DAY DREAM BREAKER ≮デイドリームブレイカー≯

澤井 軽野

第1話 デイドリーム・ビリーヴァー(脚本)

DAY DREAM BREAKER ≮デイドリームブレイカー≯

澤井 軽野

今すぐ読む

DAY DREAM BREAKER  ≮デイドリームブレイカー≯
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇黒

  ねえ、知ってる?
  どんな願いも叶えてくれる
  夢と希望の魔法使いの噂
  不幸な人を救ってくれる
  そう、その名は──

〇星
リーヴァ「夢と希望の使者」
リーヴァ「リーヴァ見参!」
リーヴァ「あなたが2人目の私の依頼者ね」
リーヴァ「さあ、教えて? あなたの願い」
???「ほ、本当に?」
???「どんな願いでも──?」
リーヴァ「もちろん!」
リーヴァ「希望が私のチカラの源」
リーヴァ「心に強く想い描いて」
リーヴァ「あなたの望む世界を」
???「じ、じゃあ」
???「叶えて欲しいのは──」
リーヴァ「わかった! それがあなたの願いだね」
リーヴァ「『サーチ』」
リーヴァ「──」
リーヴァ「見つけた──あなたの望む世界」
リーヴァ「発動!」
リーヴァ「『デイドリーム・ビリーヴァー』」
リーヴァ「観測完了!」
リーヴァ「あなたの存在の確率は、あなたが望んだ世界へと収束したよ」
リーヴァ「さあ、受け取って」
???「す、すごい」
???「これがリーヴァの力!」
リーヴァ「この空間を出たら、あなたは二つの記憶を持つ事になる」
リーヴァ「一つは、今まであなたが過ごしてきた世界の記憶」
リーヴァ「もう一つは、あなたの望みが叶った世界の記憶」
リーヴァ「けれど、今までの世界の事を覚えているのは私とあなただけ」
リーヴァ「あなたはこれまで望んだ通りの人生を 送ってきた事になってる」
リーヴァ「初めは混乱するかもしれないけど、 きっとすぐ慣れる」
リーヴァ「それじゃあ、行きなさい」
リーヴァ「あなたが望んだ世界へ!」

〇黒

〇通学路
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)「わー! 遅刻遅刻!」
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)「わ~ん 私のチカラが自分にも使えたらいいのに~」
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)「──なんてね」
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)「『オチコボレ』の私じゃ無理無理」
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)「だいたい、そんな事のためにあるチカラじゃないんだから」
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)「みんなの夢と希望のために使わないとね」
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)「とは言え」
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)「朝から全力ダッシュはつらいよ~」

〇華やかな寮

〇明るい廊下

〇教室
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)「すみません遅れま──」
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)「あれ?」
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)「先生まだ来てない?」
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)「ラッキー!」
茂木 引男(もてぎ ひきお)「おはよう夢美ちゃん」
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)「お、おはよ」
茂木 引男(もてぎ ひきお)「何でも転校生が来るらしいよ」
女生徒「ねえねえ茂木く~ん」
女生徒「夢美なんか構ってないで こっちでお喋りしよ~」
茂木 引男(もてぎ ひきお)「仕方ないな」
茂木 引男(もてぎ ひきお)「また後でね夢美ちゃん」
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)(後でって)
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)(校内の見回りしたいんだけどなぁ)

〇教室
教師「席に着けー」
教師「今日は転校生を紹介する」
教師「入って」
「カッコよくない!?」
「茂木君の方がイケてるでしょ」
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)(な、何だろ)
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)(すごくドキドキする)
阿南 零司(あなん れいじ)「阿南 零司です」
教師「席は浅黄の隣な」
阿南 零司(あなん れいじ)「よろしく」
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)「よ、よろしく」

〇教室
女生徒「阿南君どこから来たのー?」
女生徒「私が学校案内してあげようか?」
女生徒「あっ」
女生徒「黙って行っちゃった・・・」
茂木 引男(もてぎ ひきお)「チッ」

〇明るい廊下
阿南 零司(あなん れいじ)「浅黄さん」
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)「阿南君」
阿南 零司(あなん れいじ)「もし良ければ」
阿南 零司(あなん れいじ)「学校を案内してくれないかな」
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)「わ、私?」
阿南 零司(あなん れいじ)「そう」
茂木 引男(もてぎ ひきお)「阿南君~」
茂木 引男(もてぎ ひきお)「俺が案内するよ」
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)「あ、じゃあ私行くね」
阿南 零司(あなん れいじ)「──」

