エピソード2(脚本)
〇地下室
さあ、こっちへボンさん!
お父様が待っております。
平凡人「ずいぶんと地下の炭鉱。うぷっ、これは凄い粉塵だ!」
地下王宮炭鉱・毒の間
と書かれた場所。
それは粉塵の舞う炭鉱。
そこには王がハンマーで岩を砕いている。
ドンガメ王「おお、ククレア! 久しぶりに来てくれたか。この客人は?」
ククレア・エクレア「お父様、ボンさんは、とんでもなく弱いの! ボンさん、父のドンガメ国王です」
平凡人「ええ? 国王様が、こんな炭鉱で・・・? 民のために働かれているのですね。立派なことです」
ドンガメ王「ワッハハ、そこまで弱いか客人! なんなら一発、掘っていくかね? 一日につき百円、しかし福利厚生で10万円ずつ減っていくが」
ククレア・エクレア「私は生まれつきの天才だったので、とても王宮では暮らせないと、地上60階の教会で。父はずっと借金地獄の立派な人なんです!」
平凡人「(どうも、世界感がおかしい)」
ククレア・エクレア「お父さん、ボンさんは借金が一千万もあるとんでもなく駄目な人で、ナカナカに負ける程に弱いのよ! 凄いわ!」
ドンガメ王「何!? あのナカナカに負けた・・・? ボン君はどこぞの”王都奴隷圏”のエリートかね?」
平凡人「ええ・・・お恥ずかしい話、ブラック企業最大手『ダークブラック暗黒社』の社畜に」
ドンガメ王「な、なんと!?」
平凡人「主にアワビの密漁で稼ぐ会社でしたが、僕は密漁もできず、最後は『自動販売機の小銭を拾う』という係に」
ククレア・エクレア「凄いわ、ボンさん!」
平凡人「しかし何故か毎月経費で30万円ずつ引かれていき、気づけば借金だらけに」
ドンガメ王「こ、これは失礼いたした、ボンさん。それはそうとうなエリート!」
平凡人「はあ・・・」
ドンガメ王「わしは国王といっても人口五千万のしがない国を治めているだけ。ボンさんは、恐らく”王都奴隷圏”の一族のエリートでしょう」
平凡人「人口五千万人のしがない国・・・?」
ククレア・エクレア「お父様、きっとボンさんは伝説の”臆者”よ。風が吹いたら逃げるという程臆病な・・・!」
ヨワイコ「オーッホホホ、お姉さま! 伝説を信じているなんて、相変わらず天才のオツムね! オッホホホ!!」
ククレア・エクレア「ヨワイコ!? ああ、立派に育ったわね。もう六歳よね?」
ヨワイコ「”臆者”ですって? そんな証拠がどこにあるの? だから姉さまは天才的頭脳で騙されてばっかりなのよ!」
ヨワイコ「大方、ウチの借金を狙ったコソドロでしょうね。ほら、コソドロのボンさん、ちょっと結婚してあげるから、さっさと帰りな」
平凡人「ええ? ケッコン・・・?」
ヨワイコ「なあに? 私と所帯を持ちたくないの!? ほら、さっさと帰りなさい!」
ククレア・エクレア「ヨワイコ・・・いくらなんでも、客人にそんな言い方は駄目よ!」
ヨワイコ「ハっ、王宮から逃げた天才の姉さまに何が分かるの!? 私との約束も・・・!」
ククレア・エクレア「ヨワイコ・・・ごめんね」
ヨワイコ「フン、姉さまなんてどうでもいい! この国の跡継ぎは私よ! 私が国を守り、そして【い。】を破滅させる”臆者”も私よ!」
ヨワイコ「いいこと? ボン、お姉さまに手を出したら、すぐに私が結婚してあげるからね!」
平凡人「け、結婚・・・?」
ドンガメ王「ゆるしてくだされ、ボンさん。私が甘やかしすぎた・・・あれでも国を守ろうと必死なんです」
ドンガメ王「ククレア、お前が出て行ったから拗ねておるんじゃ、それは分かるじゃろう?」
ドンガメ王「もうじき、”臆者をみんなで決める会”も近いというのに・・・」
ククレア・エクレア「私のような天才の身にもなってください・・・! どんな敵でも瞬殺する私がどういう思いで王宮にいたか・・・」
平凡人「ククレアさん・・・」
ドンガメ王「ううむ・・・では、ボンさん・・・明日からの”臆者をみんなで決める会”にあんたも出てもらえないか?」
ドンガメ王「国中から弱者と駄目人間が集まる。ボンさんの弱さを証明してくれ・・・」
平凡人「ククレアさんのためなら、やりましょう・・・!」
平凡人「しかし・・・ククレアさんも出席してもらえませんか?」
ククレア・エクレア「ええ? 私が・・・?」
一方、魔王軍
〇華やかな広場
マズマズ「ナカナカ、アンタほどの魔物が勝つなんて、冗談はあんたの”実は忠誠心がある”とこだけにしてよ」
ナカナカ「マズマズ姉さん、ありゃ本物の最弱だあ! あんな弱さじゃ・・・ひょっとすると魔王様まで勝ててしまう!」
マズマズ「あーあ、フザけた態度なのに魔王軍への忠誠は人一倍で、面倒ね・・・」
マズマズ「そうだわ・・・明日の”臆者”を決める会・・・私もこっそり参加してみよう」
ナカナカ「ええ? 姉さん、危険だ! 奴はとんでもなく弱いんだ!」
マズマズ「フッ、私の”駄目技”を忘れたの・・・? ボン、首を洗ってから湯舟につかって体を温めておきなさい」
この凄まじい価値観の世界で頭が混乱してしまいそうになります。パニックを起こしながらも、読みたくて仕方なくなります。これからどんな展開が待っているのか続きが楽しみです。