虹架かるセカイは愉快に歌う

宇野木真帆

1話:最後の晩餐(脚本)

虹架かるセカイは愉快に歌う

宇野木真帆

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〇黒
  20XX年12月25日
  イエス・キリスト再臨
  世界は「最後の審判」を迎える
  これはその命運に巻き込まれた3人の物語

〇ファミリーレストランの店内
吾妻 緋色「部活おつかれ~♪」
野田 友弘「は~。明日から夏休みだし最高だな♪」
吾妻 緋色「ともはどっか行くのか?」
野田 友弘「うちはどこも。ひぃは?」
吾妻 緋色「今日の夜から車で福井」
野田 友弘「福井ってお前ww」
吾妻 緋色「笑うなよ!海行くんだってさ」
野田 友弘「ひぃん所は家族仲いいもんな」
野田 友弘「俺はとりあえずダラダラして~」
吾妻 緋色「宿題がまた残る」
野田 友弘「やめろよ~ 思い出させんな!」
野田 友弘「こっちは期末が散々で追加課題もあるんだぞ!」
野田 友弘「そうそう」
野田 友弘「美術のテストで珍回答しちゃってさ~ww」
野田 友弘「絵の題名を答えなさいってあっただろ?」
吾妻 緋色「この間は”稲穂拾い”が”栗拾い”」
野田 友弘「おまっ・・よく覚えてんな~」
吾妻 緋色「で、今回は何て?」
野田 友弘「”最後の判決”」
吾妻 緋色「え、ふつう」
野田 友弘「面白くない?」
吾妻 緋色「”最後の審判”だろww 単に惜しい」
野田 友弘「サイペリアにはその絵あるよな」
吾妻 緋色「え?」
野田 友弘「トイレの前だって~!」
野田 友弘「結局あれって、最後に何を判決するんだ?」
吾妻 緋色「世界の終末に人間の罪を神が審判するって」
野田 友弘「それで世界が滅びる~ とか言うわけか」
吾妻 緋色「ちなみに、ここにある絵は”最後の晩餐”な」
野田 友弘「恥っず!早く言えよ!」
野田 友弘「あ、でも似てるか」
吾妻 緋色「”最後”だけな」
野田 友弘「ひぃは最後何食うだろうな?」
吾妻 緋色「え、」
野田 友弘「ひぃはいつもと変わらなそうだな」
吾妻 緋色「最後の晩餐だと、キリストが自分の体としてパン。血はワインって言ったらしい」
野田 友弘「それはこの後の飯が・・」
吾妻 緋色「すまん」
野田 友弘「ちょっと電話」

〇ファミリーレストランの店内
野田 友弘(いつになく張り切って練習してたからな)
吾妻 緋色「わるい。寝てた」
野田 友弘「なんか夢みた?」
吾妻 緋色「転校生がきた」
野田 友弘「ふつう~」
吾妻 緋色「栗色の可愛い子だったぞ」
野田 友弘「まじ!夏休み明けの正夢!?」
吾妻 緋色「まさか!」
野田 友弘「だよな~」
吾妻 緋色「そろそろ何か頼もう」
野田 友弘「そうだな」
店員「お伺い致します」
吾妻 緋色「シェフ特製葡萄ソースのハンバーグ」
野田 友弘「12種類の野菜カレー」
店員「かしこまりました」
野田 友弘「葡萄ソース微妙じゃね?」
吾妻 緋色「ともこそ野菜好きだったか?」
野田 友弘「これしかカレーなかったんだよ!」
吾妻 緋色「残念だったな。 俺はふつうにぶどうが好きだ」
野田 友弘「へ~。じゃあ後で味見させて」
店員「お待たせ致しました」

〇ファミリーレストランの店内
野田 友弘「葡萄ソース意外とうまかったな」
吾妻 緋色「ぶどうは何でも合う」
吾妻 緋色「そういえば知ってるか?」
吾妻 緋色「サイペで生ハムが消えるって」
野田 友弘「か、神隠しか!?」
吾妻 緋色「ほんっと怖がりだよな」
吾妻 緋色「輸入物が日本へ入ってこないって話だ」
野田 友弘「世界の危機じゃねーか!」
吾妻 緋色「大げさだな。 そのうちまた再開されるだろ」
野田 友弘「最近、天気もおかしいし、地震だって。 世界やべーんじゃね?」
吾妻 緋色「まさか!そんなヤワじゃないだろ!」
吾妻 緋色「もう帰らないと」
野田 友弘「おう!旅行楽しんでこいよ!」
吾妻 緋色「また部活で!」
野田 友弘(俺も帰るか)
野田 友弘(なんだあの髪!?)