〇教室
阿南 零司(あなん れいじ)「──」
女生徒「また阿南君どっか行っちゃった」
女生徒「お昼誘いたかったのに~」
茂木 引男(もてぎ ひきお)「チッ」
茂木 引男(もてぎ ひきお)(またかあいつ イラつくぜ)
茂木 引男(もてぎ ひきお)「おい、結城!」
結城 優介(ゆうき ゆうすけ)「な、何?」
茂木 引男(もてぎ ひきお)「昼飯買ってこい」
女生徒「茂木君優し~い そんな奴に話しかけなくていいのに」
茂木 引男(もてぎ ひきお)「たまには口きいてやらないと 話し方忘れちまうだろ?」
茂木 引男(もてぎ ひきお)「オラ早く行けよ」

〇学校の屋上
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)「フゥ」
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)「夢と希望の使者も楽じゃないな」
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)「活動を始めて1年も経つのに」
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)「まだ1人しか願いを叶えられてないなんて」
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)「でも頑張らなきゃ」
  いつも心の奥で何かが私を急き立てる
  とてもとても大切な何かを忘れているような
  ただ一つでも多くの願いを叶えろと
  まるで遠い昔の約束みたいに──
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)「──でも大丈夫!」
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)「私には夢と希望があるんだもん!」
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)「さ、お昼食べよっと」
阿南 零司(あなん れいじ)「やあ」
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)「あ、阿南君!」
阿南 零司(あなん れいじ)「散策してたら屋上への階段を見つけてね」
阿南 零司(あなん れいじ)「邪魔だったかな?」
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)「ううん、大丈夫」
阿南 零司(あなん れいじ)「ところで、さっき奇妙な噂を聞いたんだけど」
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)「噂?」
阿南 零司(あなん れいじ)「そう」
阿南 零司(あなん れいじ)「──どんな願いでも叶えてくれる魔法使いの噂」
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)「へ、へぇー 変な噂だね」
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)「でもさすがにねー?」
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)「何でもなんて──」
阿南 零司(あなん れいじ)「──不確定性原理」
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)「──え?」
阿南 零司(あなん れいじ)「位置を確定すれば運動量が不確定に」
阿南 零司(あなん れいじ)「運動量を確定すれば位置が不確定になる」
阿南 零司(あなん れいじ)「物質は粒子でもあり波動でもある」
阿南 零司(あなん れいじ)「世界は常にゆらいでいて、確実なものなんて何もない」
阿南 零司(あなん れいじ)「我々が見ている世界はあらゆる可能性の重ね合わせ」
阿南 零司(あなん れいじ)「ならば『観測者』の観測次第で」
阿南 零司(あなん れいじ)「世界はいかようにも姿を変えうる」
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)「え、えっと──」
浅黄 夢美(あさき ゆめみ)「あ!お昼終わっちゃった! 先戻るね!」

〇教室
「やっと終わったー」
「茂木君カラオケ行こー」
茂木 引男(もてぎ ひきお)「悪い、先帰って」
茂木 引男(もてぎ ひきお)「阿南君、ちょっといい?」
阿南 零司(あなん れいじ)「ああ」
阿南 零司(あなん れいじ)「俺もお前に話がある」

