をとらないように」
〇西洋の街並み
ヴィオラ・コーディエ「・・・・・・」
ヴィオラ・コーディエ「けど・・・ここは王都の中だ 巡回の騎士もいる」
ヴィオラ・コーディエ「それにあいつ、ムカつく奴だけど腕は立つし・・・ だいじょうぶだよな・・・」
ヴィオラ・コーディエ「・・・・・・」
ヴィオラ・コーディエ「いや・・・でも やっぱり追いかけたほうがいいかな・・・」
???「・・・・・・」
ヴィオラ・コーディエ「・・・・・・っ!?」
〇黒背景
背後から誰かに殴られた。
そう気づいたときにはもう遅かった。
意識がだんだん遠くなっていく──。