終活魔王のエンディングノート

大河内 りさ

P4・歪み(脚本)

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大河内 りさ

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〇結婚式場のレストラン
ローレット「ダーちゃん、知り合い?」
ダーリナ「だからダーちゃんはやめてって──」
ゲイダル「ダーリナさん、お久し振りです」
ダーリナ「やはりあなたでしたか」
ローレット「ちょっと、誰なのよ!」
ゲイダル「はじめまして。 ローレットさんですね」
ローレット「何であたしのこと知って・・・」
ゲイダル「いつも父がお世話になっております」
ローレット「父ぃ?」
ダーリナ「こちら、ゲンティムさんのご子息の──」
ゲイダル「ゲイダルと申します」
ローレット「ゲンティムの息子ーっ!?」

〇華やかな広場
ヴィエリゼ「・・・抜け出してきちゃった」
ヴィエリゼ「ローレットもダーリナも 私に付きっきりなんだもの」
ヴィエリゼ「二人とも、いい人が見付けられたら いいんだけど・・・」
???「おや、そちらにいらっしゃるのは──」
バルド「魔王様ではありませんか」
ヴィエリゼ「あ、ルゼバエナ家の・・・」
バルド「バルドです」
バルド「先程はご挨拶させて頂けませんでしたからね」
ヴィエリゼ「ごめんなさい」
バルド「あの二人がいないのなら都合がいい」
ヴィエリゼ「それは、どういう──」
ヴィエリゼ「──ッ!?」
ヴィエリゼ「何、を・・・」
バルド「しばらく眠っててもらうぜ、魔王様」
ヴィエリゼ「うっ・・・」
ヴィエリゼ(だめ、意識が──)

〇黒背景

〇結婚式場のレストラン
ゲイダル「そういえば、 魔王陛下もいらしていると聞きました」
ゲイダル「ご挨拶をと思ったのですが、 どちらにおいででしょう?」
ローレット「あれっ、エリゼ?」
ダーリナ「飲み物でも取りに行かれたのでしょうか」
研究者「たたた大変ですっ!!」
研究者「魔王様が連れ去られてしまいました!!」
「何ですって!?」
研究者「庭園に出られた魔王様を、ルゼバエナ家の嫡子が追ったかと思っていたら──」
研究者「あろうことか魔王様を昏倒させて 連れて行ってしまったのです!!」
ダーリナ「何てこと・・・」
ローレット「早く探しに──」
研究者「ご安心ください!」
研究者「私が錬金術で生み出した小型のゴーレムに 後を追わせております」
ローレット「骨のくせにやるじゃん!」
ダーリナ「すぐに追い掛けましょう!」
ゲイダル「私が行きます」
ゲイダル「ダーリナさんは父のいる騎士団に連絡を」
ゲイダル「会場が騒ぎにならないよう、 ガスタインさんにも協力を仰いでください」
ダーリナ「分かりました」
ゲイダル「行きましょう、ローレットさん」
ローレット「うん!」

〇怪しげな山小屋
密売人「ほお、このような魔族もいるのか」
手下1「この翼、高く売れそうだなァ」
手下2「こんだけの器量なら、このまま奴隷商に卸した方が稼げるんじゃねえか?」
密売人「どう思うかね、バルドさん」
バルド「どう扱おうがお前らの勝手だ」
ヴィエリゼ「んん・・・っ」
ヴィエリゼ(ここは──)
手下1「お目覚めかい、お嬢ちゃん」
ヴィエリゼ(人間・・・!?)
手下2「商談が終わるまで おとなしくしててくれよな」
ヴィエリゼ(制御魔法が掛けられてるみたい・・・)
ヴィエリゼ(どういうこと?)
バルド「いつもの魔獣とは格が違うんだ。 普段以上に高く買い取ってもらうぜ?」
ヴィエリゼ(バルドさん・・・!?)
ヴィエリゼ(“いつもの”って──)
バルド「この目なんか、 欲しがる奴はいくらでもいるだろうよ」
密売人「目が覚めたのか」
密売人「ふむ、金色の瞳とは珍しい。 そうだな、このくらいの金額でどうだ?」
バルド「悪くない」
ヴィエリゼ(やっぱり、売買取引・・・)
ヴィエリゼ(そうか)
ヴィエリゼ(密猟や密売の増加は、魔族と人間が手を組んでいたからだったのね)
バルド「何だ、その顔は?」
バルド「ハッ、今のお前に何ができる!」
ヴィエリゼ「──許さない」
密売人「なっ・・・ 制御魔法が掛かっているはずでは!?」

〇山の中
キオル「あ~、疲れた~」
キオル「まだ歩くの〜?」
ルカード「情報によると、密売人の隠れ家は この辺りのはずなんだけど・・・」
ミア「それほど大きな組織ではないんでしょう?」
キオル「だったら放っときゃよくない?」
キオル「大元を潰さなきゃ意味ないっしょ」
ルカード「うん、でも聞いちゃったから」
キオル「ワーカホリックかよ・・・」
ミア「いつものことね」
ルカード「何だ、地鳴りか?」
キオル「いや・・・」
キオル「凄まじい魔力の波動だ」
ルカード「行こう!」

〇森の中の小屋
バルド「ぐあぁっ」
ヴィエリゼ「お前はそこでおとなしくしていなさい」
ヴィエリゼ「・・・あなたたち」
密売人「・・・ッ」
ヴィエリゼ「商品が変わって申し訳ないけれど、 私ではなく彼で我慢してもらえるかしら?」
密売人「え、ええ・・・ 構いませんとも!」
密売人「あの角なんかは生薬として売れそうですね」
ヴィエリゼ「あんなものに薬効があるとは思えないわ」
密売人「効能の有無は正直どうでもいいのですよ」
密売人「希少な魔族の部位ともなれば、 それだけで需要がありますから」
ヴィエリゼ「そうなの・・・」
密売人「あ、制御魔法だけきちんとお願いしますよ?」
密売人「あなたには効かなかったようですがね。 ハ、ハハッ・・・」
密売人「なっ、何をする!?」
ヴィエリゼ「何をする、ですって・・・?」
ヴィエリゼ「逆に教えて欲しいわね」
ヴィエリゼ「あなたたちがこれまで 私たち魔族に何をしてきたか──」
ヴィエリゼ「まだ抑留している魔族がいるのなら、 即刻こちらに引き渡しなさい!!」
密売人「い・・・いないっ!」
密売人「俺たちは生体の取り扱いはしていない!」
密売人「生薬や装飾品に使える部位しか 手掛けちゃいない。本当だ!」
ヴィエリゼ「そう・・・」

〇山の中
ゲイダル「ゴーレムがいました!」
ゲイダル「この辺りのようです」
ローレット「あっ!!」
ローレット「あそこ!!」

〇森の中の小屋
ヴィエリゼ「もういいわ」
ヴィエリゼ「あなたたち、全員ここで死になさい」
手下1「お頭、逃げましょう!」
手下2「早くしねえと焼け死んじまう!」
手下2「ぐはぁッ」
ローレット「逃がすわけないっしょ!」
ヴィエリゼ「ローレット──」
ローレット「エリゼ、大丈夫!?」
ヴィエリゼ「平気よ。 それよりあの人間たちを始末しないと」
ローレット「やばい、めっちゃキレてる・・・」
ローレット「お願い、落ち着いて」
ローレット「情報を引き出すためにも、 あいつらは生け捕りにしないと──」
ゲイダル「フンッ」
手下1「ぐあッ」
ゲイダル「ハッ」
密売人「がはッ」
ゲイダル「魔王陛下!」
ヴィエリゼ「何してるのゲイダル」
ヴィエリゼ「早くそいつらを殺しなさい」
ゲイダル「陛下・・・」
ゲイダル「怒りで我を失っています」
ゲイダル「このままでは 陛下の魔力が暴発する可能性も・・・」
ローレット「暴発したらどうなるの?」
ゲイダル「この辺り一帯は灰と化すでしょうね」
ローレット「どっ、どうすんの!? 殴って気絶させる!?」
ゲイダル「そんな乱暴な・・・」
ゲイダル「ひとまず先に、炎がこれ以上 広がらないようにしましょう」
ローレット「そだね!」
「・・・・・・・・・」
ローレット「・・・あたし!?」
ゲイダル「あいにく私の家系は魔法に疎く・・・」
ローレット「一応やってみるけど、あたしも魔法は苦手だから、消せるか分かんないからね!?」
ゲイダル「・・・・・・花火?」
ローレット「違うっつの!!」

〇森の中の小屋
キオル「おい、あそこ──」
ミア「人が倒れてる!」
ルカード「ヴィエリゼ・・・!?」
ヴィエリゼ「あ・・・」
ヴィエリゼ「ルカード・・・?」
ルカード「これは──」
ルカード「きみが、やったのか・・・?」
ヴィエリゼ「私・・・」
キオル「お前ら、そこの人間たちから離れろ!」
ローレット「うるさい!」
ローレット「こちらの領分だ、口出しするな!」
キオル「何だと!」
ミア「その人たちが何かしたの?」
ゲイダル「あなた方には関わりのないこと故、 このままお引き取り願いたい」
ゲイダル「──が」
ゲイダル「その前にこの炎を消してもらえると嬉しい」
「ええっ!?」
キオル「あきらかに水属性の女がそこにいるだろ!?」
ローレット「何でも見た目で判断するの よくないと思うなー」
キオル「チッ」

〇森の中の小屋
キオル「これでいいだろ?」
ローレット「ふん。そのくらいで威張らないでよね」
キオル「お前、何もしてねーじゃん!!」
ルカード「ヴィエリゼ、何があったんだ?」
ヴィエリゼ「・・・私、誰も助けられなかった」
ヴィエリゼ「みんな薬や装飾品にされた、って」
ルカード「そんな──」
ヴィエリゼ「どうして?」
ヴィエリゼ「私たちのことを知りもしないのに、どうして人間は私たちが生きることを邪魔するの?」
ルカード「・・・っ」
ヴィエリゼ「私のせいだ」
ヴィエリゼ「私がもっと早く対処していたら・・・」
ヴィエリゼ「統治者としての責務を果たしていたら、 救えた命だってあったはずなのに・・・」
ルカード「──ごめん!!」
ヴィエリゼ「どうして貴方が謝るの?」
ルカード「俺がもっと早くこの場所の情報を掴んでいたら・・・」
ルカード「いや──」
ルカード「そもそも、きみとの約束を未だに果たせていない俺が悪いんだ」
ルカード「だから、ごめん──」
ヴィエリゼ「覚えていてくれたの・・・?」
ルカード「指切りしたろ?」
ヴィエリゼ「ルカード・・・」
ルカード「──ッ!?」
ゲンティム「てめえ、ヴィエリゼから離れろ!!」
ヴィエリゼ「ゲンティム!?」
ミア「彼の後ろにいるのって──」
キオル「魔王騎士団!?」
キオル「おいおい、ずいぶん過保護じゃねーか」
ゲンティム「ちんけな魔族と結託して嬢ちゃんを攫うたぁ、勇者も落ちたもんだなァ!?」
ヴィエリゼ「違うのゲンティム!」
ゲンティム「何が違うって?」
ミア「この状況じゃ分が悪いわ、引きましょう」
キオル「密売人はこっちで引き取るぜ!」
ローレット「待て、そいつらは置いていけ!!」
ルカード「こいつらには必ず罪を償わせるから、 ここは任せてもらえないかな」
ローレット「あんたたちの言うことなんて 信じられると思う?」
ルカード「難しいと思うけど、 信じてもらえたら嬉しい」
ローレット「・・・・・・」
ローレット「──分かった、今回は任せる」
ルカード「ありがとう」
ルカード「ヴィエリゼ!」
ルカード「必ず会いに行くから、待ってて!」
ヴィエリゼ(会いに、来てくれるんだ・・・)
ヴィエリゼ「分かった、待ってるわ」

次のエピソード:P5・決意の表れ

コメント

  • ヴィエリぜ様カッコイイ! 好きです!!
    怒りで暴走してすごく強いキャラっていいですよね! 私のツボに刺さりました!

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