い。~駄目な奴が褒められる異世界について~

スヒロン

エピソード1(脚本)

い。~駄目な奴が褒められる異世界について~

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〇総合病院
ククレア・エクレア「気が付きましたか? 旅のお方。 ここは教会・・・あなたは”絶海の果て”にて倒れていました。『い。』の世界へようこそ」
平凡人「『い。』の世界・・・? けれど、普通の東京のように見えますが・・・?」
ククレア・エクレア「私は神官ククレア。あなたは・・・?」
平凡人「僕は平凡人(たいらぼんじん)・・・ 世を儚んで自殺しようとしたのですが」
ククレア・エクレア「いけません! 命あってこそです。 何かお悩みが・・・?」
平凡人「・・・実はブラック社畜としてコキ使われ、借金地獄に・・・その額は一千万円も」
ククレア・エクレア「ええ!? なんですって!?」
平凡人「これでは生きる意味もないし彼女もできない、と死のうとして・・・」
ククレア・エクレア「フフっ、アハハハハ! そんな冗談を?」
平凡人「は? 冗談ではなく・・・」
ククレア・エクレア「借金が一千万円でブラック社畜なら、彼女なんかよりどりみどりでしょう? 私の教会、貯金が一億円でもう潰れる寸前なんですよ?」
平凡人「(ククレアさんこそ、おかしな冗談を言っているなあ)」
ククレア・エクレア「そんな冗談が言える元気があるなら、大丈夫そうね。さあ、外に出ましょう」

