エピソード3(脚本)
〇綺麗なダイニング
矢口真依「(やっと勝てた・・・・・・)」
矢口はきのこのソースを作り終えると、茹で上がったパスタの湯を切り、
パスタと適量の茹で汁をフライパンに入れる。
〇ボロい校舎
〇学校の校舎
〇ハイテクな学校
矢口と仕切は何の因果か、小中学校、それに大学で専攻したゼミまで同じだった。
〇ボロい校舎
矢口真依(少女時代)「先生、できました!」
幼い頃から矢口は真面目な優等生で何でもそつなくこなしていたのだが、
仕切秀人(少年時代)「先生、こっちのやり方でもできましたけど?」
矢口真依(少女時代)「・・・・・・えっ!!」
いつもあと1歩のところで奇想天外な思考と行動で結果を修める
天才型の仕切には及ばなかった。
〇黒
まだ仕切が真っ当な判断と努力をする人間なら矢口は許せたのかも知れない。
〇学校の校舎
矢口真依(中学時代)「ちょっと仕切君、先生の指示していた手順と違うみたいなんだけど・・・・・・」
仕切秀人(中学時代)「ああ、大丈夫。手順、こっちで合ってるから」
榎木先生「あ、ごめん。みんな、手をとめて! 手順が6番目と7番目が逆になってたみたいなの」
矢口真依(中学時代)「・・・・・・」
〇黒
だが、少しいい加減なところがあるものの、それが功を奏して、
最終的に自分より優れている仕切を苦々しく思っていた。
〇綺麗なダイニング
矢口真依「さぁ、できた!!」
矢口はバター醤油の良い香りときのこの旨味がつまったパスタか映えるように
鮮やかグリーンの縁のパスタ皿に盛り、パセリを添える。
美弥さん、できましたよ。と美弥子を呼ぶと、美弥子はテレビを切ってやってきた。
仕切美弥子「わーい、ありがとう。真依ちゃん!!」
決して、美人で笑顔も華やかな、どこか近寄りがたい才女のような矢口とは
似ていないのだが、
仕切美弥子は素直な性格に、にこにことした笑顔が魅力的な女性だった。
仕切美弥子「やっぱり美味しいね。真依ちゃんのきのこパスタ」
矢口真依「ふふっ、ありがとう。じゃあ、私、もう行くね」
仕切美弥子「ああ、お仕事なんだね。今日は雑誌? それとも、テレビかな?」
矢口真依「うん、今日はテレビだよ」
矢口真依「遅くなるかと思うから美弥さんは先に寝ててくれたら良いからね」
仕切美弥子「えー、眠れないよ。たくさん寝ちゃったし」
矢口真依「ふふ、じゃあ、洋梨のタルトを冷蔵庫に作ってあるから良い時に食べて待ってて」
矢口真依「あまり遅くならないように帰ってくるから」
洋梨をクリームとタルト生地にも使った洋梨のタルト。
矢口が美弥子を初めてこのマンションに連れてきた時も作って、喜んでいた。
仕切美弥子「やったね!! 真依ちゃんがいないのは寂しいけど、お仕事、頑張ってね!!」
美弥子に見送られて、矢口はマンションを出る。
仕切美弥子「・・・・・・早く帰ってきてね。真依ちゃん」
〇マンション前の大通り
矢口真依「これで、やっと勝てたかしら? 仕切君」
〇マンション前の大通り
〇マンション前の大通り
〇マンション前の大通り
〇マンション前の大通り
〇マンション前の大通り
〇数字
〇黒
闇堕ち病の罹患者が世に現れた年から1年前。
〇きのこ料理の店
仕切達はきのこ同好会という集まりに参加していた。
〇おしゃれな居間
本日の参加者は仕切と月夜野、派手めな女性、
チャラ男風の男性と矢口、
表情の硬い女性とぽっちゃりとした体型の男性、
それに仕切と結婚する前の、落合(おちあい)美弥子だった。
巫「じゃあ、まずは私から自己紹介。巫里絵(かんなぎえり)でーす。女優目指してる24歳」
巫「今日は美味しいきのこが沢山、食べられると思ってきました!!よろしくお願いしまーす」
巫の自己紹介を皮切りに次々と自己紹介をしていく。
西北「横浜でバイク店をしてます、西北(にしきた)です。好きなのはバイクと舞茸かな?」
西北「もし、俺と仲良くしてくれたら、バイクで神奈川を案内しますよ。よろしくお願いします」
平田「私は平田(ひらた)という者で、東京でTVディレクターをしています。きのこはどれも」
平田「好きだけど、トリュフが1番かな? 今日はよろしくお願いします」
きのこ同好会・・・・・・会員資格はきのこが好きかどうかと既婚ではないこと。
つまり、全員が全員ではないが、異性との出会いを求めてきている者も少なくなかった。
黒河「私は黒河(くろかわ)です。仕事はIT関係の会社の事務です」
黒河「きのこは好きなほうで、この会には初めて参加します。よろしくお願いします」
月夜野健「月夜野健です。今回はこちらの仕切先生と一緒に参加させていただくことになりました」
月夜野健「きのこの料理も食べられるとのことで楽しみです。本日はよろしくお願いいたします」
矢口真依「矢口真依です。料理が好きで、色んなきのこ料理が作れるかなと思って、参加しました」
矢口真依「参加は初めてですので、皆さんと仲良くなれたらと思います。よろしくお願いします」
表情が硬い女性と月夜野、矢口の紹介も一礼すると終わり、美弥子の紹介になる。
落合美弥子「えーと、私は落合美弥子です。きのこは形も可愛いし・・・・・・美味しいから好きです」
落合美弥子「仕事は実家のクリニックを手伝っています。今日はよろしくお願いします」
美弥子は最後に他の会員と同じようにぺこりと頭を下げ、
最後は本日のリーダーになってしまった仕切が挨拶する番になる。
仕切秀人「皆さん、紹介ありがとうございました。今日のリーダーってことになりました、仕切です」
仕切秀人「ただ、大変名前負けなのですが、仕切るのは大の苦手でして、」
仕切秀人「早速で申し訳ないのですが、今日のリーダーはこちらの月夜野君に任せようと思います」
仕切は月夜野を自分の前に引き寄せる。そんな仕切に月夜野は呆れつつも、
月夜野の代わりにリーダー拝命挨拶や注意点、今の時期に採れるおすすめのきのこに
ついて語った。
〇おしゃれな居間
月夜野健「さて、雨も止んできましたね。それでは、きのこ狩り班と調理班の希望をとります」
月夜野健「きのこ狩りに行かれたい方」
月夜野が聞くと、仕切、美弥子、巫が手を挙げる。
ちなみに、調理班には矢口が志望し、それから、西北と平田が志望する形になった。
月夜野健「黒河さんはどうされますか?」
黒河「え?」
聞かれる・・・・・・とは思わなかったのだろう。
黒河はどちらでも・・・・・・ということだったので、調理班に回ってもらった。
黒河「まぁ、男女比からもその方が良いと思います」
月夜野健「ははは、じゃあ、落合さん、巫さん、仕切先生と僕はきのこ狩りへ行きましょうか?」
〇山道
巫「きのこって、採ったきのこを食べるんじゃないんだね」
月夜野健「ええ、実はきのこは慣れた方でも見間違って毒きのこだったってことも多いんですよ」
巫「えー、ヤバいじゃん。つっきー」
巫は月夜野をつっきーと呼ぶと、さりげなくボディタッチしてくる。
月夜野は困ったように仕切の方を見ると、
仕切は仕切で何かのきのこを発見したようだった。
仕切秀人「あ、これは珍しいきのこかも知れない」
落合美弥子「えっ、そんなこと、分かるんですか?」
仕切秀人「まぁね。じゃあ、細心の注意を払って・・・・・・」
そう言うと、仕切は厚手の手袋をして、珍しいきのこ? を口の締まる袋に入れた。
仕切秀人「これで毒があっても、大丈夫。念の為、何重にもビニール袋に入れてっと」
落合美弥子「えっ、毒きのこかも知れないのに、持って帰るんですか?」
毒きのこかも知れない謎のきのこを持ち帰ろうとする仕切に美弥子は驚いた。
仕切秀人「勿論、みんながみんな、持って帰ることはお勧めしないけどね・・・・・・」
不敵に笑う仕切に、月夜野もこれ幸いと会話に混じった。
月夜野健「先生は難病指定医に従事する傍ら、きのこの研究家としても第一人者なんですよ」
落合美弥子「きのこの研究家、さん?」
月夜野健「えぇ、全てのきのこは向き合い方次第で、毒にも薬にもなるっていうのが口癖で」
月夜野健「あと、きのこより美しいものはこの世にはないんじゃないかって。ねぇ、博士?」
仕切秀人「おいおい、今日は博士でも医者でも研究家でもなくて、きのこ同好会の会員の仕切さん」
仕切秀人「名前の割にちょっと仕切るのが苦手で、つっきーに頼っちゃうような・・・・・・」
巫「もうつっきー!!」
仕切秀人「ほら、呼んでるよ。つっきー」
月夜野健「・・・・・・はぁ」
落合美弥子「仕切さんって面白い方なんですね」
〇おしゃれな居間
それから、仕切と美弥子の2人は半年間の交際を経て、
結婚した。
〇きのこ料理の店
ちょうど、桜が咲く頃だった。
〇桜の見える丘
〇桜の見える丘
ついに「きのこ同好会」の全容が明らかになりましたね。趣味+出会いの爽やかなサークルなんですね、おどろおどろしい変人の集会をイメージしてましたw 登場人物の関わりが見える+バター醤油のきのこパスタが美味しそうな1話になりましたね。