〇田舎駅の駐車場
吾妻 緋色「戻ってきたな」
吾妻 日晴「すごいね!お兄ちゃん! 山の中のサービスエリア!」
吾妻 緋色「あぁ。でももう出発するぞ」
吾妻 日晴「うん!」

〇車内
吾妻 日晴「すごい崖だよ!」
吾妻 緋色(ここを行くのか)
吾妻 日晴「そうだ!写真撮れないかな」
吾妻 緋色「シートベルト外したら危ないぞ」
吾妻 日晴「平気だって!」
  世界の危機を気にするより遥かに
  日常的な不幸の方がありふれている
吾妻 緋色(とは言っても、さすがにシートベルトは気にしすぎか)
父さん「うん?ハンドルが・・」
吾妻 日晴「よし!撮れるかな!」
母さん「気になるなら止まった方がいいんじゃない?」
吾妻 緋色(車の調子悪いのか)
父さん「なんだ!ハンドルが動かない!?」
吾妻 緋色「父さん!ブレーキ!」
父さん「だめだ!きかない!!」
吾妻 緋色「ぶつかるぞ!!」

〇車内
吾妻 緋色(下まで落ちたのか)
吾妻 緋色(ひばりがいない。父さんと、)

〇車内
吾妻 緋色「母さん!?しっかりして!」
吾妻 緋色「父さんも!!」

〇車内
???「お兄さん、大丈夫?」
???「ふぅ、開いた」
吾妻 緋色「あの、妹見ませんでした?」
???「女の子が外にいるよ。 でも見ない方がいい」
吾妻 緋色「そんな‥」
???「お兄さんは大丈夫?」
吾妻 緋色「頭がボーッと‥」
???「もう目をつぶってな。 救急車呼んでおくから」

〇魔法陣のある研究室
???「どう?」
医師「託身の可能性は低いです」
???「ま、そうだよね~」
???「秘跡を執り行ってもう500年近く」
医師「私の代では拝めないのかもしれませんね」
医師「しばし離れます。 何かあればお呼びください」
???「永遠の命もさ」
???「ここまでくると地獄だよね」
吾妻 緋色「ここは・・」
吾妻 緋色「あなたは」
???「ようこそ」
吾妻 緋色「俺は・・生きてるんですか?」
???「どう思う?」
吾妻 緋色「死んだかと」
???「正しい感覚だね」
吾妻 緋色「そうだ、家族は」
???「即死」
吾妻 緋色「そ・・そんな・・」
???「はい、お水」
吾妻 緋色「ありがとうございます」
吾妻 緋色「俺は、これからどうしたら・・」
???「その事で、」
???「なが~い話があるんだけどいい?」

〇魔法陣のある研究室
吾妻 緋色「ごめんなさい。 ちょっと理解できなくて・・」
吾妻 緋色「俺が、キリスト再臨の為の2人目・・?」
???「体は?何か変わった所ない?」
???「葡萄とか」
吾妻 緋色「ぶとうの、においしてました」
???「それが奇跡の顕現」
???「3人目を探すのに必要な特殊体質だよ」
吾妻 緋色「・・・」
???「君の気になる事に答えようか」

〇ファミリーレストランの店内
野田 友弘「おう!旅行楽しんでこいよ!」
吾妻 緋色「また部活で!」

〇魔法陣のある研究室
吾妻 緋色「学校・・戻れますか?」
???「変えた方がいい。名前もね」
???「君は交通事故で死んだ」
???「ガードレールの衝突跡を見れば、シートベルトをしていても、脳震盪でバッドエンド」
???「今生きているのは託身したから」
吾妻 緋色「キリスト再臨の・・2人目として?」
???「そういうこと」
???「キリストが再臨すれば、その奇跡の力で、家族が生き返るかもしれない」
???「だから、ね?」
???「協力して♪」

〇男の子の一人部屋
  ー半年後ー
威流 緋雨「なんであんたまで一緒に」
威流 楓「さみしーかと思って」
威流 楓「一人暮らし」
威流 緋雨「平気だ」
威流 楓「よく言うよ~」
威流 楓「この半年まともに顔見せてくれなかったよ~?」
威流 緋雨「もう大丈夫だ」
威流 緋雨「3人目が見つかれば、キリストが再臨して、家族が生き返る」
威流 緋雨「その為に俺はあんたを手伝う」
威流 楓「確証はないけど」
威流 楓「ま、でも、死者蘇生の話は史実にあるからね。キリストは奇跡の人って言うし」
威流 緋雨「何でもやる。可能性が少しでもあるなら」
威流 楓「じゃぁ早速、ターゲットの話だけど」
威流 楓「明日から潜入する聖威光学園に、3人目の可能性がある人物がいる」
威流 楓「4枚あるから、後で見ておいて」
威流 緋雨「1枚しかない」
威流 楓「あれ~?」
威流 緋雨「ちゃんとしろよ」
威流 楓「ねぇ、ちょっと見ない間にキツくなってない?」
威流 緋雨「気のせいだ」
威流 楓「こんな弟可愛くない~」
威流 緋雨「俺だってこんな兄なんて!」
威流 楓「兄じゃなくて、兄ちゃんって」
威流 緋雨「絶対呼ばない!!」
威流 楓「残念」
威流 楓「500年も現れなかった2人目だから、仲良くしたいのに」
威流 緋雨「それならもっと真面目に・・」
威流 楓「そうだ!」
威流 楓「親睦会しようよ~」
威流 楓「制服着てるし、学生っぽい所でご飯食べた~い♪」
威流 緋雨「もう好きにしてくれ」

〇ファミリーレストランの店内
威流 緋雨(はぁ・・。 よりによってここか)
威流 楓「学生といえば!サイペリア!」
威流 緋雨「さっさと食べて出るぞ」
威流 楓「え~お兄ちゃんは弟の為にこうして・・」
威流 緋雨(そうか。一応は兄弟。 それっぽくしないとな)
威流 緋雨「に、」
威流 楓「に?」
威流 楓「いいよ♪兄さんでも♡」
威流 緋雨「よ、呼ばない!」
威流 楓「そう。さ~て何を頼もうかな」
威流 楓「これ何て緋雨好きそうじゃない?」
威流 緋雨「シェフ特製の・・」
威流 楓「葡萄好きかなって」
威流 緋雨「どうして」
威流 楓「なんとなく」
威流 楓「おれはこれにしよう」
威流 楓「あとは緋雨だよ」

〇ファミリーレストランの店内
威流 緋雨「パン好きなのか?」
威流 楓「まぁね。おれの故郷は西欧だから」
威流 緋雨「わざわざサイペリアまで来て」
威流 緋雨「トイレ近くのこの席」
威流 緋雨「”最後の晩餐”を俺に見せたい理由は?」
威流 楓「おれたちの出会いにぴったりでしょ♪」
威流 緋雨「キリストの体があんたで」
威流 緋雨「俺の血はキリストだとでも言うつもりか?」
威流 楓「へ~。知ってんだその話」
威流 緋雨「参考書に載ってた」
威流 楓「でも本当のところは分からない」
威流 楓「その時になってみないと」
威流 緋雨「その時って?」
威流 楓「”最後の審判”」
威流 緋雨「人間の罪を神が審判する時か」
威流 緋雨「そんなの本当に訪れるのか?」
威流 楓「史実では、」
威流 楓「キリストが再臨した時、最後の審判を神が下す、と言われている」
威流 緋雨「それだと・・」
威流 緋雨「俺たちが3人目を探し、キリストを再臨させた時、」
威流 楓「そう。世界は審かれる」
威流 楓「どう? 世界の命運が緋雨の手の中にある」
威流 緋雨「俺は家族を生き返らせる為に、3人目を探すだけだ。世界なんて知らない」
威流 楓「目的は人それぞれ、だからね」
威流 楓「そろそろ食べようか。冷たくなっちゃう」
威流 緋雨「そうだな」
威流 楓「そうだ。ドリンクバーついてたよ」
  世界なんて知るか
  俺の世界はもうないんだ
  それをこれから取り戻す!!
威流 楓「お待たせ~」
威流 楓「はい、緋雨の分も」
威流 緋雨「ありがとう」
威流 緋雨「あんた!」
威流 緋雨「オレンジジュースにぶどうジュースを混ぜただろ!」
威流 楓「すご~い! 一滴しか混ぜてないのに!」
威流 緋雨「ぶどうにだって合わないやつがいるんだぞ!」
威流 楓「え、誰目線・・」
威流 緋雨「とにかくぶどうを侮辱するな」
威流 楓「葡萄を侮辱ってww」
威流 楓「というか、」
威流 楓「緋雨のその舌というか、鼻もだっけ? どうなってんの?」
威流 緋雨「キリスト再臨に関係する人物から、葡萄の匂いがするらしい」
威流 緋雨「あんたからもしていた」
威流 緋雨「だけど、微かな匂いだから、もう鼻が慣れて分からない」
威流 楓「へ~。 じゃあ3人目は」
威流 緋雨「明日入学してすぐに見つける」
威流 楓「そう。それじゃぁ、」
威流 楓「明日の入学を祝って~」
「かんぱい・・・ 乾杯~♪」

〇黒

次のエピソード:2話:入学式

コメント

  • 斬新な設定とキャラクター(特にお兄さんが好き)が魅力的で面白かったです!最後の審判って何が起こるんだろう...続きが楽しみです!

  • 日本人である彼らがキリスト再臨に関わってくるというあり得なさそうな話も、彼らの会話からなぜか真実味さえ感じてしまいました。最後の審判が、どのように下されるのか楽しみにしています!

  • キリストの生まれ変わり。
    なんだかピンとは来ませんが、壮大そうなイメージはあります…。死んでも死に切れないのは相当辛そうです。

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