〇非常階段
茂木 引男(もてぎ ひきお)「さて」
茂木 引男(もてぎ ひきお)「お前、転校初日からナメてんのか?」
茂木 引男(もてぎ ひきお)「なぜ浅黄夢美につまきまとう」
茂木 引男(もてぎ ひきお)「皆を無視しやがって」
阿南 零司(あなん れいじ)「悪いな」
阿南 零司(あなん れいじ)「あまり関わりを持つと」
阿南 零司(あなん れいじ)「後で記憶の混濁が生じるんでな」
茂木 引男(もてぎ ひきお)「は?」
阿南 零司(あなん れいじ)「お前はずいぶん皆から好かれているようだな」
阿南 零司(あなん れいじ)「だが、その幸福」
阿南 零司(あなん れいじ)「──本当にお前のか?」
茂木 引男(もてぎ ひきお)「ど、どういう意味だ」
阿南 零司(あなん れいじ)「知ってるか?」
阿南 零司(あなん れいじ)「願いを叶える魔法使いの噂」
茂木 引男(もてぎ ひきお)「ハッ」
茂木 引男(もてぎ ひきお)「何を幼稚な──」
阿南 零司(あなん れいじ)「事実だ」
阿南 零司(あなん れいじ)「魔法使い『リーヴァ』は、この一年で6人の願いを叶えている」
阿南 零司(あなん れいじ)「最も新しい願いは1週間前に叶えられたばかりだ」
茂木 引男(もてぎ ひきお)(こいつ──何か知ってるのか!?)
茂木 引男(もてぎ ひきお)(だが、6人だと?)
茂木 引男(もてぎ ひきお)(あの時確か──)
阿南 零司(あなん れいじ)「「2人目だ」と言われたんだろ?」
阿南 零司(あなん れいじ)「リーヴァは常にそう言う」
阿南 零司(あなん れいじ)「なぜなら、認識できる改変は一つだけだからだ」
阿南 零司(あなん れいじ)「新たに願いを叶えれば、前の願いは忘れてしまう」
阿南 零司(あなん れいじ)「「2人目」は願いを叶え終わった瞬間 「1人目」になる」
茂木 引男(もてぎ ひきお)「お、お前一体」
阿南 零司(あなん れいじ)「なぜ知ってるかって?」
阿南 零司(あなん れいじ)「それは俺がリーヴァと対をなす存在」
阿南 零司(あなん れいじ)「『レイカー』だからだ」
阿南 零司(あなん れいじ)「イマジナリースペース・オープン!」

〇サイバー空間
茂木 引男(もてぎ ひきお)「あ、阿南なのか!?」
茂木 引男(もてぎ ひきお)「何だこれは!」
レイカー「ここは『ディラックの海』」
レイカー「虚空より空しく」
レイカー「虚無よりも虚ろ」
レイカー「負のエネルギー電子で満たされた空間」
茂木 引男(もてぎ ひきお)「そ、そんな所に人間が居られるわけ──」
レイカー「俺達は可能性としてここに存在しているだけ」
レイカー「シグナル赤」
レイカー「やはりお前が最新の対象者か」
レイカー「俺はリーヴァの能力を解除するためにここに来た」
茂木 引男(もてぎ ひきお)「な──!」
レイカー「リーヴァの能力 『デイドリーム・ビリーヴァー』の欠点」
レイカー「それは改変前と改変後の世界で」
レイカー「『不幸の総量』が変わらない事」
レイカー「誰かの不幸を改変すれば」
レイカー「別の誰かが不幸になる」
レイカー「居るんだろ?」
レイカー「お前の代わりに不幸になった奴が──」
茂木 引男(もてぎ ひきお)「ク、クソッ」

〇サイバー空間
茂木 引男(もてぎ ひきお)「ハァッハァッ」
レイカー「無駄だ」
レイカー「ここでは俺達はどこにでも居て」
レイカー「どこにも居ない」
茂木 引男(もてぎ ひきお)「う」
茂木 引男(もてぎ ひきお)「うわああぁー!」
レイカー「やはりクズはどこまでいってもクズか」
レイカー「そんな下衆な人間性で」
レイカー「本来のお前はどれだけ嫌われてたんだろうな?」
茂木 引男(もてぎ ひきお)「ち、違う!」
茂木 引男(もてぎ ひきお)「俺がこの学園で一番好かれてるんだあぁ!」
レイカー「やはりそれがお前の願いか」
レイカー「お前が誰からも不自然なほど好かれる中」
レイカー「浅黄夢美だけはお前に関心を示さない事から予測はついていた」
レイカー「これで条件は揃った」
レイカー「貴様の願いは」
レイカー「『学園で一番好かれる存在になる』事」
茂木 引男(もてぎ ひきお)「や、やめ──」
レイカー「どうせ解除すれば何もかも忘れる」
茂木 引男(もてぎ ひきお)「い」
茂木 引男(もてぎ ひきお)「嫌だあぁあ!」
レイカー「還せ、その幸福を」
レイカー「『ブレイク』!」

〇黒

〇華やかな寮

〇教室
結城 優介(ゆうき ゆうすけ)「阿南君!」
結城 優介(ゆうき ゆうすけ)「昨日は挨拶できなくてごめん!」
結城 優介(ゆうき ゆうすけ)「学校はもう慣れた?」
結城 優介(ゆうき ゆうすけ)「って、転校2日目で慣れるわけないか」
阿南 零司(あなん れいじ)(こいつは──)

〇黒
  茂木にこき使われてた奴か──

〇教室
結城 優介(ゆうき ゆうすけ)「困ったら何でも言ってよ!」
女生徒「結城君と阿南君のツーショット尊い~」
女生徒「阿南君、結城君と何話してたのー?」
阿南 零司(あなん れいじ)「別に」
阿南 零司(あなん れいじ)「それより」
阿南 零司(あなん れいじ)「あの教室の隅にいる彼は?」
茂木 引男(もてぎ ひきお)「──」
女生徒「あー茂木?」
女生徒「あんなクズ気にしなくていいよ」
女生徒「中学の時、結城君に女子の下着盗難の濡れ衣着せようとしたんだって」
女生徒「そんなクズと同じ空間に居るの辛いわ~」
阿南 零司(あなん れいじ)(──それがお前の『正史』か)
阿南 零司(あなん れいじ)(そして結城への冤罪が成功したのが『改変』後の世界)
阿南 零司(あなん れいじ)「──下らん」

〇華やかな寮

〇開けた交差点

〇崩壊した道

〇街外れの荒地

〇謎の扉

〇地下に続く階段

〇近未来の通路

〇実験ルーム
阿南 零司(あなん れいじ)「エル──」
阿南 零司(あなん れいじ)(会った事もないリーヴァの能力の受け皿として)
阿南 零司(あなん れいじ)(この研究所で育った俺にとって)
阿南 零司(あなん れいじ)(妹のエルだけが心を許せる存在だった)
阿南 零司(あなん れいじ)(だが一年前のあの日)

〇研究所の中枢
レイカー「う!?」
  リーヴァと量子もつれの関係にある俺は
  リーヴァが能力を使用すればどんなに離れていても察知できる
  そしてあの日、初めてその感覚を経験した直後
レイカー「これは──リーヴァがどこかで能力を?」
レイカー「な、何だ!」

〇近未来の通路
レイカー「エル!どこだ!」

〇研究施設の廊下
レイカー「エル!」
レイカー「クソッ」

〇研究施設の廊下
レイカー「エル!」
エル「──」
レイカー「頼む、目を覚ましてくれ──」
レイカー「エルーッ!」

〇黒
  あの日、謎の攻撃を受けた研究所は壊滅
  唯一復旧した生命維持装置で
  エルは一命を取り留めたが
  一年経った今もまだ目を覚まさない

〇実験ルーム
阿南 零司(あなん れいじ)(研究所の壊滅がリーヴァの改変の結果なのは間違いない)
阿南 零司(あなん れいじ)(俺はエルをこんなにした改変を絶対に受け入れない)
阿南 零司(あなん れいじ)(だがリーヴァの改変は最新のものから順に解除しなければならない)
阿南 零司(あなん れいじ)(茂木の願いを解除した事で)
阿南 零司(あなん れいじ)(5人目の願いの記憶が復活する)
阿南 零司(あなん れいじ)(探りを入れやすいのはこのタイミング)
阿南 零司(あなん れいじ)「待ってろエル」
阿南 零司(あなん れいじ)「必ず残り5人の願いも解除し」
阿南 零司(あなん れいじ)「お前が無事な元の世界に戻してみせる!」

〇黒

〇モヤモヤ
???「何て事──」
???「1週間もの間忘れてたなんて」
???「殺さなきゃ」
???「秘密を知ってるリーヴァを殺さなきゃ──!」

〇黒

次のエピソード:第2話 観測者効果 ≮ショウガイ≯

コメント

  • 遅ればせながら読ませていただきました!
    茂木君が嫌すぎて、早々に退散しないかな〜と思ってた矢先、成敗されてスカッとしました!世界観が凄すぎて、頑張ってストーリーに食らいついてました!すごい!

  • 面白いっ!
    妹を救うために誰かの願いを壊していく…
    茂木は(たぶん2人目も)悪人、でもこの先、改変のほうが倫理に適う正しい願いに直面したら…?
    リーヴァがオチコボレってことはさらに上書きできる最終観測者がいる?
    リーヴァが多くの願いを叶えるのは研究所壊滅を解除されにくくするため?
    妹を救うだけならそうリーヴァに願ったらどうなるの??
    興味が尽きませんっ!

  • 嗚呼、THIS IS ゲーム小説なんでしょうね、絶対。
    映画後の浮遊感、満喫しました。

コメントをもっと見る(22件)

成分キーワード

ページTOPへ