エピソード17(脚本)
〇荒廃した街
クエストの受注が完了したあと、ニルたちはすぐにメルザムを出発した。
アーティレに到着した3人の前に、被害を受けた街並みが広がる。
ニル「・・・・・・」
見渡す限りの建物のほとんどが倒壊し、人々は救助活動に追われている。
かつてあっただろう活気は消え失せて、疲弊しきった様子の人々で溢れていた。
アイリ「・・・ひどいわね」
アイリは表情を歪めて呟(つぶや)いた。
その後ろで「きゃっ!」という声が上がる。
3人が振り向くと、瓦礫につまずいたのか女性が地面に尻もちをついていた。
救援物資を運んでいる途中らしく、周りには女性が落とした包帯や薬が散らばっている。
ニル「大丈夫ですか?」
ギルド職員「あっ・・・ありがとうございます」
散らばった物資をともに拾い集める。
女性はぺこりと頭を下げた。
ニル「あの、俺たちメルザムから応援に来たコレクターなんですけど・・・」
ニル「防衛戦線の本部ってどこにありますか?」
ギルド職員「あ・・・本部はこの先の中央広場にあります」
ニル「ありがとうございます。 足元にはお気をつけて」
女性を見送ったあと、3人は早速中央広場を目指して歩き出した。
〇荒廃した街
広場に足を踏み入れると、大きなテントが目に入った。
おそらくあれが防衛戦線の本部だろう。
〇戦線のテント
テントの中に入ると、大勢の武装した人々がそれぞれに会話していた。
リーダーはどこにいるのかと探していると、奥で話していた2人組のうちひとりがニルたちを見て驚いた声を出した。
ライザー「アイリじゃないか。なんでここに?」
アイリ「・・・!」
男はニルたちのもとへ、人並みを荒くかき分けながら歩いて来る。
腕を組みながら薄ら笑いを浮かべる男に、ニルは少し胸がざわついた。
ニル(アイリの知り合いかな・・・それにしてはちょっと険悪なような・・・)
不思議そうにしているニルとエルルに気づいたアイリが口を開く。
アイリ「コイツはライザー。 ・・・私の元パーティメンバーよ」
ライザーはニヤニヤといやらしい表情でアイリに話しかける。
ライザー「久しぶりだな。他のやつらも、お前がいなくなってから元気にやってるよ」
久しぶりの挨拶にしては、ずいぶんな物言いだった。
ニルはライザーに嫌な印象を受け、思わず眉間にシワを寄せる。
アイリ「気が合うわね。 私もアンタたちと離れてから元気だわ」
ライザー「・・・後ろのふたりは今のお前のパーティメンバーか?」
ライザーの視線がニルとエルルに注がれる。
それからライザーは「ぷっ」とバカにするように吹き出した。
ライザー「かわいそうに! もうそんな子供にしか組んでもらえないんだな」
ライザー「まあ、お前もまだ子供か。お似合いだ」
ははっ、とライザーが笑おうとした瞬間、目にも止まらぬ速さでアイリの双剣が彼の首元に突きつけられた。
ライザー「ひっ」
ライザーが怯えた声を漏らす。
アイリ「ふたりを馬鹿にする発言は控えてもらえるかしら?」
刃が添えられた首筋に冷や汗が垂れる。
ライザーは小さく舌打ちして、両手をゆるく上げた。
ライザー「冗談が通じないやつだな。 分かった分かった」
アイリが静かに剣を下ろす。
しかし、なおもライザーに向ける視線は冷たいままだった。
エルルがむすっとして声を上げる。
エルル「子供だなんて馬鹿にしてくれますけど、ニルさんはあの“名滅(めいめつ)”なんですからね!」
エルル「ねえ、ニルさん!」
ニル「えっ、ああ、・・・そうだね」
急に話を振られたニルは、驚きつつも同意した。
ライザー「“名滅”・・・こいつが?」
ライザーが無遠慮にじろじろとニルを見る。
ライザー「・・・ハッ、やっぱ噂は噂だな」
エルル「なっ・・・!」
ライザー「じゃあな。俺も暇じゃないんでね」
ライザーはそう言い捨てると、3人に背を向けた。
奥に戻っていく後ろ姿を見ながら、アイリはため息をついた。
アイリ「・・・嫌なやつに会ったわね」
エルル「なんなんですかあの人! むかむかきます!」
ニル「元パーティメンバーにしては、だいぶ仲が悪いんだね」
アイリ「女が強いのが気に入らないのか知らないけど、なにかと突っかかってくるのよ」
もう一度深くため息をついてアイリは肩をすくめる。
そのとき、テントの中に男が入ってきた。
〇戦線のテント
男はニルたちに気づき、声をかけてくる。
カラカル「君たち、見ない顔だな」
ニル「メルザムから来たコレクターです」
カラカル「ああ・・・ギルド=メタリカからの応援か」
ニル「ここって防衛戦線の本部ですよね?」
カラカル「そうだ。俺はリーダーのカラカル」
アイリが一歩踏み出し、自分たちも防衛戦線に入れてほしいと話をする。
カラカルはアイリの話に相槌を打ったあと、笑顔で手を差し出した。
カラカル「もちろんだ、ありがとう。 人手はいくらあっても足りんからな」
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