〇見晴らしのいい公園
  のどかな景色・・・普通に東京に見えるけど、何故かドラクエなどの世界みたいに武器屋や防具屋がいる。
ククレア・エクレア「おはよーございます、武器屋さん! 何か作っているんですか?」
武器屋「おう、ククレアちゃん。この『聖剣ボルニア』をぶっ壊して、普通の”鉄のつるぎ”に変えて安値で売ろうと思ってなあ」
平凡人「え・・・? 『聖剣ボルニア』って、なんか聞いた感じ、強そうな剣なんじゃないんですか・・・?」
武器屋「【世界の七剣】の一つじゃ・・・このままでは強すぎるので”鉄のつるぎ”に変えねば。 いや、できれば”木刀”にまで弱めたい」
ククレア・エクレア「そのままでは、一振りで大地をも切り裂いてしまいます! もっとナマクラに変えるんですね」
平凡人「????」
  魔物だー!
  弱小モンスターのナカナカだぞ!!
ナカナカ「グワッハハハ!! 弱小中の弱小! ナカナカ様が通るぜえ!?」
ククレア・エクレア「あれは・・・『最弱六公』の一人、ナカナカ!? その辺の中学生でも倒せる、絶妙な弱さで有名な!」
武器屋「や、奴には誰でも勝てる! ・・・村は終わりだ・・・!」
ナカナカ「クヒヒ! おい、ボウズ! そのアメをよこせ! ペロペロと」
  ナカナカはなんと、
  子供のアメを取り上げてしまった!
ククレア・エクレア「なんという非道な! こ、子供の舐めているアメを横から舐めるとは・・・!」
武器屋「や、奴の唾液でアメが・・・もはや、あれでは舐めれん!」
ナカナカ「さらに・・・おお!? お前は武器屋か!へっ、じゃあこの御大層な剣を買うぜ! おら、いくらだ!?」
武器屋「せ、『聖剣ボルニア』は一万円じゃ!」
ナカナカ「へっ、ほらよ!」
  ナカナカは千円札を何枚かと五百円玉を出した。
武器屋「馬鹿な! 一万円の剣を、九千五百円しか払わぬとは・・・! これでは商売あがったりじゃ!」
ククレア・エクレア「許せないモンスターね! ここまでの非道は、悪魔の所業・・・!」
ナカナカ「ワッハハハ! おお、なかなか美人だな。 へへ、あんたそんなに言うと・・・ 『スカートをめくる』という遊びをしてやるぜ?」
武器屋「まさか! こんな往来でスカートをめくられれば、もうククレアは生きてはいけぬ・・・」
ナカナカ「クヒャッハハハ! 俺は最弱! 誰でも俺を倒せる!」
  しかし、そこに怒りに燃える凡人がいた・・・
平凡人「もう・・・逃げない。 ククレアさんを守る・・・!」
平凡人「お前・・・今の発言を取り消せ!」
ナカナカ「なんだあ? お前、靴ひもをほどいて川に捨ててやろうか?」
ククレア・エクレア「よして、凡人さん! 靴ひもをほどかれれば、もはや貴方は永久に走るたびに、スッポンスッポンと靴が抜けて・・・」
平凡人「・・・靴がっすっぽん抜けるなんて、どうでもいい! ククレアさんのパンツの方が大事です!」
ククレア・エクレア「え・・・? まさか・・・私のパンツを守るため・・・?」
平凡人「さあ、かかってこいナカナカめ!」
ナカナカ「へっ、あんた”臆者”にでもなったつもりか? じゃあ、いいだろう・・・おらあっ、避けやがれ! 俺のトロトロパンチ!」
  それは、ハエも止まるようなパンチだった
平凡人「・・・遅い? 遅すぎる!?」
ククレア・エクレア「ハエが十匹は止まるわ! あんなものに当たる人がいるはずがない!」
ナカナカ「どうだあ!? 俺の『トロトロパンチ』 『打ってから色々しゃべってても、まだ腕が伸びきらない』という程の遅さ!」
ククレア・エクレア「そして、あれで当たってもダメージはない! 無理よ、凡人さん!」
  しかし、凡人の肩や首、腰はブラック労働で疲弊しきっており、まるで百歳の老人のようにしか動かない。
平凡人「うっ、四十肩が!? そして、首もかなり痛い・・・!」
ナカナカ「まさか、まだ避けない!? 馬鹿な! 俺の『トロトロパンチ』に当たる人間なぞ、いるはずが・・・!」
  ゴン。
  とそのパンチは見事に、凡人の顎を揺らし。
  脳震盪を起こした。
平凡人「ガハアっ! や、やはり無理だった・・・ 僕では勝てない・・・!」
ククレア・エクレア「み、見事です・・・!」
平凡人「え?」
ククレア・エクレア「三十秒で秒殺KO! 凡人さんの負け・・・! やりましたね!!」
武器屋「なんという弱さ! あのナカナカに・・・ まさか、あんた伝説の”臆者”? 風が吹くだけで逃げ出すという伝説の臆病者・・・」
ナカナカ「お、俺が勝った! ほんとにいたのか、”底下者”!  なんの闘争心も能力ねえという伝説の! これは、マズマズ様に報告だ」
平凡人「あのう・・・この異世界は・・・本当に・・・」
平凡人「なんなんですか? なんかずっと変じゃないですか・・・?」
ククレア・エクレア「『い。』の世界を破滅させることができるのは、きっとあなたです凡人さん! こんな弱い人は、今まで見たこともありません!」
ククレア・エクレア「私もあなたを支え、もっと弱くなります。共に『い。』を破滅させましょう!」
平凡人「(僕は強くなりたい・・・できればククレアさんのように)」

次のエピソード:エピソード2

コメント

  • 底辺で弱々だめだめな皆が生き生きのびのびしている様子をみて、純粋に勇気をもらいました。ある意味これは最強の優しい世界だな~。ツッコミどころも多くておもしろかったです。

  • 想像もしない世界設定に笑ってしまいました。言うことも為すこともツッコミたくて仕方なくなりました。今後どのようにお話が続いていくのか楽しみです。

  • タイトルにとても惹かれました、、、角度を変えてみたらダメな人なんていなくて みんな自分の考えがあって。。。?!ダメの根拠はとか考えながら読ませて頂きました。

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