エピソード7(脚本)
〇美しい草原
僕は不覚にも手を握られて、顔が近くなっただけで、ドキリとしてしまった。この子の可愛さに、心が揺れ動いてしまう。
僕は少し視線を外して、考える。
この強引さに少し、違和感は感じるものの、生きていくために、どこかの組織に所属するのは、良い手なのではと思う。
ロク「少し考える時間を・・・・・・」
ジョマ「でしたら、とりあえず、ここではなんですし、王都へ向かいましょう」
女の子は、両手で握っていたのを、片手だけ放して、歩き始める。
手をつないで、僕が少し引っ張られて歩いている形だ。
女の子と手をつないで歩くなんて。そんな事を思いながら、僕がもじもじとしながら歩いていると、女の子が笑顔をこちらに向ける。
ジョマ「そういえば、自己紹介をしていませんでしたね」
ロク「あぁ、そうだね」
ジョマ「私は、ジョマ・レナソンです」
ロク「僕は峰武屋 緑」
僕の名前を聞いて、ジョマは不思議そうな顔をする。そういえば日本風の言い方では、わかり辛いかもしれない。
ロク「ごめん、今のは無し・・・・・・ロク・ホウムヤだよ」
ジョマ「・・・・・・ロクですか」
まだ少し不思議そうな表情のジョマ。
最初の名乗りが、聞き慣れていなかったからだろう。それでも大したことではないと思ったのか、すぐに表情は戻る。
ロク「ところでジョマは、王国騎士団の人だよね?」
さすがにこれで騎士団の人間ではなかったら、おかしな話である。僕の問いかけにジョマは頷く。
ジョマ「はい、騎士団の人間ですよ」
制服の様に見えた服装は、王国騎士団の制服。
そうなってくると、スライムを倒せなかった事に、やっぱり違和感を感じざる負えない。
ロク「ジョマは・・・・・・事務的な役職?」
それなら、スライムが倒せなかった事にも、納得がいく。
演技のように見えた事の説明にはならないけど、それはとりあえず置いておくとして。僕はジョマの言葉を待つ。
ジョマ「事務的? ち、違いますかねぇ・・・・・・どどど、どういえばいいか、ははは」
明らかに動揺している。僕は少し探りを入れるべく、問いかける。
ロク「そうなんだ・・・・・・ところで、騎士団に入るべきって言ったけど、そんな簡単に入れるものなの?」
話が変わったという事に安心したのか、ジョマの表情から動揺の色が消えた。
ジョマ「・・・・・・実はですね、私の部署に空きが出来てしまって、急募中です」
ロク「急募だからといって、すぐ入れるの? テストとかもなく?」
騎士団という物が、どういう物かわからないけど、口約束程度で入れるような組織なんだろうか。
ジョマ「すぐ入れますよ! 面倒なテストなんて受けずに!」
ロク(組織として大丈夫なのかな、騎士団って)
ロク(今のところ、スライムを倒しただけの人間が大活躍できて、入れてくださいと言えば入れる組織だけど)
ロク「そう・・・・・・なんだ」
俄然不安を感じてきた。僕はさり気なく、手を離そうとしてみる。でもジョマの手は、がっちりと僕の手を握り締めていた。