期限:推しをキャスティングするか、推しが恋愛ネタで炎上するまで

はるたみあお

プロローグ(脚本)

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はるたみあお

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〇女子トイレ
長谷部香奈「はあ〜危なかった・・・・・・。 これいつか膀胱炎になるわ」
  彼女の名前は、長谷部香奈(はせべ かな)
  31歳独身。
  田舎の私立学校で国語教師をしている。

〇役所のオフィス
長谷部香奈(ようやく勤務終了────。 この後は授業の準備して、テストの丸付けして・・・あ、遠足の計画もそろそろしないと)
長谷部香奈(今日こそ9時前には帰りたいな・・・・・・)
  教師の仕事は多岐にわたり、忙しい。
  彼女も例にもれず、仕事と職場の往復を繰り返す毎日を送っていた。
長谷部香奈(ん?百合子からメッセージだ)
yuriko「人野さんww」
yuriko「これでブラック全員炎上ww」
  http://www.・・・・・・
  
  『人気声優人野俊也、20歳年下若手声優と熱愛・・・』
  ぶさかわいいうさぎのスタンプと一緒に送られてきたURLをクリックして、ネットの記事を開く。
  そこには隠し撮りされたと思われる女性声優との2ショット、”自称関係者”の2人の馴れ初めについての証言、
  二股を掛けられたという大学生との生々しいやり取りのスクショまで載せられていた。
長谷部香奈(うわ、マジか〜・・・・・・。 若手声優と熱愛は良いとして、更に年下と二股炎上はキツい・・・)
長谷部香奈(2人とも若くて可愛い女性──)
かな「読んだ。二股キツw」
yuriko「今に茅ヶ崎さんも炎上するから楽しみにしてろってw」
かな「やめてゆりこの推しと一緒にしないでw」
yuriko「浅岡さんファンは訓練されてるからwww」
長谷部香奈(推しの炎上、かあ・・・・・・)

〇散らかった居間
長谷部香奈「はあ〜〜〜疲れた・・・・・・! 死にそう・・・・・・ 駄目だ、何もしたくない・・・・・・」
  香奈の部屋には袋に入れられたままの服や、たまった洗濯物、食べ終えた後の袋や本が散らばり、完全に『汚部屋』と化している。
  『虫がわくような生ゴミは放置しない』
  『スーツが皺にならないように脱ぐ』
  『横になるのはシャワーを浴びてから』
  自分に課した最低限のマイルールだけを何とか守る毎日。
  当然、このような自宅に人を呼べるはずもなく、恋人も長らくいない。
  楽しみといえば、たまにの散財。
  そして────
長谷部香奈「はあ〜今日もシュウが尊い・・・・・・」
  晩御飯代わりの袋菓子を食べながら動画共有サイトで『推し』を鑑賞。
  それが、日々のささやかな楽しみである。
長谷部香奈(お、茅ヶ崎さん(中の人)のラジオのアーカイブ)

〇ラジオの収録ブース
  『ジューンブライドが女の憧れ』?
  ふーん。
  ・・・・・・で、アンタはどうなの?
  その方がオレには重要なんだけど。
茅ヶ崎「『茅ヶ崎千里のファン☆ラジ』 第181回始まります。 今週もお疲れ様です、ゆっくり楽しんでいってください」
茅ヶ崎「さて、今日はゲストがいらっしゃいます。 俺の養成所の先輩で、今『ミルティアイス』でも共演している三ツ石謙介さんです」
三ツ石「はい、ど~も~! 眼鏡が曇らない方法を一年中探してる三ツ石謙介です。 今日は、全力告知に来ました。よろしくお願いします!」
茅ヶ崎「三ツ石さんめっちゃストレートですね。笑」
三ツ石「千里程じゃないよー。 でもあんまり忖度しない千里が好き♡」
長谷部香奈(うんうん、ちゃんとした自分の考えがあって、落ち着いてる茅ヶ崎さんが好き・・・。 ・・・う、駄目駄目、集中して聞かないと)
茅ヶ崎「・・・ということで次はふつおたのコーナー。 ファン☆ラジネーム:V女のリンスさん 『茅ヶ崎さん、ゲストの三ツ石さん、」
茅ヶ崎「こんばんは。茅ヶ崎さんのライブ全公演遠征しました!声を出しての応援は出来ませんが、久々の推し事で私の方が元気をもらい、」
茅ヶ崎「歌の力って凄いなと改めて思いました。茅ヶ崎さんが私の生きる活力です!お二人の活力となっているものはなんですか?・・・」

〇散らかった居間
長谷部香奈(この人、毎回読まれてるな・・・・・・)
  もやっ──
長谷部香奈(もやっ・・・?)
長谷部香奈(・・・・・・駄目だ、なんか話が頭に入って来ない・・・違う動画見よう・・・)

〇テレビスタジオ
三ツ石「ほぼ同期の3人でお届けする『ほスリー』 今日も届いたイラストから紹介です。どん!!」
三ツ石「まずは、ほスリネーム:かいかい健康かい?さん」
若手?声優2「お、これ先週の企画のやつ! かいかい健康かい?さん、いつもながら筆が早い」
若手?声優1「三ツ石の滑り芸上手く描けてんな〜」
三ツ石「いやいや、滑ってへんわ!」

〇散らかった居間
長谷部香奈(この絵の感じ見たことある・・・。 かいかい健康かい?って人、他の番組にも三ツ石さんのイラスト送ってる人・・・だよね?)
長谷部香奈(みんな推しにアピールしてるんだ・・・・・・)
  もやっ──
長谷部香奈(・・・・・・私、何でもやっとしてるの?)
長谷部香奈(もしかして・・・・・・これがガチ恋?同担拒否?)
長谷部香奈(いやいや、確かに『茅ヶ崎さんと結婚したい』とか言うけども何かしてる訳じゃないし・・・・・・って誰に言い訳してんだか)
長谷部香奈「あー・・・・・・やめやめ!寝る!」
  頭を振って考えを断ち切り、そのまま寝室のベッドに倒れ込む。
  部屋を真っ暗にして眠ろうとするも、様々な考えが頭の中を巡り、眠れない。香奈は何度も寝返りを打った。

〇黒
脳内のもう一人の自分「人野さんの時は熱愛は別に良いって言ってたじゃん。推しだって人間、付き合ったり結婚したりするでしょ。それは駄目なことなの?」
長谷部香奈「駄目じゃない。駄目じゃない・・・・・・けど、推しに燃えてほしくないだけ。推しには健やかでいてほしいだけ」
脳内のもう一人の自分「本当に?二股とか不倫とか、そういう炎上以外なら良いの?」
長谷部香奈「・・・・・・・・・。 ・・・欲を言えば、推しには若手声優とか、年下アイドル・インフルエンサーとかファンとかじゃなくて、」
長谷部香奈「学生時代に知り合って長年お付き合いしていた『一般女性』辺りと結婚してほしい・・・」
脳内のもう一人の自分「我が儘。夢見すぎ。 私生活と作品は別でしょ」
長谷部香奈「・・・分かってるけど、切り離せない・・・。 この先、声を聞く度『ああ、この人・・・』って絶対思っちゃうよ・・・」
長谷部香奈「それが推し(茅ヶ崎さん)だったらって思うと耐えられない・・・・・・」
脳内のもう一人の自分「”自然に出会った一般女性”なら納得するの? さっき出してた声優だって、他の芸能人だって、ファンだって変わらないでしょ」
脳内のもう一人の自分「若さ、美しさ、金、画力。皆自分が持ってるものを最大限に活かして勝負してるだけ。『何もしてない』くせにぐだぐだ言うな」
脳内のもう一人の自分「そもそも、本当にガチ恋なの?同担拒否なの?キャラが好きなの?あなたは茅ヶ崎さんの何を知ってるの?」
長谷部香奈「わ、分からない・・・・・・」
脳内のもう一人の自分「”分からない”で誤魔化すな。こんな名前も知らないモブの一人にどう思われようが茅ヶ崎さんには何の影響もないしどうでも良いよ」
長谷部香奈「そんなの・・・自分が一番分かってる・・・・・・分かってるよ!」
長谷部香奈「あの人たちみたいに存在を認識されたい。認められたい。・・・だけど、でも、私には特別なものが何もないと確認するのが怖かった」
長谷部香奈「何かをして、認められなかったら?やらない方が良かったって思うかもしれない。むしろ、その可能性の方が高いでしょ」
長谷部香奈「怖い。怖くて仕方ない。 ・・・だけど、いつか茅ヶ崎さんに認識されたい。もちろん、これが邪な思いだって自覚もある」
脳内のもう一人の自分「・・・そこまで自分で認められるなら、もうやることはひとつでしょ?」

〇黒
  ────つづく

次のエピソード:リクエストお待ちしてます

コメント

  • 私も推し活経験があるので、ここまでの主人公の心がよく理解できて、胸が締め付けられました。推しのことを知れば知るほど好きになってしまうけど、ガチ恋になってしまうと辛くなるから、やっぱり推しはただひたすらに楽しい推し状態がいちばん心には優しいですよね。とはいっても恋愛と同じでブレーキきかなくなるときもあるだろうなぁ、、と共感しまくりでした